Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

間取り案の更なる変遷とCG作成プロセスについて

渋谷区L邸

ここまで順調に設計が進み、お見積りも纏まり工事着工直前まで来た大型マンションリノベーションの渋谷区L邸ですが、ここで大きな「変更」が生じました…。
お子さまが生まれることになったのです!

リフォーム間取り案の変遷

これまでは、設計協力をして貰っているハクの後藤さんや設計施工会社の三井デザインテックの武智さんと蛭川さんが同席してのお打合せでしたが、次回の打ち合わせは各務さん一人でお願いしたいとのことで、もしかして、プロジェクトが中止になってしまうのかもと不安ながらに伺ったお打合せで、お子さまのことを伺ったのです。Lさまご夫妻としては、それで工事着工直前まで進んでいたい設計をもう一度やり直すことをお願いできるか不安に感じていらっしゃったとのこと、費用的には設計手間が掛かる分は追加することになってしまいますが、大喜びで設計変更にご協力しますとお伝えしました。

リフォーム間取り案の変遷

主寝室と水回り、大型クローゼットに子ども部屋と予備室(実際はご主人の書斎?)を設けるプランの素案を作って欲しいとのこと、設備等の難しい取り合いは考えずに、大急ぎに上記の2つの案を考えてみました。最初の案は一見良さそうに見えたのですが、子ども部屋も予備室も広さが4畳くらいしか取れないので、2番目の案をベースに再設計してゆくことが決まりました。

リフォーム間取り案の変遷

また、お子さまが普段用に使えるトイレも欲しいとのことで、かなり気に入っていた(笑)斜めに洗濯機2台をレイアウトしていたプランを捨てて、このようなレイアウトで進めることになりそうです。
また、それと合わせて、これまでは部分的に使い勝手が悪そうな箇所だけを手直してして欲しいとお願いされていた、下階についても全面的にリノベーションなさりたいとのご依頼がありました!

ゲストルームとトレーニングルーム以外は、どこをどうしたらお子さまも含めて3人での生活がしやすくなるか、ゼロベースで提案して欲しいとのご相談でした。それまでは、ご夫妻二人でメゾネットの大型住戸450平米を存分に使って暮らす予定だったのが、お子さまが生まれることが判って、使い勝手が悪い箇所を全部洗いだしたいとのご意向でした。

オーダーで作っていたキッチンは、できればそのまま使いたいとのことでしたが、僕がパッと見ただけでも使い勝手が悪い箇所があるので、コンロとシンクと冷蔵庫がある壁面キッチンは残して、アイランド部分は見直す提案を考えてみました。

まずはノンスケールの図面をプリントしたものに手書きでスケッチをし、そこからPDF図面に簡単に落とし込んでみて、そこからスタッフに手伝ってもらいながらCAD図で寸法を当ってゆくという流れで下の階の間取りも検討しています。

メゾネット上階については模型でお客さまにプレゼンテーションさせて貰いましたが、下階については模型を作る時間が間に合わないので、CGでご提案することとなりました。こちらがCG用の簡易図です。

まずは事務所スタッフの神崎さんに天井の高さと窓の情報、家具のアタリを付けただけで起こしてもらった白CGがこちらです。

こちらがその白CGに素材やデザインの趣旨を、僕、各務が書き込んだメモ書きです。
この白CGに素材を加えて、照明器具や小物を加えてゆくと…、

一気にここまで仕上がってくるのです!

このレベルまで仕上がってくると、お客さまにもお見せできそうですが、まだここでは我慢して、より細かい訂正指示を入れていきます。

そして出来上がってきたのがこのCGとなります。こちらを下階のプランと一緒にお客さまにお見せしたところ、ここまで良くなるのであれば、是非こちらの階も一緒のタイミングでリノベーションしたいとのご意向でした。

因みに、こちらがリフォーム前の下階の様子です。、元々大きな空間をゲストハウス的に使う予定だったので、一番広いリビングの真ん中にグランドピアノが置いてあったり、キッチンとダイニングが対角位置に離れていたことは大きな問題ではなかったのですが、小さなお子さまを育てる家として考えると、色々と不都合があることが判っていたのです…。

以前はグランドピアノを置いていた位置に、お手持ちのミノッティの大型ソファを置き、テレビキャビネットを壁側に置き、奥の小さな空間は小さなお子さまを休ませる和室として使うことになりました。

