Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

既製品を使ってコストパフォーマンスを追求したマンションリノベ

六本木Y邸

ギャラリーライクな(こんな言葉があるのか知りませんが…)なインテリアデザインの六本木Y邸、造作・取り付け工事の後半で、竣工までのスケジュールが見えてきました。六本木Y邸では、空間の質と同様、コストパフォーマンスにもこだわっての計画となっており、その工夫をご紹介いたしました。

造作工事の終盤@六本木Y邸

養生されたペニンシュラ(半島)型キッチンカウンター背面は、ガラス扉で隠す収納となっています。キッチンも普段はフルオーダーキッチンを使う頻度が高いですが、YさまはTOYOキッチンのステンレスの質感をとても気に入っていらしたので、造作では作れないレベルのステンレス加工でもあり、既製品のキッチンを採用しました。
キッチン背面は隠す収納なので、内部の棚はコストパフォーマンスに優れた南海プライウッドの既製品を使っています。

造作工事の終盤@六本木Y邸

南海プライはシステム収納としてはバリエーションも豊富で種類も色々とあるなので、選び甲斐があります。

赤いペンで書かれた部分だけが造作家具工事で、箱も棚も全て既製品です。因みに、棚を天井まで伸ばそうとすると既製品が使えなくなってしまうので、その点だけはお客さまに事前にご説明しています。

特に今回は、アルミ製ガラス扉もユニオン社の既製品で考えたので、扉の割り付けと内部のシステム棚の組み合わせが多様で、前田君が何通りものパターンを作ってお客さまと打ち合わせをしてくれました。

最終的なものは②の4枚扉の引き違い引き戸と割を合わせたシステム収納棚で決まりましたが、途中2枚と3枚の扉を組み合わせるパターンなども検討し…、

それぞれの組み合わせ案のメリット・デメリットに加えて、金額的な差額まで計算したうえで、Yさまご夫妻に決めて頂きました。因みに上記の表では、キッチンをリクシルにした場合の費用や、アルミ扉をサンワカンパニーにした場合の費用も比較しています。

造作工事の終盤@六本木Y邸

玄関ホールの左右のカーブ壁も出来上がってきました。入って右側のこちらの壁はキッチンカウンター搬入のことを考えて、造作家具として作って貰ったカーブ壁です。

造作工事の終盤@六本木Y邸

反対側のこちら側はFGボードで現場で大工さんに作って貰った壁ですが、クロス張りも終わりました。こちらの壁中央の扉は、コンパクトはシューズインクローゼット(SIC)のへの扉で、既製品の神谷コーポレーション・フルハイトドアを使っています(まだ仕上げていない素地です)。
因みにギャラリーや美術館のような雰囲気というお客さまのからのご要望があった際には、塗装仕上げを考えていましたが、お掃除好きな奥さまが水拭きができるビニールクロスにして欲しいとのご依頼がありました。ビニールクロスも考えてみれば既製品の建材ですね。

既製品としては、カミヤの建具はそれほど安価ではありませんが、造作建具に比べれば枠も丁番も金物も込みでの価格となるので、メリットが十分にあります。今回は、建具にも枠にもクロスを巻き込むことができるステルスタイプの物を選んでいます。

カミヤの建具は、引き戸も開き戸もほぼ同じデザインなのも使い勝手が良いのです。ただ、取っ手は既製品らしくグレード感が不足しているので、施工をお願いしているリフォームキュー坂本さんからの情報提供で、建具の芯が入っている寸法を貰ったので、弊社の前田君が芯に触らない位置で特注の取っ手を取り付けてカスタマイズすることになりました。

何枚かの引き戸には鮮やかなカラーのダイノックシートを張るので、建具の小口だけは金物で納める形で検討していましたが、建具との納まりの問題で、小口のフラットバーは中止となりました…。

造作工事の終盤@六本木Y邸

神谷の既製建具に特注取っ手を取り付けた扉のディテールがこちらです。

造作工事の終盤@六本木Y邸

因みにこちらがコンパクトSICの内部です。正面壁には、塗装された有孔ボードが取り付けられています。

ワンちゃんのお散歩用の道具を引っ掛けられる場所が欲しいとの当初のご要望に対して、既製品の有効ボードに簡単にフックを取り付けられるシステムを見つけたので、そのシステムを使えることができるように工夫しています。

造作工事の終盤@六本木Y邸

有孔ボードを背面の壁から少し浮かせておいて、フックが差し込めるようにすることがポイントとなります。
既製品の建材や建具、収納システムといったものは、どれも比較的安価で、使い勝手は良く研究されていながら、施工がしやすいように工夫されていて、かつスピーディーに取り付けられるといったメリットはありますが、デザイン的にはイマイチだったり、寸法の自由が利かなかったり、安価なりの安っぽい仕上がり感といったデメリットもあります。ただ、コストパフォーマンスという観点からみると、圧倒的に既製品の方が優れていますので、既製品をうまく活用しつつ空間の質を担保するのも設計者の腕の見せ所なのです。

造作工事の終盤@六本木Y邸

この日は他に、床カーペット張りの職人さんが入っており、

造作工事の終盤@六本木Y邸

洗面の造作家具は据え付けが終わり、

造作工事の終盤@六本木Y邸

寝室のベッドのヘッドボード側のクロスのパネル張りも終わっていました。因みに、クロスのパネル張りもビニールクロスの安っぽさを回避するために考えた設計手法の一つでした。