Author Archives: Kenji Kagami

設計業界では亜流であったリフォーム・リノベーションに、十数年前から真剣に取り組んできた設計事務所、カガミ建築計画の各務謙司(カガミケンジ)です。 学生時に初めて設計したプロジェクトがリフォーム、ニューヨークでの建築修行時も高級マンションリフォームに特化した設計事務所勤務、帰国してからもリフォームの仕事が圧倒的に多く、リノベーションに特化したカガミ・デザインリフォームのブランドを立ち上げ、上質リフォームの普及に尽力してきました。

仕上げ材打合せ@青山I邸

[青山I邸]

現在解体工事がほぼ終わった進んでいる青山I邸プロジェクトでは、仕上げ材料の打ち合せが続いています(通常は解体前に仕上げ材を決めてしまうのが一般的な流れですが、今回はほかの部屋のリフォーム工事などとの兼ね合いで、解体工事が終わった後にしばらく間をおいてからリフォーム工事が始まる段取りとなっています)。

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基本的な仕様で工事見積りがすでにできている段階からのお手伝いなので、新しい素材をご提案する場合には、ベースとなる素材との差額がどのくらいになるかを確認しながら選択することになります。

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キッチンの背面カウンター上、洗面カウンター上、来客用トイレの手洗いカウンター上には、それぞれユニークなモザイクタイルを使いたいとのご希望があったので、リフォーム工事の設計施工を受けているM社と僕らで、幾つかのモザイクタイルのサンプルを持ち寄ってみました。ただ、小さいサンプルで、目地も詰まっていないと張った時の様子が判りにくいので、この日はどのサンプルの大判を用意するかの候補を決めて貰うところまでで打ち合わせは終わってしまいました。

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このショールームにあるキッチンとダイニングを空間的に繋ぐ扉が気に入っていらっしゃるので、どのようなデザインでどのようなサイズで仕上げるかについても、使い勝手を確認しながら打合せいたしました。

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先回の打ち合わせの1週間後に、今度は品川区のご自宅での仕上げ材打合せの様子です。

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建具や家具扉については、基本はオレフィンシート張りとなるので、その色味を決めてゆきました。所々ポイントとなる家具や建具は天然突板で仕上がるので、その突板サンプルも持ってきてもらっています。

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先回の打ち合せで選んで頂いたガラスの背面に金箔をはったモザイクタイルは、目地を詰めて大判のサンプルを作ってもらいました。こちらは来客用のトイレに採用することが決まりました。

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もう一つの大判サンプルは、写真のような玉虫色のガラスタイルです。光の状況によって色味が全く変わって見えるので、またその次の打ち合わせの際にショールームに持ち込ませてもらって、間接照明付きのメディスン・キャビネット下に置いて、色味を確認させて貰いました。
こちらもお施主さまがとても気に入ってくださったので、キッチンと洗面両方でこのタイルを採用することになりました。

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仕上げ材の打合せ4回目で、ほぼすべての素材が揃ったので、すべてをパネルに並べて最終確認をしているところです。確かに、全体として静かできれいな素材イメージですが、少々華やかさに欠けているので、先ほどの2種類のモザイクタイルが華を添えてくれそうです。

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この時点で、まだ決まっていなかったのが、リビングの窓際に作る予定のテレビ&AV用のボード収納の天板でした。幾つかの仕上げイメージ写真をIさんたちに送って貰ったものから、似た素材で日本に在庫がある御影石系のサンプルを集めて貰っています。こちらについては、当日ご出席頂けなかったのご主人さまの意見が特に重要な箇所なので、持ち帰っての宿題となりました。
価格的には、どれでも大きな違いはないので、この内容で最終的な見積りを纏めて貰うこととなりました。

 

 

 

レザー張り扉&パネルの作り方

[六本木N邸]

これまで使ったことのない素材、レザーを使った扉とパネルを六本木N邸の廊下に採用することになりました。最近の僕らがお手伝いするプロジェクトでは、木質系素材(突板、フローリング材、羽目板)と石系素材(大理石、御影石)とガラス系素材(鏡、カラーガラス、透明ガラス)に塗装仕上げを混ぜた4つの素材で空間を構成してきましたが、もう一つ新しい素材を使ってみたいと思っていて候補に挙がってきたのが、このレザー素材です。

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廊下に来客用トイレがあるのですが、その扉を如何に目立たせないか、周囲の壁と馴染ませるかを考えている過程で、横の壁と扉を合わせてレザーバリのパネルで作るアイデアが生まれました。扉を隠せるだけでなく、これまでにない新しい質感を空間に加えることができると思っています。展開図の中央に灰色で塗られた箇所が、レザーパネルとレザー扉です。

