こだわりの素材がふんだんに詰まっている文京区S邸の現場ですが、キッチンとパントリー、玄関や土間、洗面と来客用トイレ、更にはランドリールームの床はアンティーク風の大理石を敷き込みたいとのご要望でした。
こちらが最初にお客さまから送られてきたイメージ写真です。イギリスのアンティーク床材ブランドのQuprn Storeのホームページから抜粋されたイメージ写真でした。
まずはこちらの会社に石材とタイルに詳しいアークテック経由でこの石材のサンプル請求と、必要面積を伝えて日本に輸入することができないかを問い合わせてみたところ、現時点でサンプルは無く、新しくサンプルを作ることも可能だが、それは製品発注をしないと送れないとのことが判りました。因みに、生産納期は3~4カ月で、船便での輸送の約3~3.5ヵ月と合わせると納期が7か月程度掛かるとのことでした。
アークテック社では、他に付き合いのある会社経由でエジプトのクレオパトラ・ストーンという会社のシナイパール・アンティークという石材を見つけてくれましたが、このサイトをお見せしてもお客さまはイメージと少し違うとのことで、他経由で探すこととなりました。
十数年前に僕らがお手伝いした神戸M邸リノベーションの玄関に使ったアンティカ・トラベルチーノ(アドヴァン)も良さそうだったので、問い合わせをしてみましたが、在庫切れでしばらくは新たに仕入れる予定はないとのことでした。良いものが見つからない場合は、トラバーチンを仕入れて貰って、アンティーク加工をどこかに頼もうかと覚悟を決めていた時に、以下の製品を見つけました。
関ケ原石材が販売しているトラバーチンアンティークシリーズです。早速付き合いのある石材屋のキダ・マーブルを通してサンプルをお願いしたところ、以下のサンプルが届きました。
これらはホワイトのサンプルですが、各タイルごとに色もアンティーク度合いも穴の開き具合もムラがありますが、それが良さそうな感じでした!
トラバーチン(トラバーティン)は、ローマの遺跡などで使われているイタリア産の大理石でランダムな穴が開いているのが特徴です。水に溶けた炭酸カルシウムが沈殿してできた石灰岩の一種で、圧密を受けていないため多孔質(ランダムな穴が開いている状態)になっているそうです。
キッチン床に使う際に穴が開いていると、こぼした米粒やホコリが入って取れなくなると衛生上問題があるのではと思って、穴を目地材で埋めること、そしてこの製品はコーティンがされていないものだったので、下のタイルの半分分だけ(緑色のテープを張った左側だけ)撥水材を塗布してもらったものをお客さまにお見せしました。
アンティークトラバーチン自体にはとても喜んで頂けましたが、科学的な物質を使った撥水材は自宅にはあまり使いたくないとのご意向で、撥水材の塗布なしで進めようとのことに決まりました。ただ、石材のエッジ部分はなるべくガサガサした風合いにして貰いたいとのリクエストも頂きました。
そこで関ケ原石材からキダ・マーブルがトラバーチンを仕入れて、大垣市にある協力加工場であるアジアングラニット内で、手作業でエッジ部分を削ってもらいました。
こちらが全てエッジ加工が終わった状態のトラバーチンです。
茶色くマーキングされている箇所がアンティークトラバーチン張りの床です。これは僕ら設計事務所が作った指示図です。
それに対して、細かい取り合いまで考えて、青の現場監督の織田さんが作ってくれた施工図がこちらです。
青の下請けに入っている大理石のプロのキダ・マーブルの齊藤さんが作ってくれた床基本パターンがこちらです。300ミリ×600ミリが基本のサイズとなるのですが、目地との取り合いなどで、灰色に塗られた箇所だけ、297ミリとなるのです。製図してみないと分からない不思議な寸法体系ですね。
そしてそのパターンを使ったうえで、各エリアの床パターンまで考えてくれています。灰色だけでなく、更に特殊寸法の赤色まで増えていますね。上記の工場でエッジ加工した際に、実はこの図面に基づいた寸法の微調整までしてくれていたのです。
現場に入ってきた加工済みのトラバーチンを…、
まずは目地幅まで正確に、キッチン床に仮置きしてもらいました。舐めるようなアングルで見ると、微妙なアンジュレーション(起伏)もあって、良い感じです。
色のばらつきや穴の開き具合などを見ながら、一番重要なキッチンエリアの床パターンを微調整させて貰いました。そして実際に大理石タイルを貼る際は、なるべく目地を深くとるようにお願いもしておきました。
そして数日後、実際のタイル貼り作業が始まっていました。
こちらは主寝室の横のご夫妻用の洗面所とトイレ部分です。目地材を詰めてくれています。目地部分だけでなく、トラバーチンの穴にも同時に目地詰めをしてくれています。
この後、造作家具で作った洗面キャビネットが入ってくるのですが、キャビネット下もかなり透かしたデザインとしているので、隠れる部分までしっかりタイルを貼り込んでくれていますね。
皆同じように見えている大理石タイルですが、全てに番号が振られており、指示図通りに張られてゆくのです。
こちらはキッチンとリビングダイニングの境の見切りライン部分です。養生でほとんど隠れてしまっていますが、緑色の養生テープのちょっと右側がフローリングとアンティーク大理石の見切りラインで、真鍮の目地が入っています。
フローリングが先に張られていますが、アンティークトラバーティンとの見切りにはこのようなL字型の真鍮見切りが事前に取り付けられているのです。
時間的には前後してしまいますが、フローリング張りの様子もご紹介しておきます。
今回使ったのは、NORDO(ノルド)のカフィーラ(ADワールド)を採用しています。フローリング張りの職人さんは、施工会社青の下請けに入ってくれているフローリング張りの名人そろいのWITHフローリングの職人さんが入ってくれています。
写真手前に穴が開いていますが…、
これは床付けコンセント用のボックスです。フローリングの幅で墨出しをした箇所に事前に埋め込んで置き、
最終的にはこのように仕上がるように作られています。穴塞ぎようのフローリング蓋が差し込まれていますが、まだコードを出す穴の加工はされていないようですね。
来れな事前に大工の矢野さんが作っておいてくれた床付けコンセントボックスです。
タイルもフローリングも張り終わるとすぐに養生シートでカバーされて見えなくなってしまいます。僕らは養生シートをめくって仕上がりを確認させて貰っていますが、お客さまはお引渡し前のクリーニングの時に仕上がりを確認することとなります。