Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

カガミ建築計画の新事務所移転計画-2

カガミ建築計画事務所移転計画

先回のブログでも書いた通り、カガミ建築計画の事務所を白金台の古い団地から南青山の骨董通りに面したマンションの上層階に移ることなりました。賃貸契約も無事結ぶことができました。ここまでの不動産探しからオーナー側とのやり取りは、不動産のことでとてもお世話になっている大成有楽不動産販売の凄腕営業マンの野村さんにお手伝い頂きました。

リフォームのラフプランはできましたが、まだ細かいディテールや素材をどうするかも決まっていない中ですが、ザ・ライブラリーのパートナーでもあるTAGKENの田口さんに事務所のリノベーション工事をお願いすることになり、早速スタッフの現場監督の栗原さんと佐藤さん、電気屋の稲村さん、大工の小野寺さんと一緒に現場を見に来てくれました。

通常であれば、図面が完成し、全ての仕様が決まったところで見積りをして、その金額と工程が決まったところから解体をスタートするのですが、今回は特別対応とのことで、決まっていない部分が色々とあり、また見積もりもまだの中で解体工事をスタートすることとなりました。
写真は廊下に露出された分電盤をどうすべきか、田口さんと佐藤さん、そして電気屋の稲村さんと弊社副所長の竹田さんが相談してくれている様子です。

事務所の大窓が南西側を向いており、夏の夕方にはかなり暑くなりそうなことが予想で来ているので、既存の窓の内側にインナーサッシを入れる打ち合わせをしている様子です。

そうこうしているうちに、解体工事がスタートしました。
事務所として使うので浴室は解体して、そのエリアを倉庫として使う計画としています。早速にユニットバスを現場監督の栗原さんが解体してくれています。

かつてのリビングと奥にあった個室の間仕切り壁を解体して、一体になったエリアが机を置いて働くい事務所スペースとなります。左側のアーチの開口部の奥がキッチンです。当初はキッチンはそのままでも良いと考えていましたが、スタッフ全員から折角の機会だからキッチンもオーダーキッチンで作り直して、お客さまにも見て貰えるキッチンにすべきだとのことで、急遽取り壊すことになりました。

解体されたキッチンエリアです。梁があり変形のキッチンどどのようなレイアウトにすべきか、急ぎで事務所内で検討しています。

竹田さんが考えてくれた案がこちらです。

ただ、これだと僕、各務が働く机からキッチン内部が見えないので、電子レンジを置くカップボード側に小窓(開口部)を開けて、覗けるようにする案を考えました。収納も今の事務所のキッチンと見比べながらどうすれば効率的に収納ができるかを考えています。

解体工事は順調に進み、造作家具と建具をお願いすることになっている現代製作所の吉岡さんと上林社長に現場に来てもらいました。

実は田口さんのTAGKENと現代製作所は初めて一緒に動いて貰うので、まずはお互いをご紹介してから、造作家具の概要を説明させて貰いました。

今回のリノベーションで一番力が入っているのが打合せ室です。これまでのカガミ建築計画&ザ・ライブラリーで使ってきた素材やディテールや家具をふんだんに取り込む形でデザインをしようと意気込んでいます。
デザインのプロセスでも事務所内で高精度のCGを作ることができるので、打ち合わせ室の造作家具の色味をどうするかを検討するためのCGを作ってもらいました。

工事を進めて貰いながらスペックを決めてゆく作業を同時にするという超反則技をしていますが、そんなタイミングで城南R邸の打ち合わせでルートロンの新ショールームにもう一人の副所長の前田君と一緒に行ってきました。ルートロンはアメリカの照明の調光システムのブランドです。城南R邸だけでなく、渋谷区L邸でもお世話になっているルートロンの谷崎社長と話をしている最中に、実は事務所の引っ越しを考えているとお話したところ、打ち合わせ室だけで良いので、ルートロンの最新システムのホームワークスを入れないかとの魅力的なお誘いがありました…。

アメリカでは先行して販売されているホームワークスでは、照明器具だけでなく空調や窓の電動ブラインドなどを一括してコントロールすることができ(以前はルートロンだけでなくクレストロンという他社ブランドの機器を組み合わせないとできなかった)るようになっているそうで、更にこの写真スイッチ類も採用することができるそうです。また、以前は欧州発のKNXシステムでしかできなかった照明の調光や調色のグループ分けの後決め(つまり、最初から照明器具類をグループ分けしないでも後から自由にグループ分けができる)もできるようになったそうです。

