Blog建築家が考える
プレミアムリフォーム・リノベーション

Architects think of Premium Reform & Renovation

高級マンションリフォーム・リノベーションの設計とデザインについて。
そのプロセスとノウハウを余すところなく公開しています。

新宿区T邸のビフォーアフター

新宿区T邸

今年の春にお引き渡しを終えていた、ペントハウスマンションリノベーションの新宿区T邸の工事前後の写真を比較したビフォーアフターがようやく整理できました。高層マンション最上階のリノベーション事例です。
専有面積は約190㎡とゆとりのある広さがありながら、既存のプランでは廊下が多く、各部屋が分断されていたため、全体として広がりが感じにくい間取りとなっていました。お客さまのご要望をもとに、間取りを再構成し、3LDKから2LDKへと変更。廊下部分を取り込むことで、LDKを中心とした空間の一体感を高め、暮らしやすい住まいへと整えていきました。

広さが190平米、天井高さも折り上げ上で3メートルあり、3方向に窓がある開放的なお宅なのですが、改修前は、LDKと個室が明確に分かれ、中央に廊下が伸びる構成でした。LDKは南面の開口に面しているものの、横長で奥行きが感じにくく、天井が高いにもかかわらず、その印象が十分に活かされていませんでした。リノベーションで、3LKDから2LDKと洋室を一つ減らして、廊下を居室に取り込んだうえでキッチンの位置を変えて、大きなLDKを実現することができました。

ビフォーアフターの平面図の比較です。
・リビングダイニングの広さが約1.7倍になっています。扉の開け閉めで開放することができるキッチンまで含めたLDKとして考えると、約2倍の広さになっています。
・キッチンの位置が大きく変わりました。勝手口との連携やランドリールームと直接つながって、更にはキッチン背面には奥さまのワークコーナーができて、使い勝手が格段に良くなりました。
・黄色くマークしたエリアが玄関と廊下ですが、廊下がほぼ無くなってリビングダイニングがその分広くなっています。

以前はほぼ正方形のリビングダイニングで、玄関からLDに入ってダイニングに行こうとすると、テレビの前を通り抜けるアプローチになっていましたが、リノベーション後は堂々としたテレビボードの前に大型の「くの字型」のソファが置かれていますが、人が前を通ることが無いレイアウトになったので、空間に落ち着きが生まれています。

天井カセット式エアコンの位置を変えて折り上げ天井(間接照明付き)のサイズを大きくし、フローリング材の色味を明るくすることで、部屋の明るさと解放感を高めることができました。

左側がビフォーで右がアフターですが、廊下だった個所が見事にリビングダイニングキッチンに取り込まれていることが判りますね。

同じ廊下を逆方向から見返したビフォーアフターです。窓が無い廊下空間の狭さと暗さが消えて、大きくのびのびとした空間になりました。ダイニングの壁面にはビルトインのワインセラーを入れています。

かつての洋室2だった個所が、キッチン背面の奥さまのワークスペースとランドリー(下の写真の左側の引き戸の奥)に変わりました。二つの窓を開けると、風が爽やかに通り抜けるようになりました。

玄関のビフォーアフターです。以前は玄関扉を開けた正面の壁に、キッチンへの扉があり、空間としての落ち着きがありませんでした。リノベーションで正面壁には大理石を貼り、右側には来客用トイレと収納、左側には大きめのシューズインクローゼットを設けることで、壁面が多い落ち着いた空間になりました。

先ほどのビフォーアフター平面図では割愛した家族用の水回りスペースですが、以前は空間がガタガタして洗濯の動線と洗面、トイレと浴室の動線がクロスしていましたが、すっきりと動線が整理され、収納量も増えたとお客さまに喜んで頂いています。

リノベーションの効用が一番分かりやす写真がこちらでしょうか…。以前の様子を知っているお客さまがいらっしゃると、「何この変わりようは!」と驚いてくれるのが嬉しいとのお話を伺っております。

