Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

オーナービル最上階住戸設計の関西M邸-1

関西M邸

こちらのプロジェクト関西M邸は既に工事完了してお引渡し済みの住戸です。プロジェクトとしては、まず建物が新築でリフォーム&リノベーションではないので、事務所の作品としてブログやホームページに掲載すべきか迷っていたのですが、とにかく出来がとてもよく、お客さまも喜んで下さっているので、纏め記事としてアップすることにいたしました。

京都K邸

こちらが完成後のLDKの様子です。大きなキッチンにカウンターと合わせると全長6メートルを超えるテーブルが合体し、壁一面に本棚があるお部屋となっています。全体では、専有面積270平米の大きなお宅です。

実はこちらのプロジェクトのお客さまは、各務の妹夫婦の大親友で、奥さまが妹の高校時代からの親友で、各務が学生の頃から良く知っている方でした。元々は東京にお住まいでしたが、所有していた関西の土地にオーナーマンションを建てることになり、その最上階にご自宅(ペントハウス住戸)を作りたいとのことでご相談があったのです。各務が建築設計をしていることは以前から知っていたそうですが、キッチンに興味があるご夫妻でガゲナウ社のビルトインオーブンを調べていたところ名前を見つけて、偶然なことに驚いて連絡をしてきてくれました。

オーナーマンション自体は設計施工でゼネコンが決まっていたのですが、オーナー邸の部分だけは白く抜けた状態で残っているとのことで、その部分の平面図の間取りの案の作成から、キッチンや浴室等の設計、インテリア素材の選定、家具やカーテンの選定をお願いしたいとのご依頼でした。ゼネコンの設計ですでに住宅部分の外形や窓位置、玄関位置や中庭のサイズもほぼ確定しており、構造や設備計画のあらましも決まっていたので、考えようによってはスケルトンリノベーションと同じように設計ができるのではとのことで、お手伝いすることを決めました。外形や水回りの位置が自由であれば、色々な可能性をゼロから探ることができるので楽しいのですが、その分ベストな案に行きつくまでの時間が掛かり過ぎるのです。構造や設備などの制限がある中で最適なプランを作ることにこそ、自信があるのがカガミ建築計画なのです。

京都K邸_初期間取り案

ゼネコンから貰った白抜きの図面にこちらがザッと考えた間取り図案3案です。家族構成としてはご夫婦にお子さま3人でそれぞれの寝室はコンパクトで良いが、水回りセット付の来客用のゲストルームが必要。とにかく大きくて気持ちが良い一体型のLDKで特にキッチンと浴室にはこだわりたいとのご要望でした。

ご夫妻のどちらかが単身で関西に行っていることが多いので、打ち合わせやショールーム巡りは奥さまだけかご主人さまだけとなってしまいます。ざっくりしたプランができた所で、こだわりの浴室のショールームとして事務所近くの東京バススタイルに奥さまと伺ってきました。

オーダースタイルのユニットバスの展示を見て、これまでのユニットバスに対しては概念が変わったと喜んで下さいましたが、大柄なご主人さまがお子さまたちと一緒に入れる大型浴槽を希望しているので、東京バスに展示しているジャクソンの浴槽に、試しで奥さまと担当スタッフの竹田さん一緒に入って貰いましたが、奥さまからこのサイズではご主人は絶対ダメだろうとのご感想を頂きました。

次は別日ですが、ご主人さまとの打ち合わせで、大型浴槽展示が豊富にある六本木のアルティスショールームに伺ってきました。サイズ感としてはゆったり入ることができて「これは良い!」と喜んで下さいました。

次は元麻布のTフォルムショールームで、僕らが良く使っているドイツ製カルデバイの浴槽の見学です。屋外に置いてあったこちらの浴槽をご覧になって「これで行きましょう!」とのお言葉が。

