浴室とキッチンを中心とした3回目のリフォームとなる松濤D邸では、なるべく長くご家族がご自宅で暮らしながら、リフォーム工事期間を最小限にするべく、工程の調整をDさまご夫妻と工事会社のリフォームキューと相談してまいりました。
- ご自宅には浴室が一つしかありませんが、主寝室の奥にシャワーがあるため、浴室がなくても生活は可能です。
- キッチンが使えないと生活は大変ですが、「夜帰って寝るだけ」と考えれば何とかなる。
- ただし、キッチン奥にある洗濯機が使えないと住み続けることは難しい、というのがDさまのご要望でした。
以上を踏まえ、①浴室は先行して解体する(新しいオーダーユニットバスの製作開始に必要なため)、②キッチンはできるだけギリギリまで残しつつ、周囲を事前に解体して不明点をつぶしておく、③トイレが2つあるため、洗濯機を来客用トイレの便器を外した場所に仮設移設して使用を継続する、という方針を立てて工事を進めることとなりました。
そして解体したところ、「1つの驚き」と「2つの想定外」がありました。

1つの驚きがこのきれいなタイル張りの壁です!
既存のユニットバスを解体した裏から、以前の緑色のカラフルなモザイクタイルで作られた在来工法の浴室壁が現れたのです。

ほぼ同じアングルで撮影した、以前のユニットバスと解体後の様子のビフォーアフター(というより、ビフォーとアンダーデモリッション?)の比較写真です。ほぼ無彩色のグレーの浴室の裏から、こんなにも色鮮やかなタイル壁が現れるとは驚きでした。

この状態で東京バススタイルの眞柄さんに来てもらってレーザーを使って測量して貰ったのですが、先回の事前調査で測った寸法と合わないと首をかしげているのです…。

事前調査時には、天井点検口から測量した寸法で「90%程度の確率で間違いがないハズ」だとお客さまにはお伝えしていましたが、どうやらまさかの残りの10%側が起こってしまったようです。それが1つ目の想定外です。
眞柄さんと弊社の前田君が、事前調査時の寸法と今回の実測値を照らし合わせる中で、誤差が生じた原因を突き止めることができました。

このスケッチ図で、赤い線が元の浴室のサイズ、その内側に黒い線が既存のユニットバスです。元のユニットバスの天井点検口から眞柄さんが頭を出して測量をしてくれたのですが、赤い矢印の寸法を測ったことで、「新しい浴室はもっと大きくすることができる」と判断してしまったのです。しかし実際には、スケッチ図に注意書きしているように、その部分はニッチのように膨らんだ個所で、天井裏のダクト類が視界を遮っていたために気づけなかったのです。

Dさまには「新しい浴室は既存より大きくできそう」とお伝えして喜んでいただいていたので、僕らも焦りました。

そこでリフォームキューの森井さんも交えて検討した結果、浴室サイズを拡張できる2つの方法を見つけることができました。
一つは浴室扉の位置を洗面側に寄せること、もう一つはカラフルなモザイクタイルを斫る(はつる)ことです。洗面カウンターと浴室の間には通路があるため、追加の費用はかかりますが、洗面室への影響を最小限に抑えながら浴室を拡大できます。また、タイルを斫る場合はさらに費用がかかりますが、そこまで行えば先回ご説明した大型浴室が実現可能となるのです。

その結果を前田君が分かりやすい資料に纏めてくれました。③と④の案は、お客さまと一緒に選んでいた浴槽をサイズダウンする案となってしまうので、最初から×印。案①と案②の違いは浴槽に入った時の頭側と足側の部分にタイルで平場(ヒラバ)を作るかどうかです。

平場があるのが上段、ないのが下段。今回は浴槽の頭側にヘッドレストを付けるため、平場がある方がゆったりできます。ただし、そのためには壁のモザイクタイルを斫る必要があるのです。急ぎで両案の費用を算出し、Dさまご夫妻には費用感をもとに最終決定をお願いしました。
3日後に見積が届きました。
①既存モザイクタイルを撤去し、浴室サイズを1770×2080mm(最大)とする場合:諸経費・税込で約80万円増、工期5日延長。
②既存モザイクタイルを残し、浴室サイズを1730×2080mm(頭側に平場少しあり)とする場合:約30万円増、工期延長なし。

次の想定外は床レベルでした。浴室奥に、浴室とは関係ない排水管が通っていたのです。実はこれは浴室裏のトイレ排水管で、以前のリノベ会社がトイレ汚水を浴室内を経由して流すルートにしていたことが判明しました。
浴室を最大サイズにすると、この排水管上に防水パンを設ける必要があり、洗面室から浴室への床が47mm上がることになります。以前はサイズを小さくしてこの配管を避けていたのです。

断面詳細スケッチを見ると、左が洗面室、右が浴室。以前は25mmの沓摺(くつずり)高さが、今回は72mmになり、その差が47mmとなります。
前田君の資料を使った丁寧な説明で、Dさまご一家も理解くださり、最終的には①案の最大サイズ浴室を選択。床高上昇と追加費用、工期延長をご了承いただきました。

キッチンについては、キッチン内の梁型部分の中に、空調のドレイン管が入っているハズで、そのレベルと位置を確認することでした。キッチンをしっかり養生したうえで…、

点検口を開けてみましたが、その点検口からは内部が見えなかったので、追加で点検口を横に空けてみたところ、

RC梁下にあるドレイン管の位置と高さ(レベル)を確認することができした。
その結果、ドレイン管の勾配を延ばして別の位置に排水を落とせることがわかり、キッチンのサイズを少し大きくすることが可能になりました。
いつもお客さまには、現場も既存図面を見ない状態で作るリノベーション案は実現可能性70~75%、現場チェックと既存図面を踏まえた段階で80~85%、部分解体まで行ってようやく90~95%、それでも完全解体するまでは100%は無いとお伝えしています。
今回は、お客さまが費用の追加と工期の延長を快く承諾してくださったことで、無事に乗り越えることができました。
そしてやはり、どんな現場でも解体までは少しドキドキが続くのです。