Author Archives: Kenji Kagami

設計業界では亜流であったリフォーム・リノベーションに、十数年前から真剣に取り組んできた設計事務所、カガミ建築計画の各務謙司(カガミケンジ)です。 学生時に初めて設計したプロジェクトがリフォーム、ニューヨークでの建築修行時も高級マンションリフォームに特化した設計事務所勤務、帰国してからもリフォームの仕事が圧倒的に多く、リノベーションに特化したカガミ・デザインリフォームのブランドを立ち上げ、上質リフォームの普及に尽力してきました。

突板ベニヤ工場の見学

[代々木上原I邸]

代々木上原I邸では、階段室の吹き抜けや造作家具などでかなりの数量の突板ベニヤを使う予定です。突板(ツキイタ)ベニヤとはあまり聞かない言葉ですが、天然の木材を薄く(0.2~0.4ミリ)スライスしたものです。弊社であれば、ウォールナットやチーク、或いは今回使う予定のオーク(ナラ材)を薄く突いたものとなります。そのままだとお寿司を包む経木(キョウギ)よりも薄くふにゃふにゃで建材としては使えないので、柄を揃えてベニヤ板に張って家具や建具などに使います。

突板工場見学

上の写真の細長いものが突板となります。今までは、突板選びで埼玉方面の突板屋さんを訪問したことは何度もありましたが、今回はその突板を建材として使えるようにベニヤ板に張る工場を、施工をお願いしているの現場監督の石坂さんと造作家具をお願いしている現代製作所の藤田さんと一緒に見学して参りました。

突板工場見学

こちらが突板ベニヤ工場の丸考天然木化粧合板さんです。会社名にもなっている化粧合板とはきれいな木目や柄、色合いの天然木の突板をきれいに張った突板ベニヤの別称です。

突板工場見学

工場の内部は大型の機械が所狭しと並んでおります。

突板工場見学

働いている方の数はあまり多くありません。やはり中国などの労働力の安い国の製品に押されて、中々商売も厳しいようです…。

突板工場見学

暗い話はさておき、突板ベニヤ工場のプロセスを順に見せて貰いました。こちらは突板の裁断機です。

突板ベニヤ工場見学

重ねた突板の束を正確な寸法に一気に裁断してくれる機械です。

天然木化粧合板工場

こちらがオークの柾目の突板が正確な寸法でカットされたものです。

突板工場見学

突板を張る基板となるベニヤ板も並行したラインで処理が行われていきます。こちらは何の液体か書いたメモを無くしてしまいましたが、何らかの液体をベニヤ板に塗布する作業機械です。

突板工場見学

似たような機械ですが、こちらは基板ベニヤ板に接着剤を塗布する機械です。

突板工場見学

こちらが突板工場のクライマックスになります。二人一組のチームとなって、基板ベニヤに張っていくのです。特殊な接着剤を使っているので、一度張り合わせてから多少ズラすこともできるようですが、この張り方の精度で化粧ベニヤ板のきれいさが決まってくるので隙間が空かないように慎重に作業が進められます。僕らが周りから撮影している最中も脇目も振らずに作業に集中していました。

突板工場見学

こちらの大きな機械がプレス機です。熱を加えながら高圧でプレスして、突板とベニヤ板が剥がれないように一体化させます。何枚もの突板を重ねてからプレスするそうで、残念ながらこの日はこの機械が稼働している様子は見ることができませんでした。

突板工場見学

こちらの作業はプレスが終わった化粧突板の補修工程となります。突板同士が重なってしまった部分は板厚が厚くなってしまうので、紙やすりで削り落とし、反対に少しでも隙間が空いてしまったカ所がある場合は…

突板工場見学

この同じ材料で作った裏にノリのついた突板を極細にカッターで切って、隙間に張ってゆくのです。

そうすると、上の写真のような極細の隙間がきれいに埋まるのです!天井から吊るされたアイロンとサンドペーパーを使ってみるみる補修が進んでいきます。このようにして補修が終わった板をサンダー機械に掛けて、スムーズにしたところで天然木化粧合板の完成となります。この補修過程については、こちらのYouTube動画が参考になります。

突板工場見学

こちらの工場の上階には、天然木の突板が沢山保管されています。

突板工場見学

今回の見学の主目的は、実はこちらでした。良い柄の突板を選んで張り方を指示するのです。

突板工場見学

工場で作られていた化粧突板は柾目の素直ながらをシンプルに並べたものでしたが、今回代々木上原I邸で考えているのは、ランダム張りです。基本は板目柄のものを三種類ほど選んで、半割にしたものを混ぜながら、全体をランダムに張るスタイルです。こちらで選んだ3枚を写真に撮影して、

