Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

下地&設備工事、モールディング装飾デザインが同時進行する現場

大田区S邸

解体工事が終わった大田区S邸の現場は、大工さんたちが入って床や壁の下地を作り始めてくれています。

かつてのキッチンはPS(パイプスペース)と再利用される壁下地以外は一旦全て剥がされたところに、床下地が組み始められています。

通常のマンションは下階への音が伝わりにくくするために遮音置床システムを使いますが、こちらのお部屋が下階が駐車場で、マンションの規約上も遮音仕様にする必要が無いので、コンクリートスラブに直接木下地を接着して、その上にベニヤ板を張る作りとなっています。

そこから一週間ほどで天井のLGS下地も改めて組み直されて、床下地の上には新しい排水管が接続されました。

写真、左側のゴチャゴチャした部分が、元のキッチンの床下にあったスラブ下へと貫通する排水管で、今回の新しいキッチンでは、右側の位置にシンクと食洗器が来るので、キャビネット下をグルリと通して元の排水管の位置まで持ってゆくことになっているのです。

一部、壁際は出っ張った部分は見えてきてしまうので、排水管をしっかりと木下地でカバーして貰っています。

大工さんが作業している奥では、設備屋さんのエアコンの吊り込みが始まっています。リフォームキューの現場監督の大阿久さんと、設備のプロフェッショナルの槻川原さんが細かく位置を見てくれています。

今回は全てのエアコンが天井隠蔽式となっています。

最初はすっきりと見えていた廊下の天井裏も、隠蔽式エアコンのダクトが入ってくると、かなり窮屈に感じられますね。断熱カバーされいるダクトを凹まないようにうまく天井裏に押し込みながら接続して貰っています。

こちらはダイニングの天井裏で、ダイニングテーブル上に重量のあるペンダント照明を取り付けることになっているので、その重量分の補強です。上階の配管類が通っているので、コンクリートにアンカーを打つのではなく、大工工事で逆型になったコタツテーブルのようなものを組んで貰っています。

そんな中、お客さまのSさまの奥さまに現場に来てもらったので、一緒に色々と打ち合わせをさせて頂きました。

一つはセコムのお打合せです。セコムの担当者とは事前に下打合せをしていましたが、Sさまと最終確認することで、モーションセンサーも追加することとなりました。電源が必要となる箇所もあるので、大阿久さんにも打ち合わせに参加してもらいました。

すっかり解体されてガランドウになった洗面所と浴室回りも見て頂きました。20年近く暮らしていたお部屋の天井裏や壁裏の様子をご覧になって、「こんな風になっていたのね!」とかなり驚いていらっしゃいました。

奥さまが不安に感じていらっしゃった、モールディングのサイズを確認するために、担当スタッフの竹田さんが用意しておいてくれたモールディングの型紙を壁に貼って貰っています。

玄関入って、右手に見えてくる壁の装飾のプロポーションです。

出来上がった様子をCGで作ったものがこちらです。プロポーションは良さそうだけど、天井回りが少し寂しいのではとのご意見を頂いたので、モールディングを回すことになりました。

玄関と廊下はかなりモールディングやケーシングが付くので、華やかな空間になる予定です。

リビングの折り上げ天井のモールディングも取り寄せたサンプルを取り付けてみると、少し大きめに感じたので、ワンサイズ小さいものにすることになりました。

因みにリビングの完成予想CGはこんな感じです。

こちらのCGは後日作ったものですが、壁とモールディングの色と建具と枠ケーシングと巾木の色を変えた場合どのように見えるのか、それもベージュ調にした場合とグレー調にした場合の微妙な違いをCGで作って比較してみたものです。結局リフォーム前と同じようなベージュ調のニュアンスの方が好みだとのことで、上のイメージで進めることとなりました。

排水管ルートを探る部分解体設備調査の記録

世田谷区A邸

大型メゾネット住戸リノベの世田谷区A邸のリノベーション計画を進めていますが、マンション竣工時の設備図を見ても排水管のルートが読み取れないこと、また下階の水回りに関しては一度大きくリフォームをしていることから、壁や天井を部分的に解体して内部を見て、設備関係配管ルートを確認すること、また、天井裏の懐の深さや梁下の寸法を見ることとなりました。

こちらが既存図に、担当スタッフの竹田さんが手書きで書いた、部分解体をしたい箇所の指示図です。
部分解体のためには、現場監督さんにお願いすることもありますが、今回は開口数も多いので大工さんをお願いすることとなりました。また、設備関係のこともあるので、設備屋さんにも同席してもらうこととなりました。

早速、大工の矢野さんが天井に穴をあける作業をスタートしてくれました。今回はの片岡社長が工夫をして、ホルソーという道具を使っての穴あけ作業となっています。
ホルソーとは天井の石膏ボードにダウンライト用の丸穴をあける道具です。写真にみえる透明な集塵カップ(別名ダストカバー)を取り付けることが可能で、石膏ボードを切断した際に発生する埃が大きく散らないので、養生の手間がかなり省けることがメリットとなります。また、鋭利なカッターで丸く抜くので、内部を確認した後、蓋をして戻すときに、比較的きれいに、かつ簡単に復旧することができるです。

