Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

2つの玄関がある大型住戸ならではの工事のメリットとは

文京区S邸

文京区S邸の壁下地と床下地工事が進行中です。

築10年の築浅マンションで290平米の大型住戸のこちらのお部屋は、壁下地先行(つまり、壁下地を立てた後に二重床の下地を組んでいく工法)で進んでいます。

天井の梁型や、床スラブの段差などに応じて、LGSを立てる基準となるランナーをこまめに調整しながら施工をしてゆく工法となります。

大きな現場で、2つの玄関があるので、リビングにはこれだけの資材が運び込まれています。

サイズが大きくて、玄関扉が2つあると、少数の職人さんで片端から作業をしてゆき、その作業の中途の段階で、追っかけるように次の工程の作業をしてゆくことができるという工程上のメリットがあります。つまり先行したLGS屋さんが作業をしている反対側で、大工さんが際根太を取り付けて…、

その合間で設備屋さんが配管工事をしているのです。小さな現場で違う職種の職人さんたちが作業をすることを相番(アイバン)といいますが、関連する工事での相番は良しとされても、関連しない職種の工事が同時に入ると混乱する原因になるのですが、こちらのような大型住戸だと混乱せずに同時作業が可能となるのです。

ファミリー洗面と浴室とトイレ、さらにはベランダからの排水が絡み合う床下の排水管がパズルのようにうまく組み合わされています。

主寝室に付属するご夫妻用の洗面とトイレとシャワーユニットからの排水は、壁裏キッチン下を抜けて排水されていきます。

ディスポーザー付きのキッチンの排水管がかなり長くなるので、設備屋さんにお願いして、アイランドキッチンの下に掃除口をつけて貰いました。

写真の中央右手前、オレンジ色の線が絡まっているところに垂直に立ち上がっている箇所が掃除口となります。アイランドキッチンの引き出しを引き抜いて点検口を開けたところに掃除口が見えてくるように調整してもらいました。ディスポーザーを日常的に使うお宅では、マンション管理組合が一年に1回行う排水管の高圧洗浄でキッチンと清掃してもらうことが配管を長持ちさせるコツとなるので、ここまで気を配っています。

こちらは二つの部屋をつないでいる部分の防火扉です。

床下配管がない個室は際根太が施工された後には二重床の床下地のパーチ合板(パーティクルボードのこと)張りが続きます。この写真の左奥に灰色の扉が見えているのが、防火扉です。

配管工事が残っている箇所は抜いて、床下地が作られていますね。

パーチ合板の上にはベニヤ板が貼られいきます。

この写真の一番奥が子ども部屋なのですが、すべての作業がそこから始まって手前へと攻めてゆく(笑)ような流れとなっています。

本筋の流れからずれた、こちらの来客用トイレは、排水管の勾配のことで床を上げることとなり、他とは少し外れた工程での工事となっています。

この日は、毎週行われている現場定例にSさまの奥さまが参加してくださいました。順調に進んでいる現場を見て、とても喜んで下さっています!

ハイテグラ&造作家具

元麻布J邸

元麻布J邸の先回のブログで告知していた通り、タイルと左官を融合させたハイテグラ壁の仕上げ作業が始まりました。

テレビを設置する東側の壁一面がハイテグラ仕上げとなります。まずは壁にこのような素焼きの黒いタイルを張ります。びっちり張られているように見えますが上部を見ると、隙間にヨウジが差し込まれているので、後で目地材が入りやすいように微妙な隙間が空いています。

アップで見るとこのような状態です。

ハイテグラ&造作家具

そこに上から被せるように目地材を塗り付けて、濡れたスポンジでふき取ってゆくと、上部のような仕上げ感になってくるのです。

こちらがその左官材の素材です。ハイテグラ専用の左官材とのことでした。

左官材を塗る作業よりも、ふき取る具合によって表情が大きく変わってくるので…、

こちらのお客さまに事前にご承認を貰っているサンプルを横に置いて、見比べながら職人さんに調整してもらいました。

間近で詳細ばかりを見ていると、見逃してしまう部分もあるので、時々キッチンのところまで下がって、部屋全体のインテリアとの調子も見比べております。

こちらが最後にほぼ最終の様子です。造作棚の下の細かい部分の仕上げがラフだったので、最後にその部分をお願いして本日の作業終了となりました。乾燥するとまたちょっと風合いが変わってくるのですが、それを含めてもよい感じに仕上がりました!
ハイテグラの施工方法については、以前のこちらのブログにも細かく説明をしております。

