Author Archives: Kenji Kagami
2024.11.13
渋谷区N邸のビフォーアフター
[渋谷区N邸]
先日工事が終わりお引き渡しを終えた新築マンションリフォームの渋谷区N邸のビフォーアフターです。
まずは一番部屋の広さが変わったことが判るこちらの写真から。正面の窓は変わっていませんが、その右側にあった個室との間仕切り壁を取り払って、リビングダイニングの幅を広げて、新たにキッチンを個室側に移動しました。
間取りで比較すると、判りやすいと思います。上がビフォーの平面で下がアフターの間取りです。キッチンをかつての洋室の位置に移動して、かつてキッチンとダイニングがあったエリアに、新しいトイレ+手洗いと洋室を持ってきています。
リフォームをしたことで、
①リビングダイニングキッチンが整形になって、空間の広がりを感じやすく、かつ家具レイアウトもしやすくなりました。
②キッチンが大きくなり、背面収納も充実しました。
③キッチンに奥さまが立っているとLDKが見渡せるようになりました。
④玄関正面にかつては個室の扉が見えていましたが、整形の壁を作ることができました。
デメリットとしては、
⑤個室が廊下からではなく、リビング・インになったことと、面積が減っています。ただ、お子さまの特性と家具レイアウトを考えたことで、Nさまご夫妻はこれはこれでデメリットではないと仰ってくださっています。
⑥トイレがリビング・インになってしまいました。ただ、手前に独立した手洗いができたことで、トイレ使用時の音や匂いの問題もあまり感じられず、家に帰ってきた子どもたちが手を洗いやすくなったそうです。
かつてのダイニングがビフォーの奥の方に見えていますが、幅80センチのダイニングテーブルを中央に置くと、片側にしかダイニング椅子を置けないほどの幅しかありませんでしたが、下のアフターを見て頂くと分かるように、かなり大きなダイニングテーブルを置いて、左右に合わせて6脚の椅子を置ける広々としたダイニングができました。
ダイニングテーブルは幅95センチ、長さ240センチの長さがありますから、両端に椅子を置けば8人での食事も可能です。また、キッチンのメインカウンターのダイニング側に収納が充実しているので、お子さまの勉強机としても使えます。アフターの写真手前の右にテレビ台が置かれ、左に元々のお手持ちのソファがすっぽり入っています。キッチンからご家族の様子が見渡せることも、この写真から良くわかりますね。
ビフォーアフターの意味があまり良くわからない写真ですが、ビフォー写真は、かつての洋室からの写真です。壁を取り払ったことで、これだけの広さの空間を作ることができました。かつてはキッチン前は壁でしたが、リフォーム後は、広いリビングダイニング越しに大きな窓が2面に広がっています。
ビフォー写真は、玄関から入ってすぐのキッチン越しに正面窓を見た写真です。アフターでは、正面に3枚あった窓のうちの一つが斜め壁の後ろの洋室に取り込まれて、リビング側には窓2枚分が残っているのが判るでしょうか。斜め壁も唐突に見えないように、グレーの枠で縁取っています。
ちょうど反対側から見返したビフォーアフターです。以前はダイニングとリビングの間が狭く、それそれが別の空間に分かれていましたが、大きな整形の形のリビングダイニングになりました。右側の壁には斜め壁、洋室1と手洗い+トイレへの扉、更には収納の扉が並んでいますが、同じ素材で仕上げることで、沢山の扉が並んでいるように見えなくなっています。
こちらは玄関入って正面の壁です。以前は中途半端な位置に洋室への扉があり、来客を迎えるような雰囲気ではありませんでしたが、リフォーム後はスクラッチ模様の入ったベージュ色のタイルが正対し、堂々とした空間へと変わっています。正面左側の扉は手前の壁へと引き込める扉となっているので、春や秋には常時開放していても邪魔になりません。右側の扉2枚と間の壁には同じダイノックシートを貼ることで、扉の存在を目立たなくしています。
2024.11.11
造作家具の現代製作所工場見学
[文京区S邸]
先回に引き続き、また家具工場の見学です。今回は、一番良くお世話になっている現代製作所の神奈川県横浜市都筑区川和町の工場です。
現代製作所とのお付き合いはかなり深く、まだ設計者として独立したばかりの頃、ご縁があって自分の出身幼稚園である白金幼稚園の建替えを発注者側(つまり幼稚園側)としてお手伝いさせて頂きました。その時に工事をお願いすることになった工務店佐藤秀の現場所長が上林さんで、その後彼が佐藤秀を辞めてお父さまが作られた造作家具屋の現代製作所を作ったという経緯があります。幼稚園が完成したのが2000年、工事はその1年半前から始まっていたので、上林さんとのお付き合いは25年を超えていますね。その後、難しいプロジェクトの造作家具や建具だけでなく、元請けとしても何度も助けて貰ったことがあり、若い頃は造作家具図も満足に書けなかったので、こちらの工場に幾度も相談に来たことがありました…。
昔ながらの懐かしい工場だなと思って足を踏み入れたところ、奥には見慣れない大型機器が鎮座していました。NCルーターです!
