Author Archives: Kenji Kagami

設計業界では亜流であったリフォーム・リノベーションに、十数年前から真剣に取り組んできた設計事務所、カガミ建築計画の各務謙司(カガミケンジ)です。 学生時に初めて設計したプロジェクトがリフォーム、ニューヨークでの建築修行時も高級マンションリフォームに特化した設計事務所勤務、帰国してからもリフォームの仕事が圧倒的に多く、リノベーションに特化したカガミ・デザインリフォームのブランドを立ち上げ、上質リフォームの普及に尽力してきました。

リアルキッチン&インテリア掲載!

[渋谷区Q邸]

10年前に発刊された時からファンで、いつかは掲載して貰いたいとずっと願っていたキッチン本の「リアルキッチン&インテリア シーズン10」渋谷区Q邸のキッチンが掲載となりました!

リアルキッチン掲載

著者でキッチンジャーナリストの本間美紀さんとは、約18年前に出版された「オーダーキッチンをつくろう!」(エクスナレッジ社)でご一緒したことがあり、その後も新宿オゾンのイベントや、ショールームなどで幾度かお目に掛かり、フェースブックでも友達となっていたのですが、恥ずかしくてなかなか掲載の依頼をすることができませんでした…。

リアルキッチン&インテリア_シーズン10掲載

ところが、今年2月に偶然にもイベントのお誘いを頂いたところから、お話しがトントン拍子に進み、内々で行ったこちらの渋谷区Q邸の内覧会に本間さんをお招きし、そして本への掲載が決まったのです!

リアルキッチン_取材風景@渋谷区Q邸

夏頃にQさまご夫妻に都合をつけて頂き、本間さんとカメラマンの方にQ邸に来て頂き、取材撮影をして頂きました。

リアルキッチン_取材撮影@渋谷区Q邸

本間さんのカメラマンの素晴らしい連携とリズムにQさまご夫妻もつられて、ほぼ午前中だけの取材撮影でリネアタラーラにお願いしたこちらのキッチンの全容とその背後のストーリーを取材して下さったのです。

リアルキッチン掲載

キッチン本ではありますが、キッチンが主役ではなくキッチンを舞台として暮らすQさまが主役なので、説明も全て生活者目線に立っており、素敵なキーワードと共になぜこのような形になったのか、このような素材になったのかが読み取れるストーリーに仕上がっています。

リアルキッチン_撮影の様子@渋谷区Q邸

本間さんは、この本では出版社であり、編集者であり、広告を集めて、デザインを決めて、ライターでもあり、撮影こそしませんが、奥さまがどの位置に立ってどのような仕草をしているかまで的確にディレクションしているのです。

リアルキッチン_取材撮影@渋谷区Q邸

本とほぼ似たようなアングルで撮影してみた写真ですが、やはりプロとは2段も3段も違いますね…。

リアルキッチン掲載

「素描から始まって色を深めていく」ようなキッチン作りだったと取材に応えてくださったお客さまも詩的ですが、そこから小説のように話を広げていってくれた本間さんの描写力も素晴らしいのです!

リアルキッチン_取材撮影@渋谷区Q邸

このカメラアングルで撮影してくれた写真が、上に掲載されているページの写真ですね。

リアルキッチン&インテリア_シーズン10掲載

インテリア雑誌のように、お花や小物を持参するのではなく、あくまでのお客さまの普段使いの物、ちょっと寂しいなと思った時もお客さまのお手持ちの物を了解を得て飾りながら、写真でシーンを切り取っていく本間さんチームの手腕も素敵なのです。

リアルキッチン_取材撮影@渋谷区Q邸

取材撮影時は後で考えると、時間も制限されておりマキマキだったのでしょうが、とにかくフレンドリーで楽しいので、奥さまもどんどんグッとくるような発言をして下さり、それを本間さんが纏めてゆく作業が撮影と同時に進んでいきます。

リアルキッチン&インテリア_シーズン10掲載

最初は、戸棚の中や引き出しの中はちょっとと恥ずかしがっていたQさま達も、取材撮影の流れの中で、すべてをさらけ出して(笑)下さいました。

リアルキッチン_取材撮影@渋谷区Q邸

撮影は下手ですが、こちらのそれに合わせて、引き出しの内部も一緒に撮らせて頂きました。

リアルキッチン&インテリア_渋谷区Q邸

掲載記事の最後には、キッチンのスペックが洗いざらい掲載されております!
お客さまもとにかく楽しく、自分たちのキッチン作りを思い出しながら楽しくお話しができ、本もとても良い記念になると喜んで下さいました。

改めて、他のページもめくりながら拝読すると、それぞれの方のキッチン作りのエピソードに引き込まれて行ってしまい、ついつい読み込んでしまう本当に素敵な本に仕上がっているのです!

