Author Archives: Kenji Kagami

設計業界では亜流であったリフォーム・リノベーションに、十数年前から真剣に取り組んできた設計事務所、カガミ建築計画の各務謙司(カガミケンジ)です。 学生時に初めて設計したプロジェクトがリフォーム、ニューヨークでの建築修行時も高級マンションリフォームに特化した設計事務所勤務、帰国してからもリフォームの仕事が圧倒的に多く、リノベーションに特化したカガミ・デザインリフォームのブランドを立ち上げ、上質リフォームの普及に尽力してきました。

カガミ建築計画の新事務所移転計画-3

[カガミ建築計画事務所移転計画]

南青山に事務所を移転する計画、現地のリフォーム工事はゆっくりながら着実に進んでいます。

二つの小部屋が並んでいた玄関横の個室は、間仕切り壁が撤去され打ち合わせ室となります。

打ち合わせ室には照明の調光と調色、ブラインドもアプリで自由に操作することができるルートロン社ホームワークスのシステムを入れることになっております。ルートロンは使ったことがあっても、ダリという制御システムを使った照明器具やホームワークスは、電気屋の稲村さんも始めてとのことで、ルートロン社の谷崎社長が現場に来て説明をしてくれました。

照明器具は面倒な配線は不要で、全てを一筆書きのように繋げて、トイレの収納ボックス内に設けるルートロンの盤に繋げればよいとのことでした。

照明スイッチはボックスなしの独特な接続となることも事前に聞いていたので、デモ機を持ってきてもらい、接続方法を稲村さんに確認して貰いました。

ホームワークスで制御できるブラインドは、やはりルートロン社のものとなるので、サンプルから一番良さそうなものを選ばせて頂きました。

こちらの部屋には以前は壁掛けエアコンが2台ついていましたが、LDの横にあった小部屋の天井カセットエアコンをこちらに移設しました。お客さまもいらしての打ち合わせを想定して、カガミ建築計画/ザ・ライブラリーの標準的な仕様を使ったインテリアにしたいので、エアコンの冷媒管やドレイン管が露出することは避けたいと考えていましたが、窓際にカガミ建築計画お得意の木製三方フレームを取り付ける際に、2つの窓の間の壁部分をフカすことで冷媒管とドレイン管を隠すことができそうです。

天井の石膏ボードを張り直した打ち合わせ室です。実はこの時点で床のフローリングも既に張り終わっています。

フローリングは、カガミ建築計画で最近一番多く使っているADワールドノルド・シリーズモハベを使っています。ちょうどADワールドに在庫があった分で打ち合わせ室と廊下が足りることがあったので、営業担当の阿部さんにお願いして確保してもらったものです。こちら見ているのが現場監督の栗原さんで左側が超優秀な大工の小野寺さんです。

こちらは廊下にあった分電盤です。当初はこの壁の裏がトイレになるので、その収納の中に隠す計画で進めていましたが、パナソニックが新製品で露出で設置してもスタイリッシュな分電盤のFLEXIID(フレキシード)というものを発売し、そのモニターを募集しているとの話を出版社のエクスナレッジ・西山さんから聞きました。急いで申し込んでみたところ、ちょうどタイミングが良かったのかモニターとして提供してもらえることになりました。

電気屋の稲村さんと田口さんと各務で相談して、回路数を数えて、フレキシードのBDN5225(主幹容量50A、100V16回路、100/200v兼用6回路)をお願いすることになりました。

こちらが現場に届いたフレキシードの分電盤です。

分電盤用に作ったニッチの中にはめ込んでもらった様子です。分電盤の厚みが、深さ100ミリと業界最薄で、真っ白で不愛想な(失礼!)フタが白い塗装壁の中においても違和感がないデザインとなっています。因みに、モニターとしての採用の条件は、工事完成後に取材と撮影をとのことでした。

バタバタした中ですが、まだ未決事項だった床に使うタイルを探しに銀座のマラッツィショールームを訪問してきました。
今回新事務所で採用する素材類を選ぶ基準は以下のように考えています。

そんな中で、玄関タタキとトイレとキッチンの床は、愛用させて貰っている石目調のタイルのグリスフルーリーを使うことに決めました。在庫を確認して、使う面積を見ながら以下のような張り方を考えつつ、発注致しました。

