Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

カガミ建築計画の新事務所移転計画-1

カガミ建築計画事務所移転計画

白金台の築60年超えのエレベーターもない古い団地にて、20年以上頑張ってきたカガミ建築計画ですが、この度、事務所を移転することになりました。

60年以上、エレベーターもない白金台の団地にて、20年以上活動を続けてきたカガミ建築計画ですが、このたび、事務所を港区内で移転することとなりました。

希望エリアはある程度決まっており、まずは候補を5軒ほど選定。これまでにもお世話になってきた大成有楽不動産販売の野村さんにお願いし、一緒に内見を行いました。その中で、2軒は申し込みまで進んだものの——
ひとつは「天井とダウンライトだけは変更不可」という謎の条件で断念。もうひとつは、建物は登記上「住宅」だという理由で、浴室を倉庫にしたり、過度なリフォームは避けてほしいとの要望があり、こちらも見送りとなりました(実際には、同じマンション内のテナントは全て事務所かサロンなのに…)。

そんな中、ようやく「これは」と思える物件に出会うことができました。

大通り沿いの10階建てビル、その9階に位置するお部屋です。道路と反対側の窓からは広い眺望が広がり、しっかりとしたキッチン付き(カガミ建築計画では重要なのです!)。複数の小部屋をつなげれば打合せ室が作れそうで、リビング・ダイニングと奥の個室を一体化すれば、5〜7人分のデスクが配置できそうな事務スペースも確保できます。

まずは天井点検口を開け、カメラを差し込んで天井裏を撮影。小部屋の間仕切り壁やLDと洋室の壁がコンクリート躯体ではないことを確認しました。オーナーの了承が得られれば、これらを撤去して希望の間取りへと変更できそうです。

一般的な分譲マンションであれば、管理事務所に竣工時の図面が保管されているのですが、今回のように繁華街にあり、事実上は事務所やサロンとして使われている賃貸マンションでは、不動産投機の対象となるため、持ち主が頻繁に変わり、竣工図面が失われているケースがほとんど。

今回も、不動産仲介の野村さんが用意してくれたのは、販売用の間取り図と、寸法線入りながらやや怪しげな図面でした。

本来であれば、より詳細な平面詳細図や、給排水・空調換気の設備図があればリフォーム計画もスムーズなのですが……。これはもう、マンションリフォームの我らの経験でカバーするしかありません。

こちらは、打合せ室に改装したいと考えている小部屋の一つ。右側の壁を撤去し、隣室とつなげて広い空間にする予定です。

玄関からの廊下をLD側から見返すと、左手に2つの小部屋が並びます。ここは扉を一つにまとめ、壁を作り直します。右手には一段上がった洗面・トイレ・浴室スペースがありますが、浴室は不要なのでレイアウトを全面的に見直し、トイレと倉庫へ転用する予定です。できれば床の段差もなくしたいところ。

廊下には、古い漏電ブレーカーのない分電盤があり、これはオーナー側に交換をお願いすることにしました。

洗面と浴室もかなり古い設備でした。せっかくなので、カガミ建築計画がいつもご提案しているような、広いカウンターのある、訪問されたお客さまにも使っていただける清潔で上質なトイレ空間にリフォームしたいと考えています。

こちらは、ざっくりと間取りと家具を配置してみた初期のリフォーム提案図です。社長机とスタッフ用デスクが6つほど配置できることが確認できました。

正式な申し込み前に、できるだけ詳細なリフォーム案を用意したいと考え、竹田さんと岸本さんに現地で実測をしてもらい、既存図面を起こしてもらいました。

初回の内見時は、前の入居者が退去したばかりで、原状回復のリフォームが入っていない状態でした。私たちとしては、そのままの状態で借りた方が都合が良かったのですが、オーナー側はすでにリフォーム発注済みとのこと。内装は一新されていました。

例えば、床はタイルカーペットからビニール系フローリングに、壁紙も貼り替えられています。

エアコンはリビングには既存のものがそのまま、奥の洋室には新たに天井カセット式のエアコンが設置されていました。建具類は古いままなので、いずれにせよこちらでしっかりと改修する必要がありそうです。

オーナーにリフォーム案を確認してもらうため、急いでまとめたのがこのラフ案です。

先に申し込みまで進んでいた2物件でも、実測図からリフォーム案を作っていた経験があり、おかげで今回も即座にプランニングができました。何がどれくらいの面積に収まるのか、だいぶ感覚が研ぎ澄まされてきた気がします(笑)。
いつもは設計者としてお客さまにアドバイスをする立場でしたが、いざ自分が色々と判断をしないといけないとなってくると、覚悟の度合いがかなり違ってくることが良く分かります。

最終的には、事務所奥のスペースは最小限の改装にとどめつつ、玄関から廊下から打合せ室からのトイレにかけては、カガミ建築計画&ザ・ライブラリーらしい仕様にグレードアップする方向で調整中です。
オーナー側からリフォームに関して承諾が得られ、いよいよ賃貸契約の締結に進むことになりました。

