Author Archives: Kenji Kagami

設計業界では亜流であったリフォーム・リノベーションに、十数年前から真剣に取り組んできた設計事務所、カガミ建築計画の各務謙司(カガミケンジ)です。 学生時に初めて設計したプロジェクトがリフォーム、ニューヨークでの建築修行時も高級マンションリフォームに特化した設計事務所勤務、帰国してからもリフォームの仕事が圧倒的に多く、リノベーションに特化したカガミ・デザインリフォームのブランドを立ち上げ、上質リフォームの普及に尽力してきました。

排水管ルートを探る部分解体設備調査の記録

[世田谷区A邸]

大型メゾネット住戸リノベの世田谷区A邸のリノベーション計画を進めていますが、マンション竣工時の設備図を見ても排水管のルートが読み取れないこと、また下階の水回りに関しては一度大きくリフォームをしていることから、壁や天井を部分的に解体して内部を見て、設備関係配管ルートを確認すること、また、天井裏の懐の深さや梁下の寸法を見ることとなりました。

こちらが既存図に、担当スタッフの竹田さんが手書きで書いた、部分解体をしたい箇所の指示図です。
部分解体のためには、現場監督さんにお願いすることもありますが、今回は開口数も多いので大工さんをお願いすることとなりました。また、設備関係のこともあるので、設備屋さんにも同席してもらうこととなりました。

早速、大工の矢野さんが天井に穴をあける作業をスタートしてくれました。今回はの片岡社長が工夫をして、ホルソーという道具を使っての穴あけ作業となっています。
ホルソーとは天井の石膏ボードにダウンライト用の丸穴をあける道具です。写真にみえる透明な集塵カップ(別名ダストカバー)を取り付けることが可能で、石膏ボードを切断した際に発生する埃が大きく散らないので、養生の手間がかなり省けることがメリットとなります。また、鋭利なカッターで丸く抜くので、内部を確認した後、蓋をして戻すときに、比較的きれいに、かつ簡単に復旧することができるです。

これまでは、カッターやマルチツールと呼ばれる電動カッターを使って正方形にボードをカットしてきましたが、養生などに掛かる時間を含めると、約3分の1の時間で穴をあけることができることが判りました。

丸穴が空いて、内部を覗ける状態の写真です。こちらでは、配管が2本通っていたので、配管の養生材を一部剥がして、菅の種類を確認いたしました。確認後は養生材を戻してテープでしっかり張っておきました。丸穴のカット面がきれいに仕上がっている分、蓋を戻すのも楽になるのです。

今回は220φの穴をあけることができるホルソーを使ってくれたので、ちょうど僕、各務の頭が差し込めるのです。さらには差し込んだ隙間から、携帯電話も入れることができるので、携帯の照明で中を確認しつつ、フラッシュを使って写真を撮影したり、動画を撮ることができました。

こちらはPSと図面に表記されていた箇所の横壁に穴をあけて下を覗き込んだ写真です。薄い灰色のトミジ管と呼ばれる耐火二層管(排水管)と濃い灰色の排水管、青い給水管とオレンジの給湯管が通っていることが判りました。

天井裏に空けた穴から覗きこんだこちらの写真では、理由は分かりませんがスパイラルダクトが途中で切断されている様子が見えました。

キッチン裏のPSの内部を覗き込みながら、竪管の位置を片岡さんが実測してくれています。

竣工時の設備図のコピーを竹田さんが用意してくれており、穴から見える管やダクトの整合性を確認していきます。穴あけ作業のスピードが速かったので、最終的には12か所に穴をあけて内部を確認することができました。

穴から覗き込んで撮影しているだけだと、後で何が何だか分からなくなってしまうので、担当スタッフの竹田さが用意してくれた設備図に書き込んでいきます。

ユニットバスの袖壁の下部に空けた穴からは…、

オーダーユニットバスの防水パンが確認でき、その下に携帯電話を差し込んで浴室からの排水ルートのおおよそを確認することもできました。

こちらの図面で排水管のルートが分からなかったか所は、そこから床スラブを貫通して、下階の天井裏を通って排水管が横引きされているようでした。

念のために、駐車場になっている下階の天井裏の点検口を開けてみたところ、床スラブを貫通して、トミジ管が配管されいていることが確認できました。

最後のこちらの写真は丸穴を二して補修した様子です。イーニッサンと呼ばれる30mm×40mmの角材とビスを使うと、穴の復旧もとても速いのです。
今回の部分解体設備調査ですが、お客さまには半日分の作業費として5万円+消費税で5.5万円をお願いいたします。

