新宿区T邸のキッチンは、アイランドカウンターも壁面カウンターも当初から白い大理石のビアンコカラーラをお客さまがご希望なさっていました。なんといっても、無垢の大理石から削り出したシンクを据えるのですから、やはり無垢の大理石カウンターが良いだろうとの話になっていました。オープンキッチンで家の中心ともなるアイランドカウンターの石材は、写真で判断するのではなく、岐阜県&三重県エリアにある石材屋を巡ってお客さま好みのビアンコカラーラを選びに行く予定でした。
しかし、打ち合わせが盛り上がってゆく中で、アイランドカウンターはより存在感を強めたいとのことで、厚みを持たせたいとのことで5センチ(50ミリ!)の厚みで検討することとなりました。
色々な経緯があって、岐阜県の関ケ原石材のブロック材のビアンコから切り出すこととなりましたが、そのプロセスを以下にご紹介します。
こちらは当初案での大理石スラブ探しのために用意したスケッチ図です。
見積もり上はキッチンとパントリーの大理石カウンターはオーダーキッチンのリネアタラーラに、その他の洗面はランドリールームのカウンターは造作家具屋にお願いする予定でしたが、どうせオーダーするなら一緒の大理石にしようとのことで、全てをリネアタラーラ経由で入れることとなりました。
厚みを増すことが決まった際にリネアタラーラが作ってくれたキッチンのカウンター図です。アイランドカウンターのサイズは、カガミ建築計画では史上最大サイズの4100×1300サイズ(!)なので分割にしないとエレベータに入りません。
さて、これだけの大きさでかつ厚み50ミリのカウンター材をどこから手に入れるかを検討してみたところ、①アジアの大理石集積所である中国・福建省水头市には何枚か50ミリのスラブがあること、②日本の石材屋には厚み30ミリ以上のスラブ材は無いので、ブロックから切り出してもらう、の2通りが考えられることが判りました(費用をあまり掛けない方法としては、通常の25ミリ厚のスラブ材を購入して、コーナーを止め加工にして厚みある大理石に見せる方法もありますが、お客さまからメインのアイランドカウンターは無垢で行きたいとの強いご要望がありました)。
①の場合、費用は安くできるが、アイランドカウンターとL字型の壁面カウンターの石材が違うものになってしまう(色違いが生じる可能性が大きい)ことをお客さまにご説明したところ、多少費用が掛かっても是非ブロックから選んで、キッチン&パントリーだけでなく洗面も同じブロックから切り出した材でオーダーしようと決まりました。
お客さまに2名分の交通費をお願いして来たのはこちら、岐阜県関ケ原市にある関ケ原石材本社です。いつもは横目に見ながら通り過ぎてしまう屋外のブロック材置き場に向かいます。
御影石のような雨風に強い石材が外に置かれているのは判りますが、染みや汚れが付きやすいビアンコ系の石材もブロック材はやはり外に置かれているのです。
候補になりそうなビアンコカラーラのブロック材を関ケ原石材の担当の齋藤さんたちが選んで並べておいてくれたものがこちらです。一つのブロック材のサイズは高さ1200~1500、横幅1200~1500で、奥行き2000程度のサイズで、一つのブロックで15~20トンの重みがあるとのこと、かなりの迫力ですね。
外に保管されている石材は汚れているので、一度軽く清掃を掛けてくださったそうですが、乾燥していると石目が良くわからないので、一つ一つのブロック材の上からバケツで水を掛けて石目を浮き立たせてくれています。
僕、各務はこのように石材の上に偉そうに立って、一つ一つに石目を確認していきました。ブロックサイズによっては、歩留まりが悪い(必要なものを使った後の残りのサイズが悪いこと)と無駄が多くなってしまうので、大型サイズのものから良さそうなものを選んでいきます。
まずは12個あったブロックから2個にまで候補を絞り、水をたっぷりかけて貰った表面を間近から舐めるように(笑)チェックさせて貰いました。
そして中で一番良いと思われた石材を青い巨大クレーンで吊り上げて貰い、このように下面もチェックさせて貰いました。
ブロック材を選んだ際に四周を見て回ったところ傷があることが判りました。その傷は内部にも入り込んでいる可能性があるとのこと、そこを避けてスラブを切り出すような特殊なオーダーはできないので、下面から切り出した方が良いスラブが取れるのではと期待してのお願いでした。残念ながらお客さまの好みではない、濃い目の線が入っていたので、やはり最初に気に入った上面から切り出してもらうことになりそうです。
カガミ建築計画からは僕、各務と担当スタッフの竹田さん、関ケ原石材の齋藤さんをはじめ、この日の検査に協力してくださった方々と一緒の記念写真です。
横に振られている番号で、全てのブロック材が管理されているそうです。ここからどの厚みで切り出して行くかの打ち合わせに入ります。
厚み50ミリのアイランドカウンター材は、搬入を頑張ってもらい2分割で行くことに決めました。50ミリのスラブ材はどうしても2枚必要になります。その他のゲストトイレのカウンター材は、端部に装飾加工をすることになりました。
来客用トイレのカウンター大理石の端部の装飾のイメージはこの写真をお見せししました。こちらはお仕事もご一緒したことがある神奈川県茅ヶ崎市のKONARAHOUSEさんの実例写真をお借りしました(小形社長、勝手に申し訳ありませんでした…)。
こちらは、関ケ原石材が上のイメージ写真から厚さ20ミリのサンプルと、厚さ30ミリで作ってくれたサンプルです。こうして比べてみると、30ミリの厚みがないとプロポーションがおかしいので、この部分は30ミリの厚みのスラブを切り出してもらうこととなりました。一枚のスラブのサイズが約3000×1500ミリほどあるので、この手洗いカウンターを切り出した残りをどこに使うかも相談させて貰いました。
既に切り出されているスラブ材を購入するのと、新しくブロックからスラブ材を好みの厚みで切り出して使う場合の差額ですが、今回は70~80万円程度の差額になりました。といっても、当初は20ミリの厚みの材だったものを50ミリにしているので、当然使用する大理石の重量も増しますので、単純比較はできませんが、凡その目安としては、ブロック材からスラブ材を切り出す手間賃は約10万円と考えると良いそうです。因みに、墓石などに使い御影石は固い石なので、ブロックから切り出す時間は昼夜通して3日間ほどですが、大理石は柔らかいので丸一日でカットできるので、その分費用も安いそうです。
写真は以前撮影したものですが、このような巨大な丸鋸のような機械でカットしてゆくのです。水を吹き付けながら丸鋸が高速回転してカットしてゆくのですが、昼夜を通しての丸一の作業で、どれだけの電気と水量を使うのか気になってしまいます…。
因みに、一つのブロックから同じ厚みで何枚もカットする際はこのような機械を使うそうです。
そして、後日カットされたスラブの写真が届いたので、ここからは写真判断でどこからどの部分をカットするかを指示して、リネアタラーラに施工用の資料を作ってもらいました。
そして後日現場に運ばれてきた5センチ厚の大理石天板がこちらです!この天板はお客さまの強い意向で、撥水処理剤を塗布していないので、職人さんが直接手を触れたり、汗が天板に落ちたりすると、それがシミになってしまう可能性があるので、相当に神経を使う作業だったそうです。
イギリスのdeVOL社の無垢大理石から削り出したシンクとの色味、斑の入り方もとても似ており、とても良い感じに仕上がりそうです。