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プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

海外輸入照明のPSE認証適合改造について

文京区S邸

カガミ建築計画では、これまでも海外から輸入された照明器具を使ったことが幾度もあります。特に華やかさが欲しいペンダント照明や、壁付けのブラケット照明は、国産の器具はデザインも地味なものが多く、選択肢がかぎられているので、輸入製品を探すことになります。輸入照明でも、日本に代理店があるフロスやルイスポールセンといった有名ブランド、或いはルミナベッラやスタジオノイのような輸入セレクトショップであれば、海外から輸入するだけでなく、各々の器具を日本の電化製品の基準であるPSE認証に合わせて改造したものを販売してくれているので安心です。
コンセントに差し込んで使うスタンド照明やテーブル照明といったものは、個人の方が輸入してご自身のリスク(責任)で使う分においては、僕らがとやかくいう権利は無いと考えていますが、ペンダントやブラケットのように直接電線と接続させる照明器具については、幾ら施主支給の照明器具でも電圧の違いなどで故障したり、最悪火事になったりする可能性もありますし、電気工事屋さんたちも絶対に首を縦に振らないので、PSE認証に適合するように改造したうえで取り付けて貰っています。
因みに、PSE(電気用品安全法)とは、Product Safety Electrical Appliance & Materialsの略語で、PSE認証とは国内の電気用品安全法に基づいて、電気製品の安全性を確認するための認証制度のことです。僕らがお願いしているPSE認証適合改造は、輸入物の照明器具を、登録された電気屋さんに持ち込み、日本のPSE基準に合った配線やソケット、電球にそっくり入れ替えてPSE認証に適合するように改造して貰っているもので、その製品を認証してもらう作業ではありません。

海外からの輸入照明のPSE認証改造

こちらの照明、ポーセリン(陶磁器)シェードのちょっとアンティーク風にも見えるThe Creamware Pendant Lightという名前のペンダント照明で、キッチンの大理石無垢材から掘り出したシンクと同じイギリスのブランドのdeVOLからお客さまに輸入手配してもらった器具です。こうやって取り付けられているのを見ると、なんということなく見えるのですが、ここまで持ってゆくのかかなりの手間が掛かりました…。

海外からの輸入照明のPSE認証改造

まずこのような段ボール箱で事務所に届いた器具を、PSE認証適合改造工事をいつもお願いしている西日暮里の斉藤照明さんに持ち込んで、

海外からの輸入照明のPSE認証改造

一緒に開梱して全ての陶磁器のシェードに傷やヒビが無いかを検品してもらいます。

海外からの輸入照明のPSE認証改造

斉藤照明の松崎さんは、検品が終わったらすぐに分解し出します。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

ポーセリンのシェード、ソケット&コード、そして両者を取り付けるカバーフランジとワッシャーに分解された様子です。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

そして右がオリジナルのソケットで、左が日本のE26サイズのソケットです。右のままだと、日本で購入できる電球もありません。かといって左のものにすると、シェードを取り付けることができないので、右のオリジナル品をさらに分解して何とか日本標準のもう一つのサイズのE17のソケットを差し込むようにしたいと説明してくれました。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

まずはコードをどれにすべきか、実物サンプルが無かったので、ネット情報を見せてくれました。明らかに一番左のものが良さそうです。細かく見るとコードのよじれ具合が違いますが、まぁ大目に見て貰いましょう(笑)。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

そしてソケットです。E26サイズで使えそうなものが無いかを一応探してくれましたが、アンティークシルバーとアンティークゴールドで、今回のようなアンティークブロンズは無かったので、やはり当初の方針で進めるしかなさそうだとのことなりました。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

こちらはメッキのサンプルです。金属部分でどうしても交換しないといけない部品があるので、その部分だけ色が変わってしまうわけにはいかないので、この中から選んだ金属色で古川工業所にメッキをお願いすることになるそうです。

