西麻布N邸の玄関ホールからリビングへの扉に、何か特別の素材を使いたいとのご要望を以前より伺っており、高級突板のシャム柿を使った建具のご提案をいたしました。イメージ写真とサンプルをお見せしながらご説明したところ、非常に良さそうだとのことで、いつも付き合いのある突板屋の山一商店に伺って、山内社長に相談に乗ってもらいました。
これは、山一商店の打ち合わせ室に置いてあった、そのシャム柿の板のサンプルです。シャム柿は別名ジリコトとも呼ばれ、素地の黒っぽい部分はウォールナットに似た色味ですが、波のような不思議な模様がついています。また、板の端の白太部分(樹皮に近い周辺部)は強いコントラストを描くように白く、濃淡のはっきりとしたとても珍しい木目を持つ素材です。中南米原産の木材で、非常に珍しい素材で入手困難な銘木の一つといわれているそうです。日本ではご仏壇などによく使われていた木材だそうです。
以前、山一商店の倉庫に伺った際に希少で高価な材として紹介を受けておりましたので、今回は造作家具をお願いすることになった造作家具屋クレドの飯塚さんと一緒に山一の倉庫を再訪させて頂きました。
2種類の突板があったので、それぞれを倉庫から下の階に移してもらい、まずは水で濡らして木理(モクリ:木目のこと)を確認させて貰いました。白太の部分をいかにうまくレイアウトするかが、突板合板作りのカギになります。
今回お願いする使う建具と造作家具はサンバチのベニヤ板(3尺×8尺:
割れている部分は避けて、白太がうまく入るように按分しながら、大まかに印をつけてゆきました。
それらに番号を振って、無駄がないようにレイアウトしてゆけば良いのですが、こちらとしても折角現地で見ているものなので、高いところに上って上から写真を撮らせてもらいました。
この写真を事務所に持ち帰って、フォトショップで切り張りして、突板のレイアウト
図を作るためです。
帰り際に撮影した記念写真です。左から、山一商店の山内社長、僕各務に、クレドの飯塚さんです。
こちらが事務所に戻って作ったシャム柿の突板レイアウト案です。白太の入り具合やバランスをこれを見ながら微修正してゆく予定です。仕上げイメージですが、建具については鏡面塗装で華やかに、ワインセラーを入れ込んだ造作家具は艶消しでしっとりと仕上げてもらう考えでいます。
突板屋訪問からちょうど一月後にこちらに届いた塗装サンプルを、お客さまとの打合せ時にお見せしました。左の2枚が艶消しで、右2枚が鏡面仕上げです。二種類の突板で微妙な色違いが出たらどうしようと悩んでおりましたが、サンプルを作って貰ったところ、目立つ色違いはなくホッといたしました。
お客さまからは、どちらもとても良いので、是非この方向で進めて欲しいとのご依頼を頂きました!
こちらは、その後に山一商店から届いた、突板の製作過程です。左上から時計回りに、糊を塗った突板の上に、端のボロボロな部分を裁断した突板を並べてゆき、それをプレス機械に掛けて、突板ベニヤ板ができあがるというプロセスです。
左側が最初に仮並べしたもので、右側が突き上がったベニヤ板です。この状態では、まだ地味ですが、塗膜をまとってどのように仕上がってくるか、今からとても楽しみにしております。