Author Archives: Kenji Kagami
2025.07.05
リノベーション設計の自由度を決める「設備調査」とは?
[松濤D邸]
マンションリノベーションの設計は「壊してから」ではなく、「調べてから」始まります。壁の裏、床下、天井の奥には、リノベーションの自由度を左右する複雑な設備が隠れています。今回のマンションリノベーションでは、設計を本格的に進める前に、既存設備の現況を現地で詳しく確認しました。
見えてきたのは、給排水管やガス、電気・空調設備の問題点と可能性。この調査によって、どこまで変更できるのか、どこに制約があるのかが明確になり、設計の方向性が大きく絞り込まれました。
実はこちらのた松濤D邸の先回のリフォームでは、リノベーション済みマンションをご購入されたという経緯もあって、設備に関わるキッチンや浴室は何も触っていませんでした。今回はそのキッチンと浴室をやり替えたいとのご依頼だったので、フォーム工事をお願いしたリフォームキューの森井さんと設備の槻川原さん、そして今回新たにオーダーユニットバスを発注予定の東京バススタイルの眞柄さんと和久田さんにも同席して貰って、設備関連の調査をさせて頂きました。

設備調査に先立って、担当で当社副所長の前田君が関係者皆に既存図やリフォーム図面を見せて、どこをどう調査してもらいたいかと説明している様子です。

リフォームキュー側は分電盤からチェックを始め、

キッチンの引き出しを開けさせてもらって、排水経路を推察してくれています。図面と現地調査で、新しいキッチン案のようにシンクと水栓を対面側に移動しても、排水経路は確保できそうだとのことが判りました。

東京バス側は脚立も持参での調査です。

まずは既存の浴室の内寸を実測した後は、

天井の点検口に頭を突っ込んで、巻き尺とレザー測量機を使って、リフォームした場合、どのサイズの浴室を入れることができるのかを調査していきます。

因みに点検口の中でみえる景色はこんなもので、ダクトと配線や配管が縦横無尽に走っていて、見ているだけでは何が何だか分からないのですが、図面を見比べながらじっくり考えてゆくと、どこをどうすれば整理できるか、何が問題になりそうかが見えてくるのです。

最終的にこの日東京バスの眞柄さんが纏めてくれた資料がこちらです。パッと見ると、何が描かれているかが分かりませんが、説明してもらうと、既存のユニットバスを、新たにオーダーユニットバスに変更すれば、長手方向であと15センチ程度サイズアップをすることができることが判ったそうです。既製品のユニットバスでは細かい寸法を浴室に取り込むことが不可能ですが、サイズを自由に変更できるオーダーユニットバスにするメリットがより大きくなることが判りました。

調査をして貰っている最中は、前田君と各務です。新しく考えたキッチンや浴室のリフォーム案をDさまご夫妻にご説明させて頂きました。このスケッチ図の一番上、主寝室の奥のウォークインクローゼットは、先回のお打ち合わせ時にこちらからご提案したオプションの内容となります。

キッチンについては、まだ奥さまのご要望はほとんど伺っていない段階でしたが、まずはどのようなことができそうかを、こちら設計側で簡単に纏めてみた資料です。4面の展開図のうち、右下の展開図にアーチが見えていますが…、

先回のお打ち合わせ時の最後に、アーチをどこかに取り入れることができないかとのご相談があったことから、ダイニングとキッチンの開口部をダブルのアーチにする案を前田君に考えて貰ったのがこちらのダイニング側からの展開図となります。

ウォークインクローゼットだけの説明図も作りました。かなり大きなクローゼットが作れそうですが、お打合せの中で、廊下から寝室への扉の位置を90度移動すれば、もっと大きなクローゼットが作れそうだとのことも判り、次回改めてその案も纏めてみることとなりました。
因みに、クローゼットエリアになる部分の湿気が気になるとのこと、何とか湿気を除去する方法も検討してくれないかとのご依頼も頂いていたのですが、新しくエアコンを入れることは冷媒管とドレイン管のルート的に難しく、連続運転できる除湿器を入れることについても排水を確保するルートが取れないことから、この点については市販の除湿器を使って頂くことになることもご説明させて頂きました。

