Author Archives: Kenji Kagami

設計業界では亜流であったリフォーム・リノベーションに、十数年前から真剣に取り組んできた設計事務所、カガミ建築計画の各務謙司(カガミケンジ)です。 学生時に初めて設計したプロジェクトがリフォーム、ニューヨークでの建築修行時も高級マンションリフォームに特化した設計事務所勤務、帰国してからもリフォームの仕事が圧倒的に多く、リノベーションに特化したカガミ・デザインリフォームのブランドを立ち上げ、上質リフォームの普及に尽力してきました。

工事着工前の家具発注と図面について

[ザ・ライブラリー]

ザ・ライブラリーの告知ブログです。
千代田区O邸では概ねインテリアのコーディネートも完了し、いよいよ実施設計に入っていきます。以前のブログ(千代田区O邸のインテリア検討)で選定した置き家具で実際に採用いただいた素材をCGにて表現していきます。

アルフレックスの家具は、国内(北海道旭川)で生産しており、高い品質で発注してから1カ月半で納品可能です。しかし、モルテーニやポリフォルムはイタリア本国での生産になり、発注後7~8カ月の期間を要してしまうため、マンションの改修工事に取り掛かる前に発注を掛けないと引き渡し時に家具をそろえることが出来ません。工期が短い場合は、いずれにしても1か月後の納品にはなってしまいます。
当初は全てアルフレックスで引き渡し時に全て整った状態でお引き渡しをする予定でしたが、日本では取り扱いの無いファブリックやレザーの質感に共感いただき、納品は引き渡し後となってしまいますがダイニングチェアはグレイスアームチェアポリフォーム)、アームチェア+オットマンはケンジントンモルテーニ)を採用いただくことになりました。
実際のサンプルの生地を手元でお見せしながら、CGにて出来る限り質感を近づけてイメージにてご確認いただきました。

日中のダイニングセットのイメージでは自然採光での色味の確認を。

夜のシーンでの照明計画を反映した色味の確認していただきました。ダウンライトや間接照明は色温度3000ケルビン、ペンダント照明は2700ケルビンでシュミレーションを行っています。昼と夜では、同じ素材でも色味や素材の光沢なども違って見えてきますね…。

日中のリビングセットで自然採光での色味の確認をして頂き、

夜のシーンでの照明計画を反映した色味の確認までして最終的なご判断をお願いしました。

「※あくまでCGですので本物とは異なります」とマンション販売のカタログには小さい字で書かれていますが、ザ・ライブラリーでは本物の生地サンプルをお見せしながら、出来る限り忠実に再現するようにしています。

お施主様の承諾が得られたところで、着工前にすべての置き家具の発注をさせていただきました。
インテリアや家具のイメージもお施主様と共有できたところで契約を行い、着工前に一気に実施設計やマンションの工事届の準備をしていきます。
以下、ザ・ライブラリーで用意している図面のことについても説明しておりますが、詳細はこちらのブログをご覧ください。

新築マンションリノベーション恵比寿A邸完成!

[ザ・ライブラリー]

ザ・ライブラリーの告知ブログです。
新築マンションのお引き渡しと同時にリノベーション工事を始めた恵比寿A邸ですが、お客さま検査後の補修工事やお引渡し前の家具搬入も無事終えて、竣工お引き渡しをすることができました。

新築マンションリノベーション恵比寿A邸の竣工お引き渡し

お引き渡しの最後のタイミングで撮影させて頂いた、お客様ご夫妻とザ・ライブラリーの設計スタッフです。左から、前田君、Aさま奥さま、各務、Aさまご主人、田口さんと並んでの記念撮影です。

新築マンションリノベーション恵比寿A邸の竣工お引き渡し

養生が全て剥がれて、家具が入って、クッションや小物を入れた状態での竣工写真です。とにかくパキッとスタイリッシュな空間に仕上がり、Aさまも大満足と褒めてくださいました!

新築マンションリノベーション恵比寿A邸の竣工お引き渡し

お引き渡しは、まずは先日の施主検査で指摘となった事項がきちんと補修されているかをチェックするところから始まり、お引き渡し書類の受け渡し、そして取り扱い説明と流れますが、この日は変則的に、チェックの後にキッチンの取り扱い説明からスタートさせていただきました。オーダーキッチンをお願いしたアルノの鵜飼さんが奥さまにキッチン機器の使い方や清掃方法を説明してくれております。

新築マンションリノベーション恵比寿A邸の竣工お引き渡し

寝室のベッドとリネン、カーテンもザ・ライブラリー経由でご購入頂いたので、説明させて頂きました。

新築マンションリノベーション恵比寿A邸の竣工お引き渡し

その他、新規購入の家具、照明のシーンコントローラースイッチ、エアコン、窓際の電動ブラインドのハンターダグラスなどの取り扱い説明を先に済ませたところで、お引き渡し書類へのお客様の記名捺印、保証書などのお引き渡しを行いました。
以下お引渡し前に撮影させて頂いた竣工写真については、ザ・ライブラリーブログをご覧ください。

CGを活用してのインテリア素材決め

[渋谷区N邸]

