キッチンの組立てが終わった品川N邸では、玄関から廊下、そしてリビングへと続く、壁の大理石張りが始まりました。
大理石では、良くお世話になっているキダマーブルの良く知っている職人さんが現場に来てくれました。
カットされた大理石を現場に搬入してから、最初の作業は墨出し(スミダシ)です。ベニヤ板の下地壁に、文字通り墨壺を使って平行なライン(墨)を記してゆく作業です。
こういった壁に何かを張る作業で大変なのは、壁が床と接する最下段部分と、壁が天井と接する最上段部分、それに入隅、出隅のコーナー部分の取り合いなのです。床と天井は、厳密には平行でないこともあるので、どの線を基準にして張り始めるかで、その後の張り方の精度が変わってきてしまうのです。
ご主人さまの書斎部屋全体をビニール膜で養生した石加工場を作って、粉塵が飛び散るのを防いだうえで、最下段に張る石を微妙にカットして調整してゆきます。
因みに、写真左手に見えている大きく膨らんだ風船のようなものは、カッターの横に掃除機のような吸引機が付いており、粉塵を含んだ空気をフィルターしているのです。
廊下からリビングに回ってくると、家具を壁に埋め込んだ箇所があり、その下端ラインと最初の一段目が絡んでいるので、より慎重な作業が必要だったそうです。
最下段が決まってくると、中段については結構なスピードで張り作業が続いてゆきます。
壁への石の張り方も色々とありますが、今回は石のサイズを小さくしたことで、厚みが15ミリと薄く(通常は25~30ミリ)できたので、2液性ボンドを使った圧着工法なので、特に早く作業が進んでいます。
2液性ボンドは硬貨するのに少し時間が掛かるので、その間に石がズレないように、 目地の十字部分に速乾の硬化材を差してゆきます。
この写真で灰色に見える部分が後塗りの速乾の硬化剤です。
作業に取り掛かってから3日目で、ここまで進みました。職人さんの前の壁に張ってあるのは、設計施工で請け負ってくれているスタイル・イズ・スティル・リビング(SISL)が書いてくれた石の発注書です。
大理石の仕上げも2通りを混ぜる形でデザインしていましたが、図中で青マーカーで塗られている部分が水磨き(ツヤがない仕上げ)で、その他の白地部分が本磨き(艶あり)となっています。
帯の太さも基本は2種類ですが、実際には最下段と最上段は違う寸法ですし、梁型やコーナーの仕上げなども変わってくるので、ここまできちんとした図面を描くのも大変だったと思います…。
最上段は梁型もあって、また細かい作業になってゆきます。
建具上や、収納上にも大理石を張り伸ばしています。見切り材として塗装したスチールのアングル材を入れて貰っていますが、そこにも3ミリの目地を通して貰っています。細かくて写真では見えにくいですが、見切りとの間に小さな木片が2つ挟まっていますが、それが3ミリの目地幅を担保してくれているのです。
4日間かかって、ようやく最後の数枚のところまでたどり着きました。
最後に残る作業は、目地詰めと…、
壁や天井、造作家具との取り合い部分のコーキング材打ちで、完成です。
細かい取り合いですが、石壁に設けた照明スイッチもきれいに納まっていました。
因みに、今回の工事中の写真のほぼ半分は、SISLの現場監督の中川さんの撮影写真を提供して貰いました。中川さん、ありがとうございます。