こちらは、東京バススタイルの調査を受けて、後日Dさまにお送りした浴室サイズと浴槽の関係を纏めたシートです。ウォークインクローゼットについては、見積もり次第とのことでしたが、キッチンと浴室については超概算をお伝えしたところ、そのくらいの費用であれば問題ないので、進めて欲しいとのご依頼を頂きました。
2025.06.29
上階から壊す、メゾネットリノベーションの挑戦
[渋谷区L邸]
先日のブログ記事のタイミングで、大きくリノベーション工事をする範囲が変わってしまった、メゾネット大型マンションリノベーションの渋谷区L邸。メゾネットマンションでのリノベーションといえば、通常は室内全体を一度に解体してから、設計通りに再構築していくのが一般的です。しかし今回のプロジェクトでは、メゾネットタイプの上階だけを先に解体するという、少し変則的なスタートを切ることとなりました。
下階のデザインの取り纏めやお見積りを待っていると、いつまでも工事が前進しないこと。また、解体をしてみないと壁裏や床下の設備位置が分からないで手探りのままの設計を進めることになってしまうこと、また、これまでは上階が生活の場でしたが下階にも来客用寝室や浴室もあるので下階に生活の場を移すことができるので、まずは工事内容が決まった上階部分を先行して解体することとなりました。
因みにこのような変則的なスタートを切ることができるのは、メゾネットの上下階共に玄関があり、ともに共用エレベーターが止まり、階段もあるからこそできることで、戸建て住宅ではできない判断だと思っています。

約10日ほどの工期で、下階にお客さまが住みながらの状態での工事でしたが、ここまできれいに解体することができました。床下の給水や給湯管、天井裏のエアコンについては、基本再利用としていますが、解体して傷みが無いかを確認して移設する予定となっています。

柱型や梁の位置は図面通りでしたが、右側に見ている下階への室内階段の防火区画や、左側に見えている窓際の壁や下台は、予想と少々違った作りでしたので、もう少し厳密に調査をして対処方法を考えないといけないことになりそうです。

壁際の上下階を繋ぐPS部分の解体状況を、(設計)施工をお願いしている三井デザインテックの蛭川さんと風間さんと一緒に確認させて貰いました。

事前解体で配管の位置は判っていましたが、竪管への横菅の接続高さなどをキチンと実測できるようになり、ここまで設計を進めてきた上階の設計プランを問題なく進めることができることが判り、一同ホッとしています。

天井裏に隠されていたエアコンは、これまでも普通に使うことができていましたし、解体後も目視でも傷等は無いことが判ったので、このまま場所は移動させますが再利用する方針も決まりました。

こちらのお宅は上下階合わせて400平米以上もある巨大なマンションとなっていますが、上下階それぞれに給湯器が4台、合計8台もあるモンスター住宅となっております。給湯器置き場から室内に入ってくる管の数もかなりの量となります。

緑色の管は、床暖房やお風呂の追い炊きなどに使われるペアチューブという管が内部に仕込まれています。これらを無理に曲げると内部の管がつぶれてしまいますが、これらの管の為にかなり余分に作られていたPS(パイプスペース)は、専有部であり縮めることができれば、その分室内が広くなりますので(共用部のPSではこのようなことはできません)、実測をすることで、約15センチほど室内空間を広くすることができそうなことが判りました。

管が通る貫通部を覗き込んでみたところ、本来であれば区画貫通処理をしていなければならない箇所にグラスウールが詰め込まれているだけだったので、施工をお願いしている三井デザインテックに、適切に穴を塞ぐようにお願いをしておきました。

中央のボックス状になっているものが上下階を繋ぐ室内階段です。下に住まいながらの解体でしたので、降り口をベニヤ板で完全にふさいで、音や埃が下階に流れないように注意をしています。

乾式防火区画として作られている、その室内階段の石膏ボードの壁に穴が開けられて配線を取り出していました。これが当初のから工事なのか、お客さまがご購入前に他社がリノベーションした際に空けられたものかは分かりませんが、このまま放置するわけにはいかないので、配線を取り外して、同じ厚さの石膏ボードで補修することになります。

こちらはかつて浴室があったエリアです。(躯体に密着した)在来工法ではなく、(躯体との間に空気層が設けられる)オーダーユニットバスだったのに、なぜか寒かったとのお客さまからのお話があったので、皆で何が原因だったのかをカガミ建築計画の下に入って貰っているハク・アーキテクツスタジオの後藤さんと関さんにも立ち会ってもらって調査しました。