上記のような部品をうまく組み合わせれば、PSE仕様への適合改造が可能なことが判ったので、納期とお見積りをお願いしました。翌日に届いたのがこちらのお見積りです。4灯で1灯につき約3万円の改造費用、そして僕らの設計料と手間賃(灯具選定とレイアウトとPSE改造のアドバイス)を合算して、16万円となり、それをお客さまにお伝えしたところOKとの返事を頂いたので改造に着手してもらうこととなりました。因みに、納期は取り寄せの部品とメッキ作業、そして斉藤照明の忙しさで決まってくるようで3週間とのことでした。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造の斉藤照明

改造が終わった照明器具を見る前に、斉藤照明の様子をご紹介しておきます。西日暮里の商店街を少し外れたところにこのようなお店があります。窓際に段ボールが積まれて、中の様子があまり見えないのですが…、

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造の斉藤照明

内部は家内工場のような作りで、女性陣が5人ほど黙々と電気配線をいじっており、何かの秘密基地の様です。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

斉藤照明はPSE改造がメインのお仕事ではなく、特注オーダー照明の造作や、既存照明の修理&カスタマイズが主流のお仕事とのこと、見慣れぬ道具や部品が広げられており、興味を誘いますね。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

奥ではパソコンに向かった男性陣がオーダーメイドの照明器具の設計をしていました。ラフスケッチから特注の照明器具を作るのが得意とのこと、10年ほど前に初めて伺った時のことを思い出しました。苦労して米国からの輸入照明器具をPSE適合改造の相談をさせて貰ったところ、この程度の照明器具だったら写真からでもコピーして作ることができるよと言われたことでした…。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

と、書いている間に3週間の時間が経ち、改造が完成したとのことで斉藤照明から完成写真が送られてきました。シェードとリング状の固定金物以外は交換されているのですが、何の違和感も感じませんね!

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

こちらが内部で電球を外したソケット部分です。左が改造前で右が改造後です。同じブラケットの内部に、白い陶器のソケットがピッタリサイズで差し込まれているのが判りますね。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

試しに電球を入れて点灯してみると、白い陶器部分もまったく違和感が無いことが判りますね。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

現場に灯具が届いて、吊り込まれて点灯した様子がこちらです。5センチ厚の大きく迫力のあるキッチンアイランドカウンターの上に、慎ましやかなペンダントが4灯吊られている様子が可愛らしいですね!
ここまで長い道のりでしたが、努力が報われたようで担当スタッフの竹田さんと喜んでおりました。

と感慨にふけっている間に、同じお客さまから新しいタスク(笑)が来ました!寝室の枕元のブラケット照明の候補を幾つかご提案していたのですが、どれもイマイチとのこと、この写真のようなものを見つけてくれないかとのご依頼でした。
輸入してものを改造するよりも、最初から斉藤照明に作ってもらう方が簡単なのではと、この写真から似たものを作ってもらえないかと問い合わせてをしてみたところ、「弊社で制作できるかと思ったのですが、フレキシブルチューブ部(支柱のグニャグニャ曲がる部分)のメッキまたは、塗装の仕上げがうまくいかない可能性が高いので、やはりある程度似たものを探して輸入してもらったものを改造した方が良さそうです」とのお返事でした…。

日本に代理店がある輸入照明ブランドのカタログを見まわしてみましたが良いものが見つからなかったので、ベイカー@東京が扱っているヴィジュアル・コンフォート(Visual Comfort)のカタログから使い勝手が同様のものを幾つか探してみました。ベイカー@東京が輸入してくれる照明器具は最初からPSE適合改造がお見積りに含まれており、こちらの手間がかなり省けて、リスクも少ないのです。
ただ、残念ながらこちらのブラケット照明(英語ではスコンス(Sconces))のどれもイマイチとのこと、最後の手段としてネットの画像検索をしてみたところ…、

色味は少し違いますが、まさにドンピシャのデザインのものが見つかりました。Rose Uniacke(Brooks Thomas)の製品でした。こちらの情報をお客さまにお見せしたところ、是非これで進めたいとのことでしたので、お客さまにネットで購入してもらい、弊社事務所に送ってもらう手配をお願いしました。

