Author Archives: Kenji Kagami

設計業界では亜流であったリフォーム・リノベーションに、十数年前から真剣に取り組んできた設計事務所、カガミ建築計画の各務謙司(カガミケンジ)です。 学生時に初めて設計したプロジェクトがリフォーム、ニューヨークでの建築修行時も高級マンションリフォームに特化した設計事務所勤務、帰国してからもリフォームの仕事が圧倒的に多く、リノベーションに特化したカガミ・デザインリフォームのブランドを立ち上げ、上質リフォームの普及に尽力してきました。

ハクアーキテクツスタジオと考えるスチールフラットバーでつくる建具枠の精度

[渋谷区L邸]

大型メゾネット住戸リノベーションの渋谷区L邸の工事は、上階・下階ともに本格的に進み始め、かなり大掛かりな工事となっています。今回は、スチールFB(フラットバー)を使った建具枠についてご紹介します。

上階は既にLGS(軽量鉄骨)の間仕切りが立てられてて、部屋の骨格が見えてきました。

LGSの間には場所によって壁下地のベニヤ板や、遮音の為の断熱材は入れられています。

白くて重たい長物が多数搬入されています。実はこちらは…、

スチールフラットバー(鉄板)の枠材なのです。白く塗装されているので、軽そうに見えますが、6ミリの厚みのある無垢材なので、かなり重たくしっかりしています。

この枠材を製作してくれたのは、有富家具の有富さん。
モックアップ用に作ってくれていたスチール枠材を、木製の枠下地材に取り付けてくれた様子です。溶接されたL字型のフィン部分で、木枠にスチール枠を固定できるように作られています。

こちらの建具(扉のことです)と枠の図面の緑で囲まれた箇所、「St FB 6×117 メラミン焼付塗装 22-80B 五分艶」と記載されている部分はこの枠の仕様です。Stはスチール、FBはフラットバー、6×117はサイズ(ミリ表記)、22-80Bは色番号、5分艶はそのツヤの度合いとなっています。

建具図は全体としてはこのようなものとなっています。こちらは僕ら設計側が作った指示図で、部分的な詳細や仕上げ材、取っ手の作り方や枠の取り付け方が細かく指示されており、これを元に施工会社側が見積りをし、施工用の図面を作ってゆきます。

下請けとして入ってくれた有富家具が描いた建具の製作図がこちらです。先ほどとは別の建具の図面ですが、製作側は単に図面をトレースするだけでなく、実際に建具をどのように作り、どんな金物で吊り、どのように補強するかまで、この図面作成の過程で検討していくのです。
こちらは吊り金物で吊る「引き込み扉」の図面です。

こちらは引き込み扉の上枠の様子です。白いレールから吊り下げられている四角いプラスチックと金属でできたものが上部吊車(コマ)と呼ばれるものです。建具側にちょうどこのコマがはまるように欠きこみを作っておいてそこに嵌め込むのです。引き込み扉は2枚の壁の間に引き戸が引き込まれて見えなくなるので、柱の間にスペースがあり、そこの奥まで枠とレールが伸びているのです。

同じ枠の反対側見た様子です。コマ2つあることが判りますね。

基本的には枠は3方向に回りますが、傷がつきやすいので、取り付けが終わるとすぐにベニヤ板で養生されてしまいます。

建具と枠は、このフラットバーの枠だけでもかなり重たく、そこに更に建具の重量も掛かってくるので、枠を固定する枠下地もかなりしっかりとしたものになります。左右の枠だけではその重量はサポートできないので、上階のコンクリートスラブからアンカーバーで吊って固定しているのです。写真の木が横にわたっているのが枠下地で、何か所は細い銀色の棒で吊られているのがアンカーバーです。

今回のスチールフラットバーを使った枠ディテールは、実は設計監理を手伝ってもらっている設計事務所「ハクアーキテクツスタジオ」の後藤さんと関さんの事例を見学させてもらったことから始まりました。
ハクの後藤さんは、カガミ建築計画がまだ弱小だった頃のスタッフとして事務所を支えてくれたメンバーで、パートナーの関さんも学生時代からの知人です。カガミ建築計画の人手が足りないときには、これまでもたびたびお手伝いをお願いしてきました。
ハクが設計したお宅を見学させてもらった際、このフラットバー枠のディテールが非常にシャープで美しかったため、今回はそれを参考にさせてもらいました。
ハクさんも僕らのディテールを参考にしてくれているので、お互いに情報を交換しながら、設計力をさらに高めていければと思っています。

