Author Archives: Kenji Kagami

設計業界では亜流であったリフォーム・リノベーションに、十数年前から真剣に取り組んできた設計事務所、カガミ建築計画の各務謙司(カガミケンジ)です。 学生時に初めて設計したプロジェクトがリフォーム、ニューヨークでの建築修行時も高級マンションリフォームに特化した設計事務所勤務、帰国してからもリフォームの仕事が圧倒的に多く、リノベーションに特化したカガミ・デザインリフォームのブランドを立ち上げ、上質リフォームの普及に尽力してきました。

イサム・ノグチのアカリ製作工場見学@オゼキ

[見学記]

彫刻家イサム・ノグチの和紙を使った照明器具の「アカリ」を作っているオゼキの岐阜工場を見学してきました。

機械作業は一切なく、全てを手作業で作ってゆくアカリの様子をじっくり拝見させて頂きました。

工場といっても、岐阜市内の株式会社オゼキの自社ビルの3階ワンフロアが工房のようになっているのです。

流れ作業で大量生産するのではなく、一人の職人さんが一つの型に専念して、竹ひご巻きから和紙張りまでの一連の作業を全てをこなしてゆくスタイルとなっています。

イサム・ノグチ氏が存命の頃に作られた、幾つもの木製型があるのですが、それらを修理しながら大事に使ってきているそうです。

基本的には中心に木型を組んでおいて、その周囲に竹ヒゴを巻いて、和紙を張ってゆき、ノリが完全に乾いた状態で、内部の木型をバラして取り除くので、このように木型も組み合わせ式になっており、バラけないようにゴムバンドで結束されています。

最初の竹ヒゴを巻く作業が、実は一番難しいそうで、それぞれの型によって難易度が違うので、最初は簡単な型からスタートして、徐々に難しい型へと移行してゆくそうです。

ちょうど真ん中に竹ひごを糸で結んでいる個所が見えるでしょうか?この継手の個所を小さく目立たないようにすることが非常に難しいそうです。

竹ひごだけでは強度が足りないので、開口部には針金が回されています。その針金に和紙を巻き付けてから、少しずつノリを付けながら和紙を張ってゆきます。

こちらは竹ひごの密度が非常に密なEというタイプのアカリになります。

柔らかめのノリと霧吹きと竹ひごと糸とはさみを交互に使いながら、職人の皆さんが丁寧に作ってゆきますが、一日で作れるアカリは難易度にもよりますが、2つか3つ程度だそうです。

24Nというタイプのアカリの内部を見た様子です。ノリを乾かしながら和紙を張るため、この写真のように一つ置きにしか和紙を張ってゆけないのです。

もうすぐ張り終わるL7タイプの照明です。先ほどは、竹ひごが密な方が難しいと書きましたが、このL7のように竹ひごが極端に少ないもので、形をしっかり出すタイプもやはり難しいとのことでした。

きれいに張り上がって、乾燥されているアカリのシェードたちです。因みに手前にウツボのように並んでいるのはBB3/33Sというタイプのシェードです。

実はオゼキはアカリだけでなく、伝統的な岐阜提灯も作っています。同じフロアの奥では、伝統絵付師の方が、丁寧に一つ一つに顔彩絵具で描いている様子も見学させて頂きました。

オゼキの本社近くにあるアカリのショールームも拝見させて頂きました。

最近はあまり作ることのなくなってしまった古い型のアカリなども並んでおり、とても美しい空間となっていました。以前は良く照明器具として使っていたアカリですが、最近は使うケースが減っていましたが、今回再発見したことも多く、またインテリアの一部として使ってゆきたいとの気持ちを新たにしました。
今回は日米のイサム・ノグチ財団の名誉理事と理事である、ショージ・サダオ伯父に特別にお願いして工場を見学させて頂きました。オゼキの皆さま、お忙しい中での見学、どうもありがとうございました。

 

ペンダント照明ヴァーパンの取付け@横浜O邸

[横浜市O邸]

昨年リノベーション工事が完了してお引渡しをしていた横浜O邸のお客さまから、お子さまが少し大きくなってきて、インテリアを考える余裕が出てきたので、そろそろダイニングとリビングのペンダント照明を相談したいとのご連絡がありました。

シンボリックで印象に残る形のペンダントライトで、ミッドセンチュリー風でも良いとのことで、幾つかの候補をこちらで選ばせて頂きましたが、最終的に決まったのが、このVERPAN(ヴァーパン)という照明器具でした。デンマークのプロダクトデザイナーのバーナー・パントンがデザインした、当時のフューチャーデザインを具現化したユニークな照明です。

当初こちらがご提案したリストの中にはなかったもので、お客さまが候補に挙げてくださった器具です。外皮がアクリルで安っぽく見えないか、サイズが大きすぎないか等、不安点もあったので、ちょうど別件の調査で青山のヤマギワのショールームに行く予定があったので、担当の前田君とヴァーパンのそれぞれの器具を実際に見てきた際の写真で。サイズは多少大きく感じましたが、安っぽさは全く感じなかったので、この照明で進めさせて頂きました。

こちらは、事前にお送りした、ダイニングテーブルとペンダント照明の下部の高さを検討するための資料です。まだ赤ちゃんが小さいので、お二人がキッチンで料理の準備をしている際にリビング側に視線を通すことを優先すべきか、或いはダイニングで食事をする際に、座った姿勢から視線に入る高さにすべきかを比較した図面です。

