Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

メゾネットマンションの階段リフォーム

代々木上原I邸

代々木上原I邸は4階と5階の2フロアがあるメゾネットマンションで、室内に階段があります。ヴィンテージマンションなので、大きな吹き抜けがあるタイプではありませんが、メゾネットマンションリノベーションそのものも、階段のリフォームも珍しいので記事にしてみました。

左側が解体時の階段で、右側がリフォーム後の階段です。どもに階段中腹の踊り場から同じアングルで撮影したビフォーアフターの写真です。

リフォームの設計デザインの基本は実寸の測量から始まりますので、施工をお願いしているの現場監督の石坂さんと、弊社のプロジェクト担当の神崎さんの二人で詳細な調査をして図面を起こして貰うところからスタートです。

メゾネットマンションの階段リフォーム

施工会社が見積ることができて、施工計画を立てられる図面を作ります。基本的な寸法を抑えた所で、まずは施工側の図面を待ちます。

メゾネット階段の施工図

A2サイズの大きな図面を縮小したので、詳細が見えにくいですが、青の石坂さんが作ってくれた施工図がこちらです。まだ手摺りの細かい部分は決まっていませんが、階段部分の施工はできるレベルまで設計が詰まってきたので、工事を進めて貰います。

リノベーション工事を開始する際に近隣にご挨拶した際に、こちらの部屋の階段を上り下りする際の音が伝わるとのお話しがあったので、階段の踏み板にクッション材を張りました。ただ、クッション材の上にはサイザル麻は敷き込めないので、更にその上からベニヤ板を張っていきます。

事前に加工場でこちらのように踏み板と蹴込みを組み上げたもののを…、

大工の矢野さんが固定していきます。

因みにメゾネットマンションの階段は、主要構造物になるので、役所への申請なしに変更することはできません。今回はどちらにしろコンクリートで作られた階段だったので、作り直しは検討にも上がりませんでしたが、木製階段や鉄骨製階段の場合、作り変えなくなってしまいますが、要注意です。

階段自体はシンプルな構成ですので、デザインの勝負所は階段室の壁周りと手摺りになってきます。現場監督の石坂さんと相談して、最薄で作れる手摺り壁の下地を組み上げて貰いました。

踊り場から手摺りが上階まで伸びてきます。

手摺り下地としては、ここまで作って貰いました。

手摺りの笠木(持ち手)部分の形状を決めて、各コーナー部のスケッチを描きます。

手摺りの笠木の実寸モックアップ

無垢材から作って貰った実寸の手摺り笠木のモックアップを…、

手摺りの各コーナーに当てて、どのように納めるかを考えます。

写真とスケッチを見比べながら、担当の神崎さんと各務で納まりを検討しました。

写真に描き重ねたスケッチを見て、現場の大工の矢野さんが作ってくれた、手摺り端部のトメ加工です。何のために作られたものか、説明するのも難しいのですが、実はこの変態的な納まりが重要なカギとなるのです。

矢野さんは、この手すりの作成に相当気合を入れてくれているようで、現場の一角に手摺り加工場を作って、細かい納まりに対応する姿勢を見せてくれています!

端部の削り合わせや、コーナーのトメ加工等、実寸のモックアップを作ってくれるのは本当に頼りになります。

矢野さんの腕が相当に良いことは以前から知っていましたが、本気を出すと、ここまで凄いとは分かっていませんでした…。

その変態的ともいえるコダワリを持って作ってくれた手摺りがこちらになります。

まだ製作途中で未完成ですが、大工の加工の粋を集めた素晴らしい手摺りになることは確実です。

固定用のクランプを取り外して、やすりで整えると、一本の無垢材が曲がりながら流れてゆくような美しさです。手摺りの上階の下地は、寄りかかった時に揺れる可能性がありそうだったので、鉄の補強材を仕込んでいます。

今回は手摺りだけでなく、階段部分を他の空間とはデザイン的に切り分けるために、壁と階段ボックスの取り合い部にも工夫をしています。

階段ボックスの内部を木張りにして、他の空間との切り分けに間接照明を入れるデザインとしているのですが、間接のLED照明を後日交換できるようにするために、取り外しができる木枠を作ろうとしています。

その木枠の原寸モックアップも作って貰いました。

長物として現場に届いたのが、こちらです。

実はこの枠も一癖ある代物で、どのようにLEDの配線を通すかの検討を重ねた結果、最下部だけは固定にして、溝を掘った部分に電線を通し、上部枠はそこに差し込むような形で取り外しができるという複雑な作りになりました。

階段最下部の手摺りの端部も中々難しい取り合いでしたが…、

大工の矢野さんが、このように美しく仕上げてくれました。

階段室の大枠が完成したところから、内装を仕上げていきます。先回の突板ベニヤ板工場見学の際に指定して作って貰った特注の突板を内部に張っていきます。

踊り場部分には、梁上のニッチ部分にカラーガラスと照明を組み込んで印象的なコーナーとなる予定です。

ボッチ14シリーズの照明を16灯吊るしたものが、背面のカラーガラスに移り込む仕様となっています。後日照明器具の高さを変更できるように、天井部分を開閉できるように工夫しています。

階段床はサイザル麻を巻き込みで張りました。そして養生を取り外して完成した階段が以下からの写真となります。

上階からの降り口です。薄い間接照明が効いていて、木製の箱が室内に挿入されたようなデザインとなっています。

踊り場はガラス照明が上から吊るされたものがカラーガラスに反射して、星降る夜のようなドラマチックな様相です。

大工の矢野さんの労作の手摺りの仕上がりがこちらです。

どの角度から見ても隙間がない完璧な納まりです!

下階の階段の登り口です。こちらは下りてきた手摺りと階段下の収納扉の取っ手のデザインがピタリと合って、秘密の隠れ家への入り口のような雰囲気に仕上がりました。

最後にもう1枚、ビフォーアフター写真です。ここまで頑張ってくれた、弊社設計担当の神崎さん、施工会社青の現場監督の石坂さん、そして腕を存分に古くってくれた大工の矢野さんに感謝あるのみです。