Author Archives: Kenji Kagami

設計業界では亜流であったリフォーム・リノベーションに、十数年前から真剣に取り組んできた設計事務所、カガミ建築計画の各務謙司(カガミケンジ)です。 学生時に初めて設計したプロジェクトがリフォーム、ニューヨークでの建築修行時も高級マンションリフォームに特化した設計事務所勤務、帰国してからもリフォームの仕事が圧倒的に多く、リノベーションに特化したカガミ・デザインリフォームのブランドを立ち上げ、上質リフォームの普及に尽力してきました。

現地内覧とCG提案で進める、濃密なゲストハウス住戸Bの設計

[城南R邸]

新築マンションの2住戸同時リノベーションの城南R邸の、ゲストハウス用庭付きの1階住戸Bの設計も着実に進んできました。ご自宅用のペントハウス住戸Aは、LDKと寝室を中心とした部分リフォームですが、住戸Bは全面スケルトンでのリノベーションです。

一番上が既存平面図です。180平米の広さに対して3LDKの間取りとなっていました。Rさまと僕らでまず考えた案がリノベA案です。Rさまと僕らで最初に検討したのがリノベA案です。玄関(赤い三角印)から入り、直角に左へ曲がる廊下の位置を変更し、LDKを広げるプランです。図中の青い四角と緑の四角は、マンション共用部に当たるPS(パイプスペース)です。それらの位置を見比べると、各案の違いがより分かりやすいと思います

A案の大きなイートインキッチン案をRさまご夫妻はとても気に入ってくださいましたが、リビングは大きなソファを1セット置くと、テレビを置く場所もなく、家族でマンション内別荘的に使ったり、お客さまを呼んでの食事会などを考えると、食後の楽しみが想像しにくいとのことでした。そこで、LDK横の個室を縮めてダイニングキッチンを左側に広げて、その分リビングを広げるリノベB案を考えてみたところ、是非この方針で進めたいとのことになりました。

こちらが担当の前田君が作ってくれたリビングを広げた案のイメージCGです。まだ、先ほどのA案とB案がミックスしたプランになっていますが、リビングに大型ソファを置くとテレビを置くスペースがどうしても取れないので、窓際にスクリーンを落としてプロジェクターで画像を映す計画となっています。キッチンについては、大型アイランドキッチンと壁面収納、そしてイートインカウンターを設けるレイアウトは、ハイブランドキッチンツアー-1でご一緒に訪問し、とても気にいっていらしたモルテーニのキッチンとプランが重なるので、モルテーニキッチン仕様として設計をしてCGにも落とし込んでいます。

そうこうしているうちにこちらのお宅も工事が終わり施主検査となり、そのタイミングで工事をお願いするリフォームキューさんと一緒にお邪魔させて頂きました。

因みにこちらが事前に前田君が図面と仕上げ材のサンプルイメージから事前に作ってくれていた竣工時(つまりリノベーション前)CGです。細かく見比べると、コンセントやカーテンボックスなどが違っていますが、お客さまもこのCGと現地を見比べながら、前田君のCGの再現力に驚いていらっしゃいました。

そして、この日の為にビフォーアフターのCGを用意していたので、Rさまの携帯で見比べながら、この新築マンションがどのように変わってゆく予定かを見比べて頂きました。

Rさまの携帯のアップの写真です。この、いかにも“新築らしい”(失礼!)単調な空間が、ここまで濃密な空間にリノベーションで生まれ変わるのかと、Rさまも“本当にこうなるの?”と半信半疑ながら、目を輝かせて興奮されているご様子でした

ほぼ同じアングルで竣工時写真とCGを見比べた比較イメージです。このCGイメージをご夫妻で確認して頂いた際に、ここまでフィットするのであれば、ゲストハウス住戸のキッチンはモルテーニで決定にしましょうとのご判断も頂きました。

キッチン側からリビングを見返したアングルの比較イメージです。

奥の個室が2つ連なったエリアは、ご家族で使えるトレーニングジムになさりたいとのことで、テクノジムの小山さんに現地に来てもらい、簡単に機器の説明をして貰いつつ、どのサイズの機器であれば搬入設置が可能かも現地確認して頂きました。

こちらが2室の間の間仕切り壁を抜いて、一体化させた部屋にテクノジムのトレーニング機器(まだ機器の選定はしていないので、適当に選んだだけです)を並べてみたイメージCGです。
モルテーニキッチンを入れてみたダイニングキッチンも喜んでくださいましたが、このトレーニングルームのCGは、奥さまも息子さんも歓声を上げて喜んでくださいました!

