Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

高級インテリア素材に特化したキュレーションの試み

i-curation

高級イタリア建材の輸入ブランドであるアノニモ・デザインの黒澤さんと、インテリアも手掛ける設計事務所のカガミ建築計画の各務(カガミ)がコラボして、i-curation(アイ・キュレーション)というインスタサイトを立ち上げました。

高級インテリア素材のi-curation(アイ・キューレーション)

立ち上げのそもそものキッカケは、各務が4月後半にイタリア・ミラノの国際家具展示市(通称ミラノサローネ)に行ってきた際、二つのインテリア素材系のショールを見学してきたことです。

ミラノ・インテリア素材屋

一つはこちらの写真のショールームで、AREAEというインテリア素材ブランドでした。石材とタイル、突板と無垢突板などを等価なインテリア素材として扱いながら、色味やテクスチャー(素材感)、艶感などを違えながら素材をミックスユーズする提案をする建材屋さんでした。AREAEについての記事はこちらです。

もう一つはこちらのはCesare Ferrari(チェザーレ・フェラーリ)です。こちらはインテリア素材と言っても、すべてが彼らが作る特注家具の素材として揃えているものですが、レザーの編込みやセレナイト(透石膏(トウセッコウ))などの日本では見たことが無い素材をふんだんに揃えたブランドでした。Cesare Ferrariについてのブログ記事はこちらです。

これらの素材に特化したブランドを見て、日本にもこのような高級インテリア建材を集めた図書館、ショップ、ブランドがないのかを調べてみました。
「建材をさがす」テクチャー
イプロス
マテリアル・コネクション

イプロス」は、建材メーカーから広告費を貰う形でホームページに掲載し、一括で資料を取り寄せられる便利さはありますが、HPでは素材の魅力は全く伝わってきません。
テクチャー」はさすが建築家の谷尻さんが立ち上げたサイトだけあって、写真もきれいですし価格帯も良く分かり、面白い素材探しには適していますし、それらを使った事例写真も掲載されているので、素材探しには大いに役に立ちそうです。ただ、安価なものから高価なものまで、玉石混合であること、事例写真も建築家の色が付きすぎていて、素材の魅力が伝わりにくいと感じています。
マテリアル・コネクション」はマテリアル・ライブラリーを持っているだけあって、とても面白そうです。建材にかぎらず、服飾や工業製品の素材も集めているだけあって、とにかく在庫は豊富で刺激に満ちていそうです。ただ、会員にならないとそれらにアクセスができないことや、異素材を集めることで生まれるパワーのようなものは感じません…。
どのサイトもブログに掲載したイタリアの素材ブランドを見た時のようなワクワク感がありません。

高級インテリア素材のi-curation(アイ・キューレーション)

ちょうどそんなことをツラツラと考えているときに、アクタスのポリフォームナイトでイタリア建材の輸入ブランド、アノニモ・デザインの黒澤さんと話をした際に、建築家と素材ブランドが一緒にチームを組んだら、何か面白い企みができるのではとの考えてが浮かび、声掛けさせて貰いました。

黒澤さんは4年ほど前からお付き合いがあり、特にアノニモが輸入している加工レザーブランドのSTUDIOART(ストゥディオアート)と加工大理石のLithos Design(リトスデザイン)には大きな可能性を感じておりました。更に、ちょうどアクタスで話した直前に南青山の事務所で、ストゥディオアートとZimmer+Rohde(ツィマーロード)のカーテン生地の新作発表会にお邪魔してきたばかりでした。
うちの事務所は、12年ほど前から大理石を本格的に使うようになり、その後、レザーや金属などを組み合わせるインテリアを提案するようになってから、ハイエンドな家具とのバランスが取れるようになり、グレードの高いお仕事ができるようになった経験があります。高級インテリア素材の中に大理石やレザーは入れるとグレード感が桁違いに上がるので、それらの素材を以前から持っているアノニモ・デザインは良いパートナーになるだろうとの直感です。
黒澤さんの方でも、リトスの加工大理石は可能は感じているが、自分の小さな事務所だけでは販促活動をすることが難しく、中々売れていないもどかしさは感じているとのこと、是非一緒に考えてみたいとの嬉しい反応でした。
ちょうどその直後に、黒澤さんはお仕事でイタリア出張があるとのこと、上記のチェザーレ・フェラーリの工場まで見学に行って来てくれました。

イタリア出張中の黒澤さんとメールでやりとりを続けましたが、中々具体的な進め方が見つかってきません。ただ以下のことがキーワードとして挙がってきました。

  • 素材選定では、キュレーション(オリジナルな視点で収集、選別、編集)することでで新しい価値を生みたい。
  • 主催者側(つまりアノニモ・デザイン)が扱っている石材やレザーやファブリック素材とバッティングする素材でも、良いものだと思ったら取り入れてゆく。
  • 木質、石材、セラミック、レザー、金属、ガラスなどに加えて、紙や左官といった和のマテリアルも取り入れていきたい。
  • まずは勝手にこちらで良いと思う素材をリストアップしていき、素材ブランド側には了承を得ずに紹介していくが、後々は賛同者を集めてゆきたい。
  • ゆくゆくはゲストキュレーターやショールーム訪問なども交えても良さそうだが、船頭は各務と黒澤の二人でしばらくは頑張る。
  • この企みではマネタイズ(収益化)は考えない。
  • 日本の住宅インテリアの底上げに益するサイトとして育てたい。