素材サンプル×CGシミュレーションを使ってのキッチンデザイン打合せ

[松濤D邸]

3度目のリフォームでキッチンと浴室を作り直すことになった松濤D邸。これまで壁と扉でとじられていたクローズド型だったものから壁の一部と扉を取り去って、セミオープンにする方針が決まっています。セミオープンになれば、シックで落ち着いた雰囲気のリビングダイニングと色味だけでなく使われている素材の質も合わせる必要があります。

まずはオーダーキッチンをお願いすることになったリネアタラーラの弊社担当の牧野さんとリフォーム工事をお願いしているリフォームキューの森井さんに松濤に来てもらいました。

今回の工事では暮らしながらリフォームをご希望なさっているので、キッチンを解体してから新しいキッチンを設置するまでの期間を縮める方法を考える必要があります。
通常のリフォームでは、既存のキッチンを解体して、新たに作る壁位置や給排水や排気ダクトの位置をチェックしてから最終寸法を確定して、そこからキッチンキャビネットを作り始めるという流れになります。工場でキッチンキャビネットを作るのに最低でも2か月は掛かるので、この流れだとキッチンを使えない期間が最低でも2か月半になってしまいます。
まだキッチンのレイアウトも正式に決まっていない中ですが、少しでもその期間を短くする戦略を一緒に考えて貰いました。ピッタリ寸法で作ろうとすると、どうしても解体現調を待ってからしかキャビネット製作を始められません。どこかに寸法調整のフィラーを入れるか、寸法的に曖昧なバッファーゾーンを作る必要があります。

色々な選択肢が考えられましたが、洗濯機コーナーをうまく使えそうだとのことになりました。工事期間中は、洗濯機を(スペースに余裕がある)来客用トイレに仮置きして、洗濯機コーナーを第二期工事にするという戦略です。
因みに、まだこの段階では、洗濯機をこれまでと同様に国産の洗濯機として洗濯室に入れるか(上図の案④)、ドイツ製のビルトイン型にしてキッチンに組み込むか(案⑤)が決まっていませんでした。

洗濯機コーナーの違いが視覚的に分かるようにCGを作ってご説明させて貰いました。上が扉で仕切ってその奥に洗濯室を置くタイプで、これであれば国産の大型洗濯乾燥機を入れることができます。下の2つの案がミーレの洗濯機と乾燥機を竪積みにしてキッチンとフラットにビルトインする案です。ビルトインの食洗器はキッチンキャビネットの扉と同じ面材を貼ることが可能ですが、ビルトインの洗濯機は白の一択となってしまいます。シックな色のキッチン横に並ぶと、そこだけ白抜けしてしまうので、下の案では、その奥のキャビネットを薄いグレー色としてユーティリティーコーナーっぽく見せる案です。

これまでは左の図のようにPDFにキッチン図を描き込んだもので検討してきましたが、もう少し厳密な図面が必要になるので、マンション竣工時の青焼き図面からより詳細なCADへと移行しています。
戦略のするにしても、どこを基準にして、どのように寸法を決めるかが重要なのです。

事前に部分的に解体して確認しなくてはいけない個所を特定するために、ダイニング側とキッチンを行ったり来たりしながら打ち合わせをさせて頂きました。ある程度のメドが付いたので、森井さんは抜きで奥さまと牧野さんと前田君と僕、各務の4人でキッチンの仕上げ材の候補決定のために、世田谷区用賀のリネアタラーラのショールームに向かいました。

リビングダイニングで使われている素材が黒いトレーの中に入っているもので、これまでの打合せでお見せしてきたCGも並べながら、どのようなイメージになさりたいかを伺わせて頂きました。

まずはコンロ前のバックガード壁に張るセラミックタイルの候補からスタートしました。これまで幾度か試しに作ってきたCGでもこの部分が白系大理石柄のセラミックタイルとしていたので、どのような柄や色味がお好みかを大判サンプルをお見せしながら検討していきました。
因みにコンロ側のカウンター材はご主人さまが画像でお見せしてくださった濃い灰色の様岩石のバサルトのイメージで進めています。

セラミックタイルの候補が幾つかに絞れてきたところで、キャビネットの扉の色味へと移ります。リネアタラーラで用意してくれいるベージュからグレー、ブラウンから濃紺までの塗装サンプルを選び出して、仮決めしたセラミックタイルとの色味を見比べながら、こちらも候補を絞ってゆきます。

