Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

ヴィンテージマンションの給水・ガス管引直し問題について

高輪I邸

工事進行中の高輪I邸のマンションは、築37年で給水・給湯・排水・ガス管全てが、下の階の天井懐内を通るシステムとなっています。管理組合へのリフォーム工事申請の際に、理事長じきじきに、できれば排水以外の設備配管は、階段踊り場にあるメーターから先は共用廊下の天井裏経由で、専有部の天井裏で配管し直してほしいとの依頼がありました。

廊下の照明機器を外し、天井裏の寸法を測量し、スリーブの位置を確認したうえで、現在の天井の高さでは、梁下に配管を通す十分な寸法がないことを管理組合に報告したところ、問題点がどんなところにあるのかの資料を作って欲しいとの依頼があって作成した検討資料です。

スラブ下配管(下階天井懐内配管)の問題点は以下のような事だそうです。

  • 老朽化が進むにつれ、どこかの階の配管から水漏れが発生すること
  • スラブ下は専有部と考えにくく、共用部となることが多く、水漏れの保障は管理組合が保険でカバーすることになるが、水漏れが数多く発生すると、保険料が上がってしまうこと
  • 保険でカバーされるとはいえ、上下階での問題が発生しやすいこと
  • かといって、設備を引き直すことになっても、共用部も含めた大規模なリフォームになってしまい、その費用負担をどう考えれば良いかが難しいこと
  • 設備の引き直しについては、住人の賛同を集めるのが難しいく、特に事前にリフォームをしている住人に賛同して貰うのは特に難しいこと
  • 専有部内でも水回りのリフォームが必要になるが、宅内工事をしない住人が発生してしまうこと等

既に、毎年水漏れが発生し、管理組合からの出費も嵩み、この問題を放置しておくことができないとのことでの相談でした。リフォーム工事が先行しているI邸以外の部屋も、近い将来に給水・給湯とガスは専有部天井裏で配管できるシステムへと変更したいそうで、管理組合の理事とマンションを建設した不動産会社も同席しての打合せに参加して欲しいとの要望がありました。

特殊な形状である5階、6階は別として、当該階である4階の給水とガスを天井裏で引き直すことができれば、順次下の階へと工事を進めれば、理論的には天井裏の給水とガスをその専有部で使えることになるとの説明でした。打ち合わせの結果、既存天井の位置では梁下を配管するスペースがないことや、各専有部へと引き込む位置も一般化しにくいことから、玄関扉の開閉に差しさわりがない位置まで、廊下の天井全体を落す方向で検討して貰うことになりました。
正直、こちらとしては専有部のリフォーム計画の設計として雇われたのであり、なるべくなら共用部の面倒な工事には関わりたくないところでした。ただ、考えてみれば、築30年を超えるマンションであれば、どこでも似たようなことが問題になっているので、この機会を活かして、どのような対応を考えれば、上手く問題を解決することができるか、きちんと関わりながら、勉強してゆきたいと思っております。