Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

黒檀の突板探し@山一商店

代官山T邸

代官山T邸の玄関ホールからリビングへの扉は、お施主さまとのこれまでのイメージ詰めで、力強く華やかなでかつスタイリッシュなデザインにすると決めていました。建具の表面に使う突板は黒檀かローズウッドとターゲットを定めて、探し始めました。

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当初は、工事をお願いしている家具・建具屋の問屋さんのルートで、イメージを伝え探してもらったのですが、あまり良い柄が見つかりませんでした。そこで、突板業界の最大手の新木場にあるショールームに伺ったところ、もう良い柄の黒檀突板は手に入らないと言われてしまいました。却って、人工的に染色した天然目を積み重ねてから突板化した人工突板の方が、良いのではと勧められました。上の写真で、左側が本物の黒檀の突板で、右側と中央奥が人工柄、右奥が現在大手突板屋にストックがある天然黒檀だとのことでした。

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上の写真の大手町のパレスホテルでは大々的に使われていたので、そんなハズはないと思い直して、以前杉並区S邸でお世話になった突板屋の山一商店さ んに連絡したところ、良い柄の黒檀があるとのことでしたので、現物を拝見するために新木場から川口に向かいました。

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こちらには、ありました!新木場ではもう良い柄のコクタンは、どこを探しても見つからないと言われていたのですが、山一さんには僕らの想像以上に良い柄のものがあったのです。

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良い柄が黒檀では2種類あり、こちらは厚突きと呼ばれる突板の厚みが0.6ミリ以上あるもので、通常の薄突き(0.2~0.3ミリ)のモノに比べて2倍以上あるものでした。欧州や米国では突板は厚突きが当たり前で、風合いもそちらの方が良いのですが、価格的は倍程してしまうのと、今回は特に柄と色味が僕らのイメージと違ったので、薄突きを選ぶことにいたしました。

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こちら山一商店さんは3階建ての建物で、一番上の3階には、貴重だと言われる銘木や唐木などの突板材のストックが、これでもかと並んでいました。

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このように短手方向で見ると、一本の木を薄くスライスしていったものであることが良く理解できますね。

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1階には、より一般的に使われる材料が高い天井一杯まで積まれていました。代官山T邸では、メインの建具以外にも、ウォールナットの突板を使う予定があるので、そちらも参考までに幾つかの材を見せて頂きました。

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最初は、良いものがないと言われガッカリするところからスタートした突板探しでしたが、結果的には予想以上の良い柄を見付けることができて、デザイナー冥利に尽きるとても幸せな一日になりました。その後は、山一商店の山内社長と山内専務です。厚突きで板の真ん中にヒビガ入ったようなものは、現在の日本のマーケットでは商品にならないようですが、そのヒビを上手く活かす方法や、そういった方法を違った観点で商品化する方法を探していることをご説明頂きました。また、後で聞いたところでは、パレスホテルの黒檀も山一商店さんが集めて納入したとのことが判りました。
以下、その後黒檀突板張りの建具が作られる様子と完成後の写真のご紹介です。

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このように芯材に単板を並べた突板ベニヤを張り、建具の形に作ってゆきます。まだ塗装が掛かっていない状態です。

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その間に、貰っていた見本突板を塗装工場に回して貰って、ウレタンで全艶(ぜんつや)塗装のサンプルを作って貰いました。そのままウレタン塗装したものと、素地に少しだけ赤味を浸透させてからウレタン塗装したもの二つに上下で分かれています。

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こちらが最終的に出来上がった代官山T邸の黒檀建具です。大理石張りの壁やガラス、鏡、ステンレスを使ったインテリアと上手くマッチしてくれました。

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お陰様で、特注で作った鋼製の取手と組み合わせたディテールもカッコ良く決まりました!