Author Archives: Kenji Kagami
2024.11.01
造作家具の取り付け工事@新宿区T邸
[新宿区T邸]
先回のブログでTVキャビネットの取り付けを紹介した新宿T邸ですが、他の造作家具の取り付けについてご紹介します。
施工会社・青の下請けとして入ってくれている造作家具屋の大沼木工所さんとは、初めてご一緒したのは約12年前の杉並区S邸のリフォーム工事現場でした。それから幾度もご一緒していますが、工場を見学したことが無かったので、今回のT邸の造作家具の製作途中も見せて貰いがてら工場を訪問してまいりました。
2段重ねになっていますが、箱と扉をメラミンでお願いしている来客用トイレの手洗いカウンター下の箱ががほぼ出来上がっていました。
こちらも同じ家具の他の部分ですね。奥の壁に立てかけてある四角い穴の開いたパネルはゴミを捨てるための穴です。少しタイミングが悪く、他の塗装仕上げの家具は別の塗装会社に送ってしまった後とのことで、残念ながらT邸の他の家具は見ることができませんでした…。
それでも、大沼さん兄弟のお父さんが昭和初期に始めた木工所とのことで、沢山の小口テープが並んでいる棚に驚かされたり、
迷路のように入り組んだ工場の奥には、昔大沼家が住みながら家具を作っていた築50年を軽く超える古い倉庫があったりと、見どころが色々とありました。
新宿T邸の造作家具は、実は3回に分けて現場に入れられています。石膏ボードとの取り合いがシビアでカウンター周りシールを最小限に収めたい、例えばこの来客用トイレの手洗いカウンターは、ボードが張られる直前に入れて貰いました。
こちらは大沼木工所に作ってもらった家具の製作図です。大沼さんの会社は、実はここまでの図面はあまり作らず、大沼さんの鉛筆手書きのスケッチ図面で打ち合わせを進めるのが普通のやり方なのですが、僕らは製図の費用が掛かっても良いので、より細かいディテールまで詰めたいので、作図をお願いしているのです。
ボードやタイル下地のベニヤ板が完全に張られてから入ってきた造作家具の第2弾の洗面カウンターです。
リネン庫と下着等を入れる引き出し収納が入ったトール収納とダブルシンクのカウンターが繋がった大きいキャビネットですが、カウンター材がトール収納にまで差し込まれているようなデザインとするために、この写真のような面倒な組み立て方となっています。
箱を一旦組んだ後、クオーツストーンにダブルシンクの穴があけられているカウンター材をセットします。
来客用トイレの手洗いのように石膏ボードを貼る前にカウンターがセットできると、隙間をほぼゼロで納めることができるのですが、反対にこれだけの大きな家具を先に入れてしまうと、傷がつかないように養生をしながらの石膏ボード張り作業となってしまうことや、先行の家具が多くなると、工場のスケジュール調整が大変になるので、バランスを見て、こちらの家具は石膏ボード張りの後でのセッティングとなりました。
カウンターがきれいに乗った洗面家具です。
反対側から見返すと、カウンターのクオーツストーンが、手前のトール収納の中まで入り込んできているのが良くわかりますね。
引き出しや収納扉がを取り付けると、ほぼ完成となります。
ほぼ最後に入ってくるダイニング横のワインセラー入りキャビネットは、塗装工事が終わった後に取り付けられます。この写真のキャスター付きゴミ箱と掃除機が入れられているニッチに、その家具が入ってきます。
こちらがその家具です。天井高がかなり高い空間なので、上部の空間も収納として使えるように工夫しています。ビニールが掛けられてい黒い塊はワインセラーキャビネットです。
セインセラーが収まっているニッチ空間とその左側のカウンター家具の間の仕切り板を見てください。
通常のキャビネットで作ると、厚みが20ミリほどの塗装仕上げの板が入ってくるのですが、そうなるとかなり野暮ったくなるので、ここは厚み3ミリのステンレスヘアライン仕上げの方立(ホダテ)で納めて貰っています。
斜めから見ると方立の厚みというか、薄さが判りますね。
こちらは玄関横、来客用トイレ横の靴収納(この状態ではスリッパ収納として使われていますね)ですが、こちらも塗装工事が終わった後に造作収納と取り付けます。
靴収納は2つの扉に分かれており、一つは姿見を兼ねた鏡扉に、もう一つは鏡面の輝きは同じですが、顔が映り込まないカラーガラスの扉となっています。これらはの扉は現場で扉の基材に鏡とカラーガラスを接着するのですが、数日間は平らな場所で置いておかないといけないのです。
そして、最後に扉を取り付けると、このようにすっきりと納まるのです。
2024.10.25
渋谷区N邸のお引き渡し
[渋谷区N邸]
新築マンションリノベーションの渋谷区N邸の工事が終わり、お引き渡しとなりました。
まずはビフォーとアフターをほぼ同じアングルで見比べた写真です。後ろの窓と柱型だけが残っており、他は全て変わってしまったことが判りますね。
日程を少しさかのぼりますが、お引き渡しの数日前に、弊社手配の新しい家具が搬入されてきました。大塚家具のセラミック天板のダイニングテーブルです。
梱包を解いて組み上げている最中の様子です。大理石調セラミック天板の模様がとても美しいテーブルです。以前お手伝いした代官山N邸の時は、オーダーメイドでセラミック天板のダイニングテーブルを作ったのですが、細かい反省点が色々とあったので、今回は既製品で大型サイズのセラミック天板のテーブルを担当の前田君が調べて資料を作ってくれました。
大塚家具とAYANO、アルフレックスとカッテランとボーコンセプトがサイズ的に良さそうなテーブルを作っているようでしたので、この比較資料を作ってNさまご夫妻と相談した結果、テーブル高さを調整することが可能で、かつ17柄あるセラミックから天板を選べて、シンプルな作りで、かつ金額も一番安価な大塚家具にお願いすることとなりました。
セラミックの大理石柄がとてもきれいなテーブルで、これならNさまご夫妻にとても喜んでもらえそうです!
