Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

大理石調タイルと本大理石の比較&価格研究

渋谷R邸

大型ブラックキッチンの渋谷R邸では、キッチン以外の部分でもシャープでスタイリッシュな素材を多数使っています。大理石調タイルと本物の大理石と、加工大理石の3種類の建材です。

渋谷R邸タイル張り工事

キッチン・ダイニング側から玄関ホール側を見返した写真ですが、ホールの左側壁面に張っているのは、ダークグレー色の大理石調タイルです。

廊下タイル張り@渋谷R邸

今回使っているのは、マーベルプロ・グレー(ダイナワン)というタイルで、600角の真物(マモノ(カットしていないタイルのこと))と三分の一の高さにカットしたものを四分の一ずつズラしながら張っています。

廊下タイル張り@渋谷R邸

2液性のボンドを混ぜたものをベニヤ下地に点付けして…、

廊下タイル張り@渋谷R邸

職人さんたちが手の感触でフラットになるように調整しながら張っていくのです。

廊下タイル張り@渋谷R邸

このオレンジ色のピンのようなものは、職人の手の感触だけに頼らないでも、隣り合ったタイルがフラットになるように固定できる優れものです。

廊下タイル張り@渋谷R邸

金属のT字型の金物を目地に沿って差し込んでから半回転すると、バネが仕込まれた抑えの黒い部分がタイル面に押し付けられることで、接着剤が乾燥するまでフラットに固定することができるのです。目地詰めをする前に、また半回転させれば簡単に抜くことができます。

廊下タイル張り@渋谷R邸

タイルを張っている正面から見ると、タイル同士の間に何かが挟まっているのが判るでしょうか?

廊下タイル張り@渋谷R邸

これはアクリルの棒をカットしたものです。ペンチで8ミリ程にカットしたものをタイル同士の間に挟み込むことで、目地幅が均一に仕上がるのです。因みにこちらは目地詰めする際には取り外さず、目地材で埋め込んでしまうそうです。

数日後の現場の様子です。玄関ホール壁が大理石調タイルでしっかり仕上がっています。因みに、タイル壁の手前に立て掛けられているのは、本物の大理石です。大理石調タイルは厚み9mmですが、本物の大理石は厚み20mmのものとなっています。

壁タイルはマット仕上げ(ラパート)に対して、大理石は本磨き(一番ツヤが出る磨き方)なので、大理石を見ているとタイルの仕上げが大人しく感じますが、自然光があまり入らない玄関ホールでは十分スタイリッシュに仕上がっていると思っています。

大理石は、お客さまのRさまと造作家具や設備器具全般の仕入れをお願いしたグラフチャーの大内さんと設計施工のプレステージプランニングの松永さんの3人が岐阜県の関ヶ原石材にまで出向いて探してくれたものです。

アントリーニ大理石

こちらでも関ヶ原石材と連絡を取り合って、事前に手持ちの大理石で良さそうなものを幾つか候補に挙げていましたが、関ヶ原石材がイタリアの希少大理石ブランドのアントリーニと組んだアントリーニギャラリーの中から選んだロレックグレイという石材です。大内さんと松永さんで現地で石割まで決めてくれました。この写真で見ると、色目も薄く見ましたが、現物を見るともっと柄があり迫力のある石材でした。

大理石とタイルの違いは色々とありますが、施工する際の注意点としては、石材の重さをどう扱うかにということになります。今回は関ヶ原石材の責任施工(材料から施工までを責任をもって一貫で工事して貰う事)となっていますが、写真のような金物をを取り付けて、裏地のベニヤ板にビス留めして貰っています。

ビス留めした後には、粘性のある接着剤と速乾剤と塗布してシッカリ固定していきます。

大理石壁の固定方法

以前こちらのブログでもご紹介しましたが、このピンボケ写真の奥に見えている簡易仮金物を使った固定方法ですね。

壁への固定方法は大判タイルと同じで、二液性の接着剤の点付けとなります。先日のキッチンカウンターの大判タイルでは、接着剤を前面に塗布していましたが、ピタリと隙間なく接着するには全面塗布が適していますが、厚みがある素材を不陸(ガタツキ)を補正しながら張る場合にはこの点付け工法が適しているのです。

タイルと大理石の施工でもう一つ大きく違う部分としては、重量のことになります。タイルの場合は、600角で約24キロとなりますが、大理石の場合は、厚みに加えてサイズも大き目なので、3倍ほどの重量となります。

特に高さが高くなってくると、作業は三人がかりとなってきます。タイルは全ての工程を一人の職人さんで行うことができますが、大理石の場合は、小さな壁でも職人さんが3人となってしまうのです。加えて、タイルは工業製品なので、少し余分に取っておいて、割れたり欠けたりヒビが入った場合には、予備の物を使えばよいのですが、大理石の場合は一品物で、もし欠け等が生じた場合には予備品はないということで、職人さんたちの真剣度も変わってくるのです。

一旦クロス張りまで仕上がっていた天井を壊して、ピクチャーレールを差し込んで大理石張り壁の完成です。

またその数日後には、クロスまできれいに補修されていました。横面のベニヤ板張りのカ所には鏡を張って仕上げることになっています。

もう一面、本物の大理石を張った壁があります。こちらは施工途中の様子を撮影することができませんでしたが、加工大理石のサルバトーリTratti(トラッティ)シリーズを張って貰ったものです。

こちらは渋谷R邸とは別の現場での施工途中の写真ですが、厚み10ミリにワザとザラザラに仕上げられた大理石と、ぴったり寸法の金物(この現場では白大理石に金色の金物)がセットでイタリアから届き、それをセットで接着したものを張り付けてゆくスタイルの物です。大理石のサイズも3種類となっています。

渋谷R邸では、ピエトラ・ダァボラという石材と黒い金属目地を使ったタイプの壁仕上げとなっています。こちらの壁も玄関ホール内で、自然光が入ってこない壁ではありますが、お客さまが帰ろうとしたときに正面に見えてくる壁なので、気合を入れてこの仕上げを提案させて貰いました。
因みに、それぞれの原料価格の比較をしてみると、大理石調タイルは3.5万円/平米、アントリーニの大理石(大理石では最高級品です)は約12万円/平米、加工大理石のサルバトーリは15万円/平米となります。施工費(純粋な施工費に資材揚重費や現場経費)を加えるとタイルで約5.2万円/平米、大理石で24万円/平米、サルバトーリで30万円/平米となります。タイルや石材の価格もマチマチで、サイズや施工面積も違うので、単純比較は難しいのですが、参考になればと思って計算してみました。