千代田区M邸のマンションリフォーム工事では、ボード張りから漆喰の下地作りが進んでいます。
リビングダイニングでは、まだ二重の石膏ボード張りが進んでいます。右手前の壁はこれからキッチンが組み立てれられるエリアなので、まだボードが張られていません。
ビニールクロス仕上げの場合は、壁や天井のボード下地は12.5ミリを一枚張るだけですが、塗装仕上げや漆喰仕上げの場合は、12.5ミリと9.5ミリの二重張りとなるので、ボード張りの労力と時間は倍になります。
天井も二重張りとなるので、先行してダウンライトの位置に穴をあけて、通線してから2枚目のボードを張ってゆきます。
リビングエアコン部分も下地が組み終わったので、これからのボード張りで隠されていきます。
こちらは数日後に、ボードできれいに隠されてしまったエアコン部分です。色の違うボードが張られていますが、こちらは、キッチン天井部分に使っている強化石膏ボード(芯材にガラス繊維などを加えて耐火性能を強化したボード)を使って貰っています。
廊下では、まだ八掛枠に対して、1枚目のボードしか張れていません。
八掛の枠とピクチャーレールの取り合いで、細かい細工が必要なのです。
まだ造作家具との細かい取り合いが決まっていない、洗面所はさらに遅いスピードでのボード張りとなっていますが、造作家具が取り付けられてから2層目のボードを張る個所もあるので、仕方がありませんね。
玄関は、このような状態から…、
二日ほどで、一気にここまでボード張りが進みました。
一番工事が進んでいるのが、奥の主寝室です。こちらは左官屋さんが入って、床のブルーシートでの養生が進んでいます。
左官職人さんは、一気に大きな面を作ってゆくのではなく、まずは出隅のコーナーに寒冷紗(カンレイシャ)テープを張って、その部分をパテでシゴいていくのです。
塗装仕上げのようにとがった出隅の角だと、漆喰が欠けてしまうので、このようにコーナーが少し丸くなった特製のコテを使っているようです。
コーナーの次は、ボードの継ぎ目で、ゆっくり丁寧に作業をしてくれています。左官をお願いしてる原田左官さんから、職人さんたちはほぼ皆同じ背丈の人を揃えているとの話を聞いていましたが、その理由がこのシーンを見て分かりました。職人さん皆が同じ背丈だと、同じ足場を使うことができるからなのです。例えば僕、各務のように一人186センチの職人が中に入ってしまうと、僕だけは違う高さの足場を用意しなければいけなくなるので、不合理なのですね。
左が寒冷紗テープ張りで、右が最初のパテ扱き(しごき)です。
全てのボードの継ぎ目のパテ処理が終わった後から、いよいよ一度目の下地左官となります。
下地左官には、カーボンコートという材料を使っています。水で溶いたカーボンコートには、よく見ると少し黒っぽい繊維質が混ざっており、その繊維がひび割れなどを防ぐ働きをしてくれるとのことでした。
リビングダイニングのカーボンコートの左官下地作りが始まったタイミングで、お客さまのMさまご夫妻が現場に来てくださいました。
原田左官さんからは、お客さまが興味があるのでしたら、左官の体験もご一緒に如何ですかとのお誘いもありましたが、以前のご自宅も漆喰仕上げになさったことがあるので、体験は結構です(笑)とのことになりました。
早めにスタートしていた奥の主寝室や書斎は下地左官もほぼ乾いている状態で見ることができました。塗りたては濃い目の灰色に見えますが、乾いてくると白地に黒い繊維が透けて見えるようなイメージになってきます。
主寝室の奥の壁には、書斎とウォークインクローゼットへの扉枠2本がありますが…、
どちらの八掛枠もとてもきれいに仕上がっていました。
主寝室のヘッドボード上のニッチ部分も下地にしておくにはもったいないくらい丁寧に仕上げられていました。
と思っていたところ、その気持ちが通じてしまったのか、一緒にご覧になっていた奥さまから、寝室については、この下地の状態を仕上げにすることはできないかとのお話しがありました!
原田左官からは、この状態で使っても問題はないが、下塗りはあくまでも下塗りで仕上げではないので、肌や服がこすれるとザラッとした部分に引っ掛かることがあったり、コテムラは完全には抑えられていないがそれでも良いのならとの話がありました。下地の上からコーティング剤を塗れば、そのようなことはなくなるが、いざやはり本漆喰で仕上げたいということになってもコーティングをしてしまうと難しくなるとの説明もあり、結局寝室は一部は漆喰まで仕上げますが、部屋の80%程度はこの下地塗りを仕上げとすることに決まりました。
こちらは下地塗りと八掛枠の取り合いです。ピクチャーレールもうまく残して下地が塗られています。
八掛枠と巾木の金属見切りとの取り合いもとてもきれいです。
多彩なコテを場所場所によって使い分けながら塗ってゆく作業は、職人さんの邪魔になることは分かっていますが、ずっと眺めていたくなるような見事な作業でした。
そんな合間を縫って、玄関のタタキの大理石が張られました!関ヶ原石材のアントリーニギャラリーでお客さまが選んでくださったアイリッシュグリーンです。
大きなスラブ一枚から切り出したものなので、きれいに模様も繋がっています。
玄関框やサイドの石巾木、石膏ボードの金属見切りとの取り合いもきちんと施工されています。
玄関の大理石張りが終わったらすぐに、玄関横のシューズイン・クローゼット(SIC)内のタイル張りも始まりました。
玄関の大理石の割と合わせたラインで、600角のマラッツィ社(イタリア)のタイルが張られていきます。
玄関の大理石は厚みもサイズも大きく重たいので、2人の職人さんで正味2日掛かったそうですが、タイルは薄くてサイズも600角と石に比べれば小さく軽いので、一人の職人さんで丸一日で終わるそうです。
ここから先は、漆喰の左官作業の合間を縫って、造作家具やキッチンの組立てにも始まってゆくので、造作家具の最終承認や工程の打ち合わせを青の石坂さん、樋口さん、片岡さんと綿密にしながら進めてゆくことになります。