そして、もう一つの家具はリビングのタイル壁の前に置く、テレビ用のキャビネットです。こちらはTime & StyleのTVボードです。
AVボードについても、前田君がタイムアンドスタイルだけでなく、アルナイのボードと比較した資料を作ってくれています。機能的にはアルナイの方が良いのではと思っていましたが、キャビネットの下が空いており、軽く見えるタイム&スタイルの家具が選ばれた経緯がありました。
そしてお引き渡し当日です。キッチンカウンターの上に、取り扱い説明用のリモコンや資料、そしてお引き渡し用の保証書などが並んでいます。
まずは一番の大物のクチーナのキッチンの取り扱い説明からスタートしました。
先日の検査の際にも、前田から簡単には説明していますが、IHヒーターやレンジフードの清掃方法、そしてビルトインのミーレのコンベックを使っての料理方法などを熱心に聞いてくださいました。
ブラインドの使い方などのキッチン以外の部分(笑)では、ご主人さまも取説をご一緒に聞いてくださいました。
その他、床フローリングのメンテナンスや、造作家具の使い方などの取説も一通り行いました。
最後に施工をお願いしたリフォームキューの森井さんから保証書をご説明して、お引き渡しの書類に記名捺印して頂き、工事費や設計料のご請求書をお渡しして、無事お引き渡し完了となりました。そこで冒頭の記念写真をリフォーム前とほぼ同じ位置で撮影してもらったという次第です。
サインをして貰った新しいテーブルの上には、ガラス球が入ったイタリア産高級ペンダント照明、パペット・リング(ヴィストージ社)燦然と輝いていました。
Nさまご夫妻、竣工からのお引き渡し、どうもおめでとうございます!
2024.10.24
アンティーク風トラバーチン大理石の床張り
[文京区S邸]
こだわりの素材がふんだんに詰まっている文京区S邸の現場ですが、キッチンとパントリー、玄関や土間、洗面と来客用トイレ、更にはランドリールームの床はアンティーク風の大理石を敷き込みたいとのご要望でした。
こちらが最初にお客さまから送られてきたイメージ写真です。イギリスのアンティーク床材ブランドのQuprn Storeのホームページから抜粋されたイメージ写真でした。
まずはこちらの会社に石材とタイルに詳しいアークテック経由でこの石材のサンプル請求と、必要面積を伝えて日本に輸入することができないかを問い合わせてみたところ、現時点でサンプルは無く、新しくサンプルを作ることも可能だが、それは製品発注をしないと送れないとのことが判りました。因みに、生産納期は3~4カ月で、船便での輸送の約3~3.5ヵ月と合わせると納期が7か月程度掛かるとのことでした。
アークテック社では、他に付き合いのある会社経由でエジプトのクレオパトラ・ストーンという会社のシナイパール・アンティークという石材を見つけてくれましたが、このサイトをお見せしてもお客さまはイメージと少し違うとのことで、他経由で探すこととなりました。
十数年前に僕らがお手伝いした神戸M邸リノベーションの玄関に使ったアンティカ・トラベルチーノ(アドヴァン)も良さそうだったので、問い合わせをしてみましたが、在庫切れでしばらくは新たに仕入れる予定はないとのことでした。良いものが見つからない場合は、トラバーチンを仕入れて貰って、アンティーク加工をどこかに頼もうかと覚悟を決めていた時に、以下の製品を見つけました。
関ケ原石材が販売しているトラバーチンアンティークシリーズです。早速付き合いのある石材屋のキダ・マーブルを通してサンプルをお願いしたところ、以下のサンプルが届きました。
これらはホワイトのサンプルですが、各タイルごとに色もアンティーク度合いも穴の開き具合もムラがありますが、それが良さそうな感じでした!
