千代田区M邸の玄関入って正面に見える壁は、当初からMさまの奥さまが、建築家・安藤忠雄氏の作品のようなコンクリート打ち放し仕上げの壁にしたいとのご要望がありました。
玄関入った正面にコンソールを置いて、お手持ちの骨董や手工芸品、あるいは季節の生け花などを飾るバックグラウンドの壁としてコンクリート打ち放しの壁になさりたいとのご希望でした。
お客さまも当初は、本当にコンクリートの打ち放し壁をマンション内で打設できるのであれば、本物のコンクリートの質感が加わるので、是非検討して欲しいとのご依頼でした。マンション管理組合への申請のこと、構造的にそれだけの重量を加えても大丈夫か、さらにはマンション内でどのようにコンクリートを打設できるかの3つの問題点をクリアすべく、検討を致しました。
上記のスケッチは、施工会社の青と現場打設する場合に、どのように型枠を組んで、どんな手順で打設すべきかを打ち合わせをするために担当スタッフで副所長の前田君が書いてくれたスケッチです。
同時に、旧知の構造事務所のビーファームの中野先生に、マンションの状況を説明して、RC壁の耐荷重にマンション全体の構造が耐えうるかを計算して貰いました。僕らがお手伝いする前にお客さまが行った事前解体工事の段階で、相当量のブロック壁下地やシンダーコンクリートの撤去を行っていたので、それらの重量を考えると、耐荷重的には問題ないとの計算結果も出てきました。
青には見積りも作って貰い、金額的にもお客さまからOKを貰っていたので、あとは施工方法の詳細検討とマンション管理組合への申請をクリアできれば、実行できそうなところまで行ったのですが、躯体のスラブに鉄筋を緊結する方法がネックになって、それをクリアするのが難しいことが分かりました。マンション全体の耐震補強のような大きな目的があれば、住民の皆さまが理解して頂くことができるのでしょうが、単にコンクリート打ち放し壁をデザイン的に欲しいという理由で、それを説明することが難しそうであることをお客さまにお伝えしたところ、現実的な判断として、打ち放し風の左官壁でも良いだろうとのお話しになりました。
千代田区M邸の壁と天井の本漆喰をお願いしている原田左官の打ち放し風仕上げの技術は、業界随一とも呼ばれているので、気持ちを切り替えて左官仕上げで作って貰う流れに変更いたしました。
まずはコンクリート色に調色したモルタルを壁一面に塗ります。ただ、良く見ると、コンパネの位置を意識して、継ぎ目っぽいラインも作られています。
ピーコン(またはセパ孔)と呼ばれる、コンクリートを流し込むため型枠を鉄筋に固定するための金物の跡を再現するために、丸く切った厚紙(!)を壁に張っていきます。
壁全体に張るとこのような感じになります。これだけでもちょっと打ち放し風に見えてくるのが不思議ですね。
今度はその上から、また調色された仕上げのモルタルを左官していきます。
職人さんが持っている木の角材で、コンパネの継ぎ目のゴワゴワを表現するのです。一発作業なので、結構緊張する作業だとのことでした。
まだ出来立てホヤホヤのコンパネ目地ですが、それらしく出来ています!
そして、これが最終的に仕上がったコンクリート打ち放し風の壁です。間近によってピーコン孔の深さを見たり、直接手で触ると、コンクリートではないことが分かってしまいますが、パッと見は、重量感のある本物のコンクリート打ち放しに見えます!