ゴールデンウィーク明けにニューヨークに行ってきた際に、友人の設計事務所を2か所訪問させて貰いました。そのうちの一人のニコラス・スタノスさんの事務所と彼の設計事例の見学の様子をブログに記しておきます。

ニコラスは、1994年から1996年まで修行をさせて貰ったCicognani Kalla設計事務所(CKA)の元同僚です。CKAでは彼の方が先輩でしたが、僕が修行している間に、学部卒業だった彼がハーバードのデザイン大学院に進学したので、ハーバードでは僕が先輩という関係です。僕が帰国後、ニコラスはまたCKAに戻って20年近く働いてから独立して、今はスタッフを3人を抱える設計事務所を主宰しています。

こちらが彼の設計事務所の様子です。ニューヨークのミッドタウンでセントラルパークのすぐ近くのおそらく築100年くらいのかなり古いビルの中にある事務所です。
ニコラスが手伝ったお客さまのお宅が、お客さまの都合で売却されることになり、ちょうど販売されているとのこと、そのお宅を見学させて貰えることになりました!

新築マンションを購入した以前のお客さまの妹さん(当時一人暮らし!)の為に、新築未入居時点からスケルトンにして改装したお宅とのことです。約600平米で、当時42億円(!)で購入したお宅を約8億円(インテリは別途)かけて改装したそうです。

リビングルームが2つあり、大きなダイニングルームにイートインスタイルのキッチン、そして5寝室(全てに水回りセット付き)という豪邸です。

2つのリビングの中央にあるダイニングは12人掛けの巨大テーブル(搬入の関係で2つに分かれています)となっています。

上が、新築分譲時のインテリアイメージCGで下が現在の様子です。当初は中央のこの空間がラウンジ的に使われる想定だったのが、ニコラスのリノベーションでダイニングになったようです。

ダイニングは2つのリビングの中央で、このような列柱に囲まれた空間となっています。因みになぜお客さまが売却されることになったのかというと、お客さま(女性)が新たに結婚することになり、二人そろってマイアミに引っ越すことになったそうです。最初はセカンドハウスとしてこのお宅も持ち続けることも考えられたそうですが、マイアミで約2倍の広さのお宅を購入することになったので、売却することになさったそうです。最初の売値は55億円だそうです!

マンションの上層階で、ワンフロアを占めるお宅で中央に共用部コア(エレベーターや非常用階段)がある間取りとなっています。

こちらはキッチンです。ニューヨークの豪邸では初めて見たポリフォーム社(イタリア)のキッチンでした。

イートインコーナーがある大型キッチンですが、それでも郊外にある豪邸などと比べると、コンパクトなキッチンでした…。一番驚いたのが、イタリアハイブランドのキッチンがニューヨークの豪邸で取り入れられていることでした。日本では、イタリアやドイツのハイブランドキッチンは富裕層の垂涎の的と言われていますが、アメリカの富裕層の間では実は現場造作のキッチンの方が好まれているいます。

主寝室のウォークインクローゼットもポリフォームでした。僕も個人的にはポリフォームは大好きですが、なぜポリフォームのキッチンやクローゼットシステムなのかをニコラスに確かめたところ、お客さまからの指定だったとのことです。因みに、ニコラスはポリフォームのライバルブランドのモルテーニの名前を知りませんでした…。
日本ではイタリアハイブランド家具=高級家具というイメージですが、アメリカではカスタマイズできず(アメリカ家具はほとんどカスタマイズ可能です)、デザインも画一的で(確かに似たようなデザイナーが持ち回りで各ブランドをデザインしていますね)、かつ軽くてペコペコ(アメリカの家具はどれもスーパーヘヴィーですから)なので、豪邸で見かけることは少ないのです。

こちらが主寝室です。ニコラスの体と比べるといかに広くて、天井高さも高いかが分かりますね。因みに、今回の写真で室内に置かれている家具類、アート類は全て中古不動産売買の仲介会社が手配したステージング会社が販売用に持ってきたもので、お客さまの私物は一切なく、ニコラスも安っぽくて好みではないと悲しがっていました。

主寝室奥の手洗いにはふんだんに大理石が使われています。

シャワー室も、ニューヨークの富裕層が好みそうな大理石のアラベスカート貼りです。日本では白系の大理石をキッチンや水回りに使うことは、どんなに撥水処理やコーティング加工しても、長年洗剤やシャンプー等を使っていると黄色っぽい染みが浮いてくるので好まれません。ニコラスに聞いてみたところ、あまりに汚れてきたら、貼り直せばよいとのことでした。因みに、日本ではマンションの浴室やシャワー室は、防水パンと一緒にユニット化したものが主流ですが、米国では今もこれからもおそらく在来工法です。

ニコラスに今回のリノベーションで一番大変だったことを聞いたところ、窓回りの造作だとのことでした。分譲時の窓回りは薄っぺらでフラットに見えて軽かったので、きちんとした枠を4方にまわし、その中に部屋によってはカーテンボックスや遮光性ブラインドなどを埋め込んで黒くてしっかりとした造作窓枠にすることだったとのことでした。

最後のこちらの写真が分譲時の窓回りイメージです。