Author Archives: Kenji Kagami

設計業界では亜流であったリフォーム・リノベーションに、十数年前から真剣に取り組んできた設計事務所、カガミ建築計画の各務謙司(カガミケンジ)です。 学生時に初めて設計したプロジェクトがリフォーム、ニューヨークでの建築修行時も高級マンションリフォームに特化した設計事務所勤務、帰国してからもリフォームの仕事が圧倒的に多く、リノベーションに特化したカガミ・デザインリフォームのブランドを立ち上げ、上質リフォームの普及に尽力してきました。

松濤D邸のキッチン&浴室リフォームのご依頼

[松濤D邸]

2020年のリビングダイニングと玄関と洗面とトイレ、そしてキッチンの一部のリフォーム、その翌年の主寝室のリフォームをお手伝いさせて頂いた松濤D邸のお客さまから、キッチンと浴室をリフォームしたいとのご連絡を頂いて、4年ぶりにご自宅に伺って参りました。

都心とは思えない、窓から隣地の公園の緑しか見えない、まるで森の別荘のようなお宅です。

今回一番リフォームしたいのが、このキッチン本体とのことです。6年前に初めてリフォームのご依頼があった際は、リノベーション済みのマンションを購入なさっており、まだ新品だったキッチンを捨てるには忍びないとのことで、ここまで使ってきたそうですが、細かい使い勝手の面で不満があるので、作り替えたいとのことでした。

向かって右側のバックセットは僕らがお手伝いして作ったものですが、リフォームでダイニング側への開口を大きくして、もっとオープンなキッチン空間になさりたいとのこと、使える部分は再利用したいですが、かなり手を加えることになりそうです。

こちらがリビングダイニング側から見返したキッチン側の様子です。正面壁に大きな絵が掛かっていますが、その壁の半分ほどは図面で見る限り、撤去できないコンクリート壁なのです。当初はアイランドカウンターキッチンにできないかとのご要望でしたが、竣工時の図面があっている前提とするとそれは難しいそうです。

因みに、こちらが竣工時の図面集から撮影した当該部分の躯体図です。図面中、上部がリビングダイニングと、ー400と記されているエリアがキッチンです。W15と記されている部分がコンクリート躯体で、B5と書かれている部分が開口でいる最大幅隣ります。

もう一つのリフォームポイントの浴室です。手前右側に少し見えている洗面カウンターは5年前に作り直していますが、浴室もやはりご購入時は新品のユニットバスだったので、そのまま使ってきたそうですが、もっとグレード感を上げたいとのご要望でした。

浴室内部がこちらです。きれい好きなDさまご夫妻らしく、とてもきれいな状態でしたが、樹脂製の浴槽やアルミフレームの扉などは、僕らが良く使っているオーダーユニットバスと比較するとグレード感に劣りますね…。

こちらはご依頼があった個所ではないのですが、主寝室の正面奥にシャワーがあり、そこまでの細長い廊下があるのですが、奥のシャワーを全く使っていないとのことでした。

左側のアルミフレーム扉の奥のクローゼットを、廊下やシャワー分を取り込めば、かなり拡大できるのではとお話をしたところ、提案には興味があるので、どのくらい費用で、どのくらい良くなりそうかを提案して欲しいとのことになりました。

このバーコーナーやレザー張りの建具などのデザインをかなり気に入ってくださっているそうで、この雰囲気の延長として、ただ、もう少し明るめの雰囲気でダイニングとキッチンを繋げたいとのことでした。できれば年内に完成させたいとのこと、大急ぎで検討することとなりそうです。

着工に向けての数々のお打合せ@大田区S邸

[大田区S邸]

ヴィンテージマンションリフォームの大田区S邸では、工事着工に向けて素材やデザイン、色味や家具等の打合せが進んでいます。

まずは弊社事務所に奥さまに来て頂いてのCGをリアルタイムで触りながらのキッチンの素材と色味のお打合せです。

上下の画像で、コンロ周りのキャビネットの色味が、上がグレーの塗装なのに対して、下が木目を残して灰色の染色した突板パネルになっているのが判るでしょうか?