それぞれの突板に名前を付けて、

その張り方を指示したのがこちらです。本当はもっとズラしたい気持ちもあったのですが、ここまでの化粧ベニヤ板の製造過程を見てしまうと、あまりに複雑なことをすると、工場に迷惑も掛かりますし、それ以上に手間が掛かって費用も高くなってしまうことが分かったので、今回はここまでとしました。

突板工場見学

突板のロールサンプルを貰って持ち帰ったので、後日、青の片岡社長も交えて、最終的な塗装イメージも含めて確認させて貰いました。

突板工場見学

写真下の正方形のサンプル板のように、すこし白い塗料を上から掛けて、拭き取ったイメージで仕上げて貰うように依頼致しました。

高層マンション上層階なのに在来工法浴室とは…

[渋谷R邸]

渋谷R邸の解体工事が始まりました。

高層マンションリノベーションの解体工事

こちらのお宅は30階以上の高層マンションの上層階のお宅です。マンション竣工時の図面集から、このお部屋だけ特別に在来工法で浴室が作られていることが分かっていました。

高層マンションリノベーションの解体工事

築20年未満のマンション、それも高層マンションの高層階の浴室となると、防水の安心性だけでなく、施工のスピードのこともあって、ほぼユニットバス、それも高級なオーダーユニットバスで作られていることが一般的です。ただ、このお部屋のオーナーだった方は浴室の広さ、そして高さ(床を嵩上げして、窓から街を見下ろしたかった?)を特注で作りたかったからなのか、本当に珍しく在来工法で浴室が作られていました。

高層マンションリノベーションの解体工事


解体工事が始まって3日目の様子ですが、かつての浴室だった場所に、大きな床スラブが残っていました…。

高層マンションリノベーションの解体工事

壁の黒い部分はアスファルト防水層です。壁に張られていたタイルはきれいに剥がせたのですが、床の大きな塊が残っています。

高層マンションリノベーションの解体工事

床の嵩上げ部分を間近で見た様子です。下から発泡スチロール、現場打設の嵩上げシンダーコンクリート(茶色い髪は発泡スチロール型枠の剥離紙?)、その上に壁の防水層と一体で繋がったアスファルト防水層。その上に小石が見えているところから上が「押えコンクリート」です。押えコンクリートで水勾配を取っています。

高層マンションリノベーションの解体工事

発泡スチロールが下面全面に敷き込まれているので、その下にバールを差し込んで、何人かでコジ起こせば、嵩上げコンクリート全体が、ゴボッと取れるのではと思いましたが、そのように簡単に解体することはできないようでした…。

高層マンションリノベーションの解体工事

嵩上げコンクリートにはご丁寧にメッシュの鉄筋まで入っているようで、ハツリ機2台ともう一人鉄筋を切る職人さんの3人掛かりで解体をしていました。

高層マンションリノベーションの解体工事

一枚の壁を挟んで、右側では大騒音でホコリだらけの工事が行われているのに…、

高層マンションリノベーションの解体工事

その左側の(かつての)部屋はきれいさっぱり解体されていて、シュールな景色でした。

高層マンションリノベーションの解体工事

この時点で、今のペースで解体工事を進めることができれば、あと2日で在来浴室部分を解体することができるとの話でしたが、僕らが現場から去った後、マンションの防災センター(管理事務所)から、近隣の方からとても我慢できない騒音なので、工事をしばらくストップして欲しいとの依頼があったとのこと、解体工事をストップすることになってしまいました。
幸い、ストップして欲しいとの依頼があったのが1軒の方だけでしたので、工事会社プレステージプランニングの現場監督の森川さんと設計担当の阿部さんが防災センター経由でご挨拶に伺いたい旨伝えて貰いました。2度ほど騒音のお詫びと今後の方針をご説明させて頂いたところ、その方から指定して頂いた日程であれば、解体工事を進めても良いだろうとのお話しになったので、他の近隣の方々にも解体工事日程の変更をお伝えしたうえで、何とか工事を進めさせてもらうことできました。