試しに、Mさまと一緒に各務が入ってみましたが、大人二人でもゆったり入ることができます。

小柄な女性が子どもが一人で入ると、浴槽が大きすぎて体が浮いてしまうのではと心配に対しては、Tフォルムの方で、吸盤型のバスクッションを提案してくれました。竹田さんの足元、浴槽の底面についている小型枕のようなものがそれです。これは優れもので、頭のところに着ければ浴槽用枕のようにも使えるのです。汚れやすいものなので、取り外して洗えること、本当に汚れたら買い替えることもできるので、他のプロジェクトでも良くご推薦してきましたが、Mさま邸にはまさにぴったりです。
ということで、浴槽はカルデバイに決まりました!(先ほどのアルティスの円形バスは、複数人数ではいると足が交差してしまいそうなことが気になっていらしたそうです…)オーダー浴室については、先ほどの東京バススタイルとゼネコン側が推薦する関西エリアで強いオーダーユニットバスメーカーとの合い見積もりという形になりそうです。

次はキッチンです。奥さまと一緒に関西エリアにも強い代官山のクチーナショールームに伺いました。こちらのショールームは広くてバリエーションが豊富なので、キッチンにこだわりのあるお客さまとは最初に訪問することが多いのです。

ご主人さまからはカウンター付きのオープンキッチンが良いとの強い希望を貰っておりますので、オープンキッチンを中心に見て回りました。

まだ、お家全体の平面計画に関連して、キッチンの位置やサイズも未確定なので、この日は奥さまのキッチンに対するご希望を伺いながら、まずは素材と色味のあたりをつけるところまでとなりました。

大きなキッチンになることは想定されているので、カウンター材と扉材をそれぞれ4種類ぐらいのものを選んでおいて、用途と内部に収納する物とマッチするイメージで使い分けられるようにする方針で進めることになりました。

キッチンショールーム訪問と同日に、乃木坂のセラショールームに伺って、洗面ボウルと水栓の関係を見て頂きました。浴槽のTフォルムでも洗面ボウルは見て貰っておりましたが、毎朝ご主人さまが寝ぐせのある髪の毛を直すため、ボウルに直接頭を突っ込んで水を掛けて直すとのことで、僕が実験台になってどの洗面ボウルと水栓のマッチングを試して、それぞれを写真撮影して、後日ご主人さまに確認して貰うことになりました。

次は、フローリング探しの旅です。無垢感があって、和にも洋にも合わせられる幅広のフローリングがお好みとのことを聞いていたので、僕らが良く使っているスカンジナビアンリビングに相談したところ、面白いものがあるので、白金のショールームにある程度の面積分を敷いておいてくれるとのことで、奥さまと一緒に体験してきました。

少し節があって、表面がナグリ加工となっており、微妙に削ってある面白いフローリングでした。靴やスリッパをはいているとあまり感じることができませんが、素足で歩いてみると微妙なアンジュレーション(起伏)がとても心地よい床材でした。

アップで見るとこのような表情です。スカンジナビアンが得意なヨーロピアンオークのワイドプランクの無塗装品でしたが、マスターオイル艶消しウレタン仕上げでの販売が可能とのことで、サンプルを作って貰うことになりました。奥さまから「このフローリングは絶対主人も気に入ります」との強いお言葉を頂きました!

ショールーム巡りをしつつも、その間にオーナー住戸も含めたビル全体の設計施工のゼネコンの設計と営業の方々とプランの整合性やオーナー邸の工事費用の算出方法についての打ち合わせを重ねていきました。

200平米を超える大型住戸なので、下階の住戸からのPSの位置関係等の情報を貰いながら、防火区画のライン設定や、水回り位置の調整を行っていきます。最上階住戸ですが、さらに上階のエアコンの室外機置場や梁位置から天井の高さも制限されてきます。図は壁の仕様を確認している図面です。

こちらはさらに細かく造作家具やエアコンの位置関係を調整している指示図です。今回のお手伝い方法は設計監理ではなく、デザインアドバイスとして、施主であるMさまご夫妻の代理という立場でゼネコン側に要望を出しつつ、ゼネコン側の意見も聞いて、それを翻訳してお客さまに伝える役目となっております。
心配していたオーナー邸の建設コストですが、当初からある程度のレベルは想定して見積りを入れていたとのことで、フルオーダーで作るキッチン部分とオーダーユニットの浴室部分のみ差額計算するが、その他についてはコスト内で作るとの確約を貰いました。