当初はシャープでカッコよいイメージのキッチンになさりたいとのご要望でしたが、もう少し柔らかく暖かいイメージも加えてみたいとのこと、今ではすっかりCGマイスターになったスタッフの神崎さんにパソコンを触ってもらいながらイメージに合わせて、素材を色味を変えて、どのように変化するかをCGで確かめて頂きました。

そして、次は、キッチン素材イメージに合わせて、実際に染色した突板サンプルや、カウンター材としてほぼ採用することが決まった大理石のタージマハールと、そのコピーのタージマハール風のセラミックを、オーダーキッチンのリネアタラーラ・牧野さんに持ってきてもらっての確認お打合せです。

食材を置くカウンターはやはり本大理石で、ただ、ダイニングから少し距離が離れたコンロのバックセットは油汚れなどのメンテナンスが必要になるので、同柄のセラミックで進めることが決まりました。また、コーヒーカウンターなどの素材も決まったので、見積額をFIXすることができました。

建築要素の色きめが大分進んだので、気分転換も兼ねて(笑)インテリア要素のカーテンやラグの色味を見るためにマナ・トレーディング(通称マナトレ)のショールームにも伺いました。

僕らが良く採用するハンターダグラス社シルエットシェードも、ビデオでなく、実物で仕組みを見て頂くことで、使い方も良く分かったと喜んで頂きました。

あまり高価なラグは使いたくないとのお話もあったので、マナトレの比較的安価ながら豊かな風合いのあるラグのシリーズも見て頂きました。ただ、残念ながら「これだ」というものは見つかりませんでしたが…。

あとは直接自然光が差し込まない、ランドリールームにはアクセントクロスを貼ろうとのことでその候補を探し始めたところ、こんなに色々な種類の壁紙があるのだと、深みにハマってしまいそうでした。

マナはモールディングも扱っているので、壁のこちらの装飾を見て、Sさま邸でもモールディングを多用する予定なので、壁のサイズとモールディングのプロポーションの具合も見て頂きました。

こちらも別日に、担当の竹田さんに枠材として使用する予定のケーシング材を壁に当てて、既存ケーシングとの違いを見て頂いた様子です。

カーテンの目星も付いたところで、ご契約前の最後のお打合せとして、家具決定のためにアルフレックスの恵比寿ショールームに行きました。

奥さまのご実家でも使っているというSONAシリーズで進めることとなり、その張地の確認です。サンプル帳で気になった生地の大判サンプルを出してもらい、それを実際のソファにあてがって比較するのです。

SONAがおいてあるコーナーは薄暗かったので、最終的にはアルフレックスSRの入り口近くに候補の生地を持ってきて、ちょうどご自宅と同じような自然光が入るエリアで色決めをさせて頂きました。

このような経緯を経て、設計の内容が固まり、見積り額も纏まったので、工事をお願いするリフォームキューの森井さんにも来てもらって、最終見積りのご説明をさせて頂きました。今までであれば、このまま記名捺印して貰って契約となるのですが、最近はオンライン上で工事契約を締結すると、印紙代(約3万円)を節約できるので、後日ネットで契約を結ぶこととなりました。
これでいよいよ、着工の日程が決まりました。

間取り案の更なる変遷とCG作成プロセスについて

[渋谷区L邸]

ここまで順調に設計が進み、お見積りも纏まり工事着工直前まで来た大型マンションリノベーションの渋谷区L邸ですが、ここで大きな「変更」が生じました…。
お子さまが生まれることになったのです!

リフォーム間取り案の変遷

これまでは、設計協力をして貰っているハクの後藤さんや設計施工会社の三井デザインテックの武智さんと蛭川さんが同席してのお打合せでしたが、次回の打ち合わせは各務さん一人でお願いしたいとのことで、もしかして、プロジェクトが中止になってしまうのかもと不安ながらに伺ったお打合せで、お子さまのことを伺ったのです。Lさまご夫妻としては、それで工事着工直前まで進んでいたい設計をもう一度やり直すことをお願いできるか不安に感じていらっしゃったとのこと、費用的には設計手間が掛かる分は追加することになってしまいますが、大喜びで設計変更にご協力しますとお伝えしました。