コンピューターで3次元の図面を描くと、それに沿った形で刃物をコントロールして木材等の材料を削り出すという優れものの機械です。
こちら四角い部品がバキュームになっていて材料をしっかりと固定し…、
こちらの歯やドリルを使いながら削ってゆくという最新鋭の機器です。
こんな素晴らしい機械があれば、僕らがお願いしている文京区S邸の家具も、ハイスピードでどんどん組み立てられているだろうと思っていましたが、案に相違してNCルーターは全く使わず、昔ながらの手作業で組んでいるとのことでした…。
今回のSさまのご要望は、なるべく無垢感があって、かつ造作家具なのに置き家具に見えるようなデザインのものが欲しいとのことでした。この写真のキャビネットも普通の箱家具に見えますが…、
箱同士の接合部を見ると、機能的にはほとんど意味がない板材が挟まれています。その表面の単板も厚みが2ミリほどある大手(オオデ)が張られています。通常であれば、小口テープと呼ばれる表面に厚み0.45ミリの薄く削った木を貼った粘着テープを貼るのですが、厚みがその4倍ほどある大手を使ってもらっています。
また箱を組む材料も、通常であればフラッシュ合板と呼ばれる、木製の芯材を梯子状に組み表面に薄い板を接着剤で張り付けた板材(中空合板)という軽い材料を使うのですが、お客さまからのリクエストで無垢感を出すためにベタ芯(中空部分が無い)仕様として、しっかり重たい材料を使って箱を組んでもらっているのです。
足元も、普通の造作家具であれば、台輪と呼ばれる巾木のような板を、キャビネットの箱から少し凹んだ位置に取り付けるのですが、今回は脚で立っているようなデザインとしています。
それぞれの箱の中に入る引き出しですが、これも通常は清掃性と頑丈さを考えてメラミンで作ることが多いのですが、お客さまの好みを考えて、シナ合板で作ってもらっています。
こちらはマッドルーム(いわゆる土間)に設置するL字型のベンチの基材です。
工場長が仮組してくれたようにL字型に繋がるカウンタ材のようになります。
ベンチ板を支える脚も、ベタ芯でしっかりと重量がある脚となっています。足元にコンセントを設けたかったので、このように板の中にCD管を挿入しておいて、足元に家具用のコンセントをつける仕様となっています。
クローゼットの扉も出来上がりつつあります。框(カマチ)仕様の扉となっていますが、本框と鏡板で作るとかなり高額になってしまうので、MDF合板に薄板を框のように張り付ける仕様としています。
最後に、工場長と設計担当の吉岡さん、弊社担当の竹田さんと僕での記念写真を撮らせてもらいました。懐かしい手作業道具と手練れの職人さん、最新のNCルーターが同居した現代製作所の工場で作られるS邸の家具の現場での組立、楽しみにしています!
