6年前にリビングダイニングと玄関と寝室リフォームのお手伝いをした松濤D邸の第2弾の工事は、キッチンと浴室となります。共に水回りで生活にはとても重要な部分ですが、多少の不便があっても良いので住みながらのリフォーム工事となさりたいとのことでした。
住みながらのリフォームは、仮住まいが不要であることや、実際の暮らしの中で細かな調整ができるというメリットがある一方で、工事会社の清掃等の手間が増えたり、日々のご家族の生活に制約がかかるという側面もあります。今回はその両面を強く感じる現場となりました。
因みに、浴室については、主寝室奥にシャワー室を使えれば何とかなりますが、キッチンは工事の期間は全く使えなくなります。別荘への一次避難や外食を使って何とかしますとのことで、工事が始まりました。このように水回りの工事では、生活動線そのものが一時的に失われるため、事前に代替手段をどこまで現実的に用意できるかが、住みながらリフォームの成否を分けるポイントになります。

キッチンが全て解体された状況です。

通常は、住まいながらのリフォームの場合は、大工さんや設備の職人さんたちが入る箇所を区切って、養生シートで区画してしまえば、職人さんたちの出入りやホコリの飛散の問題をある程度解決できるのですが、実際には音や振動、細かな粉塵まですべてを遮断することは難しく、日常生活との共存をどう設計するかが重要になります。

キッチンの一番奥に洗濯乾燥機が置かれており、それは使いながらの工事にして欲しいとのご依頼で、難易度が高くなりました。Nさまのご自宅にはトレイも二つあるので、広い来客用トイレの便器を外して、そこに簡易工事で防水パンを移動し、仮水栓を付けてそこを洗濯スペースに改造することもご提案しましたが、来客用トイレの扉が狭く、洗濯機が入らないことが判り、キッチン奥に洗濯機を置いたまま工事を進めることとなりました。ただし、使い方のルールとしては、工事関係者がいない土日と工事ができない18時から翌朝の9時半までの使用をお願いしました。

玄関からリビング入るエリアの様子です。キッチンは手前廊下の左側にあり、ダイニングだった個所の家具類は全て写真奥の窓際に移動させてもらい、その手前にビニール養生をした箇所を物置場と作業所とさせて貰いました。因みに浴室はこの写真の右側奥にあります。

養生シートの中は既に浴室の浴槽が届いていることもあり、建材や道具や工具でかなり一杯になっています。

大工の宮永さんがキッチン下地の手直し工事をしている様子で、左側に見えるのが作業スペースです。

奥の浴室は東京バススタイルのオーダーユニットバスです。既に防水パンから壁パネルが入り浴槽を設置するためのエプロン(浴槽手前の腰高の壁)も立ち上がっています。

そこにこのジャクソンの浴槽を設置して、水栓類を取り付けてゆけば、キッチンよりかなり先に浴槽の工事が完成しそうです。

因みに浴室手前の洗面も、夜にはご家族で使うので、都度ビニールで養生し、職人さんたちが現場を出る際にはきれいに清掃して出て、養生シートも外して使えるようにしています。

キッチンエリアも壁下地が完成して、床タイルを貼り終えたらいよいよキッチンキャビネットの組み立てとなります。

ここからは何度も現場でチームを組んでもらったことがあるリフォームキューとリネアタラーラチームなので、素晴らしいスピードで組立工事が進んでいきます。

これまではキッチンエリア奥の洗濯機ゾーンに踏み込むときは毎回靴をはいて貰っていましたが、これからは厚底のスリッパでも大丈夫になります。

大物の箱も組みあがってきたので、作業所の養生シートも外して、キッチン入り口だけの養生となりました。

ほぼ使えていなかったリビングエリアもここまで整理ができてきたので、我慢ももう少しです。

とそんなタイミングで大事件が発生しました!
なんと上階からの水漏れです。それもちょうど作り始めたキッチンエリアなのです…。そしてこの事件こそが、住みながらリフォームのもう一つの側面を見せてくれることになったのです。

水漏れが分かった経緯が、実は住まいながらのリフォームだったからこそ分かった原因でした。ある日の工事が終わったあと、奥さまがキッチン奥の洗濯機を使おうとしたところ、冷蔵庫置き場辺りからポタポタと水が落ちる音がしたとのこと、現場監督に連絡を頂きました。
もしこの工事が仮住まいで進んでいた場合、このような微細な異変は発見が遅れ、被害が広がっていた可能性もあります。
住みながらだからこそ「奥さまの生活者として感覚」がセンサーとなり、問題を早期に明らかにしてくれたのかもしれません。
翌日はキッチン工事を止めて、更にNさまご一家にご協力して頂き水道管を止めた状態にしても、冷蔵庫裏から水漏れの小さな音が聞こえました。工事をしていたら、聞こえないほどのかすかな音でした。何が理由で、何が原因か分からない状態でしたが、このまま放置しておくことはできないので、一旦組みあがっていた冷蔵庫横のキャビネットを外し、張りあがっていた床タイルを剥がし、水漏れの原因と水漏れの範囲を探ることとしました。
床タイルを剥がしてみたところ、床下地のパーティクルボードに水染みが広がっており、床下も濡れていることが確認できました。

天井の石膏ボードも部分的に剥がしてみましたが、幸いなことに天井裏は大丈夫でした。

こちらは床下にカメラを差し込んで確認した様子です。キッチン関係の排水管等を通すためのダウンスラブ部分に水が溜まっていることも判りました。因みに、今回の工事ではキッチンの床暖房を再利用するために、床下の置床工事はリフォームキューでは行っておりません。
水漏れが分かった時点で、工事会社からマンション管理組合と管理会社に連絡をして、上階の方にもご協力を得て水漏れの原因を探ったところ、上階の冷蔵庫裏の給水管から水漏れしていたことが判りました。今回のこちら側の工事が原因でなかったことにはホッとしましたが、この水を残したまま工事を進めることはできません。今回のこちら側の工事が原因でなかったことにはホッとしましたが、この水を残したまま工事を進めることはできません。
住みながらのリフォームでは、こうした突発的なトラブルへの対応も含めて、お客さまと現場が一体となって乗り越えていく必要があります。

手は奥まで届きませんし、モップを差し込んでも限度があるので、給水ポンポを借りて、届く範囲の水を吸い出してもらいました。

水色のものが給水ポンプから繋がった排水ホースです。吸える場所からの水は全て吸い出して、また、床下が湿気たままだと良くないので、ファンを床下に設置して、乾燥させることになりました。3日ほどファンを回し続けたところ、すっかり乾燥したので、冷蔵庫部分の床を閉じて工事を再開することとなりました。
工事の遅延という意味ではお客さまには大きなデメリットではありますが、このようなプロセスを経ることで、目に見えない部分まで安心できる状態にできたことは、結果的には大きな価値になったのではないかと思っています。水漏れに気が付いてすぐに教えてくださった奥さまに、本当に大感謝です。
住みながらのリフォームは決して楽な選択ではありませんが、生活と工事が重なることでしか見えてこないことがあります。そうした一つ一つに向き合いながら空間をつくっていくことが、結果として長く安心して住める住まいに繋がっていくのだと感じています。