打ち合わせ室だけで、どのようなことができるかを色々と聞いた上で、思い切ってホームワークスのシステムを採用することになり、大急ぎで前田君に打ち合わせ室の電気設備を変更してもらいました。

そんなことをしているうちに、解体工事も進み、かつての洗面とトイレと浴室の床下の給排水管&ガス管の全容が見えてきました。以前は水回りの床が一段上がっていましたが、ガス管のルートを変えて、トイレの便器を床排水ではなく壁排水タイプに変えれば、床をフラットにできることが判りました。

打ち合わせ室の窓側の壁を三方フレームで囲ってデザインする方針は決まっていましたが、インナーサッシとの取り合いや、ルートロンの電動ブラインドの取り付け方、また、窓の間の壁を何の素材で仕上げるかを前田君が検討してくれたスケッチ図です。

最終的には、窓の間の壁は大理石のオデッサベージュのデザイン貼りとすることになりました。既存だとその壁の正面に給気口がついてしまうのですが、それだと見っともないので、ディテールを工夫して、石壁の側面から給気をとることになりました。

こちらはその三方枠を横からみたアングルのCGです。正面には、作成したCGや事例写真などを大型モニターでお客さまにお見せできるようにすることなったので、壁掛けテレビを入れることも決まりました。

こちらがその壁のデザインと大型テレビの取り付け詳細図です。テレビを取り付ける壁の背面に穴を作っておき、そこから事務所スペースのパソコンと繋げるシステムとしています(そうでないと、字打合せ室内に一台30万円する高性能パソコンを置いておかないといけないことになるのです)。

事務所スタッフ全員が、それぞれが担当してくれているプロジェクト以外に、この新事務所の各部分を担当して設計を進めてくれている中で、僕、各務は一旦決まった個所に追加工事を生むような面倒な変更をしてしまっており、中々に肩身が狭い思いでおります…。
このスケッチも一旦決まった打ち合わせ室の本棚と入り口のデザインですが、本棚の木製フレームを入り口の扉周りにまで伸ばせないかと、現代製作所の吉岡さんに後出しで問い合わせたものです。

こちらはトイレ内の手洗いカウンターの奥に、便器用のブラシを置くスペースを作れないかと思い立って描いたスケッチです。

打合せ室の本棚のフレームを延長する案をスタッフの竹田さんがスケッチにしてくれ…、

それを、現代製作所の吉岡さんもTAGKENの佐藤さんも粘り強く聞いて、対応してくださっています。新事務所の設計&施工に協力してくださっている皆さまに感謝の念が堪えません!

集合住宅の原型_客家土楼に学ぶ共同体の形-1

見学記

福建省厦門(アモイ)郊外で大理石を探すツアーに行った最終日、以前から行きたいと願っていた客家土楼(はっかどろう)を見学してきました。

客家土楼は中国南東部の客家(ハッカ)の人たちが、山の中に建てた一族で暮らすための集合住宅です。歴史的に客家の人たちは中原から戦火を逃れてこのエリアに移り住んできましたが、周りの人たちと溶け込まず、人里離れたエリアに自給自足で暮らすスタイルを選びました。強盗や野獣から身を守るために周りを土壁で囲んだ中に暮らすという生活スタイルで、当初は大きめの住宅のような建築様式でしたが、一族の人数が増えるに従い、建築を進化させて、方形(四角)や円環状の土楼へと発展してきたそうです。特に福建省に集中しているため福建土楼とも呼ばれています。

福建土楼

以前に福建省に大理石ツアーで行った際には、厦門市内から往復で丸一日掛けても回れないといわれて諦めたことがありましたが、世界遺産となり観光客が増えたことで、新しい高速道路が通ったとのこと、一日のツアーで幾つかの土楼を回ることができることが分かり、大理石ツアーのメンバー全員で行ってきました。

福建土楼

下を歩いている人と比べることでその巨大さが分かりますね。この土楼は「土楼の王」とも呼ばれる承啓楼です。直径約側73メートル、高さ16メートル、外周部は4階建てという大規模の土楼です(サイズ的にはもっと大きな土楼もあるそうです)。

福建土楼

小さな入り口が三か所あり、焼きレンガで作られた入り口を通り抜けると、4層の円環構造になった内部が現れます。外から見るとスケールオーバーで人を避けるような建物に感じましたが、内部に入ったときの空気感や屋根が複雑に重なった様子、そしてあらゆるものがごった返した感じは、まるで一つの建物の中に町があるような感覚を覚えました!