お客さまと一緒に大理石を選ぶ意味-1_岐阜県大垣市の石工場見学

ザ・ライブラリー

ザ・ライブラリープロジェクトのご紹介ブログです。
最初のご相談時から大理石素材に対して強いこだわりを持っていらっしゃったHさま。キッチンショールームでは大理石をキッチン全面に使われた迫力にとても喜んで頂けましたが、自分で多様な選択肢の中から好みの大理石を選ぶような体験はまだでしたので、一度研究のためにもザ・ライブラリーのメンバーとHさまで岐阜県の関ケ原市と大垣市エリアに広がるの大理石工場と倉庫を見学して回ることになりました。

洗面+浴室+トイレ部分の大理石をお願いする予定のキダ・マーブルの齊藤さんにお願いして、Hさまとザ・ライブラリーから田口さん、岸本さんと現場監督の栗原さん、そして各務の総勢4名で新幹線の岐阜羽島から車に乗って大垣から関ケ原エリアを案内してもらいました。最初に訪問したミナミ石材が用意してくださっていたのがこちらのアラベスカートですが、しょっぱなから美しいアラベスカート見て、Hさまのテンションもかなり上がって、この大理石の枚数が揃うのなら、これで決めても良いとのお話もありました!
因みに、アラベスカートという名前は、白地にグレーのアラベスク模様(波のような模様)が入ることから、この名前で呼ばれています。

ただ、アラベスカートはここのところずーっと人気で、枚数が揃うものがほとんどないとのことで、最初のスラブももう1枚しか残っていないとのことでした。それでも、後ろの山に無造作に並べられているアラベスカートはどれも美しく、Hさまはうっとり(笑)なさっていました。

立てかけられていたものから、一枚を取り出してみてみたいとのことでしたので、ミナミのスタッフの方に、それを吊り出して、前面に持ってきてもらいました。

こちらもとてもきれいな模様が入っているものでしたが、左側は肌理の細かい泡状の模様があるのですが、右側が大きな白い部分があり、採用するには難がありそうでした。ただ、白っぽい部分を日塗工のカラーチャートで見ると、どのくらい白いのかを田口さんが見比べてくれております。

次に伺ったのはコスモマーブルです。こちらでも、齊藤さんが事前にHさまの好みをお伝えしておいてくれたので、倉庫の前面にアラベスカートとスタトゥアーリオ系の白い大理石を並べてくれていました。

ここでも素晴らしい出会いがありました。こちらのアラベスカート・カルペーボラ(Arabescato Calpepola)です!右側が緑色掛かっていますが、それでも美しい!とHさまには喜んで頂いたのですが、残念ながら枚数の問題がクリアすることができませんでした…。
因みに、アラベスカート(Arabescato)には幾つかの石柄があるとされており、一番有名なのが灰色と白のコントラストが美しいコルキア(Arabescato Corchia)、アラベスカートとカルカッタの中間体のようなカルペーボラ、そして、もう少し柔らかな模様のファニエッロ(Arabescato Faniello)やもっと温かい雰囲気のヴァッリ(Arabescato Vagli)などがあります。それぞれ、イタリア・トスカーナ州でアラベスカートが取れる採掘場の名前だそうです。
以下アラベスカート各種を比較した表やそれらの実例写真などは以下のブログ記事をご覧ください。

ニューヨークの友人建築家の設計事務所訪問-1

ニュース

ゴールデンウィーク明けにニューヨークに行ってきた際に、友人の設計事務所を2か所訪問させて貰いました。そのうちの一人のニコラス・スタノスさんの事務所と彼の設計事例の見学の様子をブログに記しておきます。

ニコラスは、1994年から1996年まで修行をさせて貰ったCicognani Kalla設計事務所(CKA)の元同僚です。CKAでは彼の方が先輩でしたが、僕が修行している間に、学部卒業だった彼がハーバードのデザイン大学院に進学したので、ハーバードでは僕が先輩という関係です。僕が帰国後、ニコラスはまたCKAに戻って20年近く働いてから独立して、今はスタッフを3人を抱える設計事務所を主宰しています。

こちらが彼の設計事務所の様子です。ニューヨークのミッドタウンでセントラルパークのすぐ近くのおそらく築100年くらいのかなり古いビルの中にある事務所です。
ニコラスが手伝ったお客さまのお宅が、お客さまの都合で売却されることになり、ちょうど販売されているとのこと、そのお宅を見学させて貰えることになりました!

