Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

解体現場の床にビニールテープで原寸墨出し@港区R邸

港区R邸

解体が無事終了した港区R邸の現場ですが、営業&設計担当の坂本さんと現場監督の織田さんが頑張って、現場の床に壁位置をビニールテープを張って図示してくれました。本来的な意味での墨出しは、細い線でLGSの下地ラインなどを床コンクリートに書いてゆく作業ですが、それだと一般のお客さまには全く理解できないので、今回は特別に坂本さんと織田さんが頑張ってくれました。

もとは一つの寝室だった箇所を二つに分ける部分では、写真左下から右上へと伸びている赤いテープ部分が間仕切壁になります。左下に見える青いテープは主寝室のガラス張りウォークインクローゼット、中央にも息子さんのお部屋のウォークインクローゼットが分かります。

一部の壁を除いて、ほぼスケルトン状態になった個所でも、赤いテープは壁、青いテープは建具やガラス仕上げの壁と、張り分けることで、空間の広さを分かりやすく示してくれました。床コンクリートに段差があったり、配管やダクトが複雑に絡み合っており、何が何だか分からない現場を、何とか分かりやすい形で整理してくれた二人に大感謝です!

こちらの写真では、キッチンの位置に立って、そこからリビングダイニングの広がりを確認してくださっているRさまご夫妻の様子です。

大きなリビングダイニングには間仕切りは無いので、墨出しの確認にはなりませんが、どこに家具を置いて、どのように日常生活を過ごすのかを想像して頂くようにお願い致しました。

現時点で決まっていたり、候補に挙がっている仕上げ材を現場の即席テーブルの上に並べたものを確認して頂きました。手前からキッチンの素材、床の大理石、コンセント&スイッチプレート、金物類、ポルトロ(大理石)、サルバトーリの加工大理石、塗装突板などを並べています。

今回は特にまだ決まっていなかった素材をお客さまとご一緒に決めたかったので、素材を組み合わせたミニ・モックアップ模型を見て頂きました。

玄関ホールは床大理石と入って右側の壁の加工大理石(サルバトーリ)が決まっていましたが、正面の壁素材が決まっていませんでした。

当初はカラーガラスで考えていましたが、玄関入って正面のカラーガラスは映り込みがあって品がないのではとことだったので、先回のブログで書いたアレキサンダーラモントとフロスト加工をしたカラーガラス(AGCのマテラック)をお見せしたところ、フロストのカラーガラスで目地に真鍮を入れたものが良さそうだとのことになりました。

その他の素材についても、現地でどこの床、壁、天井に使うのかをご説明して、以前より作っていたCGと併せて確認して頂きました。

最後の写真は、女性陣の寝室エリアと水回りの墨出し状況です。洗濯機を収納するニッチと特別のドライルームの位置関係、そして洗面と浴室の大きさが良く分かると、お客さまには大変好評でした。

 

ラグの現場シーミング加工後にミノッティのソファ搬入

西麻布N邸

お引渡しが終わった大型リノベーションプロジェクトの西麻布N邸ですが、オーシマプロスでお願いしていたラグが現場に搬入されました。

通常は中が空洞になった紙製の筒に巻いた状態で搬入されますが、それだとサイズが大きくなり過ぎてしまうので、芯を抜いた状態で現場に搬入してもらいました。

写真だとサイズが分かりにくいですが、一つで2×3.7メートルの大型ラグです。そのサイズのラグ2枚を現場で継ぐシーミング加工をして貰い、4×3.7メートルの大型ラグを作って貰うのです。最初からそのサイズにしてしまうと、マンションエレベーターでの搬入ができないので、このようなスタイルになりました。

シーミングとは、カーペットを繋ぎ合わせる加工のことです。写真のような粘着剤の付いたテープを、二つのラグの継ぎ目の下に敷き込み、…

専用の小型アイロンで粘着剤を溶かしながら接着してゆきます。二枚のラグの間に挟み込まれているのがそのアイロンです。

手前から始めて、徐々に奥へとシーミングしてゆきます。

こちらが一通りシーミングが終わった様子です。大理石調タイルの上で、ラグが滑らないように滑り止めシートを敷き込んでもらいました。もともとのラグも2種類のラグを工場でシーミングしたものだったので、ラグを裏返すと3か所でシーミングジョイントされたように見えますね。

