城南R邸A住戸の現場では、いよいよアルクリネアのキッチンの組み立てが始まりました。
今回の現場で印象的だったのは、非常に高い精度で組み上げられていくキッチンと、あえて不均一な表情をつくる石壁が同時に存在していることでした。

今回採用しているアルクリネアのキッチンについては、以前のブログでもご紹介した通り、お客さまがショールームで実物をご覧になり、その質感と存在感に強く惹かれてお選びになったものです。

現場に届いた状態を見ると、完成されたキッチンというよりは、複数のパーツに分かれたユニットの集合体という印象を受けます。一つひとつのキャビネットはすでに工場でかなりの精度まで作り込まれており、現場ではそれらを組み合わせて完成させていくというプロセスになります。
日本のオーダーキッチンも似たようなプロセスではありますが、現場に届いた箱は上部がMDF部材(箱と同材)で繋げられているのが多いのに対して、アルクリネアの箱は上部はアルミのフレームだけで連結しており、よりシステマチックに見えるという違いがありますね。

アルクリネアを寄せ付けて張るためのこの柱型部分は、リフォームキュー側の工事で既に造作家具が埋め込まれ、ビアンコカラーラの大理石が先行して張られています。

まず行われるのは、各ユニットのレベル調整です。それぞれの箱の下部には、写真の丸い黒い台座のようなものをコントロール棒で調整しながら細かくレベルを出していくのです。
床のわずかな不陸を吸収しながら、ミリ単位で高さを揃えていく作業は、見た目には地味ですが、この後のすべての精度を左右する非常に重要な工程です。

こちらが組みあがってきた箱の下部を覗き込んだ写真です。部分的に箱が飛び出しているようなデザインにしていますが、それがどうなっているかを聞いたところ…、

箱の下部に補強材が入っていて、この斜め台形のような補強材で箱が浮いているように見せているそうです。

複数のキャビネットが一直線に並んだときに、わずかなズレも感じさせない状態をつくることで、はじめてアルクリネアらしい緊張感のある佇まいが生まれてくるようです。

日本の造作家具の場合、現場で細かく作り込んでいくことが多いのですが、アルクリネアの場合は工場で完成度を高めた部材を現場で正確に組み上げるという考え方に近いように感じました。

こちらはL字型キッチンの奥側ですが、既に下台とトールキャビネットが組みあがり、吊戸棚の箱まで設置された状態です。

トール収納の一部にビルトインのスチームオーブン(ミーレ)を組み入れますが、その下部はやはりミーレのディッシュウォーマーが収まっています。

こちらが先ほどの対面側ペニンシュラキッチンに載るステンレスカウンターの背面です。

シンクの裏面は日本では防露、防滴の為に発泡ポリエチレンシートを張るのが一般的ですが、アルクリネアと協同するステンレスカウンターメーカーのフォスターのシンク裏は、より密着度の高い発泡シート材が張られていました。

今回のキッチンで特に印象的だったのが、ステンレスのカウンタートップです。写真が表側の部分の養生シートを一部剥がしてみた様子です。ぱっと見た目は、厚みのあるステンレスの塊を削り出して作られているように見えます。

エッジのシャープさや、面の連続性が非常に美しく、まるで無垢材のような存在感を持っています。

しかし実際には、この天板は無垢の削り出しではなく、精度の高い折り曲げ加工によって構成されているのです。裏面を見て、初めてその様子がわかりました。
そもそも無垢材の削り出して作った、現場の人力では持ち上げられない重量になってしまうので、それはあり得ないとは思っていましたが…。
よく詳細を見ると、溶接工の苦労やそれを磨く職人の手業も感じるような仕上げになっています。完全に均一ではないことで、却ってそのことで素材の存在感が強められているようにも感じられます。

扉材や棚板は日本のものよりかなり薄く作られているようです。扉は金属で補強することで薄くできるように考えられているそうです。

ここまでアルクリネアのキッチンのような高い精度で構成されたプロダクトを見てきましたが、今回の空間ではもう一つ対照的な要素があります。それがこの壁に立てかけられているブルガストーンの壁です。

厳密にはアルクリネアの製品ではありませんが、原宿のアルクリネアショールームでもこの石が一緒に使われています。ほぼ真上から光を当てると、わざと石が出っ張ったり凹んだりしながら張られているのが分るでしょうか…。これもチッテリオさんのデザインなのです。
アルクリネアのキッチンがミリ単位の精度で揃えられていくのに対して、このブルガストーンの壁は、あえて不均一な表情をつくるように設計されています。
揃えることで生まれる美しさと、揃えないことで生まれる美しさ。その両方が同じ空間の中に存在していることが、今回のキッチン空間の面白さだと感じました。

こちらの図面がブルガストーンを扱っているアドヴァン(アルクリネアの代理店でもあります)が作ってくれた図面です。フラットと書いてある部分は壁とフラットに貼りますが、赤字で+1と-1と書かれている部分は、わざと斜めに張るという面倒な指示となっているのです。

かなり硬い石ですが、現場でカットしつつ、粉塵が飛び散らないように掃除機で吸い取りながらの作業です。

壁に対して斜めになっていても、床に対しては全てフラットなので、石材の小口にレベルを載せながらの厳密な作業です。

二液型の接着剤を使って、手の微妙な感覚を使いながら不陸を出して行くのです。

そして張りあがった様子がこちらです。小口部分に注入した瞬間接着剤が乾ききっていないので、目地分が少し湿っているように見えています。
因みに石壁の奥に見えているのがウォークイン・パントリーで…、

内部はこのようにほぼ仕上がっています。こちらはアルクリネアではなく、リフォームキュー側の造作家具工事となります。

こちらが背面の壁も張りあがり、手前のアルクリネアのペニンシュラも組みあがった状態の城南R邸のキッチンです。まだ、完成していない部分も残っていますが、概ねのボリュームが見えてきました。
まだ養生で完全に見えていませんが、今回の城南R邸A住戸は、アルクリネアのキッチンが持つ精度と構造の美しさ、そしてブルガストーンの壁が持つ揺らぎと素材の表情。この対照的な要素が同時に存在することで、空間に奥行きが生まれているように感じました。




