これまでは、カッターやマルチツールと呼ばれる電動カッターを使って正方形にボードをカットしてきましたが、養生などに掛かる時間を含めると、約3分の1の時間で穴をあけることができることが判りました。

丸穴が空いて、内部を覗ける状態の写真です。こちらでは、配管が2本通っていたので、配管の養生材を一部剥がして、菅の種類を確認いたしました。確認後は養生材を戻してテープでしっかり張っておきました。丸穴のカット面がきれいに仕上がっている分、蓋を戻すのも楽になるのです。

今回は220φの穴をあけることができるホルソーを使ってくれたので、ちょうど僕、各務の頭が差し込めるのです。さらには差し込んだ隙間から、携帯電話も入れることができるので、携帯の照明で中を確認しつつ、フラッシュを使って写真を撮影したり、動画を撮ることができました。

こちらはPSと図面に表記されていた箇所の横壁に穴をあけて下を覗き込んだ写真です。薄い灰色のトミジ管と呼ばれる耐火二層管(排水管)と濃い灰色の排水管、青い給水管とオレンジの給湯管が通っていることが判りました。

天井裏に空けた穴から覗きこんだこちらの写真では、理由は分かりませんがスパイラルダクトが途中で切断されている様子が見えました。

キッチン裏のPSの内部を覗き込みながら、竪管の位置を片岡さんが実測してくれています。

竣工時の設備図のコピーを竹田さんが用意してくれており、穴から見える管やダクトの整合性を確認していきます。穴あけ作業のスピードが速かったので、最終的には12か所に穴をあけて内部を確認することができました。

穴から覗き込んで撮影しているだけだと、後で何が何だか分からなくなってしまうので、担当スタッフの竹田さが用意してくれた設備図に書き込んでいきます。

ユニットバスの袖壁の下部に空けた穴からは…、

オーダーユニットバスの防水パンが確認でき、その下に携帯電話を差し込んで浴室からの排水ルートのおおよそを確認することもできました。

こちらの図面で排水管のルートが分からなかったか所は、そこから床スラブを貫通して、下階の天井裏を通って排水管が横引きされているようでした。

念のために、駐車場になっている下階の天井裏の点検口を開けてみたところ、床スラブを貫通して、トミジ管が配管されいていることが確認できました。

最後のこちらの写真は丸穴を二して補修した様子です。イーニッサンと呼ばれる30mm×40mmの角材とビスを使うと、穴の復旧もとても速いのです。
今回の部分解体設備調査ですが、お客さまには半日分の作業費として5万円+消費税で5.5万円をお願いいたします。

素材サンプル×CGシミュレーションを使ってのキッチンデザイン打合せ

松濤D邸

3度目のリフォームでキッチンと浴室を作り直すことになった松濤D邸。これまで壁と扉でとじられていたクローズド型だったものから壁の一部と扉を取り去って、セミオープンにする方針が決まっています。セミオープンになれば、シックで落ち着いた雰囲気のリビングダイニングと色味だけでなく使われている素材の質も合わせる必要があります。

まずはオーダーキッチンをお願いすることになったリネアタラーラの弊社担当の牧野さんとリフォーム工事をお願いしているリフォームキューの森井さんに松濤に来てもらいました。

今回の工事では暮らしながらリフォームをご希望なさっているので、キッチンを解体してから新しいキッチンを設置するまでの期間を縮める方法を考える必要があります。
通常のリフォームでは、既存のキッチンを解体して、新たに作る壁位置や給排水や排気ダクトの位置をチェックしてから最終寸法を確定して、そこからキッチンキャビネットを作り始めるという流れになります。工場でキッチンキャビネットを作るのに最低でも2か月は掛かるので、この流れだとキッチンを使えない期間が最低でも2か月半になってしまいます。
まだキッチンのレイアウトも正式に決まっていない中ですが、少しでもその期間を短くする戦略を一緒に考えて貰いました。ピッタリ寸法で作ろうとすると、どうしても解体現調を待ってからしかキャビネット製作を始められません。どこかに寸法調整のフィラーを入れるか、寸法的に曖昧なバッファーゾーンを作る必要があります。

色々な選択肢が考えられましたが、洗濯機コーナーをうまく使えそうだとのことになりました。工事期間中は、洗濯機を(スペースに余裕がある)来客用トイレに仮置きして、洗濯機コーナーを第二期工事にするという戦略です。
因みに、まだこの段階では、洗濯機をこれまでと同様に国産の洗濯機として洗濯室に入れるか(上図の案④)、ドイツ製のビルトイン型にしてキッチンに組み込むか(案⑤)が決まっていませんでした。