ここまで来ると、各部屋の展開図を描き、具体的な造作家具・建具・仕上げ材の選定へとステップアップです。竹田さんが丁寧に素材とディテールを詰めてくれています。

最後のこちらは、竹田さんの展開図をもとに前田くんが作ってくれた打合せ室のCG。こうしてビジュアルが見えてくると、一気にテンションが上がってきますね!
(なお、移転先の場所については、もう少し経ったら、正式に発表させて頂く予定です)

白系大理石探しの旅・福建省厦門(アモイ)郊外の巨大石材市場を歩く_2

ザ・ライブラリー

TAGEKNとの共同リノベブランドのザ・ライブラリーの告知ブログです。
白系大理石を全面的に使う予定の横浜H邸のHさまとご一緒の白系大理石探しの旅の続き、第二弾です。
4時間ほどかけて見回ってきた大理石探しツアーですが、こちら弘一石業集団の白系大理石展示場でHさまの感性にぴたりと来る石が見つかりました!

この石材屋さんにも200種類以上の美しいスラブ材が展示されていましたが、Hさまの感性にぴたりと来る石が見つかったのです。Hさんと岸本さんで小走りに一筆書きのように展示スペースを回っていったところ、一か所でHさまの足が止まったのです。
3つの展示場で併せて数百枚の大理石スラブを見て、ようやく唯一無二の石が見つかったのです。

それが、こちらです。列の右側に並んでいる手前から3種類、特に真ん中の一枚の色、模様の入り方が、これまで見た中でベストだとのことでした!

まずは、気に入って頂いた石材での技術的な問題点が無いかを、僕ら設計と石材のプロ陣で確かめさせて頂きました。
眼だった山傷が無いこと、石材のサイズも良さそうなこと、枚数も中央のベストなものは6枚ほどしかありませんでしたが、左右の兄弟柄石材(同じ原石から切り出された模様が近似する兄弟柄のスラブ石材)がそれぞれ15~20枚ほどあり、それらを合わせれば十分な枚数があることが判りました。

今回の大理石探しツアーは、お客さまと僕ら設計、日本からの石材のプロの齊藤さん(キダマーブル)と高木さんと池田さん(アジアグラニット)だけでなく、現地の石材屋、厦門乗于建材有限公司の曽さんと加藤さんにコーディネートして貰っております。全ての関係者が、こちらの大理石に集まってきた様子です。
一番表の石材の確認ではなく、裏にある石材スラブの模様も確認したいので、こちらの石材屋さんにお願いしてクレーンで、一枚一枚を確認させて欲しいと依頼したところ、なんと作業途中でクレーンが故障して動かなくなってしまいました…。

こちらの大理石屋さんには、全ての石材スラブをスキャンしたデータもあるので、実物を確認しなくても大丈夫なのではという意見もありましたが、折角お客さまもご一緒にここ厦門・水頭まで来たのだから、全てのスラブを実際に見てから決めたかったので、関係者皆で近くのレストランにランチに行くことにしました。その間に、クレーンの補修ができれば、食事後また石材屋さんに戻ることにし、補修に時間が掛かるようであれば、翌日もう一度見に来るということになりました。
手前左から時計順に、キダ・マーブル齊藤さん、アジアグラニットの池田さんと高木さん、厦門乗于建材の曽さんたち3人、田口と岸本とお客さまのHさまです。長時間かけての石材探しですが、まずは美しい石材スラブが見つかったので、皆喜びながら楽しいランチになりました。

食後に確認の電話をしたところ、幸いにもクレーンの故障が直ったとのこと、また皆で石材屋さんに戻りました。片やスラブ材の山傷や斑(ふ)(右上の色ムラ)を確認して貰いつつ、大物のキッチンカウンター天板材や、洗面カウンターの天板材をこのサイズのスラブから取ることができるかを確認するために、養生テープを使っての仮の石取りを致しました。

また、石材の白い部分の色味に合わせて、既にご購入なさっているソファの張地を張り替えたいとのご意向を以前より伺っていたので、事前に日本で探して持ってきていたソファの張地の候補を石材の色味と比べて張地を決めることもできました。

石材カウンターと合わせる漆黒のキッチン扉材の塗装サンプルも、それぞれツヤ無から全艶(ゼンツヤ)まで持ってきていたので…、

フローリングのサンプルと、塗装サンプルと石材を見比べて…、

こちらの全艶で進めることも決まりました。因みに床フローリング材は望造に特注で作ってもらったものです。

先ほどからの写真、石材を撮影した写真には毎回グレーの板が映っていますが、これはグレーカードと呼ばれる板です。グレーカードが一緒に写っていれば、白っぽい自然光でも、青っぽい蛍光灯でも、赤っぽい白熱灯の下でも撮影した写真を、後日Photoshopのホワイトバランスを使って適正な色味に補正することができるのです。今回は、もし違う場所で探した石材を合わせて使うことになった場合、田口が持参しているフォトショップ・ソフト入りのラップトップパソコンで補正した写真を比較すれば、色味を比べることができるように準備してきたものなのです。石材の白部分の色味にこだわりがあるHさまだからこその対応なのです。