これまで使い勝手がイマイチだった玄関周りも大理石やカラーガラス、木突板やレザーを使って豊かな空間にしてゆく方針も決まってきました。

そして、CGが便利なのは、このCGのように仕上げ材を変えた時にどのように見えるかを簡単に確認できることなのです。以前関ケ原石材にご一緒した時に気に入っていたマンゴーオニキスをリビングの壁に使った場合、どのようになるかと試しでCGに入れ込んでみましたが、この比較CGを見比べると、上のブラウンファンタジーの壁とウォールナット材でキャビネットを作ったコンビネーションの方が落ち着くことが良く分かると、お客さまも感心してくださいました。
ということで、上階のプラン変更から、下階の大規模リノベーションと、作業範囲が大きく広がることになったので、改めての作業工程を考えるところから再スタートとなりました。

モジュールファニチャー比較_モルテーニ&GIGI

ザ・ライブラリー

ザ・ライブラリープロジェクトの横浜H邸のティザーブログです。
モジュールファニチャーとはあまり聞きなれない単語ですが、場所や用途に応じてユニットを組み替えてつくるシステマチックな家具のことです。横浜H邸のお客さまから、玄関の靴収納、寝室のクローゼットシステム、書斎の本棚を統一したブランドの統一した素材で組む提案をして欲しいとのご依頼を受けています。箱で作る家具ではなく、アルミフレームで組み上げたシャープで透明感のある作りがご希望だったので、モルテーニのウォークインクローゼットとGIGI のアルミシステムファニチャーのショールームをHさまと一緒に見て回ることとなりました。

最初に訪問したのはモルテーニのショールーム(少し前のことをブログに書いているので、まだ仮店舗の頃です)です。仮店舗の奥に小さなウォークインクローゼット(モルテーニではワードローブクローゼットと呼んでいます)が組まれていましたが、これだけでもHさまはとても素敵だと感動してくださっていました。
この小さな空間の中でも、壁出しサポートの家具と箱家具が組み合わさっていますが、素材感やディテールが統一されているので、違和感なく一つの空間に仕上がっています。

仮ショールームで見てもらえる事例が少ないので、リビングに設置できる505UPシステムも見て頂きながら、H邸ではどのような提販ができるかを一緒に確認して回りました。

こちらが事前に送った要望に沿って、モルテーニ(アルフレックス)の担当の渡辺さんが素材の候補と図面を用意してくれていました。

それらを自由に差し替えながらどのような組み合わせにするのが美しいかを皆で相談している様子です。

そして、こちらが用意してくれたr素案の図面です。とても良い感じに仕上がりそうだとHさまも感じてくれているようでしたが、一つだけ残念なのは、モルテーニシステムでは書斎の本棚コーナーをご希望の形で組み上げることができないことでした…。

次に伺ったのがGIGI(ジジ)のショールームです。浴槽ブランドのHIDEO(ハイデオ)のショールーム中にクローゼットシステムが組まれています。イタリア製部材を日本で組み上げるシステムのGIGIは、その特徴が伝えにくいブランドなのですが、一目このショールームを見てもらえると、イタリアハイブランドのシステム家具に決して劣らない質を理解していただけるのですが、Hさまも「こちらも素晴らしい!」と喜んでくださいました。
最終的にモルテーニかGIGIで決まったのですが、その結論への道筋は以下のブログでご確認ください。

ニューヨークの豪邸設計事務所チコニャーニ・カラ再訪

ニュース

ゴールデンウィーク明けにニューヨークに行ってきたもう一つの目的は、1994年から約2年間修業をさせて貰った豪邸設計に特化したCicognani Kalla Architects(チコニャーニ・カラ設計事務所)を始めとする設計事務所を再訪することでした。

チコニャーニカラ設計事務所再訪

7年ほど前まではほぼ毎年ニューヨークに出掛けて、毎回昔の事務所に顔を出していましたが、コロナのことと娘の学校の関係で、しばらく訪問できておりませんでした。しかし、ひとたび顔を出したら、昔のボスのピエトロ・チコニャーニは笑顔で迎えてくれて、以前と変わらない下らないジョークを連発してくれました(笑)!

チコニャーニカラ設計事務所再訪

昔働いていた古い建物は取り壊しになってしまったので、僕は働いたことのない事務所でしたが、パソコン(僕の頃はまだ手書きだったので代わりに製図盤)と天井から吊るされた自転車(ピエトロのトレーニング用とのこと)以外の什器は昔と同じで懐かしい雰囲気でした。