洗濯機コーナーの違いが視覚的に分かるようにCGを作ってご説明させて貰いました。上が扉で仕切ってその奥に洗濯室を置くタイプで、これであれば国産の大型洗濯乾燥機を入れることができます。下の2つの案がミーレの洗濯機と乾燥機を竪積みにしてキッチンとフラットにビルトインする案です。ビルトインの食洗器はキッチンキャビネットの扉と同じ面材を貼ることが可能ですが、ビルトインの洗濯機は白の一択となってしまいます。シックな色のキッチン横に並ぶと、そこだけ白抜けしてしまうので、下の案では、その奥のキャビネットを薄いグレー色としてユーティリティーコーナーっぽく見せる案です。

これまでは左の図のようにPDFにキッチン図を描き込んだもので検討してきましたが、もう少し厳密な図面が必要になるので、マンション竣工時の青焼き図面からより詳細なCADへと移行しています。
戦略のするにしても、どこを基準にして、どのように寸法を決めるかが重要なのです。

事前に部分的に解体して確認しなくてはいけない個所を特定するために、ダイニング側とキッチンを行ったり来たりしながら打ち合わせをさせて頂きました。ある程度のメドが付いたので、森井さんは抜きで奥さまと牧野さんと前田君と僕、各務の4人でキッチンの仕上げ材の候補決定のために、世田谷区用賀のリネアタラーラのショールームに向かいました。

リビングダイニングで使われている素材が黒いトレーの中に入っているもので、これまでの打合せでお見せしてきたCGも並べながら、どのようなイメージになさりたいかを伺わせて頂きました。

まずはコンロ前のバックガード壁に張るセラミックタイルの候補からスタートしました。これまで幾度か試しに作ってきたCGでもこの部分が白系大理石柄のセラミックタイルとしていたので、どのような柄や色味がお好みかを大判サンプルをお見せしながら検討していきました。
因みにコンロ側のカウンター材はご主人さまが画像でお見せしてくださった濃い灰色の様岩石のバサルトのイメージで進めています。

セラミックタイルの候補が幾つかに絞れてきたところで、キャビネットの扉の色味へと移ります。リネアタラーラで用意してくれいるベージュからグレー、ブラウンから濃紺までの塗装サンプルを選び出して、仮決めしたセラミックタイルとの色味を見比べながら、こちらも候補を絞ってゆきます。

弊社事務所にもそれなりのセラミックや塗装サンプルはありますが、やはりオーダーキッチン専門ブランドのリネアタラーラはサンプルの種類が豊富にありますね。

30分ほどの時間で候補を絞ってきたところで、実際のキッチンカウンターの上に候補の素材を並べてみた様子です。

サンプル材を使って色味を選ぶ際は、基本は自然光が差し込む窓辺で選ぶ作業をするのが基本ですが、実際に使われる光環境に似た場所で確認することも必要なのです。こちらの松濤D邸のキッチンは、自然光は横から差し込んできますが、リビングダイニングと同様少し暗めの照明で落ち付いた雰囲気の中で使うキッチンなので、それと似た光環境の場所に移動して、色味を再確認しているのです。
色味についてはあまりに長時間かけて打合せをすると、お客さまも何が何だか分からなくなってしまいことが多いので、カガミ建築計画ではある程度直感が生きている最初の10~15分の間に仮決めして、そこから候補を絞ってゆくようにお願いしています。また、N家の場合、今回はお仕事の都合でご同席してもらえなかったご主人さまもデザインが大好きな方なので、ここで絞った候補を落とし込んだCGを用意してそれで最終的に決めるというプロセスとしています。

キッチンのレイアウト、スペース上から共にビルトインの電子レンジとオーブンを縦に並べることになっており、その使い勝手と高さを決めて頂くために採用するのと同じサイズのオーブンを見て頂きました。扉を開けた状態で中のトレイを出し入れして、設置高さを確定させてもらいました。

その後10日ほどで担当スタッフの前田君が用意してくれたCGが以下のものです。

上がカウンター材のバサルトの色味、そしてバックガード壁のスタトゥアーリオ柄の少し青味を帯びた色に合わせた濃い目のグレーの扉の案で、下はもう少し柔らかく、リビングダイニングの色味に寄せてみた案です。

キッチンの色味のCG作業の最中に、N家のご主人さまからダイニングとキッチンの開口を、当初はアーチ型にしたいと思っていたが、より直線的で開口部が大きくなる四角い案も考えて貰えないかとのリクエストがあったので、キッチン内部からリビングダイニング側を見た比較CGと…、

ダイニングからキッチンを見返すとどう見えるのかの比較CGを作ってみました。
カガミ建築計画ではこういったCGは、作ったものをそのままメールで送ってお客さまに判断を一任するのではなく、対面での打合せ時にお見せして色々な面から検討して最終決定していきます。
ご夫婦のこだわりや感性を丁寧にすり合わせながら、キッチンが少しずつ「N家のキッチン」として形になっていく過程を大事にしたいと考えています。