恵比寿A邸の一年点検

[ザ・ライブラリー]

ザ・ライブラリプロジェクトのニュースです。
1年ちょっと前にお引き渡しをさせて頂いた、新築高層マンションリノベーションの恵比寿A邸の一年点検に伺ってきました。

とてもきれいにお住まいのお宅で、幾つかクロスの膨らみや、塗装扉の塗装ムラが気になるとのことで、それらを中心に見させていただきました。

当日伺ったのは、ザ・ライブラリーパートナーの田口さんと現場監督の栗原さん、そして担当スタッフの前田君、造作家具をお願いしていたアルノの鵜飼さん、そしてこの写真には写っていませんが、追加の棚板のご依頼を受けていたGIGIの職人さん2名の計7名です。

塗装ムラについては、ご指摘頂いた箇所を拝見させて頂きました。Aさまがご指摘してくださった箇所は2か所あり、それぞれをクリーニング剤で拭いてみましたが、残念ながらうまく取れませんでした。
補修する手段としては、パネル材2枚を持ち帰って気になる箇所を削ってから、改めて塗装し直すことになりますが、一年経っているので、紫外線等の影響で色も変わっているので、持ち帰ったパネルそのものはきれいに仕上げることができますが、他のパネルと横に並べると色違いが出る可能性があることをお伝えしたところ、そこまで大変な作業であれば、小さな色ムラでそれほど気にならないので、補修しなくて良いとのことになりました。
お引き渡し時にご指摘を頂いていれば、まだ色の変化もないので、すぐに同じ色品番で塗装し直せば同じようにできるのですが、一年経ってしまってからの鏡面塗装の補修は、正直かなり苦しいのです…。

クローゼットはとても使いやすいとのことで、喜んで頂いておりますが、この写真の右側の飾り棚の右奥の棚には洋服を掛けずに、小物を置きたいとのことで、棚板を2枚追加させて頂きました。
住み心地には大満足との嬉しいお言葉を頂きました!

現地内覧と調査、CG提案で進める、濃密なゲストハウス住戸Bの設計

[城南R邸]

新築マンションの2住戸同時リノベーション、城南R邸のゲストハウス用庭付きの1階「住戸B」の設計も着実に進んできました。ご自宅用のペントハウス「住戸A」は、LDKと寝室を中心とした部分リフォームですが、「住戸B」は全面スケルトンでのリノベーションです。

一番上が既存平面図です。180平米の広さに対して3LDKの間取りとなっていました。Rさまと僕らでまず考えた案がリノベA案です。Rさまと僕らで最初に検討したのがリノベA案です。玄関(赤い三角印)から入り、直角に左へ曲がる廊下の位置を変更し、LDKを広げるプランです。図中の青い四角と緑の四角は、マンション共用部に当たるPS(パイプスペース)です。それらの位置を見比べると、各案の違いがより分かりやすいと思います

A案の大きなイートインキッチン案をRさまご夫妻はとても気に入ってくださいましたが、リビングは大きなソファを1セット置くと、テレビを置く場所もなく、家族でマンション内別荘的に使ったり、お客さまを呼んでの食事会などを考えると、食後の楽しみが想像しにくいとのことでした。そこで、LDK横の個室を縮めてダイニングキッチンを左側に広げて、その分リビングを広げるリノベB案を考えてみたところ、是非この方針で進めたいとのことになりました。

こちらが担当の前田君が作ってくれたリビングを広げた案のイメージCGです。まだ、先ほどのA案とB案がミックスしたプランになっていますが、リビングに大型ソファを置くとテレビを置くスペースがどうしても取れないので、窓際にスクリーンを落としてプロジェクターで画像を映す計画となっています。キッチンについては、大型アイランドキッチンと壁面収納、そしてイートインカウンターを設けるレイアウトは、ハイブランドキッチンツアー-1でご一緒に訪問し、とても気にいっていらしたモルテーニのキッチンとプランが重なるので、モルテーニキッチン仕様として設計をしてCGにも落とし込んでいます。