こちらが1週間後に現場に寄った時の様子です。浴室の床の立上りがきれいさっぱり消えて無くなっていました。

奥の壁の部分には水漏れがあったようで、壁下地に錆が回っていました…。後日この部分は錆を撤去して錆止めを塗布して貰うように森川さんにお願いしておきました。下の階にまで回り込むような大きな水漏れでなくて良かったです。高層マンションは上層階になると、地震時に予想できない揺れが起こることがあり、その揺れが原因で防水層が切れても、水漏れが発覚するまで誰にも確認する方法がないという怖さがありますので…。

高層マンションリノベーションの解体工事

その他の部分の解体工事は順調に進んでいました。180平米超えの広さが実感できる解体時の様子です。

高層マンションリノベーションの解体工事

天井裏に隠されていたダクトやエアコンとその配管、そしてスプリンクラーの配管は複雑に絡み合っていました。今回キッチンを大移動するので、そのための配管整理が大変です。

高層マンションリノベーションの解体工事

絡み合ったように見えるダクト類を図面と照らし合わせながら役割を理解して、それらがなるべく交差しない形で設備を移設する計画を立てていきます。

高層マンションリノベーションの解体工事

今回のリノベーションは使える部分は再利用しようとのことで、かつてのトイレや納戸収納の扉はそのまま残すことなっており、これまたシュールな現場となっています。

高層マンションリノベーションの解体工事

他にも移設する扉は枠ごと取り外して貰い再利用することとなっており、現場の床に養生された状態で枠が保管されていました。

高層マンションリノベーションの解体工事

昔の解体工事と違って、今のマンションでの解体工事は、とにかくきれいで丁寧なのです。特に廃材を捨てる際に、きれいに分別されていないと、膨大なコストが掛かってしまうので、このように金属類は金属類で木質は木質ときれいに纏めて分けられているのです。

高層マンションリノベーションの解体工事

まだ、この時点では在来工法浴室の解体の行方は見えていませんでしたが、その部分以外の解体は概ねきれいに進んでいたので、何とかなるだろうと思いつつ、現場をあとにしました。

ジャンヌレ、ペリアン、ムーユの家具が入った千代田区M邸の写真撮影

[千代田区M邸]

今年の夏前には全面リノベーション工事が終わってお引渡しをしていた千代田区M邸ですが、その後お手持ちの家具の引っ越しやインテリアが整ってきたとのご連絡を頂き、改めて家具入りの写真撮影のために伺って参りました。

オリジナルのピエール・ジャンヌレの椅子の布地を張り替えたもののセットがリビングに入っています!以前からあまり生活感を感じなせない、ギャラリーのような住まい方をなさりたいとのご希望でしたが、まさにそのようなお住いになっていました。

キッチン側からリビングを見返したアングルの撮影をしている様子です。

リビングセットの後ろに見えていた小部屋のテーブルと椅子のセットはシャルロット・ぺリアンのもので、スタンド照明はセルジュ・ムーユのオリジナルです。奥さまがこのシーンを作りたくて、このような間取りにしたのです。

玄関入って正面の壁は、リビングに比べるハードエッジな雰囲気ですが、素敵な家具と小物とアートが迎えてくれます。

日本の工芸作品や骨董と現代アートを合わせたセンスもまた別の雰囲気で素敵なのです。

リネアタラーラにお願いしたキッチンもビルトインではありますが、アイランドや手前の食器棚は置き家具のように見えるように設計しています。

ダイニングテーブルは以前からお使いのウォールナットの耳付き一枚無垢板のもので、上に吊るしたペンダント照明は…、

こちらのピータ・アイヴィーのペンダント照明、ライト・カプセルです。

2灯を高さも位置もずらして吊っていますが、パッと見た目は存在感がないのですが、ダイニングに座ると、ホワッと浮き出るような存在感を感じるのです。

ダイニングの横のカウンターには中央にテレビが置かれていますが、左右には奥さまの大好きな工芸品や小物、僕らも設計途中でお世話になったインテリア本が沢山飾られています。

ダイニングに座ってリビングを見返すと、このような空間となっています。本当にどこかのギャラリーのようです。

トイレに作った小さなニッチや、玄関のニッチなどにも、奥さまがこれはと思った小物や石などが素敵に並べられており、どのシーンを切り取っても絵になる空間となっていました。
以前のお住まいでは、どうしても生活感が出てしまっていたのが、収納が充実したこちらのお宅では、本当に気に入ったものだけに囲まれた生活ができて、とても幸せですと仰って頂きました!