こちらがシーミングが完成した際のクローズアップ写真です。オーバーロック加工(縁がほつれないように、特殊なミシン二重縫いして仕上げること)部分はうまく継げないのではと心配していましたが、間近で見て問題がないほどきれいにシーミングされていました。

ラグを敷いたところで、ミノッティでお願いしていたソファ類を現場に搬入設置して貰いました。事前の調査でエレベーター搬入は出来ないサイズであることは分かっていましたが、階段では無事荷揚げすることができました。

大型のWHITEソファを現場で荷解きして、

こちらが指定した箇所にレイアウトして、組み立ててゆきます。

ソファの接合部分には、このようなジョイント金物がついており、そこをうまく合わせてゆくと、ピッタリと寄せ合って離れなくなる仕組みとなっています。

暖炉前に置くラウンジチェアと、ソファに合わせてオーダーしたクッションも届ています。

一通りのソファセットが組み上がったところで、お出かけしていたN君が戻ってきて、大喜びでソファを橋に見立てて、遊びまわってくれました!

こちらは暖炉前のラウンジチェアの様子です。家具が入ってきたことで、西麻布N邸の空間も大分落ち着いてきた感じが致します。

 

 

アレキサンダーラモントの魅惑的な素材について 

港区R邸

素敵なインテリア素材を扱っているエルクリエーションの高田さんが扱っているアレキサンダーラモントの素材を見せて頂きました。

イギリス人のオーナーのアレックス・ラモント氏が欧州や日本の装飾美術にインスピレーションを得て、タイに構えた工房でオリジナルの素材研究を行い、壁のパネル素材や家具、照明や装飾小物までを揃えた高級インテリアブラントです。
上の写真は、その素材集の一端でしかないそうですが、天然素材をそのまま使ったものは少なく、素材に独特な加工を施して、鮮やかな色味や、古びたマチエールを作り出しています。

こちらは、ストローマルケタリーと呼ばれるらい麦の茎を寄木細工のように加工したパネルだそうです。職人技で一枚ずつ手作りで作成するので、サイズも自由に作ることができるとのことでした。

色味も5種類(Beechwood / Bronze / Ebony / Mercury Gold / Argento)あるのですが、それぞれ見る角度によって光沢と反射で色が変わって見える、不思議な上質感のある素材でした。

こちらはガルーシャ革、あるいはシャグリーン革と呼ばれるエイの皮を環境に配慮した伝統的な方法でなめして磨き上げたものです(一般的な「なめし」にはクロムなめしが多く使用されますがアレキサンダー・ラモントの工房では、クロムを使わない伝統的な手法によってエイ皮を加工しているそうです。その方が強度がより強く、出来上がりが精巧で、無数の粒子の自然なトーンが美しく、またクロムなめしにより発生する汚染もなく、環境にも優しいものとなっているからだそうです)。天然素材なので、取れるサイズはバラバラだそうですが、要望の応じてこの小さなカード状のパネルを集めて大きなパネルにすることも可能とのことでした。

この白さと儚さが同居した繊細な素材は、石膏と他の素材を混ぜて板に塗って、特殊な乾燥をさせたうえで磨いたものだそうです。他にもブロンズや、漆、金箔やパーチメント(山羊皮)等の特殊加工素材も数多く揃えています。

それらの魅惑的な素材を使って、多様な置物や調度品も作っているとのことでした。当然ながらお安い金額ではありませんが、ここぞといったインテリアの見せ場で使いたいと考えていたところで、港区R邸のお客さまから、玄関ホール入って正面の壁の素材の提案がなかったので、う少しユニークな素材を提案して欲しいとのご依頼があったので、早速ストローマルケタリーのサンプルを借りてお見せすることになりました。

こちらが現地で、玄関ホールの素材として床の大理石や、横壁のサルバトーリの壁素材と並べた様子です。残念ながら、この部分の壁については他の素材を使うことになりましたが、素材自体はとても気に入ってくださったので、ダイニングの壁に使ってはどうかとのお話になりました。

リビングダイニングの奥に四角いコンクリートの柱型があるのですが、その正面はオニキス系の大理石を背面から照らして見せ、背部にはワインコーナーを作る予定となっていました。ダイニング側にはフレームを廻した塗装壁を作って、アートワークを後日探そうという方向で進んでおりましたが、その部分にこのストローマルケタリーをとの話になり、見積用の図面を前田君に作って貰いました。