Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

壁の厚みと建具枠の形について 

文京区S邸

解体工事がほぼ終わり、これから墨出しとLGS工事に移ろうとしています。文京区S邸の工事をお願いしている施工会社のでは、これまでの幾度もの弊社との関係の中で、解体後すぐにLGS工事に移行せず、墨出し時に詳細な施工図を作ってくれる流れとなっています。その中で現場監督の織田さんから幾つかの質問が届きました。

既存の躯体を現場採寸して起こした図面に、こちらが作った平面図をもとに壁の位置を書き込んでくれた図面です。建築で作る壁は、施工側は壁芯(壁の中央線)で現場のLGS屋さんや大工さんに指示をして作っていきますが、(マンションリノベーションでは)設計側は壁面(仕上がった壁の表面)の位置で設計をしてゆくので、その整合性を現場監督の織田さんが調整してくれている訳です。
施工図を見ると、建具(扉)と建具枠の部分が白く抜かれていますが、この枠の考え方が早く決まらないと施工図が出来上がらないので、枠の指示と幾つかの細かい質疑が現場側から上がってきました。

新築の建物の場合、相当に厳密に躯体壁が作られるので、壁の芯の位置もかなり図面通りに施工されていきますが、築年数が15年を超えるマンションの場合、躯体の歪みがあるので、どこでその歪みを解消してゆくかもこの墨出し時に解決しておく必要があるのです。歪みを解消する考え方については、設計側の考えと同じだったので、まずは墨(スミ)についてはOKを出して、LGS工事を進めてもらいます。

早速にLGSの壁下地が立ち始めている現場の様子です。

メールのやり取りでもある程度問題は解決できるのですが、こちらの現場では毎週曜日を決めて定例打合せを行うこととしているので、現場監督の織田さん、青の片岡社長、造作家具&建具工事をお願いしている現代製作所の吉岡さん、弊社設計担当の竹田さんと各務で、現場で打ち合わせをしてきました。

当初設計側から現場に渡している建具表がこちらです。

建具枠についての基本的なデザインを竹田さんが現場でスケッチで渡していたものがこちらです。

それに対して、現場側が提示してきたのが、こちらの枠製作図です。僕らのスケッチの方がオーソドックスな作り方で、作りやすく安価なのではと思っていましたが、青と現代製作所からの話では、「後者の提案した枠形状だと、LGS→ケーシング一体の枠取付→ボード貼の流れとなり、材料代はアップしますが現場取付費はダウンします。弊社が提案した枠形状だと、LGS→枠取付→ボード貼→ケーシング取付の流れとなり、材料代は確かに下がるのですが、2度手間になるので現場取付費はアップします。」とのことでした。もともとお客さまもしっかりとした枠と建具で、ペコペコしたものは嫌だと仰っていたので、こちらの方針で進めることが決まりました。

標準的な枠の作り方は決まりましたが、変則的な枠も多数あるので、それらを現場打合せで相談しながら順番に決めてゆきます。

このスケッチの下は標準枠ですが、上は玄関からSIC(シューズインクローゼット)への扉枠で、大きなケーシングを内側につける必要がないので、薄枠にできるように工夫したものです。

このような細かいやり取りを経て、全18枚の木製建具と枠図が上がってきました。実際にはこれに加えて、1枚のスチール扉、1枚の防火扉、そして2枚の浴室&シャワールームのガラス扉がありますが、それら全ての枠の作りが決まってから、最初の施工図が上がってくる算段となるのです。

現代製作所の吉岡さんには造作家具もお願いしているので、ついでと言ってはナンですが、難しそうな部分の家具の打ち合わせもさせて貰いました。

特にリビングのテレビ背面に来るメンテナンス用の隠し扉の部分は、まだテレビ壁のデザインも決まっていませんが、どのような丁番を使ったどんな隠し扉のデザインにするかを相談させて貰いました。

こちらは現場の石膏ボード壁に相談しながら描いた隠し扉のスケッチ図です。

その他、パントリーや、希少本を収納する本棚などのディテールの相談もさせて貰いました。マンションリノベーションでは、大きな間取り案を考えるところも好きですが、こういった細かいディテールを詰めてゆくところも大好きです!

そうこうしている間も工事現場はどんどん進んでゆくので、スケジュールに遅れが出ないように僕ら設計も必死に追いかけてゆきます。因みにいつも現場がこのようにビハインドで進むわけではなく、おおよその現場はデザインも設計図も先に出来上がっているのですが、今回はお客さま側の都合で、現場に入る直前に大きなデザイン的な方針変更があったため、このような追っかけっこになっているのです…。

スケルトン状態でお客さまと確認する内容は?

