六本木N邸プロジェクトでは、造り付けの造作(ぞうさく)家具だけでなく、置き家具もデザインさせて頂くことになりました。ソファーは、座り心地を左右するクッションの性能があまりに専門的なことで、またやダイニングチェアは軽さと強度と耐久性に関係する構造などの問題で、簡単にはデザインできませんので、今回はリビングボードとチェスト、さらには半分造作ともいえる寝室のヘッドボードをデザインさせて頂くことになりました。
デザインの手順としては、まず平面プランと展開図を見ながらが、家具の大まかなサイズを決めてゆきます。その後家具のボリュームに引き出しや棚板、見せる収納などを落とし込んでゆきます。
このスケッチをベースにして、家具屋さんに素案(タタキ台)となるラフ図面を描いてもます。しばらくは、メールでスケッチを通して、使い勝手や細かい収まりなどの点を中心にやり取りしてゆきます。
ある程度に詰まってきたところで、家具屋さんの担当者に事務所に来てもらい、打ち合わせを行います。今回はこれまでも幾つかの置き家具を作ってもらった横浜のYPOの広瀬さんにお願いしています。
先方は家具作りのプロですから、2~3度のメール打ち合わせで、ここまできれいな図面を作ってくれています。とはいえ、この段階ではまだ家具のプロポーション、機能性、さらには作り方の整合性も取れていないので、その部分を打ち合わせで詰めてゆきます。
こちらは同時にデザインすることになった、主寝室のベッドの枕側にセットする、後付けのヘッドボードの初期イメージスケッチです。折角にデザインする機会を作っていただいたので、枕が接するボード部分はレザーの緞子張り(どんすばり)にしてサイドテーブルやコンセント、照明なども組み込むことを目論んでいます。
スケッチだけでは説明が不十分なので、一度こちらに広瀬さんに来てもらって、こちらの考えをお話させてもらいました。すでにこの時点で、ディテールや素材の取り合いなどについてのディテールスケッチも始まっています。
広瀬さんが図面化したものを幾度かメールで質疑のやり取りをした後に描いてくれた製作図です。この段階で、すでに家具として作れる状態になっていますが、まだ、ディテールの詰めが甘かったり、素材の選択が終わっていないので、それらを最後の打ち合わせで詰めてゆきました。
ある程度のサイズの家具となると、図面だけの検討ではサイズ感や使い勝手が見えてこないので、現場で簡易的なモックアップを作ることもあります。こちらはダイニングテーブルの横に置くサイドチェストです。現場の段ボール紙を使って、即興的に作ったものですが、お客さまにはできたときの使い方が想像できて、とても判りやすくて楽しかったとご好評でした。
素材を決定して、塗装の色番号&ツヤの指定、取っ手金物をデザインしたうえで見積りを作ってもらいました。お施主さまに見積りの承認を頂けたので、現在家具を作ってもらっている最中です。N邸には、ミノッティのソファーやフレックスフォルムのダイニングテーブル、エ・インテリアーズのピエロ・リッソーニデザインのダイニングチェアなどの超ハイグレード家具が揃うので、その中でどのように見えてくるのか、出来上がりが楽しみです!