Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

最後の仕上げ:リノベ空間にアートを設えるプロセス

文京区S邸

大型リノベーション工事のお引き渡しが終わり、無事ご家族でお引っ越しをなさった文京区S邸のSさまから壁に多数のアートを掛けたいので、最後の仕上げのプロセスに協力して欲しいとのご相談を頂きました。

以前にお住まいだったお宅でも数多くのアートを壁に飾っていらしたので、今回もアートの為にピクチャーライトを用意したり、標準仕様として壁には直接釘を打てるようにベニヤ下地を仕込んでおきました。まずはリノベーション工事の施工をお願いした青の現場監督の織田さんと大工の矢野さんの2人で、一日で終わる数なのかを確認したかったので、まずはSさまにおおよそどの壁にどの程度のアートを掛けたいかのイメージが判るように、壁手前にアートを立てかけた写真を送ってもらいました。

久しぶりに伺ったSさまのお宅は、新しい家具や調度品、お子さま達の遊び道具も入って、生活の場へと大きく変貌していました。

作業としては大型のアートの仮設置から始めます。まずは一旦、全てのアートをこのように持ち上げて貰って、高さと横位置を決めて、養生テープで設置する位置を確定していきます。絵の重心やフレームのバランスを見ながらも、最終的には人の目線での見え方が最も重要となります。

大型のアートは比較的簡単にレイアウト位置が決まりますが…、

却って小さなアートを何枚か一緒に飾る際の位置決めの方が難しく、複数人数で絵を壁に当ててみながら適正な位置を見つける作業となります。照明との関係や壁材との色調バランスを考慮しつつ、数㎜単位での微調整の繰り返しとなります。これだけ綿密な作業をしようとすると、お客さまご夫妻だけでは難しいと思います。

このようにしてアートの位置が決まってからは、織田さんと矢野さんのコンビで、かなりスピーディーに絵を掛ける作業を進めてくれます。

アート背面の紐の長さとアートを掛ける高さを調整し、壁中心を狙って、アート用のフックを打っていきます。

アートをレイアウトするたびに、アートフレームの上に水平レベル器を当てて、水平であることを確認しながらの作業となります。

ファミリールームのアートは嵐の海と空のアートですが、ちょっと「15少年漂流記」のような雰囲気ですね。

リビングには壁が少ないく、一番大きなこちらの壁には、同じ作家の雲と太陽の柔らかいアートです。

廊下の突き当りには印象派のような風景画です。

リビングダイニングのパントリー入り口の横にはアメリカどこかの街の古い地図をフレームしたものが飾られました。良く地図を見ていると、ポトマックリバーとの記載があったので、ワシントンの地図のようです。

土間廊下の壁にも家族の写真やアンティークの地図が飾られています。

リノベーション設計の自由度を決める「設備調査」とは?

松濤D邸

マンションリノベーションの設計は「壊してから」ではなく、「調べてから」始まります。壁の裏、床下、天井の奥には、リノベーションの自由度を左右する複雑な設備が隠れています。今回のマンションリノベーションでは、設計を本格的に進める前に、既存設備の現況を現地で詳しく確認しました。
見えてきたのは、給排水管やガス、電気・空調設備の問題点と可能性。この調査によって、どこまで変更できるのか、どこに制約があるのかが明確になり、設計の方向性が大きく絞り込まれました。

実はこちらのた松濤D邸の先回のリフォームでは、リノベーション済みマンションをご購入されたという経緯もあって、設備に関わるキッチンや浴室は何も触っていませんでした。今回はそのキッチンと浴室をやり替えたいとのご依頼だったので、フォーム工事をお願いしたリフォームキューの森井さんと設備の槻川原さん、そして今回新たにオーダーユニットバスを発注予定の東京バススタイルの眞柄さんと和久田さんにも同席して貰って、設備関連の調査をさせて頂きました。

設備調査に先立って、担当で当社副所長の前田君が関係者皆に既存図やリフォーム図面を見せて、どこをどう調査してもらいたいかと説明している様子です。

リフォームキュー側は分電盤からチェックを始め、

キッチンの引き出しを開けさせてもらって、排水経路を推察してくれています。図面と現地調査で、新しいキッチン案のようにシンクと水栓を対面側に移動しても、排水経路は確保できそうだとのことが判りました。

