Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

リノベ設計に効くハーフェレ金物_270度ヒンジとエアヒンジを採用した大田区S邸キッチン

大田区S邸

大田区のヴィンテージマンションリフォームS邸のキッチンの組み立てが始まりました。
今回は、トール収納の扉を270度まで開く特殊なヒンジと、極小サイズのエアヒンジといった、ちょっとマニアックな金物の工夫をご紹介します。

まずは背面コンロ側のキャビネットの組み立てからスタートします。左右にトールキャビネットがあり中央のカウンターセンターにガスコンロが入るキャビネットです。今回はこの向かって左側のキャビネットの使い方と特殊なヒンジについて後半で解説したいので、以下、キッチン組み立ての様子は簡単な紹介に留めておきます。

左上の大型ビルトイン型冷蔵庫が入るサイドキャビネットは、右から順に、引き出し式パントリー、その左が冷蔵庫置き場、動かせないPS部分をキャビネットと同材で囲んだ柱型、という構成です。
さらにその左側には、コーヒーメーカー等を置くカウンターと吊り戸が続きます。右上は中央に来るペニンシュラ型(半島型)カウンターです。こちらにシンクが入ってきます。3つの大きなキャビネットのレベルを出しながら慎重にセットしていきます。次は大判セラミックなどの化粧材を取り付けていきます。

こちらはペニンシュラに載せる天然石の甲板です。先回のブログ(他のプロジェクトのブログ記事ですが…)で細かく説明したクォーツサイトの「タージマハール」です。二段カウンター構成で、立ち上がり部分にコンセント穴が開いています。

ペニンシュラにカウンター材が乗った様子です。二段カウンターの上段(右側部分)と側面は天然石ですが、シンクが入っているメインのカウンター(左側部分)はタージマハールとそっくりな柄の大判セラミックです。

さて、今回のブログの本題です。ガスコンロの左側のトールユニットをご覧ください。こちらに一工夫がされているのです。箱の左側にちょっと大きめの丁番が幾つか取り付いているのが見えるでしょうか?実はこのトール収納の扉は270度開いて欲しいと考えていました。

270度まで扉が開く丁番を使う理由は、こちらの図解を見て頂くと分かりやすいと思います。お客さまが来たときには電子レンジや炊飯器を収納するトール収納内部を扉で隠すことができるが、普段は扉を開けて使いたいので、扉が邪魔にならないようにトールキャビネットの側面にピタリと寄せることができるという仕組みを実現することを目指しているのです。

12年前にお手伝いしたプロジェクトで、270度回転するヒンジが必要になり、色々と調べてハーフェレ社のこちらのヒンジを使ったことがありました。今回オーダーキッチンをお願いしたリネアタラーラの牧野さんに調べて貰ったのですが、残念ながら廃盤となっていました。

他社で探しても見つからないとのことでしたので、こういった複雑な動きをする丁番の専門会社であるハーフェレ社であれば、後継機種があるのではと考え、ハーフェレ社に直接問い合わせをしてみました。そうしたらなんと、日本では販売していないが、ドイツ本国では上記のヒンジが販売されていることが判り、このキッチンの為だけに輸入してもらうこととなりました!

特殊な動きをするヒンジなので、まずは分解写真で見てください。ただ、これだけだと良く分からないので、(初めて)動画をブログにアップしてみます!

手で押さえている部分が箱で、青いパネルが扉だとすると、扉を270度回転させることできる特殊な家具ヒンジです!このモックアップはオーダーキッチンをお願いしているリネアタラーラが扉の取っ手のことや、扉背面に取り付ける反り止めとの関係も含めて検討したうえで作ってくれたものです。

ちょっと先走ってしまいますが、完成時の様子がこちらです。担当スタッフの竹田さんにモデルさん役をやってもらいました。扉が完全に開くので、トール収納内部の炊飯器用引き出し式の出し入れもスムーズです。そして普段開ききった状では、玄関へと抜ける通路の行き来も問題なく、照明スイッチもうまく使えるように仕上がりました!

もう一つ、同じハーフェレ社の極小ヒンジもご紹介します。エアヒンジという名称のやはり優れものなのですが、こちらは既に日本に入ってきて約9年経つので建築・インテリア関係の方はご存じだと思います。

キャビネットにこのような穴をあけて、ヒンジを差し込んでビス止めするだけで取り付けができて、サイズが極小なので、ほとんど目立たないというものです。こちらについては、ハーフェレ社のデモ動画がありますので、そのリンクを張っておきます。

そしてこちらがひと通り組みあがって、養生されたキッチンの全容です。
以下、ちょうど良いタイミングでニュース記事が公開されました。

先月、新宿デザインセンターオゾンにて話題の(笑!)ハーフェレショールームを訪問取材した際の記事「リノベ設計に役立つ!ヨーロッパで磨かれたハーフェレの家具/建築金物の活用法を建築家・各務謙司氏が解説」がちょうどアップされました。

以前より金物で困った時に相談に乗って貰っていた、ハーフェレの佐野さんと大木さんに色々と細かく詳しくお話をした様子が分かる記事ですので、どうぞご覧ください!