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平面的にみるとこのようなディテールとなっています。隣のパネルの目地と扉の隙間の寸法を合わせたいことと、扉のヒンジを隠したいことを両立させるために、扉の下地にアルミパネルを組み込むことになりました。

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実はここまでの道のりは、決して平坦ではありませんでした。レザー張り家具を得意とするトリシュナ・ジバーナの三浦さん、施工をお願いしているリフォームキューの岩波さんと坂本さんに事務所に来てもらって、幾度か打ち合わせをさせて貰いました。

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その時のディテールスケッチがこれです。扉部分の隠し丁番と戸当たりとさらに、トイレなので鍵も必要になっており、それを如何にパネルと目地を合わせて作るかは、なかなか難しく、皆で頭を悩ませながら、あーでもないこーでもないと検討を重ねてきました。

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ようやくできてきたレザー張りをする前の下地状態のパネルのディテールです。左は戸当たりと目隠しを兼ねたアルミのツバが付いた扉の端部詳細、右側はレザーをパイピングで留める扉小口部分と、特注の取っ手をはめ込むための欠き込み部分です。ここまで作った下地パネルを一度現場で仮に設置してみて、寸法的な調整をしたうえで、レザーを張ってもらう工場に持ってゆきます。

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こちらは特注の取っ手です。焼き付け塗装できれいに仕上げてもらっています。
いよいよこれからレザーを張ってゆくのですが、レザー張りの工場は色々と企業秘密(?)があるらしく、見学はさせて貰いましたが、写真を撮る許可は得ることができませんでした…。
どのように仕上がってくるかはしばしお待ちください。

 

インテリアに合わせた特注置き家具のデザイン方法

[六本木N邸]

六本木N邸プロジェクトでは、造り付けの造作(ぞうさく)家具だけでなく、置き家具もデザインさせて頂くことになりました。ソファーは、座り心地を左右するクッションの性能があまりに専門的なことで、またやダイニングチェアは軽さと強度と耐久性に関係する構造などの問題で、簡単にはデザインできませんので、今回はリビングボードとチェスト、さらには半分造作ともいえる寝室のヘッドボードをデザインさせて頂くことになりました。

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デザインの手順としては、まず平面プランと展開図を見ながらが、家具の大まかなサイズを決めてゆきます。その後家具のボリュームに引き出しや棚板、見せる収納などを落とし込んでゆきます。

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このスケッチをベースにして、家具屋さんに素案(タタキ台)となるラフ図面を描いてもます。しばらくは、メールでスケッチを通して、使い勝手や細かい収まりなどの点を中心にやり取りしてゆきます。

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ある程度に詰まってきたところで、家具屋さんの担当者に事務所に来てもらい、打ち合わせを行います。今回はこれまでも幾つかの置き家具を作ってもらった横浜のYPOの広瀬さんにお願いしています。

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先方は家具作りのプロですから、2~3度のメール打ち合わせで、ここまできれいな図面を作ってくれています。とはいえ、この段階ではまだ家具のプロポーション、機能性、さらには作り方の整合性も取れていないので、その部分を打ち合わせで詰めてゆきます。

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こちらは同時にデザインすることになった、主寝室のベッドの枕側にセットする、後付けのヘッドボードの初期イメージスケッチです。折角にデザインする機会を作っていただいたので、枕が接するボード部分はレザーの緞子張り(どんすばり)にしてサイドテーブルやコンセント、照明なども組み込むことを目論んでいます。

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スケッチだけでは説明が不十分なので、一度こちらに広瀬さんに来てもらって、こちらの考えをお話させてもらいました。すでにこの時点で、ディテールや素材の取り合いなどについてのディテールスケッチも始まっています。

 

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広瀬さんが図面化したものを幾度かメールで質疑のやり取りをした後に描いてくれた製作図です。この段階で、すでに家具として作れる状態になっていますが、まだ、ディテールの詰めが甘かったり、素材の選択が終わっていないので、それらを最後の打ち合わせで詰めてゆきました。

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ある程度のサイズの家具となると、図面だけの検討ではサイズ感や使い勝手が見えてこないので、現場で簡易的なモックアップを作ることもあります。こちらはダイニングテーブルの横に置くサイドチェストです。現場の段ボール紙を使って、即興的に作ったものですが、お客さまにはできたときの使い方が想像できて、とても判りやすくて楽しかったとご好評でした。
素材を決定して、塗装の色番号&ツヤの指定、取っ手金物をデザインしたうえで見積りを作ってもらいました。お施主さまに見積りの承認を頂けたので、現在家具を作ってもらっている最中です。N邸には、ミノッティのソファーやフレックスフォルムのダイニングテーブル、エ・インテリアーズのピエロ・リッソーニデザインのダイニングチェアなどの超ハイグレード家具が揃うので、その中でどのように見えてくるのか、出来上がりが楽しみです!