一般的に考えると、マンションリノベーションのインテリア素材決めの打ち合わせの際に、高品質のCG(コンピューターグラフィックス)があれば、空間と素材がどのように呼応してくるのかの想像がしやすく、よりスムースに決定ができそうですね。

デザイン設計が進行中の渋谷区N邸では、打ち合わせ室にうちの事務所のCGマスター(笑)の前田君のパソコンとモニターを運び入れて、CGで壁素材や扉仕上げを変えながら、どの素材とデザインがしっくりくるかを打ち合わせさせて頂きました。

これら4つのCGはすべて玄関ホールの壁と左手リビングダイニングへの扉のバリエーションです。左上のA案は正面壁はビニールクロスのパネル壁と木製の濃い色の建具案、B案はスクラッチ模様の入った濃い灰色のタイル壁と木製の濃い色の建具案、C案はサルバトーリの加工大理石(ビアンコカラーラ)のトラッティ仕上げとレザー張り建具案、D案はスクラッチ入り白色タイル壁とライトグレーの木製建具案となります。最初に、前田君といくつかの部品を作っておいて、それを切ったり貼ったりしながら色々なバリエーションを見ながら確認していただきました。
お客さまの判断には、デザインだけでなく、素材の単価によって変わってくる価格のことも大きく影響してくるので、工事をお願いするリフォームキューの森井さんに同席してもらい、どのくらいの費用感になってくるのを同じタイミングで概算してもらいながらのご説明となりました。

デザインと金額のバランスから、D案のスクラッチタイルと塗装建具で進めることが決まりました!
玄関とリビングダイニングとキッチンで使う素材をひと纏めにしてみた素材写真がこちらです。お客様からは「図面だけでは想像できないことがCGでは確認することができるので、本当にスムーズに素材決定をすることができました」と喜んで頂きました!

こうやって見ると、空間と素材のテクスチャーと色味、照明などの具合を確認しながら打ち合わせができるCGは、万能のように感じられますね。しかし、本当はそれほど万能ではないのです…。
例えば、上の写真では、ダイニングテーブルに使う大判セラミックタイルの大理石柄を確認していただいている様子ですが、CGでは、本物の大理石とセラミックタイルの大理石柄の違いを表現することができません。極端に言えば、本物の大理石でも大理石柄のメラミンでもCGの表現は同じになってしまうのです。同じように無垢の木材と天然木の突板、メラミンの木目調も同じに表現されてしまいます。

こちらは後日、トイレや洗面のCGと素材感を確認した際の打ち合わせの様子です。CGでは、使う素材を撮影したり、似た素材写真を探して、色の深みやツヤ、ザラザラ感などを似せて画像を作っていきますが、本物とはどうしても違いが出てしまいます。この打ち合わせのようにCGの床素材は、実際はこのサンプル素材ですと指さし確認(笑)をしないと、「出来上がった空間とCGが違って見える」という残念なことになってしまうのです。CGはあくまでもコンピューターの画像上の想像図でしかなく、実際の空間はもっと豊かで、思いもしない深みがあることをご説明するようにしています。

先回の打ち合わせで玄関の素材が決まりましたが、扉を開けてリビングダイニングに入ろうとした瞬間に見えてくるキッチンの扉の色ですが、当初はキッチン側から見て決めていた色だったので、今回のCG打ち合わせで、スクラッチタイルに似せた色味として、壁と引き込み扉が一体に見えるように調整しました。
CGでは細かいディテールの表現が難しいことも事実です。異素材がぶつかり合った箇所は、何かで見切るのか、ぶつけるのか、目地を取って逃げるのかといったディテール手法がありますが、そういった細かいディテールをCGは適当にゴマかすことができてしまうのです。

これは最終的に決まった渋谷区N邸の素材サンプルをボックスに入れたものです。
CGの良い点と問題点をここまで書き連ねてきましたが、実はCGは写真レベルまではもう少しなのだと思っています。写真もフォトショップというソフトでかなり自由に加工することができるようになっていますが、それでも現実の空間を撮影した写真で、現実の空間を表現することができるかといえば、まだ不満があります。しかし、CGの技術は日進月歩ですから、もう少しで写真のレベルまで追いつきそうです。僕らが使っているD5レンダラーというソフトでは、レイトレーシングという「光が壁材やガラス、家具などの表面などで起こる光の屈折や反射などをコンピューターで計算して、より現実に近い映像を作り出す」技術を使いだして、抜群にリアルに見えるようになってきました。建築素材や高級家具などのカタログやサンプル写真は、よほどのプロでないと、リアルな写真なのかCGなのかが見分けられないようになっているのが現実なのです。
ただ、そういったリアルかどうかといった技術的な問題とは別に、CGを使ってインテリアの打ち合わせをすると、お客さまも僕ら設計も発想力が乏しくなってゆく気がしています。小説を読むのと、その小説を映像化したドラマを見ることの違いような感じです。ドラマの方があまり深く考えずに気楽に楽しめますが、小説の方が発想が飛躍してそれが記憶に定着してゆくのだと思います。
この「CGを使ってのインテリア打合せ」には、それ以外にも色々と深い問題を内蔵している気がしていますので、また別の機会に考えてみたいと思います。