以上のような縛りで、まず一度あまり深く考えず、お気に入りのインテリア素材を持ち寄って集まろうとの話になり、各務がこれはという素材を持ってアノニモ・デザインに伺ってきました。

高級インテリア素材のi-curation(アイ・キューレーション)

バラバラの素材の中からスクープ加工されたカラカッタ・ヴィオラ(白地に紫の模様が入った大理石)を試しに選んで、それに合いそうな素材を色味やテクスチャー、艶感などから二人でアーダコーダとお喋りしながら選んでいった所、この写真のようなイメージボードが出来上がりました。
色味としては紫と白と薄いグリーンを基調として、そこに金属質の光沢とザラッとしたカットレザー、フカフカのカーペットに荒いフローリングを合わせた、男性的な書斎、或いは寝室のインテリアが浮かんできました。

高級インテリア素材のi-curation(アイ・キューレーション)

二人の前に並べているのは、裂き織りしたstudioartのレザーパネルと赤いイタリア大理石Lithos Designをヒントに金属や木材などを二人で合わせたイメージです。手法としては、天然素材である石材や木材、或いは手工素材の中から色を何種類か抜き取って、その色の近似色と反対色を選び出し、ツヤとテクスチャーを変えながらマッチングが良いものを選び取ってゆく作業を、幾度も推敲を重ねることで深みが出てくるようです。
まだ、二人で細々と月に1回の打ち合わせをして、そこで即興的に作ったイメージボードをインスタで公開しているだけですが、ここからはゲストキュレーターを知り合いの建築家やインテリアデザイナーにお願いしたり、面白い建築素材を扱っているブランドに突撃訪問して趣旨を説明しつつ、協働でユニークなイメージボードを作っていきたいと勝手に妄想しております。我こそはと思われるデザイナー、或いは建材を扱っている会社からのインスタへのコンタクトもお待ちしております!

フリースタンディングバスのあるスタイリッシュな浴室/洗面

ザ・ライブラリー

ザ・ライブラリープロジェクトのメゾネットリノベーション中央区S邸のフリースタンディング浴槽のあるスタイリッシュな浴室&洗面をご紹介いたします。

奥に白いフリースタンディング型浴槽が見えて、その手前にまた、四周を歩き回れるアイランド型の洗面カウンターが立っています。左側に黒っぽいガラスが見えますが、その奥がシャワーコーナーで、手前に茶色い便器が少し見えています。

窓側から見ると、アイランド洗面と浴槽とシャワーの関係が判りますね。浴槽とシャワーの部分だけ床が一段落ちていて、防水を担保しています(今回は特別メゾネット住戸で水漏れがあったとしても下階のご自宅のダイニングに水が漏るだけなので、特別に在来工法防水を採用致しましたが、通常はお断りする特殊な納まりです)。

フリースタンディングバスのあるスタイリッシュな洗面浴室

出来上がってみると、簡単に据え付けられているように見える白くて滑らかな浴槽ですが、実は単体での重量が養生を含めると170キログラム(!)もある超大物なのです。キャスター付きのワゴンと搬入用エレベーターとメゾネット上階の玄関から無事現場に搬入できましたが、ここまで持ってくるのも中々の難工事なのです。さらに浴槽の設置のためには、浴槽裏面の排水ホースを建物側の排水トラップに接続しながら浴槽を据え付けるという作業が必要になるのです。
養生を外しても100キログラム超あるので、浴槽を毛布で包んで傷つかないようにしてから、天井にアンカーで吊ったチェーンブロックを使いつつ、排水管接続しながら6人掛かりで据え付けて貰いました。少しでも場所が間違ったり、浴槽が揺れて壁タイルが割れたりしたら大事なので、現場監督の栗原さんの指揮のもとの大緊張の作業だったそうです…。
以下詳しくは、ザ・ライブラリーブログをご覧ください。