弊社事務所にもそれなりのセラミックや塗装サンプルはありますが、やはりオーダーキッチン専門ブランドのリネアタラーラはサンプルの種類が豊富にありますね。

30分ほどの時間で候補を絞ってきたところで、実際のキッチンカウンターの上に候補の素材を並べてみた様子です。

サンプル材を使って色味を選ぶ際は、基本は自然光が差し込む窓辺で選ぶ作業をするのが基本ですが、実際に使われる光環境に似た場所で確認することも必要なのです。こちらの松濤D邸のキッチンは、自然光は横から差し込んできますが、リビングダイニングと同様少し暗めの照明で落ち付いた雰囲気の中で使うキッチンなので、それと似た光環境の場所に移動して、色味を再確認しているのです。
色味についてはあまりに長時間かけて打合せをすると、お客さまも何が何だか分からなくなってしまいことが多いので、カガミ建築計画ではある程度直感が生きている最初の10~15分の間に仮決めして、そこから候補を絞ってゆくようにお願いしています。また、N家の場合、今回はお仕事の都合でご同席してもらえなかったご主人さまもデザインが大好きな方なので、ここで絞った候補を落とし込んだCGを用意してそれで最終的に決めるというプロセスとしています。

キッチンのレイアウト、スペース上から共にビルトインの電子レンジとオーブンを縦に並べることになっており、その使い勝手と高さを決めて頂くために採用するのと同じサイズのオーブンを見て頂きました。扉を開けた状態で中のトレイを出し入れして、設置高さを確定させてもらいました。

その後10日ほどで担当スタッフの前田君が用意してくれたCGが以下のものです。

上がカウンター材のバサルトの色味、そしてバックガード壁のスタトゥアーリオ柄の少し青味を帯びた色に合わせた濃い目のグレーの扉の案で、下はもう少し柔らかく、リビングダイニングの色味に寄せてみた案です。

キッチンの色味のCG作業の最中に、N家のご主人さまからダイニングとキッチンの開口を、当初はアーチ型にしたいと思っていたが、より直線的で開口部が大きくなる四角い案も考えて貰えないかとのリクエストがあったので、キッチン内部からリビングダイニング側を見た比較CGと…、

ダイニングからキッチンを見返すとどう見えるのかの比較CGを作ってみました。
カガミ建築計画ではこういったCGは、作ったものをそのままメールで送ってお客さまに判断を一任するのではなく、対面での打合せ時にお見せして色々な面から検討して最終決定していきます。
ご夫婦のこだわりや感性を丁寧にすり合わせながら、キッチンが少しずつ「N家のキッチン」として形になっていく過程を大事にしたいと考えています。

家具選びと模型づくりから見る、300㎡リノベーションの裏側

[渋谷区L邸]

大型マンションリノベーションの渋谷区L邸ですが、色々なことが重なって、当初はメゾネット上階の寝室と水回りだけ(約50平米程度)のご依頼から、上階全てと下階も70%程リフォームすることになったので、約300平米と当初の6倍ほどの規模に膨らむこととなりました。また、一旦完成していた上階も新しく生まれてくるお子さまのことを考えて設計し直しとなっております。

お打合せと設計を地道に進めながら、設計協力をして貰っているハクの後藤さんと関さんに模型作業も進めて貰い、まずは上階の模型が完成しました。

Lさまご夫妻もとても興奮しながら模型を見てくださいましたが、設計と施工をお願いしている三井デザインテック(三井DT)の蛭川さんと風間さんもかなり嬉しそうな顔をしていますね!

手前が主寝室で、奥がウォークインクローゼット(WIC)となっています。以前の間取りでは主寝室とWICが廊下で隔てられていたのが、今回のニュープランでは、直接引き戸で行き来できるようになったこと、奥さまが何よりとても喜んでくださいました。

下階はリビングダイニングキッチンだけで150平米ほどある大型空間となります。リビングのソファはこれまで使ってきたコネリーミノッティ)を再利用することで決まっていますが、ダイニングテーブルセット等の家具探しも同時に行っています。

以前作ったCGにも仮で入れ置いたモルテーニのAVボードのリビングボックスを見て頂いたところ、是非これを入れたいと言ってくださいました。ダイニングテーブルは天然石の天板のなるべく大きなものをとのことで、モルテーニとポリフォームを同時進行で検討していったところ、モルテーニのオールドフォードは天板と足が分割できないのに対して、ポリフォームのカーブは分割可能で、エレベータには入らないが、階段を使えばお部屋への搬入ができることが判り、こちらに軍配が上がりました。