その他のオーダーキッチンや造作家具も仕上がってきているので、そちらの最後にご紹介しておきます。

ペニンシュラカウンターはフルに養生されてしまっていますが、リビングプロダクトさんにお願いしたオーダーキッチンです。

大理石のオデッサベージュ張りとクロスパネル張りの壁の間にレザー張りの建具が挟まれた玄関ホールです。

レザー張りの建具の取っ手は特注の焼き付けスチールの取っ手です。

玄関ホールからリビング側に入って振り返った様子です。左側の袖壁のニッチにはインターフォンやスイッチ類が入ります。

左側玄関ホールへのレザー建具も右側洗面廊下へのクロス張り建具も完全引き込みなので、引き込まれると全く見えなくなるのです。

洗面廊下のカウンターが仕上がってきました。手前のミニカウンターはリビング側ですが、同じ素材で同じ高さで揃えたデザインなので、一体に感じますね。

正面から見たロングカウンターです。左下のオープンな箇所にはミーレのビルトイン洗濯乾燥機が入ります。

突き当りの廊下側から洗面廊下を見返した様子です。ミラーキャビネット下の間接照明や洗濯機上のハンガーバーがまだ未施工ですが、もうすぐ完成です。

スケルトン床にカラーテープの間取り図

三田S邸

三田S邸の現場は、解体作業が終わり、きれいに清掃されていました。

まだ一部、床の給水給湯管や、天井のダクトが残っていますが、埃一つなくきれいになっていました。床スラブをよく見ると、黄色いテープで模様が描かれているのが分かるでしょうか?

これは施工をお願いしているリフォームキューが翌日のお客さまとの現地打ち合わせのために、墨の線よりも分かりやすい黄色いカラーテープを間取り図的に貼ってくれたものなのです。設備の槻川原(ツキガワラ)さんが立っているところ(正面右でコンクリートの柱横)が、リビングダイニングから主寝室&洗面への廊下の入り口で、弊社担当スタッフの竹田さん(ポニーテールの後ろ姿)が立っているのが主寝室のクローゼットとなっています。

共用部分の竪配管を避けながら描かれているのが、左上の玄関ホールからの廊下やトイレ、収納や洋室のクローゼットなどとなっています。玄関近くの水回りエリアが空間的に細かく分かれているので黄色い線も賑やかに(笑)なっています。

洋室から窓のあるLD側を見ると、右手前にキッチンのラインがあるくらいで、後は大きなリビング&ラウンジ空間となります。この日は、リフォームキューの営業設計の坂本さんと西さん、設備の槻川原さん、現場監督の滝川さんとの定例打合せでした。

リビングの窓には関連する最新の図面が貼られ、中央には打ち合わせ用の簡易テーブルも用意してくれていて、準備万端でした。

そして、その翌日はお客さまとの現地打合せです。ヒールの無い、履きやすい運動靴で仮住まいから現地に来ていただき、まずは解体した新たに分かったこと、そのことが理由で微調整しなければいけない箇所などをご説明させて頂きました。先回のオンライン打合せで浴室のサイズが縮小することのご承認を頂いておりましたが、実はその分キッチンと洋室側に余裕ができたので、その余裕の寸法をどうするかを一緒に考えさせて頂きました。

キッチン部分はやはり奥さまが一番気になさっていたエリアですので、エアコンの冷媒管をどう隠すのか、キッチンカウンターと掃き出し窓の取り合いなどの考え方をご説明して納得して頂きました。

リビングラウンジと主寝室のエリアは、天井裏の隠蔽式エアコンをどこに設置するかを検討させて頂きました。天井高さが低いのラウンジの天井にエアコンのメンテナンス、あるいは交換用の大きな点検口が付くのはお嫌だとのこと、運転時の音の問題はありますが、主寝室の天井裏にエアコン本体を設けることとなりました。こういった打ち合わせの時に設備の知識が豊富な槻川原さんが同席してくれているととても頼りになります。

こちらは既存の壁と床のトラバーチン(イタリアの細かい穴があいた大理石)を再利用する玄関ホールです。

養生シートの下には既存のトラバーチンをきれいに残してもらっていますが、使わない部分の既存トラバーチンをはがしたサンプルを石材屋さんに渡して、似たものを探してもらったのが、出っ張った部分の正方形のものです。細かく見ると、どうしても天然のものなので風合いが違いますが、それでもここまで色味が似ていれば良いだろうとSさまご夫妻からもOKを頂くことができました。

リノベーション前より、1.5倍に広がる(実際にはクローズドのキッチンがオープンになるので、体感的には1.7倍ほどになるのでは…)LDK空間をお二人に想像して頂いた際の様子です。Sさまご夫妻も、とてもきれいで、テープで分かりやすくマーキングしてくれた工夫なども含めて、現場の様子に感心してくださいました。いつも頑張ってくれているリフォームキューの皆さまには感謝あるのみです…。