福建土楼

外環部分は外壁が土製の版築(土を枠に入れて突き固めた)壁で、内側が木製の4階建てとなります。

階段が4か所にあり、上階の住居部分へと上がってゆくことができます(この土楼は宿泊する人以外は上階には行けないのですが…)。階段は折り返し型で、上階は中廊下型となっています。

福建土楼

1階部分ももとは住居でしたが、今は窓台を開閉式のお店にしたお土産物屋さんやお茶屋さんとなっています。

福建土楼

2重目の円環(中環)は、主に共用の水回りとなっています。手前の開口部奥には洗濯機が見えますし、その右には中華鍋が外壁に吊るしてあり、シンクもありますね。奥にはトイレもありました。水回りは個人のものではなく、皆で共同で使うスタイルとなっています。以前はキッチンは外環の1階部分にあったそうですが、観光地化された承啓楼では住む人の人数が減ってきたことで、機能も移ってきているようです。

福建土楼

外環と中環の間の床は、このように凹凸が付けられ、雨水や生活排水を流すシステムとなっています。今はトイレは汚水管に接続され、水も給水管が来ているようですが、以前は、全て自然排水で、給水も土楼内に掘られた井戸から供給されていたそうです。

福建土楼

中環の内側には3層目の円環(内環)があり、かつては共用部として使われていた小部屋が並んでいます。外環で使われている壁材は土を干して固めた日干しレンガなども使わていましたが、内側に入ってくるほど、焼成されたレンガや石などが使われて、より耐久性が強くデザイン性も強くなっています。

福建土楼

中環から内環へ抜ける通路は下部は焼成煉瓦ですが、上部は日干し煉瓦ですが…、

福建土楼

中環から内環への通路となると、全てが焼成煉瓦となっていますね。

福建土楼

煉瓦積みのパターンもとてもきれいなのです。

福建土楼

4層目の円環が、一族のお社である祠堂です。

福建土楼

祠堂は中庭型のオープンなお社となっており、特別な宗教を祭るのではなく、祖先を祀る場所となっています。

福建土楼

ここに住んでいるのは、江(チャン)家の人たちで、1709年に作られてから15代めの人たちで、今も200人ほどの人が住んでいるとのことでした。ガイドをしてくれた女性は、江家にお嫁に来た方で、外環の3階に暮らしているそうです。

福建土楼

祖廟から振り返ってみるとこのように屋根が複雑に絡み合っているのが判ります。

福建土楼

外環の1階部分のかまどがあるお部屋の内部です。かまどの上にも小さな先祖を祀る祠がありますね。

福建土楼

東西には風が通る道を兼ねた一直線に通る道が抜けています。

福建土楼

福建土楼は外側は燃えにくい版築造となっていますが、内部は木造で火事に弱いのが問題で、これまでにも幾つもの土楼が失火が原因で焼けてしまっているそうです。この土楼では、円環状の外観の途中4か所に、版築造の防火壁を作って、延焼を防ぐ工夫をしているそうです。また、スプリンクラーこそありませんが、消防施設も設置されてきているそうです。

福建土楼

円環土楼の承啓楼を出ると、すぐ隣には方楼(四角い土楼)の世澤楼があります。

福建土楼

庇がつばぜりあいをするほど近くに接しているのです。残念ながら、世澤楼は修復工事中とのことで、今回は見ることができませんでしたが、歴史的には四角い方楼の方が古く、円楼の方が後からできているそうです。世澤楼も同じ江一族の土楼だったそうです。版築壁は雨水に弱いので、なるべく庇を大きく出して雨風を防ぐとともに、窓回りは漆喰で固めて、水が入り込まないようにしているのが判りますね。
他の土楼も見学しましたが、長くなりそうなので、続編を書きます。

安全祈願と工事体制の整備@渋谷区L邸

渋谷区L邸

超大型メゾネット住戸リノベーションの渋谷区L邸は、スケジュールの関係から上階から既に解体工事を始めていますが、下階の工事を始める前に安全祈願式(新築戸建て住宅を建てる前に行う地鎮祭的な儀式)を執り行いました。

Lさまの奥さまはご妊娠中ですので、ご主人さまと神主さん、そして関係者一同に集まっての式となりました。左から設計を手伝ってもらっているハクの関さんと後藤さん、三井デザインテック(以下三井DT)の武智さん、各務、ご主人さま、神主さま、三井DT現場監督の坂本さん、三井DTの営業の蛭川さんと設計の風間さんです。

式は地鎮祭とほぼ同じ形式ですが、お魚の鯛や海老といった生臭いものは無しの少し簡略からされた式典となりました。後ろの窓台には、三井DTとカガミ建築計画とハクからの奉献酒が並んでいます。

