Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ミラノサローネ2023_ポリフォーム・ラボ-1

ミラノサローネ2023

イタリア・高級家具ブランドのポリフォームの本拠地は、北部イタリアのブリアンツァ地方のインヴェリーゴという町です。この町に大小5つの工場とラボ(研究所)という名前の施設があり、そのラボを見学させて貰いました。

ポリフォルム・ラボ

今回のミラノサローネは、家具会社アクタス社主宰のツアーで、日本からはアクタスのお二方(大岩さんと阿部さん)そして、日本の不動産会社やゼネコン、大手設計事務所や僕らのような小アトリエの設計者まぜこぜで11名の総勢13人のグループツアーでした。アクタスが日本でのポリフォームの独占販売権を持っている関係から、今回のラボ見学が可能となりました。

ポリフォルム・ラボ

ラボの正面玄関入って正面に、立派な作りのクローゼット家具が置いてあります。1987年に限定30点でポリフォルムが作った折り畳み式の「イオ(イタリア語で私)」という名前のクローゼットシステムです。

ポリフォルム・ラボ

多様な引き出しや開き扉、特殊な金物や素材が使われた相当に凝った作りのクローゼットでした。ポリフォルムが初めて作ったシステマティックな収納ということで、初志貫徹という意味で入り口に置かれているとのことでした。

ポリフォルム・ラボ

とにかく広い施設で、延床で3000坪(地下だけでも300坪)の面積があるそうです。まずは会議室にて、ポリフォルムの歴史(1942年に2つの家族(のちに3つの家族)から始めたファミリービジネスで、1970年にポリフォルムの名称に…)と、会社独自の考え方やシステム、そしてインヴェリーゴの町に散らばる工場の内訳等を説明して貰いました。

ポリフォルム・ラボ

ラボで合流したアクタスの他のメンバー(野口さん、海野さん、神山さん、花登さん、谷口さん)も一緒に、まずは幾つかのポリフォルムキッチンの説明を聞きました。

ポリフォルム・ラボ

2.5メートル高さの折れ戸を垂直に収納できる扉金物をボルトルッツィという金物メーカーと共同開発したとのことで、実演して見せて貰いました。これを使えばゴタゴタしがちなキッチン家電や食器収納を隠したい時には全面を扉で隠し、使いたいときにはこの写真のようにフルオープンで使えるとのことでした。

ポリフォルム・ラボ

こちらのキッチンは厚みを持たせたカウンターキッチンとダイニングテーブルを長手方向に継いだスタイルです。

ポリフォルム・ラボ

ちょっとアルクリネアのキッチンに似ていなくもないですが(笑)、端部を立ち上げて、水がカウンター上からこぼれないような水返しのディテール等はとてもきれいでした。

ポリフォルム・ラボ

大岩さんが説明してくれているこちらのキッチンは、一枚の天板が3種類の素材で構成されているという珍しい作りでした。

ポリフォルム・ラボ

メインのシンクとコンロは中央の天然大理石部分に纏め、左右に広いステンレス・ヘアラインのカウンターをウイングのように広げ、正面に木製のイートインカウンターを設けています。大理石カウンターはステンレス板に対して四角く飛び出ていますが、木製カウンターは斜めにテーパーを切っているところなどは憎い納まりです。

ポリフォルム・ラボ

こちらのキッチンは、カウンターは大理石柄のセラミック(陶板)の薄いカウンターとなっています。

ポリフォルム・ラボ

コンロがIHとガス両方を備えていますが、ガスコンロ部分はセラミックカウンターに直接穴をあけて取り付けています。熱い油などがこぼれても傷まない、強度と耐久性を兼ね備えたセラミックならではの作りとなっていました(日本ではガスコンロの規制が厳しいのでこれはできませんが)。

ポリフォルム・ラボ

こちらでは、白いセラミックのメインカウンターの上に、角を丸めた黒い木製のスナックカウンターを取り付けたデザインでした。載せただけのように軽く見えるカウンターですが、手で体重を乗せてもびくともしない頑丈さでした。こういった軽食用カウンター付きのキッチンを開発している分、ハイスツールが多様で、それぞれ秀逸なデザインでした。

ポリフォルム・ラボ

とにかく広いスペースにキッチンだけで10カ所以上の展示があり、それぞれが最新の趣向を凝らした実験的なキッチンとなっています。こちらL字型カウンターの端部に丸いスナックカウンターを取り付けていますね。

ポリフォルム・ラボ

先ほどのキッチンは木板張りの扉でしたが、こちらは石目柄の扉材です。実際は薄いセラミック板を張り付けた扉となっていました。

木仕上げのイートインカウンターの突板加工も見事です。

ポリフォルム・ラボ

キッチンの背面収納もバラエティーに富んでいます。

ポリフォルム・ラボ

収納の取っ手が取り付く部分はこのようにテーパーをとって無垢材を削り出したかのように見える金物ディテールとなっています(実際は突板をうまく加工しているだと思いますが…)。
キッチンについては、1996年にヴァレンナという高級キッチンブランドを買収して、しばらくはヴァレンナbyポリフォルムという形で並走していましたが、2018年に完全統合して、これまでの壁面家具等で培ってきた素材とディテールをキッチンにも注ぎ込んで、一気に花開いたかのようです!
次のブログで、置き家具や壁面収納見学の様子をご紹介します。