Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

解体時に分かった柱位置のズレと浴室サイズ調整

三田S邸

リノベーション工事に良くある、解体後に分かったRCの躯体柱が、当初の図面や実測から推定してきた位置からズレていたことで、その奥に設置する浴室と洗面のサイズ寸法を調整することとなりました。

まずはこちらが解体工事途中の現場です。まだ床下地や天井の古いエアコンや設備配管が残った状態ですが、躯体の状況が見えてきています。工事をお願いしているリフォームキューの現場監督の滝川さんから、僕らの設計図面と実際の現場を実測した寸法を比べたところ、水回り近くにあるRCコンクリートの躯体柱の位置がずれており、今の設計のままだと洗面室の通路幅が狭くなってしまいそうだとの連絡を貰いました。

黒字で書かれていた寸法がこちらの想定寸法で、その上から手書きで赤字で書かれたものが解体後に実測した寸法となります。赤で囲まれた寸法が、当初予定3588ミリだったものが、実測したところ3483ミリで、100ミリ(つまり10センチ)狭くなっていることが分かりました。柱の反対側の青で囲まれた寸法は7635ミリから7716ミリとなり、8センチほど広くなっていました。
また、浴室の床の高さも洗面から10センチ位上がってしまいそうだとの報告もありました。

オーダーユニットバスを当初の設計のままでオーダーし、普通に施工する手順で考えると、洗面の通路幅が775ミリと800ミリを切ってしまうのです。紫の字が現場監督の滝川さんが書いてくれた寸法とメモ、それに対して赤い引き出し線で書かれたメモが弊社竹田さんからのリクエストと質問、それに対して緑の手書きで書かれたものがオーダーユニットバスの東京バススタイルの眞柄社長からのコメントです。

これらの質疑をしつつ、解体された浴室回りの実測と調査に行って参りました。参加したのは、リフォームキューの現場監督の滝川さんと補助の春田さん、設備担当の槻川原さん、そして東京バススタイルの眞柄社長と、カガミ建築計画から担当スタッフの竹田さんと各務です。

黄色いテープが床に張られているのが当初設計案で考えた場合の浴室の範囲となっています。まず最初に相談したのが床レベル(床段差)のことです。眞柄さんからなぜ床レベルが高くなると考えたのかを聞いたところ、排水管を以前の浴室の排水管に繋ぎ込もうと考えていたことが分かりました(写真中央で手前まで伸びている灰色の管です)。その右奥に見えている排水管も、床スラブ下では合流していることがわかっていたので、そちらの方が床からの立ち上がりのエルボ(L字型の接続管)の位置が低いので、そちらに繋いだ方が低くできるのではと提案いたしました。浴室の真下に配管接続口があると却ってグルリと排水管を取り廻さないといけないのですが、少し外れた位置の配管接続の方がスムーズにできるとのこと、ざっと眞柄さんに計算してもらったところ、そちらであれば洗面床と浴室床をフラットにできそうだとのことが分かりました。

浴室サイズと洗面の通路幅のことについても、色々な選択肢を皆で出しながら相談をしました。浴室壁に大判タイルを張る予定なので、そのことでPSからの離れを少し余計目に取っていた部分の再検討や、洗面側の躯体壁との納まりを考えたりした結果、柱の位置がずれていたことが分かった時の速報では、浴室サイズをいじらないと洗面通路幅が775ミリと出ていたものが、829ミリ取れることが分かりました。細かい工夫で54ミリ広がった計算になります。

これからお客さまがお年を取ってゆくことを考えると(実際は誰もがですが…)、やはり洗面通路幅は900程度は欲しいと考えていたので、そのための施策をいくつか考えたのが、上の比較表です。ちょっと判り難いのですが、プランAが細かい工夫も加えた結果、浴室サイズそのままで洗面通路幅が829ミリの案です。プランBは浴室のサイズを少し変形させて、浴槽のヘッドレスト側がクランクする案です。こうすると洗い場の寸法を縮めることができて、通路幅を879ミリ確保できる案です。プランCは浴槽のヘッドレストをなくすことで、浴室を整形にしながらやはり通路幅を879ミリにする案です。そしてプランDは浴槽部分をクランクさせて、かつヘッドレストをなくすことで通路幅を929ミリとする案です。
これらの案を用意して事前にメールでお送りしたうえで、別荘で休暇中のお二人とオンラインでお打合せをさせて頂きました。
打合せ当日、オンラインではまず最初にこちらから(つまりお客さまから)お話をさせて欲しいとのことで、お二人のお話を伺ったところ、別荘の浴室サイズ、浴槽サイズを測ってみたところ、そこまで大きな浴槽や浴室は必要ないので、浴槽をワンサイズ小さすれば、全て解決するのではないでしょうか?とのありがたいご提案でした。当初案では、ジャクソンのネオベンティ1785(浴槽長さ1700ミリ)でしたが、ワンサイズ小さくすると、ネオベンティ1685で浴槽の長手寸法が1600ミリとなり、それだけで100ミリ(つまり10センチ)縮小することができます。そうするときれいな整形の浴室で洗面の通路幅が929ミリとすることができるわけです!
メールを送ったところから、別荘の浴室を実測して、ジャクソンのホームページも研究して、このような明快な解決方法をご提案してくださったこと、本当にありがたく、嬉しいことでした。Sさまご夫妻、どうもありがとうございます!
これにて、解体時の寸法違いの問題はとてもきれいに解決したことになります。