そうこうしているうちにこちらのお宅も工事が終わり施主検査となり、そのタイミングで工事をお願いするリフォームキューさんと一緒にお邪魔させて頂きました。

因みにこちらが事前に前田君が図面と仕上げ材のサンプルイメージから事前に作ってくれていた竣工時(つまりリノベーション前)CGです。細かく見比べると、コンセントやカーテンボックスなどが違っていますが、お客さまもこのCGと現地を見比べながら、前田君のCGの再現力に驚いていらっしゃいました。

そして、この日の為にビフォーアフターのCGを用意していたので、Rさまの携帯で見比べながら、この新築マンションがどのように変わってゆく予定かを見比べて頂きました。

Rさまの携帯のアップの写真です。この、いかにも“新築らしい”(失礼!)単調な空間が、ここまで濃密な空間にリノベーションで生まれ変わるのかと、Rさまも“本当にこうなるの?”と半信半疑ながら、目を輝かせて興奮されているご様子でした

ほぼ同じアングルで竣工時写真とCGを見比べた比較イメージです。このCGイメージをご夫妻で確認して頂いた際に、ここまでフィットするのであれば、ゲストハウス住戸のキッチンはモルテーニで決定にしましょうとのご判断も頂きました。

キッチン側からリビングを見返したアングルの比較イメージです。

奥の個室が2つ連なったエリアは、ご家族で使えるトレーニングジムになさりたいとのことで、テクノジムの小山さんに現地に来てもらい、簡単に機器の説明をして貰いつつ、どのサイズの機器であれば搬入設置が可能かも現地確認して頂きました。

こちらが2室の間の間仕切り壁を抜いて、一体化させた部屋にテクノジムのトレーニング機器(まだ機器の選定はしていないので、適当に選んだだけです)を並べてみたイメージCGです。
モルテーニキッチンを入れてみたダイニングキッチンも喜んでくださいましたが、このトレーニングルームのCGは、奥さまも息子さんも歓声を上げて喜んでくださいました!

CGでリノベーション後のイメージのお話をしている間も、リフォームキューの営業&設計の坂本さん、設備の槻川原さんたちは、エアコンの品番は点検口からの覗ける壁裏や天井裏を調べてくれています。

この日の現地確認&調査の最後に、ご家族と一緒に取らせて頂いた記念写真です。

そしてその1か月後のお引き渡しのタイミングで、部分解体調査に入らせて頂きました。

現場監督の綿貫さんと坂本さんが床にしっかり養生をしつつ、外壁側のPS(パイプスペース)壁に開口を空けて中を覗けるようにしてくれました。

こちらのPSには天井カセット式エアコンの冷媒管とドレイン管のみが入っていたので、PSとはいえ専有部の設備配管のみのPSなので、共用部ではなく専有部と判断できるため、PSのサイズを縮小できそうです。

もう一か所、既存のキッチンと奥の個室の間にかなりのサイズのPSがあったので、そちらも内部を見させてもらったところ、給湯器への給水(水色の管)と電気配線(灰色の線)、給湯機からのお湯(赤い管)と床暖や追い炊き用のペアチューブ(緑のチューブ)、そしてキッチンの排水管がありました。

同じPSの上部には、既存キッチンの排気ダクトが通っていました。天井裏に隠れていた梁型を避けるためにここで折れ曲がっていました。ただ、ちょうど中間の部分は見事にスペースが開いていることが分かったので、カウンター下と吊り戸形状の梁型を作れば、キッチンカウンター部分を広げることができそうです。

もう一つの嬉しいニュースは、当初LDKと洋室のクローゼット間の壁に図面で示されていたマンション共用部にあたる竪管がなくなっていたことです!マンションデベに確認したところ、設計途中でこの竪管を他の箇所に合流できることがゼネコンの設備設計で分かったのでそのようにしたとの回答がありました。これにより、キッチンレイアウトの自由度が一気に広がることが分かりました。
こちらの図面が調査に同席してもらったモルテーニ側とも調整しながら天井裏のダクトルート(排気経路)とても気にっていらしたを検討中の図面です。これまでにカガミ建築計画で設計したキッチンでも最大級サイズのキッチンになりそうです!