リフォーム間取り案の変遷

主寝室と水回り、大型クローゼットに子ども部屋と予備室(実際はご主人の書斎?)を設けるプランの素案を作って欲しいとのこと、設備等の難しい取り合いは考えずに、大急ぎに上記の2つの案を考えてみました。最初の案は一見良さそうに見えたのですが、子ども部屋も予備室も広さが4畳くらいしか取れないので、2番目の案をベースに再設計してゆくことが決まりました。

リフォーム間取り案の変遷

また、お子さまが普段用に使えるトイレも欲しいとのことで、かなり気に入っていた(笑)斜めに洗濯機2台をレイアウトしていたプランを捨てて、このようなレイアウトで進めることになりそうです。
また、それと合わせて、これまでは部分的に使い勝手が悪そうな箇所だけを手直してして欲しいとお願いされていた、下階についても全面的にリノベーションなさりたいとのご依頼がありました!

ゲストルームとトレーニングルーム以外は、どこをどうしたらお子さまも含めて3人での生活がしやすくなるか、ゼロベースで提案して欲しいとのご相談でした。それまでは、ご夫妻二人でメゾネットの大型住戸450平米を存分に使って暮らす予定だったのが、お子さまが生まれることが判って、使い勝手が悪い箇所を全部洗いだしたいとのご意向でした。

オーダーで作っていたキッチンは、できればそのまま使いたいとのことでしたが、僕がパッと見ただけでも使い勝手が悪い箇所があるので、コンロとシンクと冷蔵庫がある壁面キッチンは残して、アイランド部分は見直す提案を考えてみました。

まずはノンスケールの図面をプリントしたものに手書きでスケッチをし、そこからPDF図面に簡単に落とし込んでみて、そこからスタッフに手伝ってもらいながらCAD図で寸法を当ってゆくという流れで下の階の間取りも検討しています。

メゾネット上階については模型でお客さまにプレゼンテーションさせて貰いましたが、下階については模型を作る時間が間に合わないので、CGでご提案することとなりました。こちらがCG用の簡易図です。

まずは事務所スタッフの神崎さんに天井の高さと窓の情報、家具のアタリを付けただけで起こしてもらった白CGがこちらです。

こちらがその白CGに素材やデザインの趣旨を、僕、各務が書き込んだメモ書きです。
この白CGに素材を加えて、照明器具や小物を加えてゆくと…、

一気にここまで仕上がってくるのです!

このレベルまで仕上がってくると、お客さまにもお見せできそうですが、まだここでは我慢して、より細かい訂正指示を入れていきます。

そして出来上がってきたのがこのCGとなります。こちらを下階のプランと一緒にお客さまにお見せしたところ、ここまで良くなるのであれば、是非こちらの階も一緒のタイミングでリノベーションしたいとのご意向でした。

因みに、こちらがリフォーム前の下階の様子です。、元々大きな空間をゲストハウス的に使う予定だったので、一番広いリビングの真ん中にグランドピアノが置いてあったり、キッチンとダイニングが対角位置に離れていたことは大きな問題ではなかったのですが、小さなお子さまを育てる家として考えると、色々と不都合があることが判っていたのです…。

以前はグランドピアノを置いていた位置に、お手持ちのミノッティの大型ソファを置き、テレビキャビネットを壁側に置き、奥の小さな空間は小さなお子さまを休ませる和室として使うことになりました。

これまで使い勝手がイマイチだった玄関周りも大理石やカラーガラス、木突板やレザーを使って豊かな空間にしてゆく方針も決まってきました。

そして、CGが便利なのは、このCGのように仕上げ材を変えた時にどのように見えるかを簡単に確認できることなのです。以前関ケ原石材にご一緒した時に気に入っていたマンゴーオニキスをリビングの壁に使った場合、どのようになるかと試しでCGに入れ込んでみましたが、この比較CGを見比べると、上のブラウンファンタジーの壁とウォールナット材でキャビネットを作ったコンビネーションの方が落ち着くことが良く分かると、お客さまも感心してくださいました。
ということで、上階のプラン変更から、下階の大規模リノベーションと、作業範囲が大きく広がることになったので、改めての作業工程を考えるところから再スタートとなりました。