Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

高級キッチンの天板候補クォーツサイト(天然石)とコセンティーノ・ジャパン

世田谷区A邸

天然石ながら、非常に硬く傷が付きにくく、水染みも少なく、耐熱性にも優れていながら、御影石のような暗さが無く、華やかな色調の石材として、クォーツサイト(Quartzite)が注目されています。似たような名前のクオーツストーンは、石英と樹脂を固めた人口石で、全くの別物です。

コセンティーノのクオーツサイト(天然大理石)のタージマハール

クォーツサイトは珪岩(けいがん)とも呼ばれる、石英を主成分とした天然の変成岩の一種です。
表情や色目、柄は美しいが水や酸に弱く、染みができやすい大理石、硬くて水にも酸にも強いが華やかさが乏しい御影石のちょうど、良いとこどりをしたような天然の石材なのです。

コセンティーノのクオーツサイト(天然大理石)のタージマハール

これまでは、岐阜や三重に集まっている大規模な石材会社(関ケ原石材や、矢橋大理石松下産業)といった大手では、時々見かけることがありましたが、クォーツサイト(クオーッァイト)だけを集めた展示や販売はされていませんでした。
スペインの大判セラミックとクォーツストーンのメーカーであり、天然石も扱うコセンティーノ社が、日本でもクォーツサイトを販売したことで、認知度が一気に広がり出したのです。
因みにクオーツサイトは砂岩が地下深くで高温&高圧の条件に晒されることで、石英の粒子が再結晶して、より頑丈な組成に変性されるというプロセスで作られるそうです。

コセンティーノショールーム

コセンティーノ・ジャパンは、これまでも大判セラミックのデクトンや、クオーツストーンのサイルストーンの両者を扱っていましたが、3年ほど前に南青山に「コセンティーノ・シティ東京」という名の美しいショールームを開き、そこに「センサ」というシリーズ名で、ただでさえ強いクォーツサイトに工場で染み防止処理を浸透させた石材のシリーズとして売り出したのです。

コセンティーノの撥水材の実験

「センサ」の撥水処理剤の強さを示すために、コセンティーノの弊社担当営業の小高さんが、砂に撥水処理剤を吹きかけて…、

コセンティーノの撥水材の実験

そこに水と紅茶を用いた実験をしてくれました。黒い石材の上の砂で、右の二つの山の液体はすぐに砂に染みてしまっていますが、左の2つの山には水と紅茶の液体が玉のように纏まったまま、染みていないのが分かりますね。

コセンティーノショールーム

コセンティーノ・ジャパンは大判セラミックとクオーツストーン、そしてこのクオーツサイトをはじめするコーティング済みの天然石全てを等価に扱っている、この業界では本当に珍しいブランドなのです。大手石材ブランドも生き残りのために、セラミックやクオーツストンを扱ってはいますが、本心では天然大理石が一番良いと考えながら、水染みのことなどを心配する人向けには、(ニセモノですが)こんなものもありますよと営業しているのが実情ですし、セラミックやクオーツストーンを扱っている会社は、天然石よりもセラミック等の方が安定してムラがなく、良い物として扱っており、石材は扱っていないところばかりです。

そんな中でコセンティーノは三者全てを等価に扱って、その用途や適性に応じて臨機応変にお勧めしてくれる稀有なブランドなのです。

セラミックもクオーツストーンも天然石も大きなサンプルで見ないと、その雰囲気を正確に理解することが難しいのですが、このようにショールーム内に大判サンプルが置いてあるのもコセンティーノのショールームに行く価値があると感じています。

コセンティーノショールーム

コセンティーノのショールーム内には、実際に使えるキッチン展示があり、ちょうど世田谷区A邸でも使いたいと検討してきたワインセラーや、

コセンティーノショールーム

カウンター下に入るビルトイン冷蔵庫の展示もあったので、それらもAさまと一緒に確認させて頂きました。

リンナイ青山ショールーム訪問

先日のリンナイ青山訪問でもご一緒した世田谷区A邸のAさまは、改めてクオーツサイトの魅力を強く感じて、ご自身のキッチンのカウンターのどこかには是非このタージマハールを使いたいとのご意向を聞かせてくださいました。
クォーツサイトは含んでいませんが、大判セラミックとクオーツストーンを比較してメリットとデメリットを書いたブログ記事もご覧ください。

カガミ建築計画の新事務所移転計画-3

カガミ建築計画事務所移転計画

南青山に事務所を移転する計画、現地のリフォーム工事はゆっくりながら着実に進んでいます。

二つの小部屋が並んでいた玄関横の個室は、間仕切り壁が撤去され打ち合わせ室となります。

打ち合わせ室には照明の調光と調色、ブラインドもアプリで自由に操作することができるルートロン社ホームワークスのシステムを入れることになっております。ルートロンは使ったことがあっても、ダリという制御システムを使った照明器具やホームワークスは、電気屋の稲村さんも始めてとのことで、ルートロン社の谷崎社長が現場に来て説明をしてくれました。