CGでリノベーション後のイメージのお話をしている間も、リフォームキューの営業&設計の坂本さん、設備の槻川原さんたちは、エアコンの品番は点検口からの覗ける壁裏や天井裏を調べてくれています。

この日の現地確認&調査の最後に、ご家族と一緒に取らせて頂いた記念写真です。

そしてその1か月後のお引き渡しのタイミングで、部分解体調査に入らせて頂きました。

現場監督の綿貫さんと坂本さんが床にしっかり養生をしつつ、外壁側のPS(パイプスペース)壁に開口を空けて中を覗けるようにしてくれました。

こちらのPSには天井カセット式エアコンの冷媒管とドレイン管のみが入っていたので、PSとはいえ専有部の設備配管のみのPSなので、共用部ではなく専有部と判断できるため、PSのサイズを縮小できそうです。

もう一か所、既存のキッチンと奥の個室の間にかなりのサイズのPSがあったので、そちらも内部を見させてもらったところ、給湯器への給水(水色の管)と電気配線(灰色の線)、給湯機からのお湯(赤い管)と床暖や追い炊き用のペアチューブ(緑のチューブ)、そしてキッチンの排水管がありました。

同じPSの上部には、既存キッチンの排気ダクトが通っていました。天井裏に隠れていた梁型を避けるためにここで折れ曲がっていました。ただ、ちょうど中間の部分は見事にスペースが開いていることが分かったので、カウンター下と吊り戸形状の梁型を作れば、キッチンカウンター部分を広げることができそうです。

もう一つの嬉しいニュースは、当初LDKと洋室のクローゼット間の壁に図面で示されていたマンション共用部にあたる竪管がなくなっていたことです!マンションデベに確認したところ、設計途中でこの竪管を他の箇所に合流できることがゼネコンの設備設計で分かったのでそのようにしたとの回答がありました。これにより、キッチンレイアウトの自由度が一気に広がることが分かりました。
こちらの図面が調査に同席してもらったモルテーニ側とも調整しながら天井裏のダクトルート(排気経路)とても気にっていらしたを検討中の図面です。これまでにカガミ建築計画で設計したキッチンでも最大級サイズのキッチンになりそうです!

キッチン内窓・玄関ホール天井・乾太くんの排気ダクトの工夫@大田区S邸

[大田区S邸]

ヴィンテージリフォームの大田区S邸の工事が進んでおります。

玄関から廊下の空間は天井が決まり、空間を分節化する枠とニッチの縁取りのケーシングが入ってきました。

玄関ホールの天井は以前よりかなり上がって、モールディングも取り付けられて堂々とした空間になってきました。

リビングはそれほど変わっていませんが、キッチンとダイニングは天井が張られて、床と壁が組みあがってきています。

キッチン奥のこの窓回りは、ちょうどシンクカウンターの近くに来るので、どのように処理すべきかSさまの奥さまともかなり悩んだ部分です。

以上のことを考えて、既存の窓の手前に壁とフラットになるガラス窓を取り付けることになりました。手前のガラス窓に乳白のフィルムを貼って明り取りにする計画です。

内窓を開閉しないのであれば簡単なのですが、開閉が可能で、かつ壁とフラットに窓をおさめるために、家具扉にエアヒンジを仕込んで使う計画として、その枠造作を大工の斉藤さんに作って貰っています。

リビングは折り上げ天井の間接照明のアゴ部分のモールディングの取り付け中でした。

こちらは主寝室の様子です。壁付けクローゼットを新たに設けて、そのクロゼット部分の天井裏に、新しく設けたランドリールームからガス乾燥機の乾太くんの排気を接続する計画になっています。

ちょっと判り難いですが、木軸の壁を作っているちょうど背面に乾太くんが設置され、そこから天井裏に新しくコア抜きした穴を貫通してシルバーに防護された排気ダクトが主寝室の天井裏に通っています。

最終的には窓の一つをつぶして、そこから排気ダクトを外部に接続するという特殊な形で乾太くんを実現しました。因みにこの窓は隣接住戸等から見えない場所に面した窓で、この窓をつぶすこともリフォーム工事の申請の際にマンション管理組合に相談してOKを貰ったうえでの計画となっています。

