Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

deVOL社の無垢大理石シンクと銅製シンク

文京区S邸

イギリスのキッチンブランドのdeVOL(デヴォール)社をご存じでしょうか?僕も文京区S邸のお客さまから、その名前を聞いてホームページを開くまで、まったく知りませんでした…。

こんな素敵なキッチンブックも出している35年の歴史があるキッチンブランなのです。欧州だけでなくアメリカのセレブにも大人気の、素材感とアンティーク感のあるクラシックな空間と一体化するキッチンで大人気のブランドだそうです。

文京区Sさまは、そんなdeVOLの無垢の大理石シンクと、

アンティーク加工の銅製シンクをキッチンに採用したいというご要望を頂きました!それ以前より、キッチンは幾つかの国内のハイエンドオーダーキッチン屋さんを巡って、世田谷のリネアタラーラにお願いすることが決まっていたので、担当の牧野さんにそんなことをやったことがあるのか、あるいはできそうかを相談に乗ってもらいました。リネアタラーラのスタッフの一人がdeVOLのことを知っており、是非トライしたいと言ってくれたので、できるところまで頑張ってみることになりました。

まずはホームページ等に乗っている資料の研究から始めました。

ネットショップから標準品であれば購入することができるのですが、それではサイズ感が合わないので、特注でどこまでできるかをヒアリングすることになりました。

シンクのサイズについてはある程度融通が利くことが判ったのですが、設備関係の配管部品についての懸念や、どちらかのシンクにはディスポーザーを取り付けたいというご要望もあるので、それらが可能かをメールでやり取りし始めたのですが、設備用語での行き違いがあったので、このような簡単な図解用語訳(笑)を作ってイギリス側と共有することとしました。

大理石製シンクと銅製シンク、どちらをメインのアイランドキッチンに設けて、どちらにディスポーザーを取り付けるかが決まっていなかったので、まずは大理石製シンクの詳細図面を先方からもらって、

リネアタラーラに作図して貰ったこの図面を出して、このような加工ができないかと聞いてみたところ、そのようなことはできないと断られてしまいました。

こちらの図面は、大理石シンク下にディスポーザを取り付けることになった場合、ディスポーザーはシンクから吊る構造となっているので、ただでさえ重たい大理石シンクから吊るのは難しいだろうと、シンク下から支える構造をスケッチしたものです。
そもそもdeVOLのキッチンは機能よりも雰囲気や見た目を重視しているので、最新式のビルトイン型の調理機器やディスポーザーなどの機械対応を考えていないこともわかってきました。

大理石ではシンクの底板の厚みの調整ができないので、銅製シンクにディスポーザーを設置することとなりました。排水口からトラップまでの間のテール管の太さがイギリススタンダードどうなっているかを確認したところ、何とか接続できそうだとのことが判りました。

こちらは銅製シンクの排水溝周りの穴とディスポーザーの金物を取り付けるための凹み寸法をdeVOLに伝えるためのスケッチです。細かいところでは、融通が利かないことも判りましたが、ある程度のところまでは作ってもらえることが判ったので、お客さまからの施主支給の形で購入してもらうことになりました。

大理石シンクはホームページに説明があった通り、無垢の大理石の塊から削り出して作るので、図面の承認を貰ってから製作で11~13週間、そこからチェックを経て航空便で送って、日本の税関を経て配送されるので、さらに2週間ほどの時間が掛かるとのことでした。

銅製シンクも、このように板金で作ったシンクをアンティーク加工するそうですが、こちらは大理石ほどは時間が掛からないとのことでした。ただ、どちらも一緒に発送したいということと、大変に重たいものなので、荷受け側も最低でも大人4人は用意して欲しいとのアドバイスも受けております。

そして、用賀のリネアタラーラショールームにDHLで届いた代理製シンクがこちらです。

こちらのシンクは傷一つなく、とてもきれいに作られたものが無事届いたようです。

そちらこちらが銅製シンクです。大理石シンクに比べると、明らかに梱包が安易で、牧野さんたちも大丈夫かなと思いながら開けたところ…、

やはりというか、かなり歪んだものが届きました。以下、リネアタラーラ牧野さんからの詳細です。
「①銅シンクの歪みですが、長手の辺が1辺、中央付近で内側へ(図面上、≒4mm)反動でしょうか、同辺の右端で外側へ(図面上、≒3mm)大理石カウンターと接する、フランジ部分も凸凹が見られます。」
また、「②銅シンクでもう一点。排水部分、ディスポーザーが取り付く箇所が、図面と異なる形状です。試しに、普通の排水部品をあてがってみましたが、シンク底面よりも、少しもりあがります。水の流れが悪くなると思います。」とのことでした。
①については、deVOLに交渉して作り直してもらうには日程が掛かり過ぎるので、日本のお茶室などで銅製シンクを作る会社に矯正をお願いする。費用についてはdeVOLの保険が効かないか交渉してみることに。②については、リネアタラーラの協力板金工場さんに相談して、2次加工をして対処できそうだとのことでした。
早速、お客さま経由でdeVOLに相談したところ、自分たちが発送したときには歪みは無かったので、DHLの搬送途中の問題だと思ので、その証拠となる資料を送って欲しいとのことでした。
その様なことになることを想定して、リネアタラーラにはDHLの到着から開梱するまでの様子を全てビデオと写真で記録するようにお願いしていたので、それら全てを先方に送りました。支払いは後日になりそうですが、保険対応してもらえそうです。

これがリネアタラーラさんのお付き合いのある銅も扱える板金屋さんで補修してもらったのちの銅製シンクです。以下、牧野さんからの補修レポートです。
「当初の歪み部分、最大7mmありましたところ、3mmまで縮めることができました。凹になっていた長手辺、ほぼまっすぐになっております。凸凹のフランジ部もたたき矯正。完全なフラットとまではいきませんが、シリコンを充填することを考慮すると十分な状態になっております。
一部、設置の調整がしやすくなるように、フランジの巾をカット調整しております。もともと見えなくなる部分ですので、ご安心ください。排水部分もディスポーザーが取付できる形状に加工材を足しております。」とのことです。ここまでケアしてくれるプロが日本にいること、本当に安心できますね!

因みにシンクと一緒に届いた排水部品です。絵になった取り扱い説明のようなものと見比べて貰ったところ、まずは足りない部品はないとのことです。まだ油断はできませんが、ここまでの頑張ってフォローしてくれた牧野さん、本当にありがとうございます。
ここからは楽しみなキッチンへの組み立てとなります!