3度目のリフォームでキッチンと浴室を作り直すことになった松濤D邸。これまで壁と扉でとじられていたクローズド型だったものから壁の一部と扉を取り去って、セミオープンにする方針が決まっています。セミオープンになれば、シックで落ち着いた雰囲気のリビングダイニングと色味だけでなく使われている素材の質も合わせる必要があります。

まずはオーダーキッチンをお願いすることになったリネアタラーラの弊社担当の牧野さんとリフォーム工事をお願いしているリフォームキューの森井さんに松濤に来てもらいました。

今回の工事では暮らしながらリフォームをご希望なさっているので、キッチンを解体してから新しいキッチンを設置するまでの期間を縮める方法を考える必要があります。
通常のリフォームでは、既存のキッチンを解体して、新たに作る壁位置や給排水や排気ダクトの位置をチェックしてから最終寸法を確定して、そこからキッチンキャビネットを作り始めるという流れになります。工場でキッチンキャビネットを作るのに最低でも2か月は掛かるので、この流れだとキッチンを使えない期間が最低でも2か月半になってしまいます。
まだキッチンのレイアウトも正式に決まっていない中ですが、少しでもその期間を短くする戦略を一緒に考えて貰いました。ピッタリ寸法で作ろうとすると、どうしても解体現調を待ってからしかキャビネット製作を始められません。どこかに寸法調整のフィラーを入れるか、寸法的に曖昧なバッファーゾーンを作る必要があります。

色々な選択肢が考えられましたが、洗濯機コーナーをうまく使えそうだとのことになりました。工事期間中は、洗濯機を(スペースに余裕がある)来客用トイレに仮置きして、洗濯機コーナーを第二期工事にするという戦略です。
因みに、まだこの段階では、洗濯機をこれまでと同様に国産の洗濯機として洗濯室に入れるか(上図の案④)、ドイツ製のビルトイン型にしてキッチンに組み込むか(案⑤)が決まっていませんでした。

洗濯機コーナーの違いが視覚的に分かるようにCGを作ってご説明させて貰いました。上が扉で仕切ってその奥に洗濯室を置くタイプで、これであれば国産の大型洗濯乾燥機を入れることができます。下の2つの案がミーレの洗濯機と乾燥機を竪積みにしてキッチンとフラットにビルトインする案です。ビルトインの食洗器はキッチンキャビネットの扉と同じ面材を貼ることが可能ですが、ビルトインの洗濯機は白の一択となってしまいます。シックな色のキッチン横に並ぶと、そこだけ白抜けしてしまうので、下の案では、その奥のキャビネットを薄いグレー色としてユーティリティーコーナーっぽく見せる案です。

これまでは左の図のようにPDFにキッチン図を描き込んだもので検討してきましたが、もう少し厳密な図面が必要になるので、マンション竣工時の青焼き図面からより詳細なCADへと移行しています。
戦略のするにしても、どこを基準にして、どのように寸法を決めるかが重要なのです。

事前に部分的に解体して確認しなくてはいけない個所を特定するために、ダイニング側とキッチンを行ったり来たりしながら打ち合わせをさせて頂きました。ある程度のメドが付いたので、森井さんは抜きで奥さまと牧野さんと前田君と僕、各務の4人でキッチンの仕上げ材の候補決定のために、世田谷区用賀のリネアタラーラのショールームに向かいました。

リビングダイニングで使われている素材が黒いトレーの中に入っているもので、これまでの打合せでお見せしてきたCGも並べながら、どのようなイメージになさりたいかを伺わせて頂きました。

まずはコンロ前のバックガード壁に張るセラミックタイルの候補からスタートしました。これまで幾度か試しに作ってきたCGでもこの部分が白系大理石柄のセラミックタイルとしていたので、どのような柄や色味がお好みかを大判サンプルをお見せしながら検討していきました。
因みにコンロ側のカウンター材はご主人さまが画像でお見せしてくださった濃い灰色の様岩石のバサルトのイメージで進めています。

セラミックタイルの候補が幾つかに絞れてきたところで、キャビネットの扉の色味へと移ります。リネアタラーラで用意してくれいるベージュからグレー、ブラウンから濃紺までの塗装サンプルを選び出して、仮決めしたセラミックタイルとの色味を見比べながら、こちらも候補を絞ってゆきます。

弊社事務所にもそれなりのセラミックや塗装サンプルはありますが、やはりオーダーキッチン専門ブランドのリネアタラーラはサンプルの種類が豊富にありますね。

30分ほどの時間で候補を絞ってきたところで、実際のキッチンカウンターの上に候補の素材を並べてみた様子です。

サンプル材を使って色味を選ぶ際は、基本は自然光が差し込む窓辺で選ぶ作業をするのが基本ですが、実際に使われる光環境に似た場所で確認することも必要なのです。こちらの松濤D邸のキッチンは、自然光は横から差し込んできますが、リビングダイニングと同様少し暗めの照明で落ち付いた雰囲気の中で使うキッチンなので、それと似た光環境の場所に移動して、色味を再確認しているのです。
色味についてはあまりに長時間かけて打合せをすると、お客さまも何が何だか分からなくなってしまいことが多いので、カガミ建築計画ではある程度直感が生きている最初の10~15分の間に仮決めして、そこから候補を絞ってゆくようにお願いしています。また、N家の場合、今回はお仕事の都合でご同席してもらえなかったご主人さまもデザインが大好きな方なので、ここで絞った候補を落とし込んだCGを用意してそれで最終的に決めるというプロセスとしています。

キッチンのレイアウト、スペース上から共にビルトインの電子レンジとオーブンを縦に並べることになっており、その使い勝手と高さを決めて頂くために採用するのと同じサイズのオーブンを見て頂きました。扉を開けた状態で中のトレイを出し入れして、設置高さを確定させてもらいました。
その後10日ほどで担当スタッフの前田君が用意してくれたCGが以下のものです。

上がカウンター材のバサルトの色味、そしてバックガード壁のスタトゥアーリオ柄の少し青味を帯びた色に合わせた濃い目のグレーの扉の案で、下はもう少し柔らかく、リビングダイニングの色味に寄せてみた案です。

キッチンの色味のCG作業の最中に、N家のご主人さまからダイニングとキッチンの開口を、当初はアーチ型にしたいと思っていたが、より直線的で開口部が大きくなる四角い案も考えて貰えないかとのリクエストがあったので、キッチン内部からリビングダイニング側を見た比較CGと…、

ダイニングからキッチンを見返すとどう見えるのかの比較CGを作ってみました。
カガミ建築計画ではこういったCGは、作ったものをそのままメールで送ってお客さまに判断を一任するのではなく、対面での打合せ時にお見せして色々な面から検討して最終決定していきます。
ご夫婦のこだわりや感性を丁寧にすり合わせながら、キッチンが少しずつ「N家のキッチン」として形になっていく過程を大事にしたいと考えています。