Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

弱電配線の打合せと縁なしダウンライトの設置方法

世田谷区Y邸

弱電(じゃくでん)とは建築・インテリア系の工事現場ではよく聞く言葉ですが、一般の方には馴染みがない単語だと思っております。照明器具やエアコン用の電源、部屋についている普通のコンセントなどの電気を強電(きょうでん)と呼ぶのに対して、コンピューターのインターネット配線や、電話やテレビ線、更には複雑なステレオシステムのための電気工事が弱電に当たります。

世田谷区Y邸では、元々お客さまが持っていらっしゃったハイスペックのオーディオ・ステレオシステムを更にバージョンアップさせて、全ての部屋で音楽を聞けるようになさりたいとのご要望があって、以前のシステム構築時からお客さまがお願いしてた銀座のサウンドクリエイトに協力して貰いながら、どこに何を持ってゆけばよいかを考えてきました。

上のシステムスケッチの真ん中左側にシステムが集中しておりますが、それがこちらの主寝室横のウォークイン・クローゼットになります。写真中央ちょっと右側に天井から灰色の太い管が何本も降りてきていますが、これらがAV関係の弱電配線用の空配管(カラハイカン)となっています。この空配管は、一般的にCD管(シーディーカン)と呼ばれておりますが、厳密にはPF管(ピーエフカン)です。CD管はコンクリート埋設用で、PF管は露出配管用で対候性も高く、自己消火性を持っている管なので、僕らがお手伝いしているマンションリフォーム&リノベーションではPF管と呼ぶべきなのですが、CD管が現場での一般名称のようになってしまっているのです。

もう一か所、玄関横の靴収納部分にもPF管が集まっていますが、これは分電盤横の弱電盤への配管です。それぞれの管が天井裏や壁裏を伝わって配管されているので、それぞれの管にどこへ繋がっているかの名称がつけられていることで、後日AV用の配管をするときに困らないようになっているのです。

サウンドクリエイトの石井さんが配管に間違いがないかをチェックしに来てくれた時の様子です。

ところで、普通の現場では見ない、不思議な板が現場に重ねて置かれていました…。

現場の斉藤さんに確認したところ、こちらはモデュレックス社の細縁ダウンライトを設置する箇所のために、斉藤さんが大工さんと考えた設置用の板だそうです。大き目の板がベニヤ板で、重なっている小さ目の板が、地球樹Mクロスと呼ばれるライナー紙を表面に張った合板です。縁が極細のダウンライト用に普通の石膏ボードで穴あけをすると、石膏ボードは端部がモロいので、少しでも欠けてしまうと、そこに隙間が見えてしまいます。ベニヤ板で穴あけすればしっかりと円形に丸く抜けるのですが、フラットに仕上げた石膏ボードとベニヤ板では、吸水性の違いなどでヒビが生じてしまいます。石膏ボードとベニヤ板の問題点を解消した優れものがこの地球樹Mクロスなのです。

こちらが後日丸穴がくり抜かれて配線されたダウンライト設置用の孔の様子です。

電気屋さんがモデュレックスの縁なしダウンライト用のガイドを取り付けてくれています。

こちらは完全にフレームレスなので、モデュレックス社が提供してくれるこのマウンティングが無いと、設置ができないのです。

同じ天井の工事としては、スプリンクラーの設置も終わっていました。通常は天井スラブのアンカーでガッチリと固定するのですが、こちらのマンションでは新しいアンカーを打てないので、横に渡した天井下地のLGS野縁同志を繋ぐ形で固定されていました。

寝室床には、電気式床暖房のシートの割り付けが墨出しされていました。まだ、これからしばらく電気関係の工事が続きますが、事前チェックは概ね済ませることができました。