渋谷R邸の解体工事が始まりました。
こちらのお宅は30階以上の高層マンションの上層階のお宅です。マンション竣工時の図面集から、このお部屋だけ特別に在来工法で浴室が作られていることが分かっていました。
築20年未満のマンション、それも高層マンションの高層階の浴室となると、防水の安心性だけでなく、施工のスピードのこともあって、ほぼユニットバス、それも高級なオーダーユニットバスで作られていることが一般的です。ただ、このお部屋のオーナーだった方は浴室の広さ、そして高さ(床を嵩上げして、窓から街を見下ろしたかった?)を特注で作りたかったからなのか、本当に珍しく在来工法で浴室が作られていました。
解体工事が始まって3日目の様子ですが、かつての浴室だった場所に、大きな床スラブが残っていました…。
壁の黒い部分はアスファルト防水層です。壁に張られていたタイルはきれいに剥がせたのですが、床の大きな塊が残っています。
床の嵩上げ部分を間近で見た様子です。下から発泡スチロール、現場打設の嵩上げシンダーコンクリート(茶色い髪は発泡スチロール型枠の剥離紙?)、その上に壁の防水層と一体で繋がったアスファルト防水層。その上に小石が見えているところから上が「押えコンクリート」です。押えコンクリートで水勾配を取っています。
発泡スチロールが下面全面に敷き込まれているので、その下にバールを差し込んで、何人かでコジ起こせば、嵩上げコンクリート全体が、ゴボッと取れるのではと思いましたが、そのように簡単に解体することはできないようでした…。
嵩上げコンクリートにはご丁寧にメッシュの鉄筋まで入っているようで、ハツリ機2台ともう一人鉄筋を切る職人さんの3人掛かりで解体をしていました。
一枚の壁を挟んで、右側では大騒音でホコリだらけの工事が行われているのに…、
その左側の(かつての)部屋はきれいさっぱり解体されていて、シュールな景色でした。
この時点で、今のペースで解体工事を進めることができれば、あと2日で在来浴室部分を解体することができるとの話でしたが、僕らが現場から去った後、マンションの防災センター(管理事務所)から、近隣の方からとても我慢できない騒音なので、工事をしばらくストップして欲しいとの依頼があったとのこと、解体工事をストップすることになってしまいました。
幸い、ストップして欲しいとの依頼があったのが1軒の方だけでしたので、工事会社プレステージプランニングの現場監督の森川さんと設計担当の阿部さんが防災センター経由でご挨拶に伺いたい旨伝えて貰いました。2度ほど騒音のお詫びと今後の方針をご説明させて頂いたところ、その方から指定して頂いた日程であれば、解体工事を進めても良いだろうとのお話しになったので、他の近隣の方々にも解体工事日程の変更をお伝えしたうえで、何とか工事を進めさせてもらうことできました。
こちらが1週間後に現場に寄った時の様子です。浴室の床の立上りがきれいさっぱり消えて無くなっていました。
奥の壁の部分には水漏れがあったようで、壁下地に錆が回っていました…。後日この部分は錆を撤去して錆止めを塗布して貰うように森川さんにお願いしておきました。下の階にまで回り込むような大きな水漏れでなくて良かったです。高層マンションは上層階になると、地震時に予想できない揺れが起こることがあり、その揺れが原因で防水層が切れても、水漏れが発覚するまで誰にも確認する方法がないという怖さがありますので…。
その他の部分の解体工事は順調に進んでいました。180平米超えの広さが実感できる解体時の様子です。
天井裏に隠されていたダクトやエアコンとその配管、そしてスプリンクラーの配管は複雑に絡み合っていました。今回キッチンを大移動するので、そのための配管整理が大変です。
絡み合ったように見えるダクト類を図面と照らし合わせながら役割を理解して、それらがなるべく交差しない形で設備を移設する計画を立てていきます。
今回のリノベーションは使える部分は再利用しようとのことで、かつてのトイレや納戸収納の扉はそのまま残すことなっており、これまたシュールな現場となっています。
他にも移設する扉は枠ごと取り外して貰い再利用することとなっており、現場の床に養生された状態で枠が保管されていました。
昔の解体工事と違って、今のマンションでの解体工事は、とにかくきれいで丁寧なのです。特に廃材を捨てる際に、きれいに分別されていないと、膨大なコストが掛かってしまうので、このように金属類は金属類で木質は木質ときれいに纏めて分けられているのです。
まだ、この時点では在来工法浴室の解体の行方は見えていませんでしたが、その部分以外の解体は概ねきれいに進んでいたので、何とかなるだろうと思いつつ、現場をあとにしました。