今から16年前、2002年にマンションリフォームをお手伝いした白金台K邸のお客さまから連絡があり、ご夫妻とも高齢になってきたとのことで、玄関や廊下に手すりを考えて欲しいとのご依頼がありました。
浴室やトイレ等の水回りについては、すでに区の補助で手すりを付けているとのことで、まだ手すりがついていないプライベート部分の廊下と玄関の相談をさせて頂きました。
この図面に書いたようにプライベート部分については、費用と機能性を考慮していわゆるバリアフリー製品として売り出されている既製品の手すりをつけることになりました。ただ、お客さまも使う玄関については、デザイン的に邪魔にならないような手すり棒をとお願いされました。
現場に工事をお願いすることになったリフォーム会社に来てもらい、(お客さまが普段手を付くことで)壁が汚れている箇所を調べて、手すり棒の高さを決め、更に取り付け方とデザインを考えて、上記のような手すりを考えました。
お見積りを取って、お客さまのご了承を得たうえで取り付け工事に入りました。玄関扉横の壁は塗装仕上げですが、石膏ボード下地で、ボードには手すり棒を固定するビスを取り付けることができないので、まず初日の工事は壁一部の解体から始まりました。
ボードの裏は予想通り、コンクリートの躯体にGL工法で石膏ボードを張った状態でした。そこで大工さんに用意しておいて貰ったベニヤ板の下地を差し込んで、その上からプラスターボードを張って貰いました。これだけ年数が経っていると、同じ色で張り直した部分だけを塗装することは出来ないので、補修部分周りはパテ処理をしたうえで、玄関扉のある壁全体を塗り直してもらいました。
塗装している間に、プライベート部分の廊下手すり棒は取り付けて貰いました。
事前にスケッチを元に手すり棒の準備をしておいてくれた造作家具屋のライフウッドの大迫さんと谷山さんが、翌日現場に来てくれました。壁に当てているのは、ベニヤ板で作った型板だそうです。
手すり本体は、このように棒と台形の固定部分に分かれています。台形の固定部分には、黒い金物が見えていますが、これは緊結金物のクリップ5063(スガツネ)の製品で、棒についている銀色のビスとメスオスの関係になっており、台形金物を壁に固定した後、棒を差し込んでグッと引っ張ると固定される仕組みを作ってくれました。
まずは下の台形部材を接着剤とビスで固定して、
改めてガイドの板を当てて、上の固定部材の位置を正確に出します。
金物の位置関係はピッタリ出来ていないと棒をきちんと固定することができないので、この位置出しが最もシビアな作業だそうです。
こちらが最終的に仕上がった様子です。体重ウン十キロの各務がぶら下がってもグラつかないほどしっかりとした手すり棒の取付が完了しました。手すり棒の奥に照明のスイッチがあるのですが、ちょうど棒と壁間に手が差し込めて、オンオフをすることもできました。最後にお客さまに使い勝手と頑丈さをご説明して、ご納得して頂きました。