Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

オニキス(石英)素材探しのプロセスとパネル取り付け

港区R邸

造作家具の取付が山場を迎えている港区R邸ですが、超大物の部材、光を透過する石英のオニキス(オニックス)パネルの取付が行われました。

このオニキスのイメージは、お客さまがとある場所で見かけたというオニキスらしい写真を設計早い段階で見せて下さり、そこからその素材探しが始まりました。

お客さまが見つけたオニキスらしい写真イメージ

この写真をベースに、まずは日本の知っている石材屋に問い合わせをしましたが、全く見つかりませんでした。昨年11月に中国福建省のアモイ郊外まで出かけて、ようやく似たようなものを見つけることができました。

オニキスと背面から光を照らした様子

ただ、この材料はサンプルを貰うこともできず(サンプルを貰うためにスラブ材一枚を買ってもらう必要があると言われてしまいました…)、お客さまに確認する方法が見つかりませんでした。
以前ニューヨークの石材屋さん巡りをした際の写真から、イタリアにほぼ同じものを扱っている会社を見つけたので、イタリア輸入建材に詳しい商社経由で資料を取り寄せて貰いました。色違いのものが幾つかあったので、それらのサンプルを取り寄せて貰いました(サンプル一枚につき約2万円の費用に加え、サンプルの納期が2か月ほど掛りましたが)。

ブラウンオニキスのサンプル

ホワイトオニキスのサンプル

一枚につき取り寄せ費用が約2万円掛った貴重なサンプルです。サンプルも2度に分けてお願いしたのですが、最初のものはひと月ほどでしたが、二番目の便はさらにそこから2か月ほど掛りました。サンプルでこの状況だと納期が心配になりました…。

LEDの面照明

背面から照らす照明のシステムも色々な方法を検討致しました。最初は、LEDの面照明を扱っている会社を見つけて、そこからサンプルを借りて照らしていました。

オニキスの照明実験

因みにこちらは中国で貰ってきたいわゆる本物の一枚もののオニキスのサンプルで、

オニキスの照明実験

こちらはイタリアのクリスタルストーン社の着色オニキスです。共に最初の頃に手に入れることができたサンプルでしたが、残念ながらこれらは検討の対象にもなりませんでした。

LEDとオニキスパネルの取付詳細スケッチ

LED面照明を背面に使う場合のメリットは、LEDのラインが見えないことでした。オニキスの背部のスペースを最小にすることができるのです。

LED面照明用のLED器具

このような光源に特殊な加工をしたアクリルを差し込んで照らすのですが、ある程度以上の光量を確保できないことがネックになって、最終的にはLEDのライン照明を一定の間隔で並べることになりました。

オニキスとラインLED照明の実験

オニキスとラインLED照明の実験

それがこちらのイメージです。こちらのスタイルでもLEDの間隔を変えながら、光量を調光して変えたり、オニキスの背面に乳白色のアクリルを挟んだりしながら色味を確認してゆきました。手作りの理科実験道具のようですね…。

オニキスの背面からLEDを照らす実験

オニキスの実照テスト

最終的にお客さまに了承を頂いたのがこちらの実験でした。黄色味が掛った色が良いとのことで、LEDの色温度も低めにして、ラインは密度を高めにして調光することで光量を調節する方向で進めることで決まりました。

オニキスの背面からLEDを照らす実験セット

その時に実験の様子がこちらです。これで素材とLEDのシステムがようやく決まりました。

ただ、サンプルをお願いしたイタリアの会社から仕入れることになると、大判2面分で800万円近くの価格になってしまうことが見積りで分かり、かつ納期が全く読めないとのことだったので、何とか同質のものをより安価に入れることができないかと担当の前田君が色々なツテを辿って探したところ、なんと3分の1ほどの価格で入れられる会社が見つかり、そこでの施工をお願いすることになりました。

人造オニキスの組み立て

送って貰ったサンプルも良かったので、こちらで進めることになったのですが、送って貰う現物スラブの写真を見せて欲しい旨頼んだところ、それは出来ないとのことでした。「なぜ?」と質問したところ送られてきたの、こちらの写真です。つまり、オーダーが入ってから材料のオニキスの小板を型に嵌めて接着剤を流しいれて固めて作るので、完成するまで写真は送れないとのことだったのです!
このようにして作った原材料の表と裏を磨き込んで、両面から透明ガラスを貼って、その中央部分を機械でスライスして、それぞれ裏面にガラス、表面に人造オニキスが張られた材料ができあがるとのことでした。

現地に届いたオニキスの原版

そしてはるばる日本の現場まで届いたオニキスのスラブ材がこちらです。背面を透明ガラスで固めているとは言え、強度の心配があるので3枚に分割したものを取り付ける手はずになっています。

オニキス壁の色味確認テスト

最初の写真と同じものですが、このスラブをLED照明の前に掲げてみた様子です。やはりこのままだと背面のLEDが見えてしまうので、乳白色のアクリル板を当初の予定通り挟むことになりました。

オニキス壁用のLED照明の確認

LEDの熱を排熱するための給気口と排気口の工夫

背面のLED照明のシステムはこのようになっており、上部と下部にそれぞれ天井裏と床下の空間を繋げる排気口と給気口を設けて、内部の温度が上がらないように工夫をしています。箱自体は光を乱反射するように白いポリ合板で作って貰っています。

職人さんたちが、オニキスを取り付けてくれている様子です。

オニキス壁のディテール

全てを取り付けて、黒く焼き付けたL字型の金属製の押し縁(オシブチ)で外れないように留めて完成です!

オニキスが2枚張られた港区R邸のリビングダイニング

2枚のオニキスを取り付けた様子です。

LED背面照明を点灯したオニキスの様子

背面からのLED照明を点灯した時のオニキスです!設計開始当初にお客さまから頂いたイメージによくぞここまで近づけることができたものだと、我ながら感心してしまいました。ここまで色々な形でご協力くださった素材メーカー、建材輸入商社、LED照明メーカー、そして造作家具のニシザキ工芸、工事のリフォームキューの坂本さんと織田さん、弊社の設計担当の前田君、ありがとうございました。これは必ずお客さまも満足して下さるハズです。