ちょうど5年ほど前に、台東区のオーナービルのペントハウスのリフォームのご相談を頂いていたMさまから、以下のようなメールが今年の春に届きました。
「ご無沙汰しています。2012年に、ビル自宅部分のリフォームの件で ご相談にのっていただいた台東区のMです。その節はありがとうございました。その後色々あって、港区三田
リフォーム済物件だったので少し手を加えるつもりで、不動産仲介会社の紹介のリフォーム会社D社と仮契約を結び、すでに解体も済んだ状態となっています。まだ全体のイメージが定まらないままの見切り発車で工事が始まり
工事の進め方や仕上がりに大変不安を感じています。
せめて、玄関回り、リビング、ダイニングの壁面、
とのご連絡を頂きました。お電話でもお話をしたところ、とてもお困りの様子でしたので、まずはお話だけでもとのことでこちらの事務所に来て頂きました。Mさまもリフォーム会社のD社も簡単な工事という認識で契約や解体を先行してしまったようですが、実際にはMさまがお求めになっている空間の質は、D社には難しかったようで、Mさまからの素材提案に対して、D社が完全に受け身になってしまい、言われた通りのことしかできないような状態になってしまっているようでした。また、契約時の概算見積りも不明箇所が多く、一式工事ばかりで、今後に不安を感じるような内容でした。ちょうど、Mさまが現場のカギを持っているとのことで、近くでもあるのでご一緒に解体まで済んだ現場を見に行くことになりました。
ザっと見ただけでは、大きな問題は無いように感じられました。
元々平面図以外の図面がないまま工事着工しているようで、細かく見てゆくと図面と現場の床に描かれている墨出し寸法が違っていたり、キッチンの施工図と梁の位置がずれていたりとお客さまが不安に感じられることが実感できるような現場であることが分かりました。とはいえ、D社がなにか不誠実な工事をしているというより、Mさまの考えている空間をどのように実現したら良いのか分かっていないことが一番の問題だと思われた。またMさまの奥さまも色々と考えているうちに、インテリアイメージでも迷子になってしまっているような印象を受けたので、D社が作ってきた見積りを査定して、図面で収まっていない箇所を指摘してゆくと同時に、Mさまの奥さまともう一度素材を見直してゆく作業をアドバイスしてはどうかというご提案をいたしました。
50万円という費用で4~5回の打ち合わせとメールのやり取りで、問題点の洗い出しと奥さまのインテリアイメージの再構築をお手伝いするお約束でアドバイスをすることになりました。既に解体後の工事がストップしていましたが、一旦すべてをストップして、奥さまと一緒に素材ショールーム巡りをいたしました。こちらは原宿のアドヴァンでタイルのサンプルを見ている様子です。
僕らが良く使っているアドヴァンのホワイトエクスピリエンスは白も灰色もとても素敵なので、どこかに是非使いたいとのことになりました。
既に奥さまが集めていたカーテンやファブリック類のイメージも、アドヴァンの打ち合わせテーブルを使わせてもらって、お話をさせて頂きました。
キッチンもすでに発注済とのことでしたが、天板はまだ決まっていなかったとのことで、クッチーナのショールームを訪問して、3種類のクォーツストーンの中から2つを選ぶという考えで進めさせていただくことになりました。
他にもご一緒にショールーム巡りをして集めてきた素材を事務所の打ち合わせテーブルの上に載せて、リフォームプランと見比べながら、どこに何をどのように使ってゆくかをお打合せさせて頂きました。
更にその後、仮決定した素材に加えて、新たに取り寄せた素材をもって現場にご一緒して、すべての仕上げ材を一つ一つ決定して行きました。
決まった素材を見積りができるように、担当スタッフの神崎さんが手書きで図面に書き込んだものがこちらです。
最初にはなかった展開図も、こちらからの依頼でD社に描いてもらいました。幾度か手直しをしながらやり取りをしていったのですが、どうも反応が悪く、改定された見積りも出てこないうえに図面の訂正も進まず、何度も同じやり取りを繰り返すようになってしまいました…。
ひと月ほどで大至急で仕上げ材を一通り決めて、図面に訂正指示を出して行ったのですが、そこから2か月経っても見積りが出てこないとことで、D社からリフォームの内容がとても難しくて、自社では図面も書けないので、設計者を入れたいので、その分の追加設計料が欲しいとのメールがお客さまのところに届きました。
因みに、こちらはMさまとのアドバイスの契約の当初から、D社と直接会って話をしたり、メールのやり取りをすると、彼らの世話をすることになってしまうので、すべてお客さまのMさまに間に立って貰っており、直接会ったりメールのやり取りをすることは避けていました。
ここまで折角乗り掛かった舟だから、何とかD社に最後まで工事をして貰いたいとおっしゃっていたMさまのご主人が、ここまでMさま側の設計者(つまり僕らのこと)がやってくれたのに、見積も出ないまま待たせて、施工側での設計者を入れたいとはどういうことかとの話になってしまいました。こちらが知っている施工会社に現地を見て貰って、ここから工事を引き継いでやってもらうことができないかとの話が上がって参りました。
こちらもD社がそこまで悪いとは思っていなかったので、何とかD社で最後までできればと思っておりましたが、自分たちの能力では実質できないとお手上げをしたのと同じ意味だと理解できましたので、良くこちらの工事をお願いしているリフォームキューの岩波さんと森井さんに現地に来てもらいました。
当日は設計&営業担当のお二人の都合しか付きませんでしたが、その後カギをお預かりして、電気や設備の施工会社の人達にも現場を見て貰って、お見積りの準備を進めて貰っていたところ…、
見積り上施工されていなければいけなかった、PSからの給水管の更新工事ができていないまま、ユニットバスを設置してしまっているので、一度ユニットバスを解体しないと給水管の一部が古いままになってしまうという結構大きな問題が隠されていることが分かりました。リフォームキューの見積りが上がった段階で、比較検討資料を作った際には、面積間違いや単価の間違い、工事の抜けなども多数見つかり、MさまもD社での工事は完全に諦めて、紹介してくれた不動産仲介会社も交えて、不誠実な工事をしてきたことへの責任も含めて、工事を降りて貰うとともに、ここまでの精算を厳しく進めることを伝えて貰いました。