式の流れも地鎮祭とほぼ同じですが、盛砂を作っての鍬(スキ)入れも省略しています。
大きな流れは以下の通りです。

1.修祓(しゅばつ)
神主が参列者や祭場を祓い清め、まずは場を清浄にします。

2.降神(こうしん)
神様を祭壇にお招きします。参列者は起立して頭を下げます。

3.献饌(けんせん)
米、酒、塩、野菜、果物、海の幸、山の幸などの供物を神前に捧げます(今回は海の幸は無し)。

4.祝詞奏上(のりとそうじょう)
神主が祝詞(のりと)を読み上げ、工事の無事・安全、建物の繁栄を祈ります。

5.四方祓い(しほうはらい)
米・塩・切麻(きりぬさ=紙を細かく切ったもの)を敷地の四方に撒いて清めます。

6.玉串奉奠(たまぐしほうてん)
参列者一人ずつが榊に紙垂を付けた玉串を神前に捧げ、拝礼します。

7.撤饌(てっせん)
捧げた供物を下げます。

8.昇神(しょうしん)
神様を元の御座へお送りする儀式です。

9.直会(なおらい)
最後に、神酒で乾杯し、皆で工事の安全を改めて祈念します。

四方祓い(しほうはらい)は下階だけでなく、既に工事が始まっている上階でも行いました。

こちらは最後の直来の様子です。

一通りの式が終わったところで、お客さまのLさまから、工事関係者へのご挨拶がありました。リノベーションの計画を始めたところで、お子さまが生まれることになり、当初より工事の規模が大きくなったこと、神事を行ったことでとても場がきれいになったと感じたこと、そして工事中の関係者全員の安全を強く望んでいらっしゃることをお話しくださいました。

当日の式の後、まだ工事契約をしていなかった下階の工事のお見積りのご説明をさせて頂いた上で、工事契約も結ばせて頂きました。

こちらは別日の打ち合わせの様子ですが、まだ細かい仕様が決まっていなかった神間(神棚とご仏壇を置く和室)の仕上げ材の打合せです。

本格的な和室にする案もありましたが、工事のお引き渡しが決まっている中で、左官工事や網代組みなどは時間も掛かってしまうこと、また生まれてくるお子さまが小さい間はお布団を敷いてこの和室を使うことなども考えて、和紙調クロスなどを使って簡易的な和室とすることになりました。

三井DTでは、工事契約を結ぶと、そこから営業担当が現場営業担当に変わるシステムとなっていますが、今回の渋谷区L邸はこれまでの三井DTのお仕事の中でも一二を争う工事規模なので、営業の蛭川さんも武智さんも残って、そこに新たにに現場営業の三上さんが加わってくれることになっています(既に上階の解体工事からその体制になっています)。こちらが三井DTの銀座本社での下階の図面の読み合わせの様子です。

設備関係については設計図のみでの打合せでしたが、建具や造作家具に関しては、造作家具屋さんが書いてくれた下図を元に、金属塗装やフローリングのサンプルなどをベースに仕上げサンプルをかなりの数を作ってもらうようお願いしています。

これまでは実務的な打合せだけでその後は解散していましたが、当日の夜は近所の中華料理屋さんに集まって決起集会(実質はただの懇親会ですが)を行いました。

下階も工事が始まり、解体がスタートしています。既存の家具や建具が解体され、

あれよあれよという間にここまで解体されています。左側のビニールで養生されている範囲は、既存のキッチンを再利用するので、フローリングの取り外しは通常の解体よりも丁寧な大工解体を行うこととなっています。

工事が着工してからは、2週間に1回の現場定例打合せを現地で行っています。大工棟梁のKさんや造作家具のAさんからの質疑攻め(笑)です。

現場の解体が全ての部屋に及んでしまうと、現場打合せをする場所が取れなくなるので、後藤さんたちにお願いして千駄ヶ谷のハク・アーキテクツスタジオの新しい事務所の打ち合わせ室を使わせてもらうこともあります。

こちらは前回お願いしていた建具屋家具のサンプル仕上げ材です。同じ塗装色でも仕上げツヤを変えたりしているので、整理も大変なのです…。

これは別日に、各務だけでハクさんの事務所に来て、仕上材を決めてゆくプロセスです。ハクは後藤さんが主に打ち合わせに同席して、僕の補助をしながら打ち合わせメモを作って現場側の問題を解決してくれ、関さんが事務所で収まりの細かい図面を書いてくれる体制で、僕のことをサポートして貰っています。