Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

大理石探しツアー 元麻布I邸に最適な石を探して

元麻布I邸

超高級マンションリノベーションプロジェクト、元麻布I邸に使う大理石を探しに、担当スタッフの前田君、施工会社リフォームキューの岩波さんと丸一日掛りで、岐阜県と三重の石屋の倉庫(ストックヤード)と加工場を5か所見て回ってきました。

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5か所の倉庫といっても、特に岐阜の関ケ原石材と三重の松下産業は、ともに巨大は倉庫を持っているので、一通り見て回るだけでも、相当な時間が掛りました。

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今回の大理石探しツアーのコンダクターをしてくれたのはキダマーブルの斉藤さんとアジアグラニットの池田さんで、まず最初に岐阜県大垣市のアジアングラニット本社にて、図面を見ながらどこにどのような石が必要かを確認してからツアーをスタートいたしました。因みに、キダ・マーブルは大理石の設計(こちらの指示に従って施工図を描く)・加工・取付工事までを行ってくれる東京の石専門の施工会社で、アジアングラニットは、設計図に基づいて、スラブ材からの切り出しや石材のエッジの磨き加工などをしてくれる加工専門の会社です。

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元麻布I邸プロジェクトの為に探している大理石は、リビングのテレビボード背面とカウンター材として使う黒字に白い線が入ったネロマルキーナというスペイン産の大理石、それに洗面カウンター材として使う白い大理石(まだ種類は決めていません)、そして玄関ホールの床に使うベージュ色のライムストーンの三種類の石材です。
なかでも一番重要なのが、黒い大理石のネロマルキーナです。こちらの石材は、日本での在庫が乏しいネロマルキーナのスラブを、事前にアジアングラニットで確保しておいてくれたものです。

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きれいな大理石ではありましたが、黒い部分に灰色が混じっており、白い線もちょっとはかなくて、頼りなげな風合いでした。もしこれより良いものが見つかればそちらに、見つからなければこれでも良いだろうとのことで、一つの宿題になりました。

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こちらは、洗面カウンター用のドラマチック・ホワイトのスラブ材です。自分の倉庫にあったものを見やすい位置に出しておいてくれました。こちらはとてもきれいな柄で良いのではないかとことになりました。

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大垣のアジアングラニットに保管してあったのは、上記の2種類だけだだったので、まずは一路三重県のいなべ市にある松下産業の石材倉庫に向かいました。こちらには素直な色と柄のライムストーン、ブランドドマールが保管されておりました。ライムストーンも質の良いものが少なくなってきている中で、こちらの石材はとても良く、かつスラブ枚数も揃っていたので、決定といたしました。

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きれいではありますが、少し斑(フ)が入っているので、それをどのような石取りで使ってゆくかを、キダマーブルの斉藤さんとリフォームキューの岩浪さんと決めてゆきました。3つの石のうちの一つを、早々に決定することができて、まずはホッといたしました。

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その後は大きな倉庫を黒い大理石と白い大理石を探して、ウロウロさせて頂きました。その際、白い大理石で玉柄の斑がとてもきれいなビアンコ・ブロイエが見つかりました。ビアンコ系の大理石は、ビアンコ・カラーラがもっとも有名ですが、斑や柄、白地の色の違いによって掘り出された際に命名されるそうで、実際にはと同じイタリア・トスカーナ州のカラーラの街で採れるものです。
とてもきれいな模様だったので、最初に取っておいてもらったドラマチックホワイトと比べるために、同じ材から切り出したサンプルを貰うと共に、他の人に売れてしまわないように抑えて貰う手筈を進めて貰いました。

その後は松下産業にはめぼしいものが見つからなかったので、岐阜県の関ヶ原市の関ヶ原石材に向かいました。

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関ヶ原石材は、誰もが認める日本一の石材屋です。大きな倉庫が幾棟もあり、さらにブロック材からスラブ材を切り出す大型カッターが何台も可動し続けている大工場でもあります。
こちらの倉庫には、珍しい希少種の大理石が沢山並んでいました。

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日本の石材産業は、80年代後半のバブル期が一番盛んで、その後は中国で加工された石材に押されっぱなしで、昔のように珍しくユニークな柄の大理石を仕入れても、ほとんどでなくなってしまったとのことで、こちらに残っているのは、同じ石種が一枚か二枚程度しか残っていないスラブ材ばかりでした。

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こちらは珍しいグリーンウェーブという中国産の大理石だそうです。

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以前、他のプロジェクトで使って、その後も他のお客さまから、良いものがないか探しておいてくれないかと依頼されていた、イタリア産のポルトロという大理石も見つかりました、ただ、そちらのプロジェクトに使うには、柄が大きすぎるのと色味が合わなさそうでした。

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こちらも希少な大理石のシルバートラバーチンのきれいな柄が見つかりました。僕らが良くお願いするオーダーキッチン屋のアムスタイルさんの受付カウンターに使われている素材で、とてもきれいな色味でした。

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黒い石ということで、屋外に置かれている御影石もザッと拝見させて貰いましたが、こちらはベタッとつぶしたような黒でしたので、使えそうではありませんでした。

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気分を変えて、ブロック材が置かれている倉庫も後学のために、見学させて頂きました。身長186センチの僕、各務が小さく見えますから、どれだけ大きなブロック材かが良く判るのではないでしょうか。

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こちらは加工工場です。写真ではあまりうまく撮影できませんでしたが、幾つもの大きな機械が音を立てて動き続けている様は、凄い迫力でした。

日本の中部地方が誇る二つの大きな倉庫を見ても、最適な大理石が見つかった気がしていなかったので、近くにある幾つかの比較的小さな倉庫を持っている石材屋さんを二つほど追加で見学させて頂きました。

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大垣市のワダマーブルで見つけたのが、こちらの黒い大理石です。黒地がとても深く黒くて、白い線もクッキリ入っており、ちょっと見ただけで、これこそ探していた石なのではと思えるような石材でした。

夕方で暗くなり始めていましたが、無理をお願いして、クレーンでスラブ材を吊り上げて貰い、全体の柄も拝見させて貰いました。この石材はネロ・クラウンと呼ばれている中国産のネロ・マルキーナの代替え品でした。中国産の大理石は欧州産と比較すると、安物で質も悪いとされているようですが、これは少し山キズ(山から切り出した時から入っているキズで、スラブ加工した後に割れたキズとは区別されています)が見受けられましたが、それを避ければ、上手く使えそうでしたので、最後になって、アジアングラニットが保管していたものと差替えて貰うようにお願いいたしました。

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最後は、スタート地点のアジアングラニッとに戻って、こちらの工場で得意としている技術を見せて頂きました。

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小幅に切り出した石は、搬入や取り付け時に割れやすいので、背面にスリットを入れて、そこに鉄筋を埋め込んで、接着剤で埋める加工技術が得意だとのことでした。他にも、石磨きのための道具や、カッターの刃なども間近で見学させて頂きました。

とにかく、ほぼ丸一に掛けての大理石探しツアーで、満足が行くものが見つかって、とにかくホッといたしました。あとは、カットサンプルと、撮影した写真をお施主さまにお見せして、了解を得たうえで加工を始めて貰う段取りになりますが、設計デザイナーとして、自信を持ってお勧めすることができる素材が見つかって、丸一日の努力が報われた気がいたします。