Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

造作家具の現代製作所工場見学

文京区S邸

先回に引き続き、また家具工場の見学です。今回は、一番良くお世話になっている現代製作所の神奈川県横浜市都筑区川和町の工場です。

現代製作所とのお付き合いはかなり深く、まだ設計者として独立したばかりの頃、ご縁があって自分の出身幼稚園である白金幼稚園の建替えを発注者側(つまり幼稚園側)としてお手伝いさせて頂きました。その時に工事をお願いすることになった工務店佐藤秀の現場所長が上林さんで、その後彼が佐藤秀を辞めてお父さまが作られた造作家具屋の現代製作所を作ったという経緯があります。幼稚園が完成したのが2000年、工事はその1年半前から始まっていたので、上林さんとのお付き合いは25年を超えていますね。その後、難しいプロジェクトの造作家具や建具だけでなく、元請けとしても何度も助けて貰ったことがあり、若い頃は造作家具図も満足に書けなかったので、こちらの工場に幾度も相談に来たことがありました…。

昔ながらの懐かしい工場だなと思って足を踏み入れたところ、奥には見慣れない大型機器が鎮座していました。NCルーターです!

コンピューターで3次元の図面を描くと、それに沿った形で刃物をコントロールして木材等の材料を削り出すという優れものの機械です。

こちら四角い部品がバキュームになっていて材料をしっかりと固定し…、

こちらの歯やドリルを使いながら削ってゆくという最新鋭の機器です。

こんな素晴らしい機械があれば、僕らがお願いしている文京区S邸の家具も、ハイスピードでどんどん組み立てられているだろうと思っていましたが、案に相違してNCルーターは全く使わず、昔ながらの手作業で組んでいるとのことでした…。

今回のSさまのご要望は、なるべく無垢感があって、かつ造作家具なのに置き家具に見えるようなデザインのものが欲しいとのことでした。この写真のキャビネットも普通の箱家具に見えますが…、

箱同士の接合部を見ると、機能的にはほとんど意味がない板材が挟まれています。その表面の単板も厚みが2ミリほどある大手(オオデ)が張られています。通常であれば、小口テープと呼ばれる表面に厚み0.45ミリの薄く削った木を貼った粘着テープを貼るのですが、厚みがその4倍ほどある大手を使ってもらっています。

また箱を組む材料も、通常であればフラッシュ合板と呼ばれる、木製の芯材を梯子状に組み表面に薄い板を接着剤で張り付けた板材(中空合板)という軽い材料を使うのですが、お客さまからのリクエストで無垢感を出すためにベタ芯(中空部分が無い)仕様として、しっかり重たい材料を使って箱を組んでもらっているのです。

足元も、普通の造作家具であれば、台輪と呼ばれる巾木のような板を、キャビネットの箱から少し凹んだ位置に取り付けるのですが、今回は脚で立っているようなデザインとしています。

それぞれの箱の中に入る引き出しですが、これも通常は清掃性と頑丈さを考えてメラミンで作ることが多いのですが、お客さまの好みを考えて、シナ合板で作ってもらっています。

こちらはマッドルーム(いわゆる土間)に設置するL字型のベンチの基材です。

工場長が仮組してくれたようにL字型に繋がるカウンタ材のようになります。

ベンチ板を支える脚も、ベタ芯でしっかりと重量がある脚となっています。足元にコンセントを設けたかったので、このように板の中にCD管を挿入しておいて、足元に家具用のコンセントをつける仕様となっています。

クローゼットの扉も出来上がりつつあります。框(カマチ)仕様の扉となっていますが、本框と鏡板で作るとかなり高額になってしまうので、MDF合板に薄板を框のように張り付ける仕様としています。

最後に、工場長と設計担当の吉岡さん、弊社担当の竹田さんと僕での記念写真を撮らせてもらいました。懐かしい手作業道具と手練れの職人さん、最新のNCルーターが同居した現代製作所の工場で作られるS邸の家具の現場での組立、楽しみにしています!