新築マンションを購入した以前のお客さまの妹さん(当時一人暮らし!)の為に、新築未入居時点からスケルトンにして改装したお宅とのことです。約600平米で、当時42億円(!)で購入したお宅を約8億円(インテリは別途)かけて改装したそうです。

リビングルームが2つあり、大きなダイニングルームにイートインスタイルのキッチン、そして5寝室(全てに水回りセット付き)という豪邸です。

2つのリビングの中央にあるダイニングは12人掛けの巨大テーブル(搬入の関係で2つに分かれています)となっています。

上が、新築分譲時のインテリアイメージCGで下が現在の様子です。当初は中央のこの空間がラウンジ的に使われる想定だったのが、ニコラスのリノベーションでダイニングになったようです。

ダイニングは2つのリビングの中央で、このような列柱に囲まれた空間となっています。因みになぜお客さまが売却されることになったのかというと、お客さま(女性)が新たに結婚することになり、二人そろってマイアミに引っ越すことになったそうです。最初はセカンドハウスとしてこのお宅も持ち続けることも考えられたそうですが、マイアミで約2倍の広さのお宅を購入することになったので、売却することになさったそうです。最初の売値は55億円だそうです!

マンションの上層階で、ワンフロアを占めるお宅で中央に共用部コア(エレベーターや非常用階段)がある間取りとなっています。

こちらはキッチンです。ニューヨークの豪邸では初めて見たポリフォーム社(イタリア)のキッチンでした。

イートインコーナーがある大型キッチンですが、それでも郊外にある豪邸などと比べると、コンパクトなキッチンでした…。一番驚いたのが、イタリアハイブランドのキッチンがニューヨークの豪邸で取り入れられていることでした。日本では、イタリアやドイツのハイブランドキッチンは富裕層の垂涎の的と言われていますが、アメリカの富裕層の間では実は現場造作のキッチンの方が好まれているいます。

主寝室のウォークインクローゼットもポリフォームでした。僕も個人的にはポリフォームは大好きですが、なぜポリフォームのキッチンやクローゼットシステムなのかをニコラスに確かめたところ、お客さまからの指定だったとのことです。因みに、ニコラスはポリフォームのライバルブランドのモルテーニの名前を知りませんでした…。
日本ではイタリアハイブランド家具=高級家具というイメージですが、アメリカではカスタマイズできず(アメリカ家具はほとんどカスタマイズ可能です)、デザインも画一的で(確かに似たようなデザイナーが持ち回りで各ブランドをデザインしていますね)、かつ軽くてペコペコ(アメリカの家具はどれもスーパーヘヴィーですから)なので、豪邸で見かけることは少ないのです。

こちらが主寝室です。ニコラスの体と比べるといかに広くて、天井高さも高いかが分かりますね。因みに、今回の写真で室内に置かれている家具類、アート類は全て中古不動産売買の仲介会社が手配したステージング会社が販売用に持ってきたもので、お客さまの私物は一切なく、ニコラスも安っぽくて好みではないと悲しがっていました。

主寝室奥の手洗いにはふんだんに大理石が使われています。

シャワー室も、ニューヨークの富裕層が好みそうな大理石のアラベスカート貼りです。日本では白系の大理石をキッチンや水回りに使うことは、どんなに撥水処理やコーティング加工しても、長年洗剤やシャンプー等を使っていると黄色っぽい染みが浮いてくるので好まれません。ニコラスに聞いてみたところ、あまりに汚れてきたら、貼り直せばよいとのことでした。因みに、日本ではマンションの浴室やシャワー室は、防水パンと一緒にユニット化したものが主流ですが、米国では今もこれからもおそらく在来工法です。

ニコラスに今回のリノベーションで一番大変だったことを聞いたところ、窓回りの造作だとのことでした。分譲時の窓回りは薄っぺらでフラットに見えて軽かったので、きちんとした枠を4方にまわし、その中に部屋によってはカーテンボックスや遮光性ブラインドなどを埋め込んで黒くてしっかりとした造作窓枠にすることだったとのことでした。

最後のこちらの写真が分譲時の窓回りイメージです。