彫刻家、イサム・ノグチ氏の庭園美術館・開館10周年記念のシンポジウムに参加して参りました。香川県牟礼のイサムノグチ氏のアトリエが、庭園美術館として開館してからちょうど10年になるそうです。縁あって、アトリエの頃から何度かお邪魔しており、開館記念のオープニングにも伺っていたので、あれから既に10年の月日が経ったかと思うと感慨深いものがあります。
シンポジウムは二部構成となっており、前半は「イサム・ノグチが遺したもの」というタイトルで、ノグチ氏の生前を知る美術界の大御所たちの彼についてのエピソードや、教訓などの話でした。写真表現の自由で話題の篠山紀信氏、最も古くからノグチ氏を知る彫刻家の広井力氏、フランスと日本を股にかけて活躍した画家の堂本尚郎氏、同じ石彫の作家の安田侃氏、建築家として幾つかのプロジェクトを共同した磯崎新氏、そして彼の伝記を書いたドウス昌代氏に、コーディネーター役の建築家・川村純一氏が、同時代に活躍した同僚・ライバルとしてイサムノグチの息吹が伝わるような話をしてくれました。
第二部は「イサム・ノグチ 未来への贈り物」とのタイトルで、直接彼のことは知らないながら彼の影響を大きく受けた、現代活躍中の若手(?)アーティスト達が、これから何を学べば良いかについての話でした。子どもの頃から彼を知っていた建築家・谷口吉生氏、彼の彫刻を中心とした美術評論を展開しているの高橋幸次氏、当日発売された写真集のアートディレクションを行った佐藤卓氏、ノグチ氏を尊敬するプロダクトデザイナーの深澤直人氏、人間イサム・ノグチに興味のある演出家・宮本亜門氏、日米のアート支援プログラムのコーディネーターのジョージ・コーチ氏。彼らの話を纏めてくれたのが、コーディネーター役のキューレーター・新見隆氏でした。こちらでは、遠くから憧れていた偉大な彫刻家の生き様や作品が、どのように現在進行形の自分達の仕事に影響を与えているのか、今後なにを手がかりに、どのように考えながら、イサム・ノグチ氏と彼の作品に対峙してゆけばよいのかを、彼らなりの言葉で説明してくれました。
面白いエピソード満載で、どこを切り取っても、今後の自分の研究テーマになるような話でしたが、個人的には、深沢直人氏が若い頃から憧れていて、ずっと思い続けてきたことが、当日パネリストとして壇上で話をするとろこまで繋がったという話しに、色々と感じるものがありました。