軍配が上がったポリフォームのカーブは現品展示が無いとのこと、仕上材を借りてきて大理石天板と木製の脚、更に木部に巻くレザーの色も決定となりました。

ダイニングチェアについては、以前より奥さまがお好きだったフレックスフォルムの木とレザーとコードを組み合わせたクロノを推薦させて頂きました。ショールームには現品はなく、同じ作りのラウンジチェアしか展示されていませんでしたが…、

ラウンジチェアを見ながら、ダイニングチェアの仕様を決めてゆくことができました。

リビングのテレビ横と、階段の踊り場にご提案していた、照明器具のノクタンブルフロス)がB&Bイタリアの新しいショールームに展示されていたので、それもお二人にご確認して頂くことができました。

地階のマクサルトに展示されていたカラトスのハイチェアもお勧めしたところ、実際に座ってみてとても良いとのことで、採用になりそうです。三井DTの武智さんがキッチンカウンターの高さを当てて、使い勝手を見て頂いている様子です。

納期的に早めに決めて発注しなくてはいけないB&Bイタリアの屋外家具のカナスタについては、ショールームに実物展示が無かったので、こちらで張地の候補を持参して、ご自宅でお打合せをして決定して頂きました。

下階については、これまで調査もしていなかったので、大工さんと設備屋さんと電気屋さんに来てもらって、上階の時と同じような部分解体調査をさせて頂きました。

イートインキッチンから書斎へ続く廊下への扉を引き込み扉にできるかどうかを確認するために、窓下カウンターの中に構造体が隠れていないかを調査するための穴です。

こちらはプライベート廊下に当らに設ける手洗いカウンターの排水を、床下にうまく通すことができるかを確認するために、収納内部に空けた調査用の穴です。

廊下に空けた穴からは、携帯電話を差し込んで、動画をとりながら排水管ルートが取れるかを確認したところ、廊下の床下の他の設備配管類をやり直せば、排水管を通すルートが確保できることが判りました。

また、壁裏にも点検口を開けて、PS(パイプスペース)の内部を確認して、もう少しPSを縮めることができることも確認しました(PSについては共用部PSと専有部PSがあり、こちらのPSは専有部PSで動かすことができるPSです)。

お客さまとの打合せの合間には、設計協力をしてくれているハクの後藤さんと関さん、そして設計施工で受けてくれている三井DTの面々、更には大工造作や家具造作の下請けで入ってくれている関係者が全員揃っての図面読み合わせも2度ほどさせて貰いました。

以前のオーナーがアルクリネアのオーダーで作ったキッチンは、Lさまは使い勝手に不満はあるとのことでしたが、時間的なこともあるので、そのまま使うことになっていますが、僕らが良くお世話になっている整理収納アドバイザー、Tidyupの片岡さんに入って貰って、作り直すことになったパントリーも含めて収納計画をやり直すこととなりました。

そうこうしているうちに、ハクさんにお願いしていた下階の模型も出来上がってきました。

奥さまが模型を眺めている横で、蛭川さんにだっこされた愛犬のMちゃんも嬉しそうにしています!

リビングソファのミノッティのコネリー、ダイニングテーブルのカーブとダイニングチェアのクロノまできちんと作られているのです。

そしてなんと、右にある上階模型と、左にある下階模型は…、

中央の階段部分を介して、上下にドッキングできる作りになっているのです。これにはLさまご夫妻も手を叩いて喜んでくださいました!

上階の見積りはタイミング的に作り直すことができましたが、下階はまだ見積もりが纏まっていませんが、全体の工程を考えると、下階にお住まいだったLさまご夫妻も、そろそろこちらを引き払った仮住まいに写って頂き、解体工事をスタートさせることとなりました。そこで解体前に皆で集まっての記念撮影をさせて頂きました。左から、三井DTの蛭川さん、三井のプランナーの風間さん、各務、Lさまごご夫妻、三井DTの武智さんです。ハクの後藤さんと関さんは都合がつかずこの日の打ち合わせに参加していませんでした。

解体する前に、お手持ちだったチェコッティのテーブルやフレックスフォルムとマクサルトのイスは中古で下取りしてもらうことになり、僕らが良くお世話になっているインテリアバイヤーの村上さんに現地に見積りに来てもらいました。下取り価格が100万円を超えたことをLさまにお伝えしたところ、以前にイタリアハイブランド家具を売った際には数万円にしかならなかったとのことで、喜んで頂けました。因みにインテリアバイヤーの村上さんはB&Bイタリアから独立した方で、欧州の高級家具にかなり詳しく、下取りしたものを五反田のご自身のショップ、バックツーザファーニチャーで販売しているので、かなり良い価格を出してくれるのです。