弘一石業の展示場の一角にはエアコンが効いた打ち合わせ室があるので、関係者一同その打合せ室にこもって、必要枚数の算定に入ります。日本からは平面図と展開図、キッチンと洗面等の造作家具の下図、そしてキダマーブル齊藤さんが用意してくれていた仮の石取図を参考に、今回選んだ石材のサイズを落とし込んで、どれだけのスラブが必要になるかを計算するのです。
以下、かなり長いブログ記事になりますが、続きはザ・ライブラリーブログをご覧ください。

最新のAVシステムとヴィンテージ家具が出会う南青山IDEALショールーム訪問記

城南R邸

180平米のお部屋2軒の同時リノベーションの城南R邸のインテリア設計が進んでいます。最上階ペントハウスにはテレビと連動したステレオシステム、1階のゲストハウスにはプロジェクターとスクリーンを使ったホームシアターをご希望とのことだったため、新しく南青山に画期的なショールームを作ったIDEAL(イデアル)さんにお客さまのRさまご夫妻と一緒に伺って参りました。

こちらがIDEALのショールームです。イデアルは社長の小泉さんが展開するB&O(バング・アンド・オルフセン)を中心としたステレオ&ホームシアターシステムの設計&販売、そして事業パートナーの分林(ワケバヤシ)さんの北欧ヴィンテージ家具の販売というユニークな会社となっています。建築家・中村拓志さんが設計したビルの一角に、小泉さんと分林さんが構想した歴史と未来が重なった素敵なショールームとなっています。

こちらのガラスボックスの中がホームシアターシステムの体験スペースとなっています。

ボックスの中にシートが3席あり、それに座っていると小泉さんが説明をしながらアイパッドのスイッチを入れると…、

ガラス壁の前に2枚のスクリーンが自動で降りてきます。奥が遮光スクリーンで手前がプロジェクション用のスクリーンです。そしてシートの背面から隠れていたプロジェクターが出てきて、映像と迫力のあるB&Oのサウンドが鳴り始める仕組みになっています。

ボックス内の設えはこのようにシンプルな作りとなっていますが…、

写真のように、ニッチに隠された高性能プロジェクターがスイッチ操作で降りてきて、スクリーンに投影されるのです。そしてその横の隠し扉の収納の中には…、

ステレオシステムや、調光システムのルートロンやコンピューターなどが内蔵されいるのです。因みにこのガラスボックスは、窓面が多い高層マンションでもホームシアターを窓前に組み込むことができることを体験してもらう意図があるそうです(今回は中低層マンションですが…)。

ボックスでのホームシアター体験を終えた後は、ボックスの外のB&Oのテレビとスピーカーシステムを体験して頂きました。

木製リブのついたこちらのベオラボ18のスピーカーのデザインと音質をとても気にって頂けたので、金属の色と木製リブの色を幾パターンかCGに落とし込みつつ、お見積りもお願いすることとなりました。

その後は、北欧ヴィンテージ家具も見て頂きました。イタリアのモダン家具が今のインテリア業界を引っ張っていることは事実ですが、それらの家具は一度でも使ってしまうと中古品になってしまい、価格が5分の1ほどにまで下がってしまうのです。それに対して、手作りの北欧家具は職人技が詰まった一品生産品なので、中古品がヴィンテージ品として、購入した時より高く販売することができるというコレクターズアイテムになっているのです。分林さんはフランスに留学した時に北欧家具の魅力にハマって、個人的に輸入していたものをIDEALという形で販売することになったそうです。

ハンス・J・ウェグナーの名作椅子のベアチェアの座り心地も体験して頂きました。まずはこの日はB&Oのステレオシステムのご紹介だったこと、分林さんご自身は当日はいらっしゃらなかったので、日を改めて訪問することとなりました。

3週間後に分林さんがいるタイミングで再訪問いたしました。黄色いカーディガンの女性が北欧ヴィンテージ家具の伝道師こと、分林さんです。

ヴィンテージ家具はカタログで選ぶ新品家具とは違い、実際に在庫されているものからしか選べません。分林さんに相談して、ペントハウス住戸のインテリアに納品可能なキャビネットと椅子をCGに3パターンいれたものを作った上での、Rさまご夫妻との再訪でした。

CGに入れてあるものと(ほぼ)同じキャビネットの使い勝手を確認して頂いている様子です。イタリアモダン家具は、ブランドにお願いすれば3Dデータを出してくれるので、かなり正確なCGが作れますが、当然ながら北欧ヴィンテージ家具にはそのようなサービスはないので(といってもベアチェアのような有名品はデータがネット上にあったようです)、担当スタッフの前田君の手作りCGなのです。

ステレオシステムとホームシアターシステムについては、僕ら設計側とAV設計がかなり密接に繋がっているので、僕らもお客さまとIDEALの間に入ってお手伝いします。ヴィンテージ家具は、ご夫妻の気持ちやタイミング次第で、じっくり迷いながら選ばれることになりそうです。そこで、僕らは一旦引き、今後はIDEALと直接やり取りしていただく形にさせて貰いました。