取付けが普通の引掛けシーリングではダメで、直結しなければならないので、取付け工事をリフォーム工事もお願いしていたリフォームキューの坂本さんに、電気屋の望月さんと一緒に来てもらいました。組立てもなかなか大変で、英語のマニュアルを見ながら、何とか組み上げて貰いました。

設置高さについては、幾度か実験した後で、ダイニングテーブル上から照明の下端を80センチで決めて吊って貰いました。

吊り込みがひと段落したところで、お客さまもOさまと弊社スタッフの前田君がダイニングで照明のもとで歓談している様子です。このアングルだと、外が明るいので、印象が薄く見えますが、実際には結構な存在感で、グッとダイニングスペースよりに空間の重心が寄ってきた気がいたします。

実は、当日はまだ決まっていなかったリビングのペンダント照明も検討したいとのことでしたので、最終候補として残っていたネモのクラウンシリーズの2つのタイプの実物大模型(?)を持って、吊った時にどのように見えるかを検討して頂きました。
この上下二つの写真で比較している時は、大きなサイズのクラウン・メジャーが良いのではとおもっておりましたが…

先のヴァーパンが取りついた後にリビングにクラウン・メジャーを吊ってみると、二つのペンダント照明が争っているように見えてしまうので、小型サイズのクラウン・マイナーで進めることに決まりました。

最後の写真はオマケです。ダークセルベ(大理石)を一面に張った玄関ホールに素敵なアートが吊るされていたので、その様子を撮影させて頂きました。正面は草間弥生さんのリトグラフで、左面はどなたの作品かを聞き忘れてしまいました。アートを飾ることで、より素敵でかつOさまたちらしい空間になってきていること、とても嬉しかったです。

 

 

 

高級大理石のポルトロ張りの柱型

[渋谷区タワーマンションS邸]

ここまでリフォームデザインやインテリア提案のアドバイスをしてきた渋谷区タワーマンションにお住まいのSさまのリビングダイニングの柱型に希少で超高級な大理石のポルトロを張る工事のお手伝いを致しました。

マンションのリフォーム工事自体は、一昨年の10月に完成しておりましが、その後もミノッティのソファーやラグ、フレックスフォルムのラウンジチェア、モルテーニのテレビボード等のインテリア提案のお手伝いもしておりました。

その後のご相談で、テレビボードの背面のクロスの色が濃いので、もう少し薄めの色のクロスに張り替えたり、照明やダイニングテーブルのご相談も承っていた中で、リビングの二つの大きなピクチャーウィンドウの中央にある柱型に大理石を張りたいとのご相談がありました。

こちらの事務所にあった希少で高価な大理石のサンプルを幾つかお見せした中で、超希少で超高価なイタリア産大理石のポルトロを気にってくださり、是非良い柄のポルトロを探して張りたいとのことになりました。ここまでリフォーム工事をお願いしてきた大手リフォーム会社のN社の担当者に相談したところ、相談してから1年ほど経ってから、素晴らしい柄のポルトロのスラブが関ヶ原石材に入ってきたとの情報を貰いました。

そこでお客さまご夫妻とN社の担当者、そして私で岐阜県の関ヶ原石材の倉庫に現物確認に伺ってきました。変形のスラブ材が8枚が並べられた様子を拝見してきました。

ポルトロは柄(模様)の色と入り方が特徴で、金色(黄色)に見える柄が入っているのが、もっと高級とされています。また、黒い部分が漆黒で濁りがないのも重要な条件なのですが、今回のスラブ材はほとんど文句が付けられないほど美しい素材でした。柄の流れは少し斜めになっている個所がありましたが、それもほとんど気にならない素晴らしいスラブ材で、お客さまもとても気に入ってくださいました。N社に施工方法と見積りを作って貰う間に、この大理石が無くなってしまうことは避けたかったので、取り置きをお願いした上で見積りをお願いいたしました。

そこからまた見積りや施工方法の検討、柄合わせのデザインなどをチェックしたうえで、約半年後Sさまご一家が旅行でいなくなるタイミングを見計らって工事に取り掛かることになりました。

こちらが現地に届いたポルトロの大理石です。

超希少な大理石ですので、運搬や取付け中に割れてしまうのを防ぐために、背面にはメッシュネットを張り、更に四方にはスリットを入れて細い鉄筋を埋め込んでもらっています。

また、大理石を壁下地に張りつけてゆくうえで、地震などの揺れで石が落ちてこないように、石の上部にワイヤーを入れて、それを壁下地のベニヤ板に効かせたビスに結び付けるようにして貰っています。

因みに、こちらの写真が関ヶ原大理石に展示してあった、石引アンカーの詳細模型です。

一枚一枚をこのように丁寧に積み上げてゆく作業となります。

こちらが最終的にポルトロが張り上がって、手前にお手持ちのアンティークの棚と装飾品を置いた様子です。

ご帰国後のお客さまに検査を兼て、工務店と一緒に見学に伺った時の様子です。昼は勿論大理石の柄が見えてきれいだけど、夜になると今度は窓外の夜景の波とポルトロの波模様が繋がって、素晴らしいとのお褒めの言葉を頂きました。
一年半掛けてこの大理石張りを検討、施工してくれたN社の皆さまどうもお疲れさまでした。そして一年半も掛かって、ようやく柱の大理石張りが完了したSさまご夫妻、どうもお待たせいたしました!