因みに、最初のペンダントもそうでしたが、海外からの輸入物は日本に代理店が無い場合、照明器具に限らず家具や機器類等ほぼ全てはお客さまの支給品扱いにして貰っています。僕ら設計事務所側で購入することになると、届いた製品に瑕疵があったり場合の対応も購入者であるこちらが対応することになったり、納期のスケジュールコントロールもする必要があり、負担が過度に大きくなってしまうからです。価格の10~20%程度の経費を頂いたとしても、商売として割に合わないのです。商品についてのリスクはお客さんに負ってもらうことをご説明して理解して頂いております。照明器具については、一応事前に斉藤照明さんに商品のネット情報を送って、80~90%程度の可能性でPSE認証適合改造ができそうなことを確認して貰ってから、お客さまにご購入して貰っています(つまり、お客さまに10~20%の可能性でPSE適合できない可能性があること。できなかった場合は無駄な買い物になってしまうことをお伝えしております)。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

そして数週間後に事務所に届いたブラケット照明がこちらです。

傷や歪みが無いかを検品した後は、すぐに色々な部分の写真を撮って斉藤照明に送りました。返答は、やはり分解してみないと分からないので、持ってきて欲しいと言われました。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

持ってゆくと、担当の松崎さんはすぐに手慣れた手で分解を始め、

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

あっという間にこの状態です。因みに右にあるプラスチック製のソケットは日本の規格品です。このサイズのものであれば、中に差し込めるだろうという意味での比較です。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

松崎さんが一番心配していたのは、フレキシブルチューブ部内部を通っている電線を交換することができるかだったようで、この取り付け部分を分解して、コードを押したり引いたりして、抜けそうなことが判った時点で、これならPSE適合改造ができそうですとの返答を貰えました!一番ホッとする瞬間です。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

アップの写真がなく、小さくしか映っていませんが、数週間後に主寝室の壁に取り付けられたブラケット照明の様子です。

そして最後に、こちらのファブリックのドレープが美しいペンダント照明をリビングに採用したいとのリクエストがお客さまからありました。

お家の家具の購入を検討しているPINCHという家具ブランドのサイト内で見つけたペンダント照明Anders light large(Pinch)とのことでした。上部から見た写真はありませんでしたが、おそらく上部はオープンになっていて、電線とソケットの交換は容易にできそうな雰囲気だったことと、かなり大きなサイズのものを購入予定とのこと、弊社ではなく直接齊藤照明さんに送ってもらうようにお客さまから手配して頂きました。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

そして数日後、斉藤照明に届いたペンダント照明です。あはり想像通り、シンプルな作りで、問題なく改造できるだろうとのことでした。いつも通り見積りと納期を確認後、お客さまの了承を得て改造をして貰い…、

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

数日後に改造されて点灯した状態の写真が届きました。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

試しにクリプトン球とLED球、そしてなぜか青い色の電球を取り付けた写真が送られてきました。
当初届いたものとは以下の点が変わっています。
ベージュ色のファブリックケーブルだったものが日本の規格品ではないので、白いビニールコードになったこと、電球無しだったものにLED球を取り付けた状態で納品してもらうこととなりました。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

そしてまた数日後、現地に大型ペンダント照明が届きました。箱はかなり大きいのですが、中身がファブリックなので、相当に軽いようです。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

こちらが改造されたソケット部分です。白いコードも違和感がありません。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

ペンダント照明は取り付け高さの設定が中々難しいのです。まだ家具も入っていない状態で正確な高さを設定するのは難しいので、まずは僕らが見て良さそうだという寸法で取り付けて貰うこととなりました。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

ファブリックでドレープを組んで留めたシンプルな照明器具でしたが、面白いアイデアですね。

海外からの輸入照明のPSE認証適合改造

シンプルながらエレガントな雰囲気で、お客さまの好みの空間にしあがりそうです!