照明器具は面倒な配線は不要で、全てを一筆書きのように繋げて、トイレの収納ボックス内に設けるルートロンの盤に繋げればよいとのことでした。

照明スイッチはボックスなしの独特な接続となることも事前に聞いていたので、デモ機を持ってきてもらい、接続方法を稲村さんに確認して貰いました。

ホームワークスで制御できるブラインドは、やはりルートロン社のものとなるので、サンプルから一番良さそうなものを選ばせて頂きました。

こちらの部屋には以前は壁掛けエアコンが2台ついていましたが、LDの横にあった小部屋の天井カセットエアコンをこちらに移設しました。お客さまもいらしての打ち合わせを想定して、カガミ建築計画/ザ・ライブラリーの標準的な仕様を使ったインテリアにしたいので、エアコンの冷媒管やドレイン管が露出することは避けたいと考えていましたが、窓際にカガミ建築計画お得意の木製三方フレームを取り付ける際に、2つの窓の間の壁部分をフカすことで冷媒管とドレイン管を隠すことができそうです。

天井の石膏ボードを張り直した打ち合わせ室です。実はこの時点で床のフローリングも既に張り終わっています。

フローリングは、カガミ建築計画で最近一番多く使っているADワールドノルド・シリーズモハベを使っています。ちょうどADワールドに在庫があった分で打ち合わせ室と廊下が足りることがあったので、営業担当の阿部さんにお願いして確保してもらったものです。こちら見ているのが現場監督の栗原さんで左側が超優秀な大工の小野寺さんです。

こちらは廊下にあった分電盤です。当初はこの壁の裏がトイレになるので、その収納の中に隠す計画で進めていましたが、パナソニックが新製品で露出で設置してもスタイリッシュな分電盤のFLEXIID(フレキシード)というものを発売し、そのモニターを募集しているとの話を出版社のエクスナレッジ・西山さんから聞きました。急いで申し込んでみたところ、ちょうどタイミングが良かったのかモニターとして提供してもらえることになりました。

電気屋の稲村さんと田口さんと各務で相談して、回路数を数えて、フレキシードのBDN5225(主幹容量50A、100V16回路、100/200v兼用6回路)をお願いすることになりました。

こちらが現場に届いたフレキシードの分電盤です。

分電盤用に作ったニッチの中にはめ込んでもらった様子です。分電盤の厚みが、深さ100ミリと業界最薄で、真っ白で不愛想な(失礼!)フタが白い塗装壁の中においても違和感がないデザインとなっています。因みに、モニターとしての採用の条件は、工事完成後に取材と撮影をとのことでした。

バタバタした中ですが、まだ未決事項だった床に使うタイルを探しに銀座のマラッツィショールームを訪問してきました。
今回新事務所で採用する素材類を選ぶ基準は以下のように考えています。

  • これまでにカガミ建築計画で使ってきて、デザイン性とコスパが良いもの
  • ショールーム的にも使う予定なので、今後も永くお客さまにご推薦したい良質のもの
  • 急に事務所移転とリフォーム工事が決まったので、在庫があるか短納期なもの
  • これまで使ったことがないが、今後使っていきたいと思える魅力があるもの

そんな中で、玄関タタキとトイレとキッチンの床は、愛用させて貰っている石目調のタイルのグリスフルーリーを使うことに決めました。在庫を確認して、使う面積を見ながら以下のような張り方を考えつつ、発注致しました。

キッチン床とトイレ床は在庫サイズが限られていたので、ちょっとデザイン的に工夫した張り方としています。

キッチンのコンロとシンク前の壁は実用性を考えて無難なキッチンパネルとしていますが、カップボードの背面壁はインテリア的にアクセントにしたかったので、最近よくご提案している手焼き風タイルの「ルーメ」と「ルック」からアヴィオ(ルック)という薄いブルーのタイル(写真手前から3枚目と4枚目)を貼ることとしました。

キッチンカップボード裏のバックパネル壁のタイルも、寸法的に中途半端なサイズが入ってしまいそうでしたので、このイメージ画像のように縦と横を混ぜたデザインとしています。

タイルという素材に関しては、もう一つ大理石調大判タイルも使うことを検討しています。アークテック社が扱っているフィアンドレのセラミックタイルです。まずは国内在庫を確認したところ、カラカッタ・スタトゥアーリオのマット(艶無し)仕上げとカラカッタの磨き(艶あり)とマット、そしてブライト・オニキスの磨きがあることが分かりました。
打合せ室のキャビネットを設置する壁には、最もよく使っているスタトゥアーリオ柄のセラミックを張ることとして、セラミックの割りと張り方を検討しました。

そしてこちらが、トイレの壁に張るブライト・オニキスの割りです。アークテック社は責任施工でセラミックを張ってもらうこともできますが、今回は上記のマラッツィや本物の大理石を貼る部分もあるキダ・マーブルさんに施工をお願いすることになりました。