因みにこれが、30年前に昔の事務所で働いていた頃の僕(30歳ちょと前)です…。

チコニャーニカラ設計事務所再訪

かなり忙しい中で、僕らの訪問のために2時間ほどの時間を取ってくれて、どのようなプロジェクトが今動いているかを説明してくれました。

チコニャーニカラ設計事務所再訪

元々は、マンハッタンのマンションリノベーションと、同じお客さまのニューヨーク郊外の別荘の新築設計が主な仕事でしたが、今はピエトロの生まれ故郷のイタリアでの仕事もかなり多いとののことで、パソコンのモニターで見せてくれたのは、アメリカ人のお客さまがベネチア市内で古い礼拝堂を購入して、それを住居にリノベーションするプロジェクトでした。
小さな礼拝堂でしたが、外観は残しつつ、内部はほぼ全て作り直し、扉の取っ手から水栓、造作家具からガラス窓まで全てカスタムメイドの特注品というコダワリのプロジェクトでした。イタリアの建築費はアメリカの三分の一程度とのことでしたが、イタリア価格で7億円、ニューヨークに換算したら、20億円(建築費でインテリアは含まず)という超高額プロジェクトでした。

チコニャーニカラ設計事務所再訪

こちらの女性スタッフが見せてくれたのは、郊外の高級別荘地のハンプトンの鶏小屋プロジェクトでした。

チコニャーニカラ設計事務所再訪

写真はCKAのホームページから拝借したものですが、別荘に付随した鶏小屋だそうで、珍しい鶏を沢山飼っているお客さまの為に特別に設計したそうで、鶏小屋と周囲のランドスケープだけで1億円もの費用を掛けたと嬉しそうでした。

チコニャーニカラ設計事務所再訪

こちらもイタリアのトスカーナの海岸沿いに3軒の新築住宅を設計するという約10年掛かりのプロジェクトとのことでした。既に1軒が建っており、2軒目が建設中で3軒目はこれから設計とのことでした。一つの住宅で地階も含めて1000平米でそれぞれ古典的なデザインながら、内部の設備は最新のものとなっているとのことでした。
このプロジェクトで何よりも驚いたのは、僕が昔在籍していた頃からお付き合いのあったお客さま一家がクライアントで、その頃のお客さまは亡くなられたそうですが、その兄弟、子どもたちと連綿と仕事が続いており、このプロジェクトもその一家のプロジェクトだったということです!その一家のプロジェクトを全て合わせたら、5~60億円もの費用を任されているだろうとのことでした…。

チコニャーニカラ設計事務所再訪

事務所の机レイアウトは4つの机の真ん中に打合せテーブルがあるスタイルとなっています。ちょうどピエトロの友人で、かつノグチ財団の理事でもあるアヌージュ・プリーさんが来ており、お話を聞かせて貰いました。アヌージュさんは、元々は設計事務所に勤めていた建築家だったそうですが、今はクライアント・リプレゼンタティブ(施主代理人)、つまり大きなプロジェクトで、発注者(クライアント)側の立場で、専門的な知識や経験を持ってプロジェクトをマネジメントし、設計者や施工者、コンサルタントなどとの間を取り持つお仕事をしているとのことでした。

チコニャーニカラ設計事務所再訪

真ん中のテーブルに置かれている多様なサンプル類です。エアコンやコンロといった住宅設備や窓などの性能が重視される部品はさすがにカタログから選ぶようですが、仕上げ材や金物類はほぼオーダーで作るので、二度と同じものが作れない職人技のものばかりでした。ただ、イタリアにはまだそういった職人さんが残っているそうですが、アメリカではほとんどいなくなってしまったそうで、特注素材によっては外国にオーダーすることも多いとのことでした。

チコニャーニカラ設計事務所再訪

廊下の素材置き場の棚に置かれているものは、ワン・アンド・オンリーの素材ばかりでした。

チコニャーニカラ設計事務所再訪

昔からあまり変わっていないように見えるカタログ棚には、マーヴィンやブルム、ルートロンといった定番のものに交じって、日本のTOTOやスガツネなどのカタログもありました。

チコニャーニカラ設計事務所再訪

ピエトロは僕より15歳ほど上なので、70代前半のハズで、引退の予定を聞いてみたところ、「引退なんて退屈だから、死ぬまで設計する!」と息巻いていました。昔のパートナーだったアン・カラはもう15年ほど前に亡くなって、若い建築家のアルバート・ベッツさんをパートナーにしているので、近いうちに、事務所名からカラの名前をなくして、チコニャーニ・ベッツという名前に変更することも教えてくれました。アメリカの設計事務所は、どこもパートナー制となっていることで、創始者が引退しても、事務所が残ってゆくシステムを作っているのです。
日本では僕も60近くになってくると、転職したり引退する友人も増えてきて、今後どうすべきかを考え始めなくてはと思っていましたが、ピエトロと話をしたことで、まだまだ現役の設計者として頑張ろうという気持ちになりました!