4年前から始まったプロジェクト_関西I邸

[関西I邸]

お客さまのIさまからメールでご連絡を頂いたのは、今から4年と4か月前のことでした。関西エリアの高級住宅街の大きな公園に面するマンションを購入して、自分たちの思うような住み心地とインテリアにしたいので相談に乗って欲しいとのご相談でした。

関西I邸_リフォーム案

お住いのエリアをとても気に入っていらっしゃる中で、すぐ近くに築年数はそれなりに経っているが、170平米と比較的大型の中古物件が売りに出ているので、そちらを買ってスケルトンからのリノベーションをなさりたいとのお話しでした。
お子さまが小さくて、打ち合わせで東京に来るのは難しいとのことで、まずは2~3回オンラインで打ち合わせをさせて頂きました。その後、実際に現地を見て欲しいとのご依頼でしたので、担当スタッフと2名分の交通費と現調費用をお支払い頂くお約束で現地に伺わせて頂きました。

関西I邸_現地確認

1回の訪問で竣工時の図面調査から、現地の設備等の細かいチェックをするのは時間的にも難しいので、関西エリアで活躍中の建築家の友達に紹介して貰った工務店さんにご連絡をして、給排水設備と空調設備の職人さんを2名と一緒に現場責任者に来てもらい、一緒に調査をさせて貰いました。

関西I邸_リフォーム案

最初のリフォーム案は、最初にIさまから送って貰った不動産仲介会社の間取り図だけから考えたリフォーム案でしたが、こちらの案は、設備や構造までチェックしたうえで、ほぼ現実できるレベルで考えた正規のリフォーム案です。当時お子さまが一人でしたが、ゆくゆくはお子さま3~4人は欲しいとのお話しでしたので、子ども部屋をまずは3つ確保して、廊下に面した通り抜け型の洗面と、主寝室を経由する回遊動線、更には玄関からSIC(シューズインクローゼット)、パントリー経由でキッチンに抜けられる裏動線を作ったリフォーム案を考えてみました。

関西I邸_現状調査資料

こちらは現地調査の際の結果や考察を纏めた資料です。ここまでのリフォーム案の取り纏めと現地調査、調査資料、そして現地でのお客さま打合せ1回に2人分の交通費を含めて40万円の費用をお願い致しました。
作ったリフォーム案は本当に気に入って頂けたのですが、購入予定だったマンションが他の人に購入されてしまったことで、一旦この計画は頓挫してしまいました。因みに、現地調査にご協力いただいたかわな工業にも調査費用をお支払いする予定でしたが、次回以降にまたお声掛け下さるのであれば、今回は無料で結構ですとのお話しでしたので、お言葉に甘えてしまいました…。

次にご連絡を頂いたのが約1年後で、新築マンションで広い間取りのお部屋があったそうで、それを先回のようなイメージでリフォームができないかとのご相談を頂きました。こちらは新築なので、あまり間取り図を動かさず、どのようなことができるのかをザッと考えた見たのがこちらの案でした。ただ、全体の広さ的にご要望に合わずに、こちらのお話しも残念ながら消滅してしまいました…。

次にご連絡を頂いたのが、また一年後のこととなります。今お住いのお部屋の隣のお部屋が売りに出るかも知れないとのことで、何とか連結させて住むことができないかを考えて貰えないかとのご相談でした。
集合住宅であるマンションの戸境壁を一部解体して、2つの住戸を連結させるには、構造的な問題、建築基準法上の問題、消防法上の問題、更には区分所有法上の問題をクリアすることとなり、簡単ではないことをまずはお伝えいたしました。Iさまからは実現は相当に難しいことは分かったが、まずは連結することで良い間取りが作れるかどうかを見てみたいとのことで、全ての条件が整って連結することができた場合のリフォーム案を作ってみました。この案を見ながら、もし連結はできなくてもバルコニーを通じて2室の行き来ができた場合のリフォーム案もさらに考えてみたのが上のプランの下の案です。こちらの案も、もう少し踏み込んだ調査を始めようとした段階で、隣室の売買交渉がとん挫してしまいました…。こちらのリフォーム案については、有料のサービスとして22万円(プラン作成費のみで、法規的なチェックは含まず)をお願い致しました。
普通、ここまで計画が連続してストップしてしまうと、そのままなし崩し的にご相談が無くなってしまうのですが、Iさまたちは違いました!