トラバーチン(トラバーティン)は、ローマの遺跡などで使われているイタリア産の大理石でランダムな穴が開いているのが特徴です。水に溶けた炭酸カルシウムが沈殿してできた石灰岩の一種で、圧密を受けていないため多孔質(ランダムな穴が開いている状態)になっているそうです。
キッチン床に使う際に穴が開いていると、こぼした米粒やホコリが入って取れなくなると衛生上問題があるのではと思って、穴を目地材で埋めること、そしてこの製品はコーティンがされていないものだったので、下のタイルの半分分だけ(緑色のテープを張った左側だけ)撥水材を塗布してもらったものをお客さまにお見せしました。
アンティークトラバーチン自体にはとても喜んで頂けましたが、科学的な物質を使った撥水材は自宅にはあまり使いたくないとのご意向で、撥水材の塗布なしで進めようとのことに決まりました。ただ、石材のエッジ部分はなるべくガサガサした風合いにして貰いたいとのリクエストも頂きました。
そこで関ケ原石材からキダ・マーブルがトラバーチンを仕入れて、大垣市にある協力加工場であるアジアングラニット内で、手作業でエッジ部分を削ってもらいました。
こちらが全てエッジ加工が終わった状態のトラバーチンです。
茶色くマーキングされている箇所がアンティークトラバーチン張りの床です。これは僕ら設計事務所が作った指示図です。
それに対して、細かい取り合いまで考えて、青の現場監督の織田さんが作ってくれた施工図がこちらです。
青の下請けに入っている大理石のプロのキダ・マーブルの齊藤さんが作ってくれた床基本パターンがこちらです。300ミリ×600ミリが基本のサイズとなるのですが、目地との取り合いなどで、灰色に塗られた箇所だけ、297ミリとなるのです。製図してみないと分からない不思議な寸法体系ですね。
そしてそのパターンを使ったうえで、各エリアの床パターンまで考えてくれています。灰色だけでなく、更に特殊寸法の赤色まで増えていますね。上記の工場でエッジ加工した際に、実はこの図面に基づいた寸法の微調整までしてくれていたのです。
現場に入ってきた加工済みのトラバーチンを…、
まずは目地幅まで正確に、キッチン床に仮置きしてもらいました。舐めるようなアングルで見ると、微妙なアンジュレーション(起伏)もあって、良い感じです。
色のばらつきや穴の開き具合などを見ながら、一番重要なキッチンエリアの床パターンを微調整させて貰いました。そして実際に大理石タイルを貼る際は、なるべく目地を深くとるようにお願いもしておきました。
そして数日後、実際のタイル貼り作業が始まっていました。
こちらは主寝室の横のご夫妻用の洗面所とトイレ部分です。目地材を詰めてくれています。目地部分だけでなく、トラバーチンの穴にも同時に目地詰めをしてくれています。
この後、造作家具で作った洗面キャビネットが入ってくるのですが、キャビネット下もかなり透かしたデザインとしているので、隠れる部分までしっかりタイルを貼り込んでくれていますね。
皆同じように見えている大理石タイルですが、全てに番号が振られており、指示図通りに張られてゆくのです。
こちらはキッチンとリビングダイニングの境の見切りライン部分です。養生でほとんど隠れてしまっていますが、緑色の養生テープのちょっと右側がフローリングとアンティーク大理石の見切りラインで、真鍮の目地が入っています。
フローリングが先に張られていますが、アンティークトラバーティンとの見切りにはこのようなL字型の真鍮見切りが事前に取り付けられているのです。
時間的には前後してしまいますが、フローリング張りの様子もご紹介しておきます。
今回使ったのは、NORDO(ノルド)のカフィーラ(ADワールド)を採用しています。フローリング張りの職人さんは、施工会社青の下請けに入ってくれているフローリング張りの名人そろいのWITHフローリングの職人さんが入ってくれています。
写真手前に穴が開いていますが…、
これは床付けコンセント用のボックスです。フローリングの幅で墨出しをした箇所に事前に埋め込んで置き、
最終的にはこのように仕上がるように作られています。穴塞ぎようのフローリング蓋が差し込まれていますが、まだコードを出す穴の加工はされていないようですね。
来れな事前に大工の矢野さんが作っておいてくれた床付けコンセントボックスです。
タイルもフローリングも張り終わるとすぐに養生シートでカバーされて見えなくなってしまいます。僕らは養生シートをめくって仕上がりを確認させて貰っていますが、お客さまはお引渡し前のクリーニングの時に仕上がりを確認することとなります。