キッチン床とトイレ床は在庫サイズが限られていたので、ちょっとデザイン的に工夫した張り方としています。

キッチンのコンロとシンク前の壁は実用性を考えて無難なキッチンパネルとしていますが、カップボードの背面壁はインテリア的にアクセントにしたかったので、最近よくご提案している手焼き風タイルの「ルーメ」と「ルック」からアヴィオ(ルック)という薄いブルーのタイル(写真手前から3枚目と4枚目)を貼ることとしました。

キッチンカップボード裏のバックパネル壁のタイルも、寸法的に中途半端なサイズが入ってしまいそうでしたので、このイメージ画像のように縦と横を混ぜたデザインとしています。

タイルという素材に関しては、もう一つ大理石調大判タイルも使うことを検討しています。アークテック社が扱っているフィアンドレのセラミックタイルです。まずは国内在庫を確認したところ、カラカッタ・スタトゥアーリオのマット(艶無し)仕上げとカラカッタの磨き(艶あり)とマット、そしてブライト・オニキスの磨きがあることが分かりました。
打合せ室のキャビネットを設置する壁には、最もよく使っているスタトゥアーリオ柄のセラミックを張ることとして、セラミックの割りと張り方を検討しました。

そしてこちらが、トイレの壁に張るブライト・オニキスの割りです。アークテック社は責任施工でセラミックを張ってもらうこともできますが、今回は上記のマラッツィや本物の大理石を貼る部分もあるキダ・マーブルさんに施工をお願いすることになりました。

タイル絡みでもう一つ、玄関ホールの壁にインテリアズ社が扱っている加工大理石サルバトーリトラッティです。サルバトーリもこれまで幾度もお客さまにご提案して、実際に採用してもらってきたものなので、どこに使うか色々と迷いましたが、お客さまが玄関入って最初に見える壁に張ることとしました。

こちらのベニヤ板張りの壁です。こちらは廊下側から見た様子です。右手奥が玄関扉で、壁の上にはLEDの間接照明、そして天井からはコートハンガー用のL字型に加工したステンレスパイプを入れています。

トラッティは加工大理石と金属目地だけで構成された壁用の素材です。大理石のサイズが3種類あって、張ったときに縦目地がずれていた方が美しいので、届いた材料を一度床に仮並べして、どのように張ると一番美しいかを、TAGKENの佐藤さんと栗原さん、弊社の竹田さんが調整してくれました。

デザイン的にはあまり凝ったことを考えていない事務室スペースは、収納量重視で考えています。窓際に設けるオープン棚と窓に取り付けるブランドのサイズを竹田さんと前田君が実測してくれています。

ハクアーキテクツスタジオと考えるスチールフラットバーでつくる建具枠の精度

[渋谷区L邸]

大型メゾネット住戸リノベーションの渋谷区L邸の工事は、上階・下階ともに本格的に進み始め、かなり大掛かりな工事となっています。今回は、スチールFB(フラットバー)を使った建具枠についてご紹介します。

上階は既にLGS(軽量鉄骨)の間仕切りが立てられてて、部屋の骨格が見えてきました。

LGSの間には場所によって壁下地のベニヤ板や、遮音の為の断熱材は入れられています。

白くて重たい長物が多数搬入されています。実はこちらは…、

スチールフラットバー(鉄板)の枠材なのです。白く塗装されているので、軽そうに見えますが、6ミリの厚みのある無垢材なので、かなり重たくしっかりしています。

この枠材を製作してくれたのは、有富家具の有富さん。
モックアップ用に作ってくれていたスチール枠材を、木製の枠下地材に取り付けてくれた様子です。溶接されたL字型のフィン部分で、木枠にスチール枠を固定できるように作られています。

こちらの建具(扉のことです)と枠の図面の緑で囲まれた箇所、「St FB 6×117 メラミン焼付塗装 22-80B 五分艶」と記載されている部分はこの枠の仕様です。Stはスチール、FBはフラットバー、6×117はサイズ(ミリ表記)、22-80Bは色番号、5分艶はそのツヤの度合いとなっています。

建具図は全体としてはこのようなものとなっています。こちらは僕ら設計側が作った指示図で、部分的な詳細や仕上げ材、取っ手の作り方や枠の取り付け方が細かく指示されており、これを元に施工会社側が見積りをし、施工用の図面を作ってゆきます。