元麻布J邸

解体が終わった元麻布J邸にお客さまご夫妻と、スケルトン状態のお部屋をご一緒に確認させていただきました。

今お住まいのご自宅のリフォームも経験なさったことがあるJさまご夫妻は、スケルトン(マンションの場合コンクリート躯体だけになるまで解体された状態)になったお部屋にも驚きはなかったようで、床に記された壁位置を示す黄色いテープを見ながら出来上がる空間を想像してくださっています。
因みにヴィンテージマンションをスケルトンリフォームすることのメリットは、①大きく間取りを変更することができること、②壁裏、床下、天井裏に隠れていた配管&配線類を全て刷新することができること、③やはり隠れていた断熱材の状況を確認して、必要に応じて補強することができること、となります。

解体前のお部屋では目立っていたPSの出っ張りや梁型がどうなるのかを気になさっていたので、弊社担当の松藤さんがPSを最小限にして造作家具と一体化させるデザインなどを説明してくれています。

現地でのお打合せでお客さまに伝えたい項目に番号を振って整理してくれた図面と…、

打ち合わせ内容のメモを見ながら、一つずつ納まりや仕様を確認していきます。

今回の元麻布J邸は、弊社のお手伝いはデザイン・設計までのデザインアドバイス契約で、工事現場が始まってからはリフォームキューの設計施工で行うスタイルの仕事の進め方ではありますが、まだ弊社では新人スタッフの松藤さんの勉強と修行のために、ここまでお手伝いをしております。お客さまへのご説明は、リフォームキューの大久保さんと坂本さんがしてくれていますね。

仕上げ材については、工事着工時の打ち合わせで一旦全て決まっておりましたが、床敷き込みのカーペットの色がグリーンでよいのか、もう一度現場で確認させて欲しいとのお客さまからのご要望があったので、改めて仕上げ材一式を現場に持ってきました。

カーペットの他の色候補として、無難なベージュやライトグレーも持ってきて、他の素材との色のマッチングを確認しましたが、最終的には当初からのグリーンで進めることとなりました。

既存の玄関扉と枠には、シートを上張りすることになっていたので、その色味を最後に確認させていただきました。

モルテーニvsポリフォーム

新宿区T邸

工事契約の最終契約条件を取りまとめ最中、新宿区の180平米超えマンションリノベーションのT邸のリビングダイニングの家具を決めて頂くタイミングとなりました。

こちらは8か月ほど前に、Tさまご夫妻とイタリアハイブランド家具屋巡りをした時の写真です。この時にアクタス新宿店の2階に展示があるポリフォームのデザインをとても気に入ってくださいました。まだその時点ではリビングダイニングのプランが流動的だったのですが、ほぼ間取りが決まっていたウォークインクローゼットのシステム家具一式は、国産の収納システムと比較検討したうえで、ポリフォームでお願いすることが決まりました。
家具決定で一番鍵となっているのは、ソファではなく実はダイニングテーブルのことでした。Tさまのご主人さまは大理石の華やかなテーブルがご希望で、奥さまはもう少し地味で傷や汚れが目立たない木質か大理石だとしても穏やかな柄のものがよいとのご意向でした。お二人とも、大きなリビングダイニングになること、息子さんのご結婚のこともあるので、今後家族メンバーが増えることを考えると、なるべく大きなテーブルが欲しいとの話となっておりました。

これまでイタリアのハイブランド家具のショールームをほぼ見て回ってきた中では、ポリフォームのコンコルドがサイズや大理石の品の良い柄、そして価格を比べると一番良いだろうとのことで、ポリフォームを販売しているアクタスの担当者三上さんに、Tさまのマンションに来てもらい、搬入用のエレベーターや階段、廊下や室内に入ってからの動線を見てもらうことになりました。これは大型マンションリノベーションでの基本なのですが、特に大型家具を購入する前に、実際にそのサイズの家具を室内まで問題なく搬入できるかどうかを確認しておくのです。
アクタスがお願いしている搬入会社の担当者と現地調査に来てもらった結果、大理石天板の場合長さ2.4mのテーブルは無理で、木製であれば梱包材の関係で入るとのことが分かりました。因みに、共に階段での搬入です。同じコンコルドで2.4mの次のサイズは、2.185m(梱包サイズ2.2m)とのことでした。サイズが思っていたものが入らないとの報告だったので、ここで一旦ダイニングとソファ(ソファは分解できるものをベースに選んでいるのでエレベーター搬入が可能です)選びはストップしてしまいました…。

その後、間取りの変更などもあって、家具選び手がついておりませんでしたが、リノベーション工事の見積りも纏まりつつある段階で、改めて家具選びを再スタートすることとなりました。以前のハイブランド家具SR巡りの際にタイミングが合わずにお見せすることできていなかった南青山のモルテーニのショールームにTさまの奥さまだけをご案内いたしました。

