東京ガスが各世代を代表する著名建築家四人に実験的住宅とパヴォリオンの設計を依頼したという宇都宮のSUMIKAプロジェクトを見学して参りました。建築家の伊東豊雄氏、藤森照信氏、西沢大良氏、藤本壮助氏が
- プリミティブ(原始的な)
- 自由で豊かに自然と関わることのできる住空間
- 人々の動物的本能を甦らせるような、自由で独創的な住まい方
などをキーワード、コンセプトとして、実験的な住宅を宇都宮の市街地に点在させるというプロジェクトがSUMIKAだそうです。今回は東京ガスとオゾン・リビングデザインセンターのスタッフ方々と一緒に見学する機会を頂きました。
まず、最初に拝見したのが、伊東氏設計のパヴィリオンでした。木造のパズルのような構造体が美しい建築でした。実に上手く作られており、不思議なデザインが不思議でないように思えるほど、巧妙に作られていました。(模型の中に居るような感覚?)構造体は編カゴのようでもあり、パズルのようでもありますが、コンセプトの「木の下の空間」には、どうしても感じられませんでした。やはり光がこぼれてくる状態や枝が張ったような構造は似ていても、風や温度などの体感できる感覚が違うことで、人工的な環境に感じられてしまうのかも知れません。
次に拝見したのは、西沢氏が設計した住宅でした。厚い屋根と四周の建具を全開にすると、外と一体化する、やはり不思議な住宅でした。幸い、素晴らしい天気に恵まれていたので、風が爽やかで、光も美しく、
快適な空間を楽しむことが出来ました。ただ、都市型住宅として、外との一体の仕方や、天気が悪いときにはどうなるのかなど実際に住まう住宅として考えたときには、数々の不安が残りました。
今回の見学で一番興味を持っていたのが、この藤本壮助氏設計の住宅でした。実験的な(?)空間の設計では、若手ナンバーワンの建築家が作る空間は、実際に体験するとどうなのかが興味がありました。
そして実際に体験してみると、実に面白い空間でした!
鉄製の箱と、樹木が立体的に組み立てられ、梯子が繋いでいる空間なのですが、考えるより、感じるような空間で、単純に巡っていることが楽しくなるのです。思わぬところから、思わぬ場所へと梯子が伸び、外部と内部の境界が曖昧で、温かい空間とひんやりした空間が交互にあったりと、子どもに戻って、かくれんぼをしたくなる感覚におそわれました。ただし空間の面白さは抜群でしたが、住宅としての性能は一番低そうです。危険を顧みなければ、幼稚園や保育園、あるいは子どもの遊戯施設として最適なのではないでしょうか?
最後に拝見したのが、藤森氏設計の住宅、コールハウスでした。焼いた杉板を外壁に使った住宅です。ここまで見学してきた住宅が、あまりに一般の住宅の概念から外れていたので、この住宅には安心感を覚えました。と言っても、決して普通の住宅ではないのですが…。
体験してみると、とても狭い入り口や建具、急な梯子や、斜め床の寝室、外部梯子を使える茶室など、ユニークな空間が、上手に一つの住宅の中に納められていました。材料も、焼杉をはじめ、クリの板、塗り壁や、
木製サッシなど、触覚的にも気持ちが良い素材が多用されており、自分が住むとしたら、一番住んでみたい空間でした。最後の写真はオゾンスタッフの方々がお茶室に集合した様子です。
正直、全体的にみると遊び的な要素が強すぎると感じました。ただ、このような実験的なものから新しい住宅概念が生まれるのでしょう。その新しい概念をいかに感じ取って、普通の人にも納得して貰えるような形で、どのように展開してゆくかが問われている気がしました。最後に、貴重な機会を下さった、東京ガスとオゾンに感謝の一日でした。