下請けとして入ってくれた有富家具が描いた建具の製作図がこちらです。先ほどとは別の建具の図面ですが、製作側は単に図面をトレースするだけでなく、実際に建具をどのように作り、どんな金物で吊り、どのように補強するかまで、この図面作成の過程で検討していくのです。
こちらは吊り金物で吊る「引き込み扉」の図面です。

こちらは引き込み扉の上枠の様子です。白いレールから吊り下げられている四角いプラスチックと金属でできたものが上部吊車(コマ)と呼ばれるものです。建具側にちょうどこのコマがはまるように欠きこみを作っておいてそこに嵌め込むのです。引き込み扉は2枚の壁の間に引き戸が引き込まれて見えなくなるので、柱の間にスペースがあり、そこの奥まで枠とレールが伸びているのです。

同じ枠の反対側見た様子です。コマ2つあることが判りますね。

基本的には枠は3方向に回りますが、傷がつきやすいので、取り付けが終わるとすぐにベニヤ板で養生されてしまいます。

建具と枠は、このフラットバーの枠だけでもかなり重たく、そこに更に建具の重量も掛かってくるので、枠を固定する枠下地もかなりしっかりとしたものになります。左右の枠だけではその重量はサポートできないので、上階のコンクリートスラブからアンカーバーで吊って固定しているのです。写真の木が横にわたっているのが枠下地で、何か所は細い銀色の棒で吊られているのがアンカーバーです。

今回のスチールフラットバーを使った枠ディテールは、実は設計監理を手伝ってもらっている設計事務所「ハクアーキテクツスタジオ」の後藤さんと関さんの事例を見学させてもらったことから始まりました。
ハクの後藤さんは、カガミ建築計画がまだ弱小だった頃のスタッフとして事務所を支えてくれたメンバーで、パートナーの関さんも学生時代からの知人です。カガミ建築計画の人手が足りないときには、これまでもたびたびお手伝いをお願いしてきました。
ハクが設計したお宅を見学させてもらった際、このフラットバー枠のディテールが非常にシャープで美しかったため、今回はそれを参考にさせてもらいました。
ハクさんも僕らのディテールを参考にしてくれているので、お互いに情報を交換しながら、設計力をさらに高めていければと思っています。

恵比寿A邸の一年点検

[ザ・ライブラリー]

ザ・ライブラリプロジェクトのニュースです。
1年ちょっと前にお引き渡しをさせて頂いた、新築高層マンションリノベーションの恵比寿A邸の一年点検に伺ってきました。

とてもきれいにお住まいのお宅で、幾つかクロスの膨らみや、塗装扉の塗装ムラが気になるとのことで、それらを中心に見させていただきました。

当日伺ったのは、ザ・ライブラリーパートナーの田口さんと現場監督の栗原さん、そして担当スタッフの前田君、造作家具をお願いしていたアルノの鵜飼さん、そしてこの写真には写っていませんが、追加の棚板のご依頼を受けていたGIGIの職人さん2名の計7名です。

塗装ムラについては、ご指摘頂いた箇所を拝見させて頂きました。Aさまがご指摘してくださった箇所は2か所あり、それぞれをクリーニング剤で拭いてみましたが、残念ながらうまく取れませんでした。
補修する手段としては、パネル材2枚を持ち帰って気になる箇所を削ってから、改めて塗装し直すことになりますが、一年経っているので、紫外線等の影響で色も変わっているので、持ち帰ったパネルそのものはきれいに仕上げることができますが、他のパネルと横に並べると色違いが出る可能性があることをお伝えしたところ、そこまで大変な作業であれば、小さな色ムラでそれほど気にならないので、補修しなくて良いとのことになりました。
お引き渡し時にご指摘を頂いていれば、まだ色の変化もないので、すぐに同じ色品番で塗装し直せば同じようにできるのですが、一年経ってしまってからの鏡面塗装の補修は、正直かなり苦しいのです…。

クローゼットはとても使いやすいとのことで、喜んで頂いておりますが、この写真の右側の飾り棚の右奥の棚には洋服を掛けずに、小物を置きたいとのことで、棚板を2枚追加させて頂きました。
住み心地には大満足との嬉しいお言葉を頂きました!