オーダーキッチンの依頼先の選び方

新宿区T邸

新宿区T邸のキッチンをどこに依頼するのか、最適なキッチンメーカーを見つけるためにTさまの奥さまとショールーム巡りを致しました。

キッチンショールーム探訪_ジーマティック&リネアタラーラ

通常、僕らがお手伝いするマンションリノベーションでは、オーダーキッチンの依頼先を大きく3つに分類して考えています。
1つ目は高級輸入キッチンです。ドイツ御三家のポーゲンポールジーマティックブルトハウプ、またはイタリアのキッチンブランドのアルクリネアダダボッフィユーロモービルミノッティクチーネ等のグループです。勿論、それぞれに特徴があって、それらを一派ひとからげにするのは少々乱暴ですが、それでも確立したブランドイメージと高品質、しかし船での輸入に時間が掛かること、解体してから発注では納期が難しい等のメリット・デメリットがあります。
2つ目は、国産の高級オーダーキッチンです。代官山のアムスタイルと、世田谷用賀のリネアタラーラ、そして大学の同級生が主宰している世田谷八雲のリブコンテツです。他にも国産の高級ブランドはありますが、正直ほとんどお付き合いがありません…。
3つ目のグループは、国産のセミオーダーキッチンです。代官山のクチーナと世田谷上野毛のキッチンハウスの2社です。オーダーキッチンとセミオーダーキッチンの違いは微妙な所で、クチーナやキッチンハウスでもフルオーダーのキッチンは可能ですが、セミオーダーだとコストメリットがあるのですが、フルオーダーにしてしまうと、クオリティーに対して価格が高くなってしまう難点があると考えています。
カガミ建築計画では、それぞれのグループの中から、各プロジェクトの特性と場所製、お客さまと担当者のマッチングなどを考えて、1社ずつ選んで、その選択の理由もお伝えしたうえで、3社を見て回る中で依頼先を探すようにしております。

キッチンショールーム探訪_ジーマティック&リネアタラーラ

輸入キッチングループから今回選定したのは、ジーマティックです。イタリアの家具ブランドにも詳しいTさまご夫妻はカッシーナグループに属しているジーマティックにご興味を持っていらっしゃったこと、他の現在進行形のプロジェクトでジーマにお願いしていることも併せて選ばせて頂きました。

キッチンショールーム探訪_ジーマティック&リネアタラーラ

最新のリープヘル(ドイツ)等のビルトイン冷凍庫や、

キッチンショールーム探訪_ジーマティック&リネアタラーラ

ハンスグローエ(ドイツ)のこの滝状のスプレー水栓等の最新設備が展示されていることも魅力なのです。

キッチンショールーム探訪_ジーマティック&リネアタラーラ

Tさまは軽井沢の別荘のキッチンを5年ほど前に作った際に一通りキッチン打合せをしていらっしゃるので、勘所も良く分かっていらっしゃるので、すぐに輸入キッチンのメリットとデメリットを理解してくださいました。

キッチンショールーム探訪_ジーマティック&リネアタラーラ

一通り見て、説明を聞いた上で、参考見積を作って貰うこともできるというお話を致しましたが、「まだ結構です」とのお話しになりました。後で伺ったところ、箱の頑丈さやシステマティックな部分には魅力を感じるが、ピンとくるものが無かったとのことでした…。

キッチンショールーム探訪_ジーマティック&リネアタラーラ

同じ日に伺った、国産オーダーキッチンブランドのショールームは用賀のリネアタラーラです。アムスタイルも、とても好きなキッチンなのですが、スタイリッシュすぎる所がTさまとは合わないだろう、またリブコンテツは大学の同級生の田原さんの会社で、こちらも好きなのですが、細かい収納や子育てしながらのキッチンの工夫等には大きな特徴がありますが、Tさまのお子さまはもう大きく、もう少しデザインに拘りたいとのことでしたので、リネアさんを選ばせて頂きました。

キッチンショールーム探訪_ジーマティック&リネアタラーラ

こちらのビルトインのモーニングカウンターセット(グラスやカップ類を収納しつつ、エスプレッソマシーンや湯沸かしポットやトースターで朝食の用意ができるカウンター)はとても気に入って下さっていました。

キッチンショールーム探訪_ジーマティック&リネアタラーラ

ジーマティックほどではありませんが、食洗器やオーブン類(ミーレガゲナウAEG等)は最新のものを揃えており、それらを実際に使い比べて調理することもできるのがリネアタラーラの特徴です。うちの事務所の担当を良くして貰っている牧野さんは、男性ではありますがご自宅でも調理と片付けを良くしているので、色々な細かい質問に対しても柔らかい口調ではありますが、的確にアドバイスをしてくれます。

キッチンショールーム探訪_ジーマティック&リネアタラーラ

打合せテーブルに座って、僕らが考えているリノベーションのラフプランとキッチン計画を見て頂きながら打ち合わせを致しました。

因みに、こちらがカガミ建築計画で事前に用意していたキッチンのプランで…、

こちらがそのキッチンの各展開図です。事前にこれらの図面は各キッチンショールームの担当者にメールで送っておいて、これらをベースにお話しをさせて頂きました。Tさまはこの図面のキッチンとリネアタラーラのショールームのイメージが合いそうなので、今回はジーマティックではなく、リネアタラーラで進めたいとのお話しになりました。
あれっ?そういえば、国産のセミオーダーキッチンのショールームはと思われた方もいらっしゃると思いますが、実は軽井沢の別荘のキッチンがクチーナだったとのことで、Tさまから今回はセミオーダーキッチンは候補に入れなくて良いとのことを伺っておりました。