これまで大理石好みのご主人さまに対して、奥さまは大理石にはピンと来ないとのお話がありましたが、このかなり激しい柄(シルバーウェーブ)のダイヤモンドテーブルをご覧になって、「もしかしたら、このテーブルなら大理石も良いかもしれない…。ただ、あまりに柄が強いので主人がどう思うかはちょっと心配」とのご意見がありました。ただ、当然モルテーニついてもマンションへの搬入のことがあるので、急遽モルテーニの担当営業の渡辺さんに現地調査に来てもらうことになりました。
その結果、モルテーニ渡辺さんからは、以下の提案をもらいました。
①特注サイズの2.4mの大理石天板テーブルは搬入可能
②特注で天板を2分割にすることをイタリア側に問い合わせてOKをもらえれば、2.5mの大理石天板テーブルが可能かもしれないので、急ぎでイタリアに確認する
とのことでした。ポリフォームでは無理と言われた、2.4mの大理石天板をモルテーニでは搬入できるとの答えが出たのです!

ご主人さまがまだモルテーニをみていないことや、2つのブランドの価格差もあるので、ご夫妻でポリフォームとモルテーニのショールームを一日で見て回ることとなりました。イタリアモダンのハイブランド家具で、カガミ建築計画でも2大人気ブランドのモルテーニとポリフォームの戦いとなりました!
(イタリア本国では、ポリフォームとモルテーニはほぼ同グレードの家具ブランドとして認知されていますが、日本ではモルテーニが青山に立派な旗艦店を持っているのに対して、ポリフォームは新宿アクタスの2階のコーナー展示という見せ方の違いもあり、価格はかなりの差があるのです)

改めてのご夫妻揃ってのポリフォームSR(ショールーム)です。ポリフォームの搬入条件から木天板の最大サイズ2.4mにするか、ご主人さまの好みの大理石天板にして2.2m弱にするかをご判断お願いするために、改めて新宿アクタス2階のポリフォームSRにご夫妻と一緒に伺わせていただきました。こちらはコンコルドテーブルです。(ちなみに、ポリフォーム担当の三上さんにもモルテーニは2.4mの大理石天板は階段を使って搬入できるお話は伝えましたが、ポリフォームは自分たちの搬入会社からの判断を尊重するので、自社では無理とのことも事前確認しております)

他のテーブルももう一度ご覧になりたいとのことで、四隅に柱があるタイプのヘンリーというテーブルも見て頂きました。この写真の大理石は無理ですが、2.4mでヘリンボーン張りにした木突板の仕上げがあることを写真をお見せしたところ、それは良さそうだとのことになりました。

ソファも、昨年のショールーム訪問時には展示がなかった新作のブレラを見て頂いたところ、形のバリエーションの豊富さや、ベースの部分にレザーが使われており、横面から見たデザインもきれいなところを気に入っていただきました。
ポリフォームでの最終候補は、ダイニングテーブルが木板ヘンリー、ダイニングチェアはグレース、ソファはブレラと決まりました。

そして移動したのが南青山のモルテーニです。先回訪問時とは場所が移っていましたが、地階のシルバーウェーブのダイヤモンドテーブルを見て頂きました。奥さまはさすがに柄が強すぎかしらと不安そうにしていらっしゃいましたが、ご主人さまも一目見て「これで決めよう!」と仰いました。
ダイニングチェアも僕らが一番良く使っているアウトラインのご説明をしたところ、これもOKとのことになりました。

そちらこちらはモルテーニ側のソファ候補として考えていたオクターブです。

お二人に実際に座って頂いたところ、とてもシックリくるとのことでした。

こちらが当初ご提案していた、ポリフォームのコンコルドテーブルと、モンドリアンソファのレイアウトで、

今回のために用意したモルテーニのダイヤモンドテーブルと、ポリフォームのブレラソファをミックスしたレイアウト案、

そしてポリフォームのヘンリーテーブルと、サイズ的にはダイニングテーブルが入らかった場合のことを考えて用意しておいたモルテーニのフィリグリーテーブル(エクステンションタイプ)を組み合わせたレイアウト案です。
まだ、モルテーニ側からのダイニングテーブルの特注の答えが出ていないこと、これから両社の見積もりを取ることになり、それが揃ってからの最終決定となりそうですが、ダイニングテーブルとチェア、そしてソファはモルテーニで決まりそうな気配となってきました…。
ただ、すでに発注済みの大型ウォークインクローゼットはポリフォームで決まっておりますので、今回のモルテーニVSポリフォームの戦いは、3:1になりそうです。

こちらはオマケですが、リビングのソファをポリフォームのブレラとした場合のソファの張地の色のバリエーション比較を前田君がCGで作ってくれて置いたものです。まだしばらく家具選びのことではTさまご夫妻に色々とご相談させて貰うことになります。