壁付けクローゼットの為の下がり壁が組まれた状態です。すっかり排気ダクトは隠れて、その存在すら分からなくなっていますね。

その他、クローゼット室のハンガーバーの設置や、

リビングの照明スイッチの為の設えの準備などが進んでいます。

墨出しから始まる精度の高いリノベーション工事_横浜H邸

[ザ・ライブラリー]

ザ・ライブラリーのプロジェクトの紹介ブログです。
横浜H邸プロジェクトは、無事お客さまとの工事契約も締結し、工事着工が見えてきました。ここまで約1年間のお打合せが続きましたが、いよいよ工事を進める段階へとシフトしました。

本体工事の契約の前に、既に別契約で解体工事を終わらせている現場で、墨出しの確認を致しました。「墨出し」とは建築用語ですが、真っ新な土地に建てる新築住宅であれば、設計図面に基づいて壁を立てる位置を現場に墨(またはレーザー)で記していく作業を意味しますが、既存躯体があるマンションでは、既存の壁や柱位置と、解体前に設計していた図面の整合性をとる作業を指すので、少々考え方が違っています。
作業は各務と田口と担当の岸本、そして現場監督の栗原の4人で行いました。

まずはこちらが設計側で用意した墨出し用の平面資料です。ここに書いてあるのは、基準となる線がどこで考えているのか、そこからどれだけの寸法が必要かという考えを示した図面です。

こちらは最初の図面の補足資料となりますが、基準となる線がコンクリートの躯体からどのように求められているかを示しています。仕上げとなる石膏ボードとその下地のLGS(軽量鉄骨)を躯体に対してどのように立てて、どの寸法のものを使うかの考えを書いた図面で、こちらについては、事前に田口と栗原とすり合わせをしております。

事前に現場に入ってくれていた栗原が部屋の中央に取ったX軸とY軸の基準墨の交点にレーザー墨出し機を据えて、そこから基準線の位置を出していきます。
実はマンションの躯体でも直角(建築用語ではカネ)がずれていたり、壁と壁が並行ではなかったり、床が水平(建築用語ではロク)では無かったり、床から壁や柱が垂直(建築用語ではタチ)になっていなかったりするので、まずは部屋の中央に基準墨を出して、そこから墨出しをしてゆくのです。

レーザー墨出し機はこのようなもので、緑色の小型ロボットのようなものが本体となり、手前の黒い機器が受光機となります。3本脚で経っている墨出し機の下部に小さな赤い光が見えるでしょうか?これを基準墨の交点にピタリと合わせて、手前に見ている緑色のレーザー光を基準墨に合わせると、それに直行したレーザー光が出る仕組みとなっています。以前は、本体をレベル(水平)に据えるのも水泡を使った水準器を使って目視で調整していましたが、今はオートレベラーと言って、機械に内蔵された電子気泡管センサーで水平を自動に調整してくれるスグレ物なのです。
まだ、マンションリノベーション設計に特化する前、戸建て住宅も設計していた頃(20年近く前です…)は、差し金(大きな直角定規)や3:4:5の寸法で木の棒で組んだ大きな直角三角形定規、脚立に登った人がおもり付きの下げ振りを使って、2人掛かりで墨出しをしていたことをよく覚えていますが、今はそれに比べる本当に正確に、スピーディーにかつ楽になりました。

レーザー基準機に加えて、田口が持っているレーザー測量器(レーザー光線で距離を測る機器)も小型化して、安価になってきたので、こちらも使えば長い距離も巻き尺で2人掛かりで測っていたものが1人であっという間に測れて、便利になりました。

自然光が入りにくい位場所の方が実はレーザー基準機は使いやすいのですが、奥まった個所の浴室を設置する箇所の壁の直角度合い(タチ)を確認している様子です。床にレーザーの十文字が照射されているだけでなく、壁にも天井にも照射されているのが良く分かりますね。

隣接住戸との耐火二重壁になっている間仕切壁と躯体に対して断熱材(薄緑色のモワモワした部分)が吹かれた手前にLGSが立てられている箇所では、どちらを基準に考えるかによって内寸が変わってくるので、方針を相談しています。

このように実測しながら、相談しながら測った寸法を図面に描き込みながら、これから工事を進めてゆくうえで何が問題になるのかを打ち合わせをしていきます。

以下、この先はザ・ライブラリーブログをご覧ください。