次にご連絡があったのは、今からちょうど1年半前です。「ご相談しておりました隣接住戸ではなく、反対側(南隣)の隣接住戸が売りに出ましたので購入いたしました。」とのことで、もう連結できるかできないかを考えずに違う向きの隣接住戸が売りに出たタイミングで、もう買ってしまいましたとのご連絡でした。実は、こちらのマンションは、新築当初はこの二つの住戸を連結した大型住戸として売っていたとのことで、少なくとも構造的な問題は連結するうえでは問題がないことは分かっており、連結できなくてもバルコニーでの行き来でも良いとの覚悟を決めてのご購入だったとのことです。

もし連結できた場合は、どのような間取り案ができるのか、有料のサービスで構わないので、作って欲しいとのご依頼で考えたのが、これらの案です。今回は、もう隣室を購入しているので、何とかして2室ともをリフォームして快適な暮らしができるように協力して欲しいとのご依頼で、法規的なことも含めて2室連結する可能性を探ってゆくことになりました!

3年越しのプロジェクトがこのような形で再開すること、本当に嬉しく思っております。

中古マンションを吹付け硬質ウレタンフォームで断熱改修

[代々木上原I邸]

築古ヴィンテージマンションのペントハウス(最上階住戸)の代々木上原I邸は、冬寒く夏暑いお部屋だったので、スケルトンリノベーション工事の際に、徹底的に断熱改修をすることになっていました。

吹付け硬質ウレタンフォームで断熱改修

ピンク色に染まった部屋のピンク色の部分が、硬質ウレタンフォームを吹き付けた断熱材です。

吹付け硬質ウレタンフォームで断熱改修

一般的に、2 0年以上前に建てられたマンションの断熱性能は低いとされていますが、こちらのマンションは築40年ですので、断熱性能はかなり低かったのです。

吹付け硬質ウレタンフォームで断熱改修

一般には、ボード系断熱材もしくは吹付け硬質ウレタンフォームのいずれかで断熱しますが、今回はスケルトンリノベーションであったこと、また隙間なく気密性を保ちつつ断熱できることや施工スピードを考えるて吹付け硬質ウレタンフォームを採用致しました。

吹付け硬質ウレタンフォームで断熱改修

2液性 のアキレスエアロンF R – F O(アキレス)を使用しています。熱伝導率0.026W/m・Kです。
断熱を行わない部分の下地にはビニルであらかじめ養生を行っておき、施工後に断熱材を削り取る部分については、剥離剤(洗髪に利用されるリンスと同じ成分)を塗布しておくそうです。

吹付け硬質ウレタンフォームで断熱改修

吹き付けタイプの断熱材は、トラックに積んだコンプレッサーで圧縮した空気を使って吹き付けるので、マンションでは専用のトラックを横づけることができる場所があること、そこから長さ メートルの管を部屋まで伸ばせることが施工の条件となってきます。事前にマンション管理組合の承認を取っての工事となります。最近では、小型の加圧コンプレッサーを室内に持ち込む方法も選択できるそうですが、それなりのコストアップになってしまうようです。

吹付け硬質ウレタンフォームで断熱改修

こちらがトラックの内部の極秘写真(笑)です。

吹付け硬質ウレタンフォームで中古マンションを断熱改修

施工前に準備が整っていると、2フロアのメゾネットマンションで130平米(40坪)の広さがあるマンションでも、6時間ほどで断熱材の吹き付けを終えることができました。メゾネットの上階は最上階ですが、この部屋は一つ下の階なので、天井面は断熱していません。

吹付け硬質ウレタンフォームで断熱改修

室内階段の吹き抜け部分も外壁側の壁と天井面までびっしり吹き付けて貰っています。

吹付け硬質ウレタンフォームで断熱改修

吹き付け作業は丸一日掛からずに施工できますが、そこから厚く吹かれてしまった余分な断熱材を削り取ったり、埋まってしまった配管類をほじくり出す作業で、また一日掛かるのです。

吹付け硬質ウレタンフォームで中古マンションを断熱改修

手動のこのような薄いカッターを使ったり…、

吹付け硬質ウレタンフォームで中古マンションを断熱改修

大きな面では、こちらのような電動のカッターも使っての作業となります。

吹付け硬質ウレタンフォームで断熱改修

先行して立てたLGSの壁下地とフラットに仕上がった断熱材の様子です。ここまできれいに仕上がってくれば、後はボードを張ってゆく作業もスムーズになります。

マンション断熱においては、窓部分の断熱性を高めることも当然ながら重要となりますので、既製品のインナーサッシ(ペアガラス)を取り付ける計画となっていますが、それについてはまた別のブログ記事でご紹介します。