2024.11.08
モロッコ産のゼリージュタイルの貼り方
[文京区S邸]
今年の3月のブログ記事に書いたモロッコ産のゼリージュタイルが、無事現場に届きました(といっても、当初納期の1か月遅れで、3種類お願いした内の1種類はまだ届いていませんが…)。ゼリージュ(ゼリージェ?)タイルとは、モロッコで手作りされる伝統的な装飾釉薬タイルで、ハンドメイドなので、一枚一枚が微妙に違い、広い面に張った時の美しさは格別ですが、規格品のタイルとは違い、張り方もかなりユニークなのです。
3月にサンプル(有償)を取り寄せた際には、3割近くのタイルが破損していたので、今回のオーダーでは、そのリスクの予備等を考えて50%増しの面積でお願いしていましたが…、
プラスティックのプチプチ梱包などは箱の中に全く入っていませんでしたが、丁寧に配送されたのか、隙間なく詰められてたからか、欠けも破損もほとんどない状態で届きました。
100ミリ角のものは縦に詰められていましたが、50ミリ角のタイルはこちらのように平積みとなっていました。
平積みになっていたのはこのように背面からネット張りになっていたからでした。
表に返すとこのようなものです。こちらも欠けや破損はほとんどありませんでした。
キダ・マーブルの職人さんに見て貰ったところ、ネット張りはパッと見はスピーディーに張れそうに見えるが、四周のラインがあまりにガタガタで揃っていないので、一枚ずつに分解して張らないとうまく貼れないだろうとのことでした。
早速職人さんが張り始めている様子を見学させて貰いました。予備のタイルもあったので、接着剤を何を使って、どのように貼るかの実験を幾度かしたうえで、いわゆる改良圧着張り工法で張るのが良さそうだとのことになったようです。
改良圧着張りとは張り付けモルタルまたは接着剤を下地面に塗り、それが硬化しないうちに、タイル裏面にも同じものを塗り付けて張り付ける工法です。
下地とタイル材の両面に張付けモルタルまたは接着剤を塗り付けるため、ばらつきが少なく、きわめて
安全性の高い工法とされています。
実験の結果、一番しっかりと圧着できるのが、こちらのアイカエコエコボンドだったそうです。
小さなタイルの裏面にもしっかりボンドを付着させてから、押し付けるようにして貼っていくのと、隙間なく貼ってゆくのがかなり難しく、かなり大変だとのことでした。
それでも一通り張り終わったとの報告を現場からもらったので、後日見に行ったのがこちらの様子です。まだ、目地が詰められていませんが、最初にお客さまとお話していたイメージとかなり近く、良い感じですと職人さんに伝えたところ、「本当にこれでよいのか自信がなかったけど、そういってもらえて良かった良かった!」と喜んでくれました。
僕ら設計の確認を受けてからと待っていてくれた目地詰めを始めた様子です。
目地が入っていないエリアと、(まだ余分な目地材が拭き取られていませんが)目地が詰まった個所を見比べると、目地が入ることで透明感のようなものが出てくるのが不思議です。
目地材を詰めて、きれいに拭き取った後はこのようになりました。一番大変だったシャンプー置きのニッチ部分もとてもきれいに仕上がっています。
こちらは今年3月に作ってもらったゼリジェタイルの出隅(出っ張ったコーナー)トメ加工(45度にタイルをカットしてシャープなコーナーに仕上げて貰う方法)のモックアップ模型です。コーナーの部分はタイル表面を傷つけないように裏地を斜め45度にカットするトメ加工の難しさが判りますね…。
ニッチの底板だけは白い大理石のビアンコカラーラを最初から、ユニットを作ってくれた東京バススタイルにお願いして仕込んでおいてもらいましたが、コーナーのトメ加工が本当にきれいにできていて、感動しました!
因みに、日本のタイルメーカーにもモロッコからの輸入品のゼリージュタイルが幾つか見つかります。弊社では面倒な(笑)輸入品よりも保証が効く、国内代理店があるタイルの方が安心感があるので、各社からサンプルと取り寄せて、お客さまに見て貰いましたが、今回のように目地なしで張るタイプが無いこと、どれもエッジのシャープさがないことから、不採用となりました。ただ、今回のようなタイルの貼り方は、日本の一般的な工務店ではお願いしても色々なリスクがあるので、難しいと思います。今回はお客さまに先回のブログで書いた覚書にサインをして貰ったうえでの施工となります。