ガラスブロックでできた窓の上部のステンレス板に、以前の工事関係者のメモが残っていました。「↑これ吹込まないでモルタル入れる」と書いてある箇所を良く見たところ、室外と室内がツーツーになっており、外気が元のユニットバスの周囲に流れ込んできていたことが判りました!
工事の際にしっかりと無収縮モルタルを詰めた上から断熱材を吹き付けて貰うようにお願いしておきました。

床下の給湯管(赤い管)は即出湯システム(配管内でお湯を循環させ、いつでもすぐにお湯を出せるシステム)が組まれており、ループ状に配管されていましたが、なぜか太い管で始まっているのに、途中で管の径が遅くなっており、これでは即出湯システムのパワーがフルに活かせないので、配管は一部やり直してもらうことになりました。

他にも、工事の何らかの都合で、断熱材が欠損している箇所も幾つか見つかりました。

現場側の問題点を事前に纏めることができたので、その翌週にお客さまのLさまご夫妻に現場に来て頂き、状況をご説明させて頂きました。

既存そのままで再利用できるか所と、やり直しが必要となる箇所(つまりその分費用が余計に掛かってしまう箇所)があることをご理解頂きました。

寸法的には、これから墨出しをして、細かい寸法調整をしてゆく必要がありそうですが、大物のオーダーユニットバスはそのままの寸法で入ることが判ったことなどをご説明させて頂いたところ、とても安心したとのお言葉を頂きました。
今後は、上階の再構築と並行して下階の設計・見積り・施工へと進んでいきますが、「分けて進める」というこの挑戦が、どのような新しい住まいのかたちを生み出すのか、設計者としても楽しみにしています。
2025.06.26
お客さまと一緒に大理石を選ぶ意味-2_関ケ原の石工場見学
[ザ・ライブラリー]
TAGKENとの共同リノベブランドのザ・ライブラリーブログの広告です。
岐阜県大垣市から始まったお客さまと一緒の大理石の倉庫&工場見学、次に訪問したのが、大本山の関ケ原石材となります。

関ケ原石材は単なる倉庫ではなく、加工工場も併せた巨大施設となっています。大きな丸鋸(マルノコ)で石を切る機械や磨く機会、ブロックで持っている石材を置いている倉庫、、無造作に(笑)スラブ材が置かれた倉庫などを案内してもらいました。

ブロック材もそれなりに何度か見せて貰ったことがありましたが、中にはこんな珍しい柄の石種もありました。

スラブにカットされた(ブロック材を20~30ミリの厚みにカットするとスラブ材になります)同じ石種も見かけましたが、すごい迫力の石材でした。
因みに、関ケ原石材には、イタリアの希少石種を扱うアントリーニと提携したアントリーニギャラリー、関ケ原石材自身が持っている貴重な石種を集めたキセキギャラリー、そして一般の石材を保管している通常倉庫があります。こちらの石材は、その通常倉庫内に保管された石材でした。

こちらのアラベスカートも普通になられべラれていましたが、うっとりするほど美しい石材でした。ちょっと色味の差が激しいことと、何より枚数が足りないことで今回の横浜H邸の石材の候補にすることができませんでしたが…。

次に拝見させて貰ったのが、キセキ(KSK)ストーンギャラリー(別名STRAD)です。こちらもかなりインパクトがある石材が沢山あったのですが、その後に拝見したアントリーニの迫力に押し消されてしまいました…。

最後に、本丸の関ケ原石材・アントリーニギャラリーの見学です。前列左から、ザ・ライブラリーの現場監督の栗原、設計の岸本、Hさま、石材加工アジアグラニットの池田さん、田口、後ろが各務とキダマーブルの齊藤さんです。

僕らはこのアントリーニギャラリーに年に2~3回ほど伺っていますが、それでも毎回扉を開けて中に入るたびに、何億年もの時間を掛け作られた大理石から発せられる「地球の奥底からの震え」のようなものを感じて、身震いしてしまいます!

初めてご覧になったHさまも興奮しながら大理石の由来を読みながら一つ一つの石を見てくださいました。

素晴らしいスタトゥアーリオが何枚か並んでいました。こちらもかなり気に入ってくださっていたようですが、アラベスカートの上質なものと比べても、倍以上の価格がするので、要注意ですよとお伝えさえて頂きました。
以下、まだまだ色々な石材を見て、加工場などを見学させて貰った様子は、こちらのブログをご覧ください。