東京バス側は脚立も持参での調査です。

まずは既存の浴室の内寸を実測した後は、

天井の点検口に頭を突っ込んで、巻き尺とレザー測量機を使って、リフォームした場合、どのサイズの浴室を入れることができるのかを調査していきます。

因みに点検口の中でみえる景色はこんなもので、ダクトと配線や配管が縦横無尽に走っていて、見ているだけでは何が何だか分からないのですが、図面を見比べながらじっくり考えてゆくと、どこをどうすれば整理できるか、何が問題になりそうかが見えてくるのです。

最終的にこの日東京バスの眞柄さんが纏めてくれた資料がこちらです。パッと見ると、何が描かれているかが分かりませんが、説明してもらうと、既存のユニットバスを、新たにオーダーユニットバスに変更すれば、長手方向であと15センチ程度サイズアップをすることができることが判ったそうです。既製品のユニットバスでは細かい寸法を浴室に取り込むことが不可能ですが、サイズを自由に変更できるオーダーユニットバスにするメリットがより大きくなることが判りました。

調査をして貰っている最中は、前田君と各務です。新しく考えたキッチンや浴室のリフォーム案をDさまご夫妻にご説明させて頂きました。このスケッチ図の一番上、主寝室の奥のウォークインクローゼットは、先回のお打ち合わせ時にこちらからご提案したオプションの内容となります。

キッチンについては、まだ奥さまのご要望はほとんど伺っていない段階でしたが、まずはどのようなことができそうかを、こちら設計側で簡単に纏めてみた資料です。4面の展開図のうち、右下の展開図にアーチが見えていますが…、

先回のお打ち合わせ時の最後に、アーチをどこかに取り入れることができないかとのご相談があったことから、ダイニングとキッチンの開口部をダブルのアーチにする案を前田君に考えて貰ったのがこちらのダイニング側からの展開図となります。

ウォークインクローゼットだけの説明図も作りました。かなり大きなクローゼットが作れそうですが、お打合せの中で、廊下から寝室への扉の位置を90度移動すれば、もっと大きなクローゼットが作れそうだとのことも判り、次回改めてその案も纏めてみることとなりました。
因みに、クローゼットエリアになる部分の湿気が気になるとのこと、何とか湿気を除去する方法も検討してくれないかとのご依頼も頂いていたのですが、新しくエアコンを入れることは冷媒管とドレイン管のルート的に難しく、連続運転できる除湿器を入れることについても排水を確保するルートが取れないことから、この点については市販の除湿器を使って頂くことになることもご説明させて頂きました。

こちらは、東京バススタイルの調査を受けて、後日Dさまにお送りした浴室サイズと浴槽の関係を纏めたシートです。ウォークインクローゼットについては、見積もり次第とのことでしたが、キッチンと浴室については超概算をお伝えしたところ、そのくらいの費用であれば問題ないので、進めて欲しいとのご依頼を頂きました。

上階から壊す、メゾネットリノベーションの挑戦

渋谷区L邸

先日のブログ記事のタイミングで、大きくリノベーション工事をする範囲が変わってしまった、メゾネット大型マンションリノベーションの渋谷区L邸。メゾネットマンションでのリノベーションといえば、通常は室内全体を一度に解体してから、設計通りに再構築していくのが一般的です。しかし今回のプロジェクトでは、メゾネットタイプの上階だけを先に解体するという、少し変則的なスタートを切ることとなりました。
下階のデザインの取り纏めやお見積りを待っていると、いつまでも工事が前進しないこと。また、解体をしてみないと壁裏や床下の設備位置が分からないで手探りのままの設計を進めることになってしまうこと、また、これまでは上階が生活の場でしたが下階にも来客用寝室や浴室もあるので下階に生活の場を移すことができるので、まずは工事内容が決まった上階部分を先行して解体することとなりました。
因みにこのような変則的なスタートを切ることができるのは、メゾネットの上下階共に玄関があり、ともに共用エレベーターが止まり、階段もあるからこそできることで、戸建て住宅ではできない判断だと思っています。

約10日ほどの工期で、下階にお客さまが住みながらの状態での工事でしたが、ここまできれいに解体することができました。床下の給水や給湯管、天井裏のエアコンについては、基本再利用としていますが、解体して傷みが無いかを確認して移設する予定となっています。