タイル絡みでもう一つ、玄関ホールの壁にインテリアズ社が扱っている加工大理石サルバトーリトラッティです。サルバトーリもこれまで幾度もお客さまにご提案して、実際に採用してもらってきたものなので、どこに使うか色々と迷いましたが、お客さまが玄関入って最初に見える壁に張ることとしました。

こちらのベニヤ板張りの壁です。こちらは廊下側から見た様子です。右手奥が玄関扉で、壁の上にはLEDの間接照明、そして天井からはコートハンガー用のL字型に加工したステンレスパイプを入れています。

トラッティは加工大理石と金属目地だけで構成された壁用の素材です。大理石のサイズが3種類あって、張ったときに縦目地がずれていた方が美しいので、届いた材料を一度床に仮並べして、どのように張ると一番美しいかを、TAGKENの佐藤さんと栗原さん、弊社の竹田さんが調整してくれました。

デザイン的にはあまり凝ったことを考えていない事務室スペースは、収納量重視で考えています。窓際に設けるオープン棚と窓に取り付けるブランドのサイズを竹田さんと前田君が実測してくれています。

ハクアーキテクツスタジオと考えるスチールフラットバーでつくる建具枠の精度

渋谷区L邸

大型メゾネット住戸リノベーションの渋谷区L邸の工事は、上階・下階ともに本格的に進み始め、かなり大掛かりな工事となっています。今回は、スチールFB(フラットバー)を使った建具枠についてご紹介します。

上階は既にLGS(軽量鉄骨)の間仕切りが立てられてて、部屋の骨格が見えてきました。

LGSの間には場所によって壁下地のベニヤ板や、遮音の為の断熱材は入れられています。

白くて重たい長物が多数搬入されています。実はこちらは…、

スチールフラットバー(鉄板)の枠材なのです。白く塗装されているので、軽そうに見えますが、6ミリの厚みのある無垢材なので、かなり重たくしっかりしています。

この枠材を製作してくれたのは、有富家具の有富さん。
モックアップ用に作ってくれていたスチール枠材を、木製の枠下地材に取り付けてくれた様子です。溶接されたL字型のフィン部分で、木枠にスチール枠を固定できるように作られています。

こちらの建具(扉のことです)と枠の図面の緑で囲まれた箇所、「St FB 6×117 メラミン焼付塗装 22-80B 五分艶」と記載されている部分はこの枠の仕様です。Stはスチール、FBはフラットバー、6×117はサイズ(ミリ表記)、22-80Bは色番号、5分艶はそのツヤの度合いとなっています。

建具図は全体としてはこのようなものとなっています。こちらは僕ら設計側が作った指示図で、部分的な詳細や仕上げ材、取っ手の作り方や枠の取り付け方が細かく指示されており、これを元に施工会社側が見積りをし、施工用の図面を作ってゆきます。

下請けとして入ってくれた有富家具が描いた建具の製作図がこちらです。先ほどとは別の建具の図面ですが、製作側は単に図面をトレースするだけでなく、実際に建具をどのように作り、どんな金物で吊り、どのように補強するかまで、この図面作成の過程で検討していくのです。
こちらは吊り金物で吊る「引き込み扉」の図面です。

こちらは引き込み扉の上枠の様子です。白いレールから吊り下げられている四角いプラスチックと金属でできたものが上部吊車(コマ)と呼ばれるものです。建具側にちょうどこのコマがはまるように欠きこみを作っておいてそこに嵌め込むのです。引き込み扉は2枚の壁の間に引き戸が引き込まれて見えなくなるので、柱の間にスペースがあり、そこの奥まで枠とレールが伸びているのです。

同じ枠の反対側見た様子です。コマ2つあることが判りますね。

基本的には枠は3方向に回りますが、傷がつきやすいので、取り付けが終わるとすぐにベニヤ板で養生されてしまいます。

建具と枠は、このフラットバーの枠だけでもかなり重たく、そこに更に建具の重量も掛かってくるので、枠を固定する枠下地もかなりしっかりとしたものになります。左右の枠だけではその重量はサポートできないので、上階のコンクリートスラブからアンカーバーで吊って固定しているのです。写真の木が横にわたっているのが枠下地で、何か所は細い銀色の棒で吊られているのがアンカーバーです。

今回のスチールフラットバーを使った枠ディテールは、実は設計監理を手伝ってもらっている設計事務所「ハクアーキテクツスタジオ」の後藤さんと関さんの事例を見学させてもらったことから始まりました。
ハクの後藤さんは、カガミ建築計画がまだ弱小だった頃のスタッフとして事務所を支えてくれたメンバーで、パートナーの関さんも学生時代からの知人です。カガミ建築計画の人手が足りないときには、これまでもたびたびお手伝いをお願いしてきました。
ハクが設計したお宅を見学させてもらった際、このフラットバー枠のディテールが非常にシャープで美しかったため、今回はそれを参考にさせてもらいました。
ハクさんも僕らのディテールを参考にしてくれているので、お互いに情報を交換しながら、設計力をさらに高めていければと思っています。