彫刻家イサム・ノグチの和紙を使った照明器具の「アカリ」を作っているオゼキの岐阜工場を見学してきました。
機械作業は一切なく、全てを手作業で作ってゆくアカリの様子をじっくり拝見させて頂きました。
工場といっても、岐阜市内の株式会社オゼキの自社ビルの3階ワンフロアが工房のようになっているのです。
流れ作業で大量生産するのではなく、一人の職人さんが一つの型に専念して、竹ひご巻きから和紙張りまでの一連の作業を全てをこなしてゆくスタイルとなっています。
イサム・ノグチ氏が存命の頃に作られた、幾つもの木製型があるのですが、それらを修理しながら大事に使ってきているそうです。
基本的には中心に木型を組んでおいて、その周囲に竹ヒゴを巻いて、和紙を張ってゆき、ノリが完全に乾いた状態で、内部の木型をバラして取り除くので、このように木型も組み合わせ式になっており、バラけないようにゴムバンドで結束されています。
最初の竹ヒゴを巻く作業が、実は一番難しいそうで、それぞれの型によって難易度が違うので、最初は簡単な型からスタートして、徐々に難しい型へと移行してゆくそうです。
ちょうど真ん中に竹ひごを糸で結んでいる個所が見えるでしょうか?この継手の個所を小さく目立たないようにすることが非常に難しいそうです。
竹ひごだけでは強度が足りないので、開口部には針金が回されています。その針金に和紙を巻き付けてから、少しずつノリを付けながら和紙を張ってゆきます。
こちらは竹ひごの密度が非常に密なEというタイプのアカリになります。
柔らかめのノリと霧吹きと竹ひごと糸とはさみを交互に使いながら、職人の皆さんが丁寧に作ってゆきますが、一日で作れるアカリは難易度にもよりますが、2つか3つ程度だそうです。
24Nというタイプのアカリの内部を見た様子です。ノリを乾かしながら和紙を張るため、この写真のように一つ置きにしか和紙を張ってゆけないのです。
もうすぐ張り終わるL7タイプの照明です。先ほどは、竹ひごが密な方が難しいと書きましたが、このL7のように竹ひごが極端に少ないもので、形をしっかり出すタイプもやはり難しいとのことでした。
きれいに張り上がって、乾燥されているアカリのシェードたちです。因みに手前にウツボのように並んでいるのはBB3/33Sというタイプのシェードです。
実はオゼキはアカリだけでなく、伝統的な岐阜提灯も作っています。同じフロアの奥では、伝統絵付師の方が、丁寧に一つ一つに顔彩絵具で描いている様子も見学させて頂きました。
オゼキの本社近くにあるアカリのショールームも拝見させて頂きました。
最近はあまり作ることのなくなってしまった古い型のアカリなども並んでおり、とても美しい空間となっていました。以前は良く照明器具として使っていたアカリですが、最近は使うケースが減っていましたが、今回再発見したことも多く、またインテリアの一部として使ってゆきたいとの気持ちを新たにしました。
今回は日米のイサム・ノグチ財団の名誉理事と理事である、ショージ・サダオ伯父に特別にお願いして工場を見学させて頂きました。オゼキの皆さま、お忙しい中での見学、どうもありがとうございました。