柱型や梁の位置は図面通りでしたが、右側に見ている下階への室内階段の防火区画や、左側に見えている窓際の壁や下台は、予想と少々違った作りでしたので、もう少し厳密に調査をして対処方法を考えないといけないことになりそうです。

壁際の上下階を繋ぐPS部分の解体状況を、(設計)施工をお願いしている三井デザインテックの蛭川さんと風間さんと一緒に確認させて貰いました。

事前解体で配管の位置は判っていましたが、竪管への横菅の接続高さなどをキチンと実測できるようになり、ここまで設計を進めてきた上階の設計プランを問題なく進めることができることが判り、一同ホッとしています。

天井裏に隠されていたエアコンは、これまでも普通に使うことができていましたし、解体後も目視でも傷等は無いことが判ったので、このまま場所は移動させますが再利用する方針も決まりました。

こちらのお宅は上下階合わせて400平米以上もある巨大なマンションとなっていますが、上下階それぞれに給湯器が4台、合計8台もあるモンスター住宅となっております。給湯器置き場から室内に入ってくる管の数もかなりの量となります。

緑色の管は、床暖房やお風呂の追い炊きなどに使われるペアチューブという管が内部に仕込まれています。これらを無理に曲げると内部の管がつぶれてしまいますが、これらの管の為にかなり余分に作られていたPS(パイプスペース)は、専有部であり縮めることができれば、その分室内が広くなりますので(共用部のPSではこのようなことはできません)、実測をすることで、約15センチほど室内空間を広くすることができそうなことが判りました。

管が通る貫通部を覗き込んでみたところ、本来であれば区画貫通処理をしていなければならない箇所にグラスウールが詰め込まれているだけだったので、施工をお願いしている三井デザインテックに、適切に穴を塞ぐようにお願いをしておきました。

中央のボックス状になっているものが上下階を繋ぐ室内階段です。下に住まいながらの解体でしたので、降り口をベニヤ板で完全にふさいで、音や埃が下階に流れないように注意をしています。

乾式防火区画として作られている、その室内階段の石膏ボードの壁に穴が開けられて配線を取り出していました。これが当初のから工事なのか、お客さまがご購入前に他社がリノベーションした際に空けられたものかは分かりませんが、このまま放置するわけにはいかないので、配線を取り外して、同じ厚さの石膏ボードで補修することになります。

こちらはかつて浴室があったエリアです。(躯体に密着した)在来工法ではなく、(躯体との間に空気層が設けられる)オーダーユニットバスだったのに、なぜか寒かったとのお客さまからのお話があったので、皆で何が原因だったのかをカガミ建築計画の下に入って貰っているハク・アーキテクツスタジオの後藤さんと関さんにも立ち会ってもらって調査しました。

ガラスブロックでできた窓の上部のステンレス板に、以前の工事関係者のメモが残っていました。「↑これ吹込まないでモルタル入れる」と書いてある箇所を良く見たところ、室外と室内がツーツーになっており、外気が元のユニットバスの周囲に流れ込んできていたことが判りました!
工事の際にしっかりと無収縮モルタルを詰めた上から断熱材を吹き付けて貰うようにお願いしておきました。

床下の給湯管(赤い管)は即出湯システム(配管内でお湯を循環させ、いつでもすぐにお湯を出せるシステム)が組まれており、ループ状に配管されていましたが、なぜか太い管で始まっているのに、途中で管の径が遅くなっており、これでは即出湯システムのパワーがフルに活かせないので、配管は一部やり直してもらうことになりました。

他にも、工事の何らかの都合で、断熱材が欠損している箇所も幾つか見つかりました。

現場側の問題点を事前に纏めることができたので、その翌週にお客さまのLさまご夫妻に現場に来て頂き、状況をご説明させて頂きました。

既存そのままで再利用できるか所と、やり直しが必要となる箇所(つまりその分費用が余計に掛かってしまう箇所)があることをご理解頂きました。

寸法的には、これから墨出しをして、細かい寸法調整をしてゆく必要がありそうですが、大物のオーダーユニットバスはそのままの寸法で入ることが判ったことなどをご説明させて頂いたところ、とても安心したとのお言葉を頂きました。
今後は、上階の再構築と並行して下階の設計・見積り・施工へと進んでいきますが、「分けて進める」というこの挑戦が、どのような新